ドイツ人と聞いて、どんな印象を受けますか?
この記事では、熊谷徹さんの書籍「ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか」を紹介します。
一般的にドイツ人は日本人に比べて、
- 質素で倹約家が多い
- 消費に重きを置かない
- 1年間の平均可処分所得は約290万円前後
といった特徴があります。
それでもドイツの生活には日本では感じることのできない、一種の豊かさがあります。もちろんドイツの社会保障制度が日本よりも手厚いことは人々の暮らしに余裕を与えています。
しかし、要因はそれだけではありません。人の考え方や行動の仕方にも理由があります。
本書はドイツに住み始めて29年目になる著者が、生活の中で強く感じた”ドイツ人のお金では測れない豊かさ”を実現したいという考えをもとに書いています。
ドイツ人の生き方や社会の仕組みの中には、私たち日本人の暮らしをより豊かにするためのヒントが隠れています。
それではさっそく、その中身を見ていきましょう!
1. 290万円で生きるドイツ人の質素で豊かな生活術
まずは、年収290万円で充実した生活を楽しむドイツ人の特徴に焦点を当て、その秘訣を解説します。
彼らは質素でありながら豊かな生活を実現し、休日もお金をかけずに充実感を味わっています。その理由について、以下の3つのポイントを詳しく説明します。
質素ながら豊かな生活
まず、質素ながら豊かな生活を実現するために、ドイツ人の個人主義が大きな役割を果たしています。
彼らは他人の評価に左右されず、外見よりも内面を重視します。
その一例が、ファッションです。ドイツ人は一般的に、日本人に比べて服装にあまり気を使いません。特に男性は、スーツやきちんとした服装を着るのは特別な場面やビジネスの場でのみで、最近では大手企業でもポロシャツにジーンズ、スニーカー姿の人々が増えています。
ドイツ社会では、外見よりも中身が評価され、ファッションに無頓着な姿勢が広がっています。
また、食事においてもドイツ人は質素な生活を好む傾向があり、夕食には火を使わない簡単な食事が一般的です。
多くの家庭で、夫妻が平日に仕事で忙しいため、夕食はパンやハム、チーズなどの簡便な食事で済ませることが多いようです。
休日もお金をかけない
ドイツ人は休日を楽しむ際にも、あまりお金をかけない傾向があります。
サイクリング、散歩、公園での読書、日光浴など、費用のかからないアクティビティが一般的です。
例えば、ミュンヘンには約3.75平方メートルの広大な英国庭園があり、夏の週末には多くの人がこの庭園でリラックスします。
ドイツの日照時間は日本に比べて短いため、太陽の光を浴びることが贅沢とされ、自然を楽しむことが娯楽の一部となっています。
映画館やショッピングなどを好む日本と異なり、ドイツ人は休日にお金をかけずに楽しむことの比重が高く、生活の中での消費が抑えられています。
低賃金でも心豊かなドイツ人の秘密
低賃金でも、なぜドイツ人は豊かな心を持つことができるのでしょうか?
2018年に発表された統計によると、2017年の平均的な一人当たりの年間可処分所得は、約2万2657ユーロで、これは日本円で約294万5410円。
1ヵ月あたりの収入は、約25万円です。
多くのドイツ人が質素な生活を好む理由の一つは、この可処分所得が比較的低いことに起因しています。
ドイツの労働者は健康保険、年金保険、失業保険、介護保険などに加入しなければならず、給与からは様々な税金や社会保険料が差し引かれるため、手元に残る金額は実際の収入の半分程度になります。
また、ドイツは社会福祉制度が手厚く、公的な年金保険や健康保険の保険料率が高いため、所得から多くのお金が天引きされます。他にも、ドイツには日本には存在しない税金もあります。
もちろん、富裕層も存在しますが、その割合はわずか0.02%であり、富裕層の収入は国全体の収入の5.7%を占めます。
また、ドイツでも所得格差は広がっており、低賃金層の人々が生活に苦しむことは事実です。ただし、全体的に日本と比べてゆとりを持って生活していることが、さまざまな世論調査の結果からも明らかになっています。
例えば、統計ポータル「スタティスタ」によると、2017年の秋に行われたアンケート調査で、自分の生活に満足しているかという問いに対して、”非常に満足している”か”かなり満足している”と答えた人の割合は、93%に達しました。
これに対し、日本の内閣府が2017年に発表した世論調査の結果では、”生活に満足している”と答えた市民の割合はドイツよりも20ポイント近く低い73.9%でした。
さらに、時間的なゆとりに関しても、格差が顕著です。2018年にドイツ連邦統計局が発表したアンケート調査によると、2016年時点での就業者の90.7%が現在の労働時間に満足していると回答しました。
これは、ワークライフバランスが取れていると感じていることを示しています。
