さあ、準備はいいかい?
今から組織を変える旅に出かけよう
この記事では、斎藤徹さんの書籍「だから僕たちは組織を変えていける」を紹介します。
本書は、
- 自分の組織の現状に違和感を感じている
- 組織を変えたいと思っている
という方におすすめです。
現代が変化の激しい時代であることは多くの人が感じていること。指数関数的に変化していく社会に対し、人間が作っている組織の多くは、その変化のスピードについていけていないと著者は言います。
本書は、現状に違和感を持ち、組織を変えたいと考えている人のための本です。
今の社会では、効率化ではなく、創造性が鍵になる。
組織を変えていくためには、議論だけでなく対話が必要であると主張します。
いったいどういうことなのか、さっそく中身を見ていきましょう!
1. 工業社会から知識社会への転換
まずは、“知識社会”について、解説します。
世の中には、かつての産業革命によって生まれた工業社会と、近年の情報革命によって形成された知識社会という二つの時代が存在します。
そして、私たちの社会は、工業社会から知識社会へと大きく変化してきており、コンピュータの登場から約75年が経過し、その影響力は指数関数的に増大し続けています。
工業社会では効率化がキーワードであり、業務の標準化が成功の鍵でした。しかし、知識社会では創造性が重視され、斬新なアイディアが成功へのカギとなっています。
ピーター・ドラッカーの視点
ピーター・ドラッカーは、彼の著書「ポスト資本主義社会」の中で、この変化の本質を深く掘り下げています。
ドラッガーは、20世紀の企業において最も価値ある資産は生産設備でしたが、21世紀の組織においては知識労働者と、彼らの生産性が最も価値ある資産だと主張します。
20世紀の偉業は、製造業における肉体労働の生産性を50倍に上げたことであり、21世紀に期待される偉業は知識労働の生産性を同様に大幅に向上させることです。
インターネットの時代に入り、ビジネス界では大胆な変革が起こっています。工業社会の時代を支配していた大規模な組織にとっては、これは大きな衝撃となっています。
新興企業の台頭と旧来型組織の挑戦
21世紀に入り、かつての成功の方程式が“衰退エンジン”に変わってしまったのです。
また、新興企業はゼロベースから構築され、時代に合わせた経営システムを採用しています。これにより、旧来型の組織と比較して、その優位性が際立っています。
柔軟性とスピード感の違いは、文字通り桁違いです。
変革に適応できず、工業社会の古いパラダイムを引きずる企業には、厳しい未来が待ち受けていると言えるでしょう。
2. 組織の価値観の転換
知識社会への移行と共に、現代のビジネス世界では、価値を生む源泉が効率性から創造性へとシフトしています。
この変化は、ビジネスの主役が機械から人間へと移行していることを示しています。この動きは、働く人々だけでなく、消費者にも影響を及ぼしています。
社会の関心の変化
成熟した社会では、人々の関心が“機能価値”から“情緒価値”へと移行しています。
これまでの資本主義の行き過ぎは、自然環境の破壊や社会の二極化を引き起こしているという深刻な問題も浮き彫りになりました。
若い世代の人々は、このままでは人類が破局に向かう可能性を直感的に感じ取っています。社会システム全体において、人間性への回帰の流れが始まっているのです。
著者は、人々がお金で動く時代が終わり、より根本的な欲求である幸せを求める時代が始まったと指摘しています。
この流れを受けて、ビジネスは大きな転換期を迎えており、お金視点で構築された経営システムを幸せ視点にアップデートする必要があるとされています。
新しいビジネス価値観
江戸時代から続く日本の商習慣には、「売り手良し、買い手良し、世間良し」という思想があります。
これは、マイケル・ポーターが提唱したCSV(クリエイティング・シェアード・バリュー、社会との共通価値の創造)という概念に近いものです。
インターネット時代において、人々は企業に対して、環境や社会に融合し、持続可能な繁栄に貢献できる企業を求めています。
また近年のこれらの変化は、私たち一人一人に新しい生き方を促しています。これを理解することは、未来への羅針盤となるでしょう。
平均寿命が100年となる時代を目前にして、全ての人が学び、つながり、成長し続ける人生を享受するために、社会システム全体が変革を迎えています。
3. 知識社会における組織変革
先に触れたように、時代の変化に合わせて従来型の組織は変化しなければならないというのが、本書の主要なテーマです。
これからの時代に必要とされるのは、「学習し、共感し、自走する組織」。著者はこれを「知識社会の組織モデル」と名付けています。
しかし、現状では多くの企業が工業社会の組織モデルを採用しており、理想と現実の間には大きなギャップが存在します。
理想の組織像と現実のギャップ
理想の組織像と現実のギャップを具体的に言葉にすると、以下の3つのポイントにまとめられます。
- 結果を評価の基準とするのではなく、学習する機会と捉える組織
- 現実を過剰に警戒するのではなく、共感する機会と捉える組織
- 仕事を義務とするのではなく、自己成長と価値創造の機会と捉える組織
このような理想の組織へのシフトは、まずメンバーの意識改革から始まり、その後組織変革へと広がっていく必要があります。
しかし、この大きな落差を埋めて組織を変革に導くためには、どこから着手し、どのようなステップで進めていけば良いのでしょうか?
