なぜ人気?バンクシーの魅力を解説【後編】(ディズマランド、壁画、彼の正体は?)

わくわくするデザインの豆知識

出典:https://theartofbanksy.jp/banksy-dismaland/

“芸術テロリスト”と称されることもあるバンクシー(Banksy)。

前編では、ステンシル(型枠)を使った表現の背景や、映画監督までこなす幅広さを紹介しました。

後編では、近年(2015年〜)の動向と関連作品から人気の理由や、その正体について紹介します。

 

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person taking picture of man wearing brown hat painting

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1. ひと夏のディストピア、Dismalamdを開園!


2015年8月、バンクシーはまたも衝撃的なことで人々を驚かせます。

それは、ひと夏限定の悪夢のテーマパーク、「Dismaland」の開園です。

出典:https://www.fuze.dj/


名前からも分かるとおり、このテーマパークはあの夢の国を意識して作られました。

夢の国とは反対に、dismal(憂鬱)な内容を詰め込まれた園内は、悪夢のような造形のアリエル、ネズミっぽい耳をつけたスタッフたちがため息をついて接客、といった刺激的なもので溢れていました。

また、ダミアン・ハーストやジェニー・ホルツァーといった著名な現代アーティスト、58人とコラボレーションしていることも人気に火をつけ、約5週間の開園期間で延べ15万人・35億円の売り上げを上げたそうです。

Dismalandの閉園後、建設に使われた資材のすべては、当時フランス北部のカレーにあった難民キャンプに送られ、難民のためのシェルター・仮設住宅建設に転用されました。

 

2. イスラエルとパレスチナ自治区の国境にホテルを建設!


どんどん活動のスケールが拡大していくバンクシー。

2017年には、中東の火種、イスラエルとパレスチナ自治区の国境沿いに「Walled Off Hotel」というホテルを建設してしまいます。

イスラエルとパレスチナ自治区といえば、アメリカとロシアの代理戦争とも言われ、今なお緊迫した状態が続いている地域です。

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そこに建てられたこのホテルには、枕で叩き合うイスラエル兵とパレスチナ人の絵が、部屋の壁にシニカルに描かれています。

バンクシーはこのホテル以前の2007年にも、パレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁に「ロバと兵士」を描いています。

ロバ(パレスチナ人)の身分証を兵士が確認している絵で、バカやノロマなイメージのロバにされたパレスチナ人の一部からは反感を買った作品です。

出典:https://media.thisisgallery.com/


そして、この作品は壁ごとあるタクシー運転手に盗まれてしまいます。

その一連の経緯は、「バンクシーを盗んだ男」という映画に詳しく描かれています。

これも映画にしてしまうんですね、バンクシー…。

壁を盗んだタクシー運転手はその価値も分からず、あるボスに従ってその壁を切り取っていたのですが、彼は結局何の報酬もなし。

壁を売ったボスは、教会の修繕支援するために金を寄付したと言い張るが、とても優雅な暮らしをしている。

壁を買ったコペンハーゲンの富豪は、汚されたり、破壊されたりするリスクから保護したと主張。

その後、ロンドンのギャラリー、LAのオークションハウスへと壁は渡り、オークションハウスの倉庫に人の目に触れずに眠っています。

 

3. 結局、バンクシーは資本主義の味方なのか?


政治的メッセージを含む作品が多く、世界各地にゲリラ的に出没して作品を残しているバンクシー。

一方で、その場にあってこその作品が、結局は資本主義の勝ち組であるセレブの手の中に収まってしまった「ロバと兵士」。

果たして、これでいいのかバンクシー?、資本主義には勝てないのか?という疑念が湧きます。

2018年、「Girl With Balloon(風船と少女)」が、サザビーズのオークションにて落札直後にシュレッダーで裁断されたという事件が起きました。

出典:https://theartofbanksy.jp/


事件直後、バンクシー自身のインスタグラムで「いつかオークションに出されるときに備えて、数年前に額縁にこっそりシュレッダーを仕込んでおいた」という犯行声明の動画が公開されました。

オークションで落札されるなんてくだらない!というメッセージとも受け取れますが、

  • 何年も前に額にシュレッダーを仕込んで、なぜ電池が切れないのか?
  • オークション側は気づかなかったのか?
  • 共同で仕込んだのではないか?

という反感が起きます。

反資本主義というポジジョンそのものが、彼のプロモーションなのか?

この作品のオリジナルは、2002年ロンドン市内の壁に描かれたものです。

その後も、パレスチナ自治区の壁にも描かれたり、シリア難民支援のキャンペーン「#WithSyria」の画像として使われたりもしています。

シュレッダー裁断という話題性により、この作品の時価は落札価格の2倍に上がったともいわれており、「アートマーケットとは何か」という議論を喚起しています。

この事件は、バンクシーの名を普段アートに関わらない層にも広く知らしめ、21世紀前半のアート界のポップスターとしての地位を不動のものとしました。

 

4. バンクシーは正義か悪か、その正体は?


バンクシーは匿名を通していますが、正体については諸説あり、イギリス・ブリストル出身のロビン・カニンガムとの説が、現時点では有力とされています。

第二の候補としては、ブリストル出身の人気バンド、マッシヴ・アタックのメンバー、ロバート・デル・ナジャ(通称3D)。

実際3Dは、グラフィティ活動をしていたこともあり、バンクシーとマッシヴ・アタックの政治的な立場も近いとされます。

このようにバンクシーの素顔について憶測が飛び交うものの、近年はバンクシーは取材を制限しており、正体については依然として不明です。

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バンクシーは当初から一貫して、作品が高額で取引される現代アートの世界には批判的な態度を取っていますが、皮肉にも近年は落札価格が高騰しています。

2017年の落札総額は約$670万だったのが、2018年は約$1,370万、2019年は約$2,450万、2020年は約$5572万と大幅に伸びています。

なお、先に挙げた、シュレッダーで裁断された事件で注目された「Girl With Balloon(風船と少女)」は、約1.4億円で落札されていました。

正義か悪か、欲望を巻き込みながら、より大きな渦となっていくバンクシーの今後に、ますます注目です。

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