一方、日本の内閣府の世論調査では、生活の中で時間的なゆとりを感じている人は68.6%に過ぎず、ドイツと比較して22ポイントも低い結果となりました。
結局のところ、低賃金でも心豊かな生活を楽しむドイツ人の秘密は、社会保障制度の手厚さや、彼らの考え方と行動の仕方に由来しているようです。
2. お金に縛られない働き方を実現する秘訣
次に、お金に縛られずに豊かな生活を送る方法について考えてみましょう。ここでは、お金がなくても大丈夫な理由について2つのポイントを紹介します。
静かな生活を大切にする
最初のポイントは、静かな生活を重要視することです。ドイツ人はお金だけが全てではないと考え、静かな環境を非常に大切にします。
商店街のスピーカーから流れる音楽や選挙期間中の宣伝、駅での列車のドアが閉まることを知らせる音楽、学校周辺の鳴り響くチャイムなど、ドイツにはほとんど存在しません。
ドイツ人は仕事の疲れを癒すために、静かな環境を重要視しているのです。
お金よりも自由な時間を大切にする
もう一つのポイントは、お金よりも自由な時間を大切にすることです。
多くのドイツ人は、プライベートな時間を確保することを重視し、給料を増やすために家族や友人と過ごす時間を削りたくありません。
また、管理職になってストレスの多い生活を避ける人も多いようです。
ドイツでは、日本と比べて過剰なサービスが少ないため、サービスの水準は全体的に低く、人々はお店やホテル、交通機関での不便を我慢しながら生活しています。そのため、他人に依存せず、自分で何事も行うことに慣れています。
企業やお店が過剰なサービスを提供しないことで、労働者や店員は負担が軽減され、自由な時間が増えます。
また、過剰なサービスを省くことで企業やお店は人件費を節約でき、商品やホテルなどの価格も割安にできるため、生活コストが低くなります。
つまり、サービスを意図的に低水準にすることで、お金に振り回されずに生活するメカニズムが存在しているのです。
ただし、ドイツにも質素な生活を好まない人々も存在します。大企業での出世を望む野心家もいますが、彼らは少数派です。
実際、ドイツの企業関係者の間では「ドイツの新しい通貨は、自由な時間だ」という考え方が広がっています。
これは、お金よりもプライベートな時間の方が重要だと考える人々が増えていることを示しています。
特に若い労働者の間では、賃金の増加よりも休暇の増加や時間短縮を求める人々が増えており、月給が上がらなくても家族と過ごす時間を重視する傾向が主流になりつつあります。
要するに、お金に縛られずに豊かな生活を楽しむための鍵は、静かな生活と自由な時間を大切にし、過剰なサービスに依存せずに自分の力で生活することにあると言えるでしょう。
3. ドイツ流・明るい質素生活
最後に、ドイツ流のお金をかけずに楽しむ方法、旅行費を節約する秘訣について紹介します。
お金をかけない娯楽が好き
最初のポイントは、お金をかけない娯楽が好きなことです。
日本では消費を娯楽として楽しむ人が多いですが、広告や音楽、宣伝文句に囲まれたショッピング体験は疲れてしまうこともあります。
このような消費文化は日本に限らず、アジア全般に共通して見られるものです。
一方、ドイツ人の娯楽は都会のショッピングではなく、自然を楽しむことや家族との時間を重視しています。
彼らが楽しむ娯楽として、サイクリング、自然の中での散歩、ジョギング、ウィンタースポーツなどが代表的です。自転車は特に人気で、自転車専用レーンが整備され、自転車で通勤する人も多いです。
また、ジョギングや散歩、ハイキングなども重要な余暇の過ごし方です。ドイツには大きな公園があり、そこでは野生動物を見ることもできます。
お金をかけずに自然の中でリフレッシュすることが、ドイツ人の生活に欠かせない一部となっています。
さらに、冬の娯楽としてスケートやカーリングに似た競技も楽しまれており、競技の後にはビールやワインを楽しむことが一つの楽しみになっています。
旅費倹約法
次に、旅費を節約するための方法についてです。
ドイツではホテル代を抑えるために、旅行先で知り合いの家に泊まることが一般的。住宅事情が良いため、多くの家庭がお客様を歓迎し、泊めてくれる準備を整えています。
日本と比べてお客様を自宅に泊める文化が浸透しており、訪問者を歓迎することに慣れています。
また、ヨーロッパでは国境を越えた長距離旅行において、車が最も割安な交通手段とされています。
特にキャンピングカーは人気があり、キッチン、冷蔵庫、テレビ、トイレなどが設備として備えられており、快適な旅行が楽しめます。
自家用車の燃料代はかかりますが、航空券やホテル代を節約できるため、経済的な利点があります。
今回紹介した、熊谷徹さんの書籍「ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか」日本人にも参考になる点が多くあり、興味を持った方はぜひ本書を手に取って詳しく読んでみてください!