BALMUDA(バルミューダ)の歴史【後編】(オーブントースター誕生秘話)

stainless steel bread toaster on brown wooden table わくわくするデザインの豆知識


今回も前編につづき、バルミューダの歴史について紹介します。

順調なスタートを切ったバルミューダでしたが、2008年に状況を一変させる出来事が起こります。

それは、リーマンショックをきっかけとする金融危機。

他の大手家電メーカーが苦戦を強いられる状況で、この無名のブランドのニッチな製品は全くというほど売れなくなってしまいます。

果たしてバルミューダはここから大ヒットまで、どのように漕ぎ着けたのでしょうか。

 

1. 倒産寸前!最後に人に必要とされる商品をつくる


リーマンショック当時を振り返り寺尾は、

「FAXが壊れたと思うぐらい、全く注文が入らなくなった。
音楽の時もそうだったが、これもまたダメになってしまった。
自分には成功に縁がないのかもしれない。」

と思ったそうです。

会社は倒産寸前の状態になり、寺尾はすでに36歳になっていました。

a man holds his head while sitting on a sofa


そんなある時、街を歩いていた寺尾は、不況の中でもファミリーレストランで楽しそうに会話をする家族を見てハッとします。

自分の商品が売れないのは不況のせいじゃなく、お客にとって必要じゃないから売れない。

倒産は秒読みでしたが、寺尾は最後に人に必要とされる商品を作ろと決心します。

そして寺尾は、以前からずっと作ってみたかったものの制作に取りかかります。

それが、扇風機。

子供の頃、自転車に乗ったときに体に当たる風が気持ちよかったことを思い出し、あれを再現できれば人に必要とされるのではないかと考えたのです。

そしてその制作中、寺尾はあることを思い出します。

それは、町工場で壁の方を向いていた扇風機。

寺尾はさっそく職人に、なぜ壁に向けているのかと尋ねると、職人はこう答えました。

「壁に当てると、風がやさしくなるんだよ。」

それを聞くと、寺尾はすぐに流体力学の本を買って、なぜ壁に当てると風がやさしくなるのか調べて始めます。

そこでわかったことは、

“普通の扇風機の風は渦を巻きながら直線的に進むが、壁にぶつけることで渦はなくなり、流体は面に変わる。”ということ。

その結果、風はやさしくなるのです。

理屈は理解した寺尾でしたが、それをどう扇風機に落とし込むかという問題がありました。

 

2. 考え続ければ、ひらめきの瞬間は突然やってくる


毎日いろいろ考えては試していきますが、うまくいかない日々。

そんなある時、寺尾はあるテレビ番組に目を止めます。

それは、小学生の30人31脚のドキュメンタリーでした。

four children standing on dirt during daytime


その中に、足の遅い子がいて、その子を中心に転んでしまうのを見たとき、寺尾はハッとします。

これはもしかすると、流体でも同じ現象が起きるんじゃないか?とひらめいたのです。

それは毎日必死に勉強し、もがき続けた寺尾に、救いの女神が手を伸ばした瞬間でした。

このひらめきをもう少し分かり易く解説すると、高低差のある水面が必ず一定になるように、流体というのは著しい差が生まれたとき、バランスが取れた状態に戻ろうとする習性があるということです。

この習性を利用して、内側と外側にそれぞれ違う速度の風を同じ方向に出す2種類の羽を配置し、風同士をぶつけ合う。

そうすることで、速い風が遅い風に合わせるように渦を消し合い、面の風を送り出すことができるのではないか。

これが、寺尾が出した答えです。

それを実験した結果、予想通り自転車に乗っているときのような、柔らかい風が出てきたのです。

さっそく試作品を完成させようとする寺尾でしたが、すでに資金は底をついていました。

銀行には、4万円の扇風機が売れるわけないと相手にされませんでした。

 

2. 成功への寺尾の確信と、それ救った恩人


このアイディアを諦めるわけにはいかなかった寺尾は、そのモーターを供給してもらうことになっていたフジマイクロの社長に直談判し、なんと試作品を作る資金を立て替えてもらったのです。

その試作品を持って、いろんな業者に売り込みに行ったところ、思いのほか評判が良く、どんどん注文が取れることに。

そこで寺尾は、再度モーターの社長のところに行き、こう伝えます。

「この勝負、絶対に勝てます。だから僕に初期費用の6千万円を貸してください。」

focus photography of person counting dollar banknotes


この無謀とも言える相談になんと、社長はOKを出したのです。

そうして2010年、ようやく完成したBALMUDAのGREEN FANは大ヒット。

高級扇風機という新たな市場を切り開き、絶体絶命のピンチから起死回生の一手で、業績を回復させることに成功したのです。

BALMUDA GREEN FAN 出典:https://www.balmuda.com/jp/greenfan/

そこから、2012年には海外にも進出したバルミューダは、販路を広げ売り上げを伸ばします。

2015年にはスチームで焼き上げる、バルミューダ・ザ・トースターを発売。

焼く前に水を入れるという従来のトースターの概念を覆す、2万円以上するこの商品も、国内外で100万台以上を売り上げる大ヒット商品となっています。

このトースターも、人とは違う観点を持つ寺尾のひらめきによって生まれたものでした。

 

4. 常識を疑い続けるバルミューダのものづくり


社員とバーベキューをした際に、炭焼きグリルの上で焼いた食パンが、ふんわりと今までに食べたどんなトーストよりも美味しく感じた寺尾。

これを再現しようと研究しますが、何度炭火のグリルで焼いてみても、なぜかあのふんわり感は再現できませんでした。

green and brown vegetable on white ceramic plate


困っていた時に、ある一人の社員が
ふとこう言います。

「あの時、土砂降りだったよね。」

それを聞いた寺尾は、もしかするとあのふんわりは、炭火ではなく水分だったのでは?

という考えに至ります。

それが、スチームを使うというアイデアになったわけです。

こんなふうに、常識を疑い、それからも新しい画期的商品を生み出し続けてきたバルミューダは、売上をどんどん伸ばし、急成長。

2020年には販売台数の過去最高を記録し、同年12月には東証マザーズで上昇しました。

こうして、かつてはロックスターを夢見て挫折した一人の男・寺尾玄は、まったく素人の状態からバルミューダを創業し、絶体絶命のピンチをも乗り越え、今では“家電業界の風雲児”とまで呼ばれるようになりました。

バルミューダはどれも高価格ではありますが、そのデザイン性と、今までになかったアイデアを従来の製品に落とし込むことで、革新的な大ヒット商品を作り続けています。

これからもバルミューダは、常識を疑い続け、人に必要とされる商品を提供し続けてくれることでしょう。

 

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