[山口 周×波頭 亮] 文化・アートをRethinkせよ【後編】(Rethink Japan)

blue Art neon sign turned on ハッとさせられる考え方・哲学


経済メディアであるNewspicksのオリジナルコンテンツ、Rethink Japan

前編では、その第2回「文化・アート」の中から、先進国の経済の実情とこれからの価値の生まれ方について要約してきました。

この後編では、さらに番組の内容から“これからの未来” について、山口周さん、波頭亮さんの発言を議事録的に要約します。

お二方の示唆にとんだ発言は、私たちの暮らしを見直すきっかけになりますよ。

 

person taking picture of man wearing brown hat painting

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1. 応援経済が価値を創造する


まずは前回の続きで、現代における価値創造の事例をさらに紹介したいと思います。

世界の長者番付の上位2位(ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ)は便利の帝王だが、3位のベルナール・アルノーLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のCEO)は意味の帝王。

これは、オリジナリティーにとにかくこだわれば、世界に売り出せるという成功事例だが、そこには民度も関係してくる。

ブルネロ・クチネリというイタリアのブランドは、羊から育てて服を作っている。
通常であれば、資本の圧力で合理的で経済的な科学繊維に移行してしまうが、その企業理念に共感する人たちがそれを買うといった応援経済になっている。

京都の茶筒の開化堂も、戦後の経済成長の中で経営的に苦しく、工場生産へのシフトを考えたが、京都のお茶屋から買うからそれはやめてくれと言われて、伝統が守られてきた経緯がある。

この事例のように、日本は小さなアメリカを目指すのではなく、オランダや北欧諸国のように、アメリカ的な経済価値とは違う、例えばIKEAのように文化的な価値観を売りにするべき

日本的なモノの価値や憧れを認識して、無形資産が残っているうちに、小さなアメリカという見せ方ではない、かつてマッカーサーが言ったような“東洋のスイスたれ”というブランディングが大事。

開化堂の茶筒。使い込むほど味が出ます。出典:Kaikado blog

資本経済社会の中にも、こんな事例があるんですね。

最近クラウドファンディングをはじめとした“ファンビジネス”が増えてきたことは、この事例と似たようなことが起きやすい状況を作り出しているので、いい方向に向かっていますよね。

 

2. テクノロジーと物語の時代


ここからは、いよいよ「アート・文化」の回の核心に迫っていきます。

経済や政治的な合理性ではなく、これからはテクノロジーと物語が時代をつくる。

世の中の軸に置かれるのは、定量的なものでロジックで妥当性が固められたものは扱いやすいが、理性ではなく情感をつかむような普遍性のある物語性が大事。

自分なりの物語が掴める人が増えていけば、GDPを名目的に増やすことが意味ないと言えるようになる。

単線的なものさし(GDP、血糖値)でパフォーマンスを測るということは、キャッチアップ式の成長を目指していた時には役立ったが、これからは複数のものさしを持つことが豊かさに繋がる時代。

自分にとってはこれが大事というものを自信を持って選べる自己効力感、自己肯定感が大事。

あなたはどう自分らしい人生を生きたいのか、ということを問われる時代

大切なのは、どういう生き方が自分にとってハッピーで、生きるにたる人生かを見つける能力。

自分の物語を生きる。

すごく難しい話になってきました。

「みんな自分勝手に生きたら社会が崩壊するから、我慢する必要があるんじゃないの?」

と思われた方、どうやらそうでもないみたいですよ。

 

3. 経済から解き放たれた未来とは


仮に月20万円くらいのベーシックインカムが導入されたときに人は何をするか。

まず、ブルシット・ジョブはやらない。

かといって人間は休まない。イノベージョン、クリエーション、他者への貢献といった共感をつっつくことを積極的にするようになる。

これらはボラティリティが高い。ほとんどの人は失敗するがその差は運でしかない。

しかし対数の法則が働き、トライアルの数は増えれば成功する確率は上がるはずで、国民全員が好きなことをやるとトータルのアウトカム(価値の創造)は増えるのではないか。

ただし、多様性は広ければ広い方がいいが、個人にできることは有限であるため、興味のあることを食い散らすだけなこうなことにはなってほしくない。

もっと豊かに生きていくには、食・酒・家具・絵画・植物・ファッション…といったすべての文化的な活動によって心が動く感覚に素直に反応すること。

ウィリアム・モリスは、自分が心地いいと思えるもの以外部屋に置くなということを言っている。

安い、便利ということではレベルの高い消費経済は難しい。

資本という主人が、市場を使って再分配しているところから逃れることが大事。

楽しいと思える仕事をやるということと、残って欲しいと思えるものにできるだけお金を使うこと

言われてみれば正論ですが、

「そうしたいのはやまやまだけど、実際はそんな風にはできない!」

と思われた方もいますよね?

最後に、自分らしく生きるための心構えについて触れておきます。

 

4. アーティストのように生きろ


man wearing white shirt painting a wall 

自分らしい人生を生きる上で、2つの立場の取り方が大事。

全てのビジネスマンはアーティストの気持ちで、消費するときはパトロンになった気持ちで。

今はまだ人の生活が、経済活動の生産性を向上させるための部品にされているが、これからは文化的な要素を重視して仕事や住む場所を決めるべきで、“ハッピーに暮らすためには経済も大事だから、資本主義や企業を使って財を生産している”という気持ちに転換すればいい。

市場経済の中で削ぎ落としてきたものを、もう一度包摂して人としてのライフを作る。

アートのいいところは、答えが一点に修練しないところ。何がいいと思えるかは多様。

日本のアートへの投資は、アメリカの1/7以下、寄付も1/15と低い。日本は文化的なものを楽しむ余裕が少ない。

こうした行動は、追加で100万円年収を上げるよりはずっと幸せになれる可能性が高い。

アートに心が動かない人も、ランニングを始めてみたらどんどん走りたくなるかもしれない。

何をした時に心が動いたか、セルフ・リフレクションをきちんと心に留めること。

高級車、高級マンションなどの成功モデルを追っても幸せにはなれないし、人も世の中も変化していくもの。

答えは内側にしかない。

頑なにならずに、しなやかに自分と向き合い、定量と収益あるいは効率から離れること。

経済に衝動を。

絶対に儲からないということをやっても仕方ないかもしれないが、みんながやらずにいられないことをすれば世の中が面白くなるのでは。


以上2回に渡って、疲弊した資本経済からの脱却と、アート・文化での価値創造、その心構えについて山口周さん、波頭亮さんの考えを要約してきました。

この記事の内容が、みなさんの生き方・暮らしを見直すきっかけになれば幸いです。

興味のある方は、以下動画から本編もご覧ください。

登壇者紹介

出典:brain.co.jp

山口 周(やまぐち しゅう)
電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活躍。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』などの著書がある。

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