本書では、この問題について非常に詳しく説明されていますが、今回の動画では特に「人間の関係性」の部分に焦点を当てて説明します。
4. 結果ではなく関係性から始める組織変革
古い組織に新しい風を吹き込むためのステップとして、システム思考の専門家であるダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」を基盤にしたアプローチを紹介します。
このモデルは、組織の衰退と繁栄のメカニズムを循環的に表現したものです。
失敗のサイクル:結果重視の落とし穴
結果の質を高めようとするアプローチは、しばしば失敗のサイクルに陥ります。成果の達成圧力が強まると、人間関係が悪化し、その結果、組織は硬直化してしまいます。
この、結果から始まり、
結果→関係→思考→行動→結果
のサイクルは、科学的管理法に基づく工業時代の組織における数字の管理を徹底する際の手法であり、この失敗のサイクルに陥りやすいという特徴があります。
成功のサイクル:関係性を重視するアプローチ
一方で、関係の質を高めることから始めると、思考が前向きになり、行動が自発的になります。これが成果にも結びつくのです。
このアプローチでは、スタート地点が異なります。
関係→思考→行動→結果→関係
結果を高めることを起点とすると失敗の循環になりますが、関係を高めることから入ると成功の循環になります。
知識社会の組織モデルは、この成功循環が基盤となって形成されています。結果ではなく、人間関係の質を重視することで、組織全体が前向きな変化を遂げることができるのです。
このモデルを採用することで、組織はより柔軟で創造的な方向へと進化することが期待されます。
5. 議論と対話
先のとおり、成功の循環を生み出すためには、関係を高めることが重要であり、そのためには効果的なコミュニケーションが必要です。
コミュニケーションには大きく分けて二つの種類、議論(ディスカッション)と対話(ダイアローグ)があります。
議論:効率的な意思決定のプロセス
議論は、正解を探し、意見を主張し、説得し合い、妥協点を見つけるプロセスです。
問題を分解し、論理性を重視し、最適な選択を目指します。
限られた時間の中で最も効率的に正しい選択肢を発見し、意思決定するためのプロセスと言えます。
ビジネス会議では、このアプローチが一般的です。
対話:相互理解を深めるコミュニケーション
対話は、お互いが尊重される場で、それぞれの考えを表に出し、相互理解を深めるプロセスです。
正解を求めるのではなく、ゆったりと探求する姿勢で対話を進めます。
対話(ダイアローグ)はビジネスの世界ではこれまで軽視されがちでしたが、理想の組織では必要不可欠です。
ダイアローグの目的は、手段の良し悪しを議論するのではなく、その背景にある意味を共有することにあります。
異なる意見の価値とダイアローグの重要性
多様な人たちが集まると、意見が異なるのは当然。
しかし、共同体として目指すものが同じであれば、お互いの意見を戦わせる前に、なぜそう考えるのかを深く理解し合うことが大切です。
異なる考えでも意味を共有できれば、建設的な第三の案が生まれる可能性があります。
現実のビジネスの場では、ダイアローグが行われることは稀です。一刻を争うビジネスの場では、効率的な最適化が要求されるためです。
しかし、議論だけでは対立モードになり、水掛け論になりやすく、深い亀裂が生まれることもあります。
そのため、これからの組織においては、議論の前にダイアローグを通じて双方の意見の背景を理解し合うことが重要です。
6. 自然体の自分に戻る
Googleの調査によると、組織の成功因子で最も重要なのは「心理的安全性」です。
心理的安全性が高い場では、ダイアローグのように、お互いが自由に意見を言い合い、言葉を共有することが可能です。
では、この心理的安全性をどのように構築するのでしょうか?
自然体の自分を取り戻す
心理的安全性を構築するためには、すべてのメンバーが過度な空気読みや強がりをやめ、自然体の自分に戻ることが基本です。
このプロセスを省略して技術や場づくりに走ると、すぐに本質が見えてしまいます。
「ホールネス」という言葉は、ありのままの自分をさらけ出すことを意味し、心理的安全性の基盤となります。
人は、生まれてから死ぬまで、内的なもの(自分の感覚、感情、欲求など)と外的なもの(他者からの要請や期待、言語化されない圧力など)の間でバランスを取りながら成長します。
幼少期からのしつけや社会化の過程で、本当の自分と偽りの自分の両面を持つようになります。
偽りの自分との向き合い方
偽りの自分は、外部からの一方的な要請や期待が強かった人ほど大きくなる傾向があります。
心理学者の根本きつおは、この偽りの自分を「代償的自己」と表現しました。
うれしいと感じたからではなく、うれしいと言うべき場面だから「うれしい」と言うことで、本音と建前を器用に使い分ける能力が身につきます。
偽りの自分を中心に生きる人は、生身の自分としての感情や欲求との結びつきが弱いために、現実性を持たない抽象的な思考に陥りやすく、行動の根拠が「したい」ではなく「しなくちゃいけない」になりがちです。
賞賛されるため、いい関係を維持するため、失敗しないための言動が多いと自己充実感は養われません。自分自身の人生を自らの手でコントロールしている感覚が持てず、消耗感が高まり、滅私奉公の意識がつのってしまいます。
そのため、自分自身を縛っている「しなくちゃ」に気づき、本来の感覚を尊重することが重要です。
自分の内面とのつながりを感じたら、偽りの自分と本当の自分の間に橋をかけることが大切です。
脳科学によると、人間は「社会脳」と呼ばれる、他者や社会との結びつきを持つ脳の働きを持ち、他者のために尽くすことに喜びを感じるようになっています。
心理的安全性への道
偽りの自分と本当の自分が統合されると、無条件に自分を受け入れることができるようになります。
「自分はこのままでいい」という感覚が生まれ、自分の本音を恐れることなく話せるようになります。これが心理的安全性につながるのです。
今回紹介した、斎藤徹さんの書籍「だから僕たちは組織を変えていける」についてまだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですのでぜひ読んでみてください!