ビジネスにおいて課題を設定することは欠かせませんが、その方法に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
そこで、今回紹介するのはAI×データ時代の必読書「イシューからはじめよ」です。
この良書は、ビジネスパーソンにとって成果を上げるための課題解決方法が、わかりやすく解説されています。著者の安宅和人(あたか かずと)さんは、慶応義塾大学教授、ヤフー株式会社CSO、データサイエンティスト協会理事といった豊富なキャリアを持つ天才です。最近では、「シン・ニホン」などの著書でも話題を呼んでいます。
本書では、課題解決のためのイシュー設定から、プレゼン資料作成まで、スムーズな流れで説明されています。あなたもこの本を読んで、ビジネスにおける課題をスマートに解決しましょう!
1. イシューとは白黒つけなければならない問題
本書のタイトルでもある“イシュー”。そもそもイシューとはどんな意味でしょうか?
著者は、次のように定義しています。
- 2つ以上の集団の間で、決着のついていない問題
- 根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
また違う視点から、次のようにも表現しています。
「知的な生産活動の目的地になること」
ここで言う、“知的な生産活動”とは何のことでしょうか?
それは“バリューのある仕事”で、「イシュー度」と「解の質」から成り立ちます。
- イシュー度:自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
- 解の質:そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
バリューのある仕事を生み出すとき、人はどうしても解の質ばかりを重視してしまいます。しかし、いくら解の質を高めたところで、バリューのある仕事を生み出すことはできません。
イシュー度を高めることが、バリューのある仕事へと直結します。また、バリューを生み出すためには、“何について答えを出し、白黒つけるのか”を明確にすることが必要です。
2. イシューを見極め選択する
では、どのようにイシューを組み立て、実行していけばよいのか?
まずは、イシューを見極めることから始まります。本当に解くべき問題を見極めるためには、簡単にでも仮説を立てることが必要です。仮説を立てることで、答えが出せるイシューか見極めることができたり、必要な情報や分析すべきことがわかったりと、そのイシューに対するスタンスが確立していきます。
仮説からイシューのスタンスが決まったら、それを言葉にしていきましょう。人は言葉にしない限り概念をまとめることができないので、「これがイシューかな?」と思ったら、とりあえず言語化します。以下は、イシューを見極める際のポイントです。
スタンスが明確で、常識を否定しているイシュー
イシューの設定で重要なことは、スタンスが曖昧なイシュー、常識的すぎるイシューは選ばないということです。
例えば、この商品に未来はあるのか?といった、掴みどころのないスタンスが曖昧なイシューだと、仮説検証するために網羅的に世間の全ての情報を調べる必要があり、作業が膨大になります。仮にこの問いに答えが出ても、その解には具体的な行動や方法が伴わないことが多く、仕事が前に進みません。
常識的すぎるイシューとは、例えば「この商品のブランド力を上げるべきか?」といった”YES“しか答えようのない問いのこと。そこから世の中のブランド戦略を調べても、なるほどブランド力って大事だよね!といった当たり前の答えにしかなりませんよね。これでは、仕事に何の変化も起きません。
良いイシューはこれらの逆で、スタンスが明確で、常識を否定しているものになります。例えば、この商品のターゲットは、若者よりも高齢者ではないか?などです。
また、加工されていない一次情報を仕入れることも大事です。これは、生産者や、販売員、購入者など加工されていない生の声のこと。誰かに加工・編集された二次・三次情報では、誰かの偏見などを受けた情報になってしまい、正確なものが得られない可能性があるからです。
3. イシューをサブイシューに分解し組み立てる
イシューを見極めたら、次にすべきことはイシュー分析です。これは、解の質を高め生産性を向上させる作業のこと。具体的には、「ストーリーライン」と「絵コンテ」を作ります。このイシュー分析によってイシューの構造が明らかになり、その中に潜むサブイシュー(イシューを構成する小さなイシュー)が洗い出され、それに沿った分析のイメージを作ることができます。活動の全体像を明らかにする作業と言えます。
