あなたにも、今すぐ睡眠の質を改善することの素晴らしさを実感してほしい。
その先には、輝く人生が待っているのだから。
ーー著者
この記事では、前野博之さんの書籍「成功する人ほどよく寝ている 最強の睡眠に変える食習慣」を取り上げます。
本書は、
- 睡眠に悩みを抱えている
- 今まで睡眠と食事の関係を考えたことがない
という方に、おすすめです。
睡眠が大事なことは、多くの方が実感していること。一方で、睡眠と栄養の関係についてはあまり知られていないと思います。
対して本書では、睡眠を改善するポイントは栄養素にあると主張し、あまり関連して語られることのない睡眠と栄養の関係について詳しく教えてくれます。
良質な睡眠を摂りたいと思っている人は、ぜひ読んでみてください!
1. なぜできる人は睡眠にこだわるのか?
まずは、なぜできる人は睡眠にこだわるのかというテーマについて、本書から3つのポイントを解説していきます。
睡眠負債を今すぐチェック
日本のビジネスパーソンは、日々自分の睡眠時間を削りながら、コーヒーやエナジードリンクで、パフォーマンスを最大限上げようと努力します。
著者自身、サラリーマンだった頃は、朝7時半に出社し夜9時に退社、毎日5時間睡眠。残業が多い時は、3~4時間睡眠も当たり前だったそうです。
昼食後は会議室で15分昼寝しても午後には睡魔に襲われ、パフォーマンスが上がらずに、そのまま夕方にはエネルギー切れ。休日は昼間で寝て、1日があっという間に過ぎてしまうといった、なかなか悲惨な日々。
そうしているうちに、体調が悪化していったそうです。このような日常が他人事でない人も多いのではないでしょうか?
まずは、睡眠が足りていない“睡眠負債”の状態に陥っていないか、睡眠栄養指導士協会が作成した以下のチェックリストで確認してみてください。
- 寝つきは5分以内である
- 朝スッキリ起きられず、もっと寝ていたいのに…と思いながら目覚める
- 午前中は集中力が低く、仕事がはかどらない
- 電車で座れたら、うたた寝をしてしまう
- 休みの日に予定がなければ、平日より2時間以上長く寝てしまう
- 風邪などを引きやすく、治るのに時間がかかる
- 会議中は眠気と戦うことが少なくない
- ソファーなどで気がついたら寝ていたことが週2回以上ある
- 眠気覚まし用のガムやタブレット、カフェイン飲料が手放せない
- 年間3キロ以上体重が増えている
これらの中から2つ以上当てはまった人は要注意、5つ以上は早急に対策が必要です。
もし7つ以上当てはまってしまったら、メンタルヘルスに影響が出る可能性があるので、ゆっくり休める時間を大至急設定してほしいと著者は言います。
この状態のまま無理をすると、うつ病などを発症し、長期休暇を取る事態にもなりかねません。
睡眠不足はうつ病の温床
近年、うつ病の患者が増加し続けています。
働き盛りのうつ病と睡眠時間には、密接な関係があります。
図3では、30代・50代・70代でうつ症状が最も少ないのが、7~8時間の睡眠をとっている時だと示されています。
また、図4では15歳以上の仕事を持っている人を対象とした調査で、年々日本人の睡眠時間が減っていくに従い、躁鬱病を含む気分障害の患者数が上昇していることがわかります。
もしうつ病を発症し、長期化した場合、会社からの給与賞与は原則支払われなくなります。
社会保障の傷病手当金の制度を活用すれば、給与額の2/3は受け取れますが、自分自身だけでなく家族の生活にも多大な影響を与えることは間違いないでしょう。
また、経営者サイドから見た場合にも大きな損失になります。
年収500万円の従業員が1年間休職した場合の損失額は約1,500万円と、従業員の年収の3倍にもなるとの試算が出ており、経営リスクとしても無視でません。
グローバル企業トップの睡眠時間
うつ病にまでならなくとも、睡眠不足は問題になります。
アメリカのペンシルベニア大学とオーストラリアの研究機関の報告によると、6時間睡眠を10日間続けると、なんとウイスキーをショットグラスに4杯飲んだ時と同じ程度に集中力が低下することが分かったそうです。
睡眠不足は徐々に習慣化してしまうと、今より高いパフォーマンスを出せていたことを忘れている可能性があるということです。
もし会議にウイスキーを飲んで出席している社員がいたとしたらどう思いますか?
