下のロゴ、一度は見たことありませんか?

出典:https://www.watch.impress.co.jp/
この会社、ドルビーラボラトリー社(Dolby Laboratories, Inc.)は、映像と音響の技術で、古くから映画の裏側を支えてきました。
今回は、そんなドルビー社の規格に沿ってつくられたプレミアムな映画館、「ドルビーシネマ」を紹介していきます。
この記事を読んだあとは、その圧倒的なこだわりに、一度は足を運びたくなるはずです。
1. ドルビーシネマと4つの要素
ドルビーラボラトリーズは1965年設立で、映写機を作るとか、スピーカーを作るというよりも、規格そのものを作るのがメインの会社です。
例えば、私たちの生活に最も近い技術としては、音声コーデックの一つである“AAC”があります。

AACというのは、音声を圧縮する技術の1つ。
圧縮率の割に音質が良いので、今ではYouTube やニコニコ動画、iTunes 、 Blu-ray Disc 、地上デジタルテレビなど、さまざまな媒体に使われている規格です。
そんなドルビーが提唱するこだわりの映画館が、ドルビーシネマです。
ドルビーシネマは、以下の4つの要素から成り立っています。
- ドルビービジョンの映像の技術
- ドルビーアトモスの音響の技術
- 反射光を抑えるための、黒色を基調としたインテリアと防音
- オーディオビジュアル・パス
4つ目のオーディオビジュアル・パスは、名前はかっこいいですが、劇場の入り口に、その映画のロゴが大きく表示され、映画のサントラが流れる「廊下」のことです。
名前オチなところもあるので、今回は映画の技術的な部分、ドルビービジョンとドルビーアトモスに絞って紹介します。
2. 人間の目の限界と画像処理
ドルビービジョンは、HDRが表現できる規格です。
HDRは“ハイ・ダイナミックレンジ”の略。
最新のテレビやスマホには、このHDRが搭載されているものもあるので、名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

ダイナミックレンジは、最小値と最大値の幅が大きいということなので、HDRは光の表現範囲がより広いということ。
しかし、現実世界の光の明るさの範囲は、それ以上に広いです。
デジタルカメラでこの世界の映像を収めるということは、基本的には不可能なので、必ずどこかを切り捨てて記録する必要があります。
では情報をどう切り捨てるのがいいのか。
ここには、人間の目の特性が関わってきます。
人間の目は、暗いところに敏感で、明るいところに鈍感です。
目が感じることができる光の強度は、強くなるほど圧縮される傾向にあるのです。
例えば人間は、暗い部屋で懐中電灯をつけたときと、明るいコンビニで懐中電灯をつけたときでは、前者のほうが、変化を大きく感じます。
エネルギーというのは足し算ができるので、薄暗い部屋と明るいコンビニの光エネルギーの変化は物理的には同じはずであるにも関わらず。
これを視覚のガンマと言います。

横軸が物理的な明るさ、縦軸が人間が感じる明るさです。
要するに、人間にとって明るすぎる部分の情報は、大して重要じゃないということです。
3. ドルビービジョンは12ビット
人間の処理能力を踏まえて、一般で使われる画像の明るさ情報は、8ビットの256段階でのみ表現されています。
通常の用途はこれで充分で、大抵の画像ファイルや映像データは8ビットです。
しかし、8ビットの情報量では、明るさの表現には限界があります。
分かりやすい例を挙げると、部屋のシーリングライトを撮った写真と、太陽を撮った写真は、どちらも同じように白飛びしますよね。

実際には、この2つの明るさには大きな差があるにも関わらず、どちらも同じ“白”で記録されます。
つまり、8ビットの情報量では、明るさの差は失われていて、ダイナミックレンジが狭いということです。
この差をより再現しようと生まれたのが、HDRです。
HDRで記録される光の情報は、10ビット以上に拡張されています。
そしてドルビービジョンは、12ビットです。
1ビット増えるごとに情報量は2倍になるので、12ビットでは8ビットの16倍の情報量になります。

出典:https://www.lmaga.jp/
明るさ情報をより詳細に記録して、それを表現できるモニターやプロジェクターと組み合わせることによって、同じ白でもまぶしい白と、まぶしくない白が表現できるのです。
さすがに、太陽レベルの明るさを再現できるわけではないですが(目が焼けます)。
ドルビービションのHDRでは、従来のSBR(スタンダー・ダイナミックレンジ)と比べて、まぶしさの表現は格段に上がっています。
今回はここまでです。
次回はもう少しドルビービジョンの話と、ドルビーアトモスについて紹介していきます。