ストーリーラインとは、ある問題を最終的な結論から前倒しして、どんな論理と分析によって検証できるか、後ろから考えることです。ここで、やるべきことは、分解し組み立てること。まず、イシューを漏れやダブりのない(MECE/ミーシー)本質的に意味のある塊に分解し、サブイシューを洗い出します。例えば、以下のとおりです。
イシュー:いま使っているスマホを買い替えるべきかどうか。
サブ・イシュー:
- 今のスマホは性能が不足しているかどうか。
- 買い替えようとしているスマホは性能が十分かどうか。
- 買い替えによってもたらされる利便性は買い替え費用に見合う効果があるかどうか。
- 買い替える資金が用意できるかどうか。
- 買い替えようとしているスマホを使いこなせるかどうか。
これらを「他人にこのイシューをしっかり伝えるためには、どの順番でサブ・イシューを並べるべきか?」と考え、組み立て直します。分解したイシューに基づきサブイシューを組み立てることで、ストーリーラインができるのです。
4. イシューを絵コンテにする
もう1つの作業は、絵コンテです。これは、ストーリーラインで浮き彫りとなった個々サブイシューに対して、必要な分析検証のイメージをまとめることを指します。やるべきステップは、次の3つです。
軸の整理
- 量や長さなど何らかの共通軸2つ以上で「比較」する
- 市場シェアやコスト費など全体と部分の構成を「比較」する
- 売上の推移、体重の推移などの変化で「比較」する
などの定量分析の型を使い、分析の枠組みを作りましょう。
イメージを具体化する
具体的な数字を入れて、分析・検討・結果のイメージを作りましょう。数字の入ったチャート(グラフ)を描くことで、「このあたりの軸の取り方が必要になる」と、仮説の意味合いをはっきりさせることができます。
方法を明示する
「どうやってそのデータを取るのか」という方法を明示しましょう。どんな分析手法を使ってどんな比較にするか、どんな情報源から情報を得るのかを考えます。
これら3つのステップを踏むことで、絵コンテを書くことができます。
5. 答えありきのアウトプットをしない
イシューを設定し、ストーリーラインを作り、絵コンテをつくったら、次は実際に分析を行う“アウトプット”の段階です。ここでは限られた時間の中で、本当に価値のあるアウトプットを効率的に生み出すことを目指します。そのための注意点は、いきなり分析や検証を始めないということ。なぜなら、これらがずれるとすべてが総崩れとなるからです。
総崩れを防ぐためには、イシューから考えることと答えありきなことを混同しないことです。人はどうしても分析や検証を行っていくと、自分たちの仮説が正しいと言える情報ばかりを集めがち。自分たちの仮説が正しい = 答えありきで考えてしまうと、フェアな視点で検証できなくなります。イシューから始める課題の分析とアウトプットは、答えありきのものとそうでないものを切り分けて考えることを意識しましょう。
6. 知的生産のための最終段階「まとめ」
最後の仕上げは、イシューに沿ったメッセージを他人に強く伝えることです。
ここでの目的は、単に資料や論文を作るのではなく、人の心にインパクトを与え、価値を納得させ、本当に意味のある結果を生み出してもらうこと。そのためには、メッセージの受け手が同じ目的意識を持ち、同じように納得して行動に移してもらう必要があります。
そこで行うのが、ストーリーラインの構造を磨きと、チャートを精査することです。ストーリーラインの構造を磨くには、すっきりとした論理構造になっているか再考し、流れの悪いところはないか見直します。より端的に説明できるかを確認しましょう。
チャートを精査するには、そのチャートに即していてチャートの縦と横軸の広がりが明確であり、それらが伝えたいメッセージをサポートしていることが条件となります。受け手は「賢いが無知」と心に留め、何に答えを出すのか?という課題意識を全面に押し出しましょう。要するに、最終段階で行うのは「本質的」「シンプル」という2つの視点からイシューを見直すということです。
以上、簡単ではありますが安宅和人(あたか かずと)さんの「イシューからはじめよ」のポイントを紹介しました。この記事では、重要なところに絞って解説してきましたが、これを機会にぜひ本書を手にとって読んでみでください!