どうせ映画を観るなら、いい映像と音で観たいですよね?
ということで、今回もドルビーシネマの紹介です。
前編では、ドルビービジョンがHDR(ハイ・ダイナミックレンジ)の画像処理で“まぶしい白”を表現できることを解説しました。
後編ではその逆、“真の黒”と、もう一つの技術「ドルビーアトモス」について解説します。
1. 圧倒的なコントラストによる“真の黒”
“まぶしい白”以外にもう一つ、ドルビービジョンのすごいところは、圧倒的なコントラストによって“真の黒”を表現できるところです。
コントラスト比が高いということは、他の映画館より色鮮やかということです。
そして生まれるのが、真の黒。
黒というのは簡単なようで、表現が難しい色です。
一般的な画面の黒い部分は、どうしても少し白っぽくなってしまうものです。

左:白っぽい黒、右:真の黒 それぞれのイメージ
ドルビービジョンのプロジェクターは、どうやっているのかは不明ですが、真っ黒の映像を本当に真っ黒にすることができます。
ドルビーシネマの最初で流れる紹介映像では、黒の表現力を訴えかけるシーンがあります。
下の動画で、それを疑似体験できます。
「今見ているこの色は実は黒ではありません、これが本当の黒。」
というナレーションとともに、本当の黒が映し出されると、取り肌が経ちます。
2. ドルビーアトモスは128チャンネル?
次に最強の音響技術、ドルビーアトモスについてです。
人間には耳が2つあるので、スピーカーを2つ用意すれば、空間に一体感を感じ取ることができます。
これが、いわゆるステレオチャンネルです。
映画の世界では、さらなる臨場感を求めて、このチャンネル数が増えていきます。

古くからあったのは、前、左、右、左後ろ、右後ろ+低音専用のウーファーで構成される、5.1チャンネルサラウンドです。
これにより、スピーカーで周囲を取り囲み、音に「位置」を持たせることができます。
後ろからモノが飛んでくるようなシーンだと、こういうサラウンドで臨場感がグッと増します。
今ではこのサラウンドが拡張されて、7.1チャンネルや9.1チャンネルなどが出てきています。
ちなみに、東京池袋と大阪吹田市にあるIMAX GTレーザーシアターでは、12.1チャンネルのサラウンドシステムが設置されています。
一方で、ドルビーアトモスは何チャンネルかというと、128チャンネルになります。
え、どういうこと?
となりますよね。詳しくみていきましょう。
3. オブジェクトベースのサラウンドシステムが臨場感を与える
ドルビーアトモスの128チャンネルは単純に、5.1チャンネルの数が増えたのではなく、オブジェクトベースのサラウンドです。
従来のサラウンドシステムの場合、音響担当者は、音の位置を想定して、5.1チャンネルなら合計6個の音データを作る必要がありました。
左のスピーカーで鳴らす用、右側のスピーカーで鳴らす用といったように、それぞれのチャンネルを作るということです。

例えば、後ろから飛行機が飛んでくるシーンの音響を作る時、まず後ろのチャンネルで流すエンジン音を大きくして、徐々に前のチャンネルを大きく、後ろのチャンネルは小さくするといったように各チャンネルを調整していくことで、音に一体感をつけていきます。
それで出来上がった音声データを、各スピーカーで再生すればサラウンドになるわけですね。
ドルビーアトモスでは、ちょっと違います。
ドルビーアトモスの音響担当者は、「その効果音の発生源が、3次元的にどの場所にあるのか」
ということを設定していきます。
例えば、先ほどの飛行機のシーンで言うと、この瞬間はこの位置、次のこの瞬間にはここに飛行機があるというように、音源の位置を決めていきます。
つまり、効果音と音量、位置のデータを用意して、そのデータを基に、劇場側のスピーカーをどう鳴らすのかを制御する、という技術です。
ドルビーアトモスは「位置」のあるオブジェクトデータなので、オブジェクトベースのサラウンドシステムと呼ばれています。
ちなみに、劇場用のドルビーアトモス・システムは、128のチャンネルが用意されていて、そのうちの10チャンネルが従来の音響用、残りの118チャンネルがオブジェクトベースのサラウンドシステム用に使われているそうです。
要するに、アトモスフィア(空気感)をありのまま伝えることができる音響技術、それがドルビーアトモスです。
Tジョイ
Tジョイ横浜/Tジョイ博多/梅田ブルク
松竹マルチプレックスシアターズ
丸の内ピカデリー/MOVIXさいたま/MOVIX京都
ミッドランドスクエア シネマ
ミッドランドスクエアシネマ(愛知)