アマゾンプライムビデオ、入ってますか?
プライム会員は動画が見られるだけでなく、お急ぎ配送できたり、音楽が聴けたりと圧倒的なコストパフォーマンスをみせるのが当サービスです。そして私自身、これに入っていてよかったな、と心から思えることがしばしばあります。
その1つが今回紹介する、日本の魅力に迫るドキュメンタリー番組「Prime Japan 日本のこころに出会う」を見つけた時でした。
この番組では、寿司、日本酒といった伝統文化から、ラーメンやねこまで多様な切り口と上質な映像美で、日本の魅力、「日本のこころ」を解き明かしています。ナレーションは常盤貴子さんで、端々に出る金言が一段と心に沁みてきますよ。
この記事では、1話60分、全12エピソードで送る日本再発見の旅のうちから、馴染みやすい3つのエピソードのエッセンスを紹介していきます。全エピソードを見て、ぜひ日本のこころを感じていただきたいです。
1. ラーメン _#3 愚直に極めた技ありの一杯
1本目は、第3回放送の丼一杯に込める日本のソウルフード、ラーメンです。
一蘭のような“食”に集中するための独自システムや、夜にしか現れない屋台ラーメンなど、様々な業態へと進化してきたラーメン屋ですが、意外にも日本での歴史は浅く、江戸時代に徳川光圀が中国からの献上品として食べたことがきっかけで、中国から伝わったとされています。
それが今や、日本を代表する食文化。東京だけでも4,500店舗ものラーメン屋があるそうです。愚直に技を磨き上げてきた職人が、惜しみない労力を掛けて作る1杯のラーメン。その職人の技に湯切りあり。
番組では、究極の逸品を求めた職人たちの、一瞬に秘められた湯切りの技を紹介しています。
- 天空落とし(AIR JORDAN)
- 華厳の滝(KEGON FALLS)
- 燕返し(SWALLOW GAESHI)
英語訳にクスッとしますが、技は本物です。
後半では、店舗で作られる以前のスープの原料となる片口鰯の煮干しの加工や、小豆島での醤油の製造工程などの詳しい説明もあり、ラーメン1杯が出来るまでの生産の流れをイメージすることができます。その他、九州の長浜漁港で誕生した、注文から1分ほどで提供するための細麺のファストラーメン、長浜ラーメンが、替え玉システムの原点であることなど、教養もしっかり身につきます。
2. ジャパンデザイン _#4 伝統を守り抜くがゆえの変化
2本目は、第4回放送の、日常の暮らしの中にある美、日本の伝統的なデザインについてです。
日本の伝統的なデザインは、寸分の狂いなく刻まれる江戸切子の模様が、実は東京スカイツリーの構造に取り入れられていたりと、ただ受け継ぐだけでなく、高度な技術に支えられ、時代と共に進化を続けてきました。番組前半では、江戸切子やうちわ、和傘といった伝統工芸品が登場し、日本の伝統美の概要が紹介されています。
番組中盤で取り上げられるのは、鉄瓶とフェラーリ。この2つのデザインに宿るのが、切捨ての美という日本の精神です。
鉄瓶で言えば、口の角度、塗料の厚みなど、複数の要素を洗練させて完成度を高めていくと結果としてシンプルになっていく。フェラーリも同じで、時速300kmでも摩擦抵抗少なく、かつ地面に貼りつくように計算された絶妙なデザインのすべての線には理由があるのです。
東北新幹線のデザインにも、トンネルを抜ける時の風切り音を低減させるために、断面積の変化率を一定に保ちつつ、窓やライトの出っこみ引っこみの曲線を何度も引き直すことで生まれる、機能美が宿っています。
これらのデザイナーである奥山清行さんは、出身山形の工房との共作も多く、番組では以前この記事で紹介した天童木工も登場します。
その他にも後半では、CADを用いてデザインされた木桶のシャンパンクーラー、モダンなテキスタイルデザインと織り機の改良で製品分野を広げている西陣織、北欧デザイナーとコラボした茶筒メーカーの、伝統を次の時代に渡す数々の試みが紹介されています。
茶筒メーカーの開化堂は以前こちらの記事でも紹介しました。
・有職組紐 道明
・波璃匠 山田硝子
・京うちわ 阿以波
・御蒔絵 やまうち
・KEN OKUYAMA DESIGN
・菊地保寿堂
・オリエンタルカーペット
・天童木工
・中川木工芸 比良工房
・細尾
・カイカドウカフェ
・印傳屋上原勇七
・仙台メディアテーク
・伊東豊雄建築設計事務所
・体験学習施設ぐりんぐりん
3. 日本酒 _#10 自然との対話で生まれた伝統と革新
最後は、第10回放送の日本人の主食、米を原料にした日本酒です。そのルーツは、農耕文化と深く結び付き、五穀豊穣を願って神に奉納したことにさかのぼるとされています。なぜ、お米から華やかな香りと味のお酒が生まれるのでしょうか。
日本酒の三大要素は、豊かな大地で育った米と清らかな水、そして米を酒に変貌させる菌(発酵)です。日本では「杜氏(とうじ)」と呼ばれる船の船頭のように蔵を導く、絶対的なリーダーの存在が、酒作りの全てを担ってきました。
番組では、伝統を守りつつ、進化を続ける酒蔵を巡りながら、日本酒の生産プロセスとそこに宿る精神を丁寧に描かれています。近年は化学的に証明されてきたその合理的なプロセスは、日本の自然と、発酵を促す微生物の存在すら知らなかった先人達の、何百年もの試行錯誤によって生まれた伝統の技法です。
後半には、伝統を尊重しながらも、米を磨かずに、米本来の旨味を引き出す技法で、日本酒業界にルネサンスを起こす新政酒造も登場します。協会6号酵母と地元のお米にこだわり、科学的に追求された酒造りを蔵の映像とともに知ることできます。
全編を通して使われている“美しくも、愚かしい”という言葉があります。これはかつて岡倉天心が日本の美意識を表した言葉で、禅における「愚」、つまり自分をからっぽにして、広大無辺な精神世界に真理を見出す、日本の心を表現しています。独自の世界観で広がりをみせる、日本文化をこれからも大切にしていきたいですね。