『13歳からのアート思考』要約【中編】(マティス、ピカソ、カンディンスキー)

brown wooden sideboard beside beige fabric sofa ハッとさせられる考え方・哲学


この記事では、前編に引き続き、末永幸歩(すえなが ゆきほ)さんの「13歳からのアート思考」という本を紹介します。


前編では、“アートの見方”や“アーティストという職業”について解説してきました。

この中編からは、実際のアートの近代史を巡り、いまのアート界がどのように出来てきたかを追っていきます。

person taking picture of man wearing brown hat painting

アート思考とは?『13歳からのアート思考』要約【前編】(アートとは何なのか?)

5分で学ぶ、アンディ・ウォーホル【シルクスクリーンからファクトリーまで】

なぜ値段が高い?5分で学ぶ 、 マーク・ロスコ(最も有名な抽象画家のひとり)

1. アートは人類が美と格闘してきた歴史


19世紀までの500年間は、宗教の布教のためや貴族の肖像画のために、いかにリアルに描くかというのが美術のゴールでした。

しかし、それを一変させる出来事がありました。

そう、カメラの登場です。

woman taking photo during daytime


これにより、写真が絵画に取って代わり、リアルに描く必要はなくなりました。

当時、“絵画は死んだ”と言われるほどの衝撃が、芸術世界にもたらされたのです。

本書では、人々のアートに対する考え方を変えた、20世紀のアート史を考察をするための6つの作品を解説しています。

そして、この6作品を知ることで、20世紀の美の格闘、固定概念からの解放の歴史をざっくり知ることができます。

私たちの多くは、この“20世紀の格闘の歴史”を教わり損なったために、

「アート、わけわかんない!」になっている人が多いのです。

落書きみたいな、ピカソの絵の何がすごいのか。

前編を読まれた方は、作品自体は“表現の花”であり、“探求の根”にこそ本質の部分であることを理解されたと思います。

まさに、ピカソを始めとする20世紀の芸術家たちが、芸術にはまだやれることがある!と奮闘した歴史は、教科書で見た作品の表層では捉えることができません。

以下、作品のラインナップになります。

  • アンリ・マティス:緑の筋のあるマティス婦人の肖像
  • パブロ・ピカソ:アビニヨンの娘たち
  • ワシリー・カンディンスキー:コンポジションⅦ
  • マルセル・デュシャン:泉
  • ジャクソン・ポロック:ナンバー1A
  • アンディ・ウォーホル:ブリロボックス

 

それぞれが、今までのアートを固定観念から解放した、歴史的作品です。

ひとつずつ、詳しくみていきましょう。

 

2. 妻の顔を緑で塗る男、アンリ・マティス

アンリ・マティス 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

まずは、アンリ・マティス(1869年1 – 1954年)が1905年に発表した「緑の筋のあるマティス婦人の肖像」です。

緑の筋のあるマティス夫人の肖像 (カンヴァス・油彩 40.5 × 32.5 コペンハーゲン国立美術館所蔵) 出典:https://www.artpedia.asia/


自分の奥さんの肖像画の鼻に、緑の筋を描き、さらに顔の左半分と右半分で塗り方が全く違う作品です。

「何て適当で雑な絵!」

と思うかもしれませんが、当初はみなさんと同様に世間から酷評を受けます。

ところが、マティスがやりたかった事 = 根っこを知ると納得できます。

それは、「目に映るそのままの色でなくてもよくない?」という主張です。

子どもは太陽を青く描いたり、海を赤く書いたりしたら先生に、

「海は青いのよ!赤くないのよ!」と、きっと怒られますよね?

マティスはこの500年続いた、「目に見える色を、忠実に描く」という芸術の鉄則を破りました。

違う色で塗っているだけじゃん!と思う方もいるかもしれませんが、元々美術の素養があったマティスが、この作品を堂々と世に発表することが新しかったのです。

歴史の分岐点というのは、その時点では曖昧で見えにくいものですが、振り返ると「あの時、マティスが変えた!」と再評価されています。

 

3. 画面に情報を詰め込んじゃう男、パブロ・ピカソ


続いては、みなさんご存知、ピカソ(1881年 – 1973年)です。

パブロ・ピカソ 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/


ピカソの代表作は、この「アビニヨンの娘たち (1907年)」です。

アビニヨンの娘たち(油彩・カンヴァス 243.9x233.7 ニューヨーク近代美術館所蔵) 出典:http://omochi-art.com/


顔は左向いているのに、鼻は右向いていて、肌の色はピンクかと思えば茶色。

一見して、ピカソ!と分かる作品ですよね。

これも何でこんな描き方をしたのか、その根っこの部分を見てみましょう。

実はこの絵、多視点からみたものを、再構成してギュッと並べたものです(キュビズムと言います)。

1つ分かりやすい例を挙げると、サイコロの絵をリアルに描くとき、裏側の面はどうしても描けないですよね。

遠近法で立体に描いても3面くらいしか描けないサイコロで、サイコロの全部を説明できているのかな?

というのが、ピカソからの問いです。

他の方法としては、サイコロの展開図を描くというやり方もありますよね。

その展開図をギュッとした絵が、ピカソの絵(キュビズム)だと思ってください。

リアルよりも多くの情報で説明できないか?ということにピカソは挑戦したのです。

ちなみに、ピカソは生涯もっとも作品を残したアーティストとしても有名で、その数なんと15万点。

91歳まで生きていたので、平均しても1日4〜5作品制作していることになります。

まさに、呼吸するように描き続けたんですね。

 

4. 音楽も絵にしてしまおう!カンディンスキー


ピカソのキュビズムやられたら、もう絵画に挑戦することないんじゃない?

かと思いきや、ワシリー・カンディンスキー(1866年 – 1944年)の登場です。

ワシリー・カンディンスキー 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/


彼は1913年に、コンポジションⅦ(コンポジションナンバーセブン)という絵を発表します。

コンポジションⅦ(油彩・カンヴァス 200cm×300cm 収蔵場所 トレチャコフ美術館(ロシア・モスクワ)) 出典:http://artmatome.com/


豊かな色が散りばめられ、線や丸が描かれているこの絵は、なんと音楽を作品にしたものです。

具体的な物ではなく、目には見えない抽象表現の登場です。

それまで絵画には、りんごやライオンといった、必ずモチーフが目に見えるかたちで存在していました。

しかし、カンディンスキーは音楽への造詣も深かったので、曲の構成(コンポジション)を絵として表現することに挑戦したのです。

カンディンスキーの作品を代表とした、この時代の一連のロシア構成主義は一世を風靡しました。20世紀当初の3作品を紹介しました。

 

後編では、さらに20世紀後半までをギュッと凝縮する3作品を紹介していきます。

この記事を読んで興味を持った方は、ぜひ実際に本書を読んでみてください。

著者紹介

出典:https://qonversations.net/

末永幸歩(すえなが ゆきほ)
美術教師、東京学芸大学個人研究員、アーティスト。
東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒。東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。
東京学芸大学個人研究員として美術教育の研究に励む一方、中学・高校の美術教師として教壇に立ってきた。子ども向けのアートワークショップ「ひろば100」を企画・開催。
著書に『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』。

関連書籍をチェックする ✔︎