部下や同僚の睡眠時間を聞いて、もし6時間眠れたら良い方という人がいたら、それはウイスキーを飲んで出社しているようなもの。
その社員に仕事を任せようと思うでしょうか?
実際、アメリカの大手企業の経営者たちはビジネスで最大限のパフォーマンスを発揮できるように、十分な睡眠時間を確保しています。
Microsoft CEOのサティア・ナダラは、8時間眠った時が最も調子が良いと答え、Amazon CEOのジェフ・ベゾスは8時間眠ると注意力が高まり、思考がはっきりする。
Google元会長兼CEOのエリック・シュミットは、毎晩8時間半の睡眠をとると答えています。
集中力を高め、ハイパフォーマンスを維持してくれるのは根性ではなく、睡眠です。
理想的な睡眠時間は、7~8時間程度です。ビジネスのパフォーマンスを向上させるためにも最低7時間は睡眠時間を確保するようにしましょう。
2. 寝つきが悪い原因と対策
ここからは、寝付きが悪い原因と対策について、本書から3つのポイントを解説していきます。
メラトニンを増やす方法
布団には入ったものの全く眠気を催さず、あれこれ考えているうちに仕事や対人関係の悩みが気になり、さらに頭が冴えてしまうといった経験のある人も多いと思います。
この寝付きが悪いことの原因は、大きく分けると8つあります。
- 偏食による睡眠ホルモンの不足
- 緊張が続く交感神経の過活動
- 脳が休息できない
- スマホ依存
- 体内時計を生み出す人工の光り
- 眠気を止めるカフェイン
- 眠気を消し去る深部体温が下がらない冷え性
- 眠りの質を下げる室内温度
この8つの原因の中から、今回は1つ目の偏食による睡眠ホルモン不足を解説します。
8つの原因の中で最も響が大きいにも関わらず、一般的にあまり知られていないのが、睡眠ホルモンと言われるメラトニンの不足です。
メラトニンは眠りのスイッチを入れるために深部体温を下げるだけでなく、ノンレム睡眠やレム睡眠の波も作る働きがあり、睡眠の質の改善には欠かせないホルモン。
これを増やす方法は、睡眠ホルモンの基となるタンパク質を十分摂ることです。
材料となる栄養素が不足すると、当然その分泌量は下がります。すると、深部体温が下がらず、眠れなくなってしまいます。
よって、メラトニンの材料としての栄養補給はとても重要。
では、何の栄養素を、どのタイミングで取るのがよいのでしょうか?
メラトニンを増やすには、タンパク質の摂取が欠かせません。その中でもトリプトファンというアミノ酸を含むタンパク質はメラトニンの原料です。
また、メラトニンは暗くなり始めたことを脳内の光センサーが感知することで、分泌され始めます。
摂取したもので分泌が開始されるまでには、14~16時間程度かかるので、夜0時に寝る場合では朝の8時に栄養素を摂る必要があります。
夜にメラトニンをしっかり分泌するためには、朝食でしっかりタンパク質を摂ることが大切です。
しかし、タンパク質を取るだけではメラトニンは合成できません。
タンパク質がセロトニンに変化し、さらにメラトニンへと変化するという流れを取るため、葉酸・ナイアシン・鉄・ビタミンB6・マグネシウムなどの栄養素が存在しないと、変化が途中で止まってしまうので注意です。
睡眠を改善する朝食
栄養素は全てが助け合いチームとして働くので、肉や魚、卵、豆腐などのタンパク質だけでなく、他にもいろいろな食材を食べる必要があります。
また、メラトニンの一部は腸で生成されるので、腸内環境を整える食材を食べることも重要です。
おすすめは、伝統的な日本の朝食。
例えば、ワカメときのこの味噌汁、焼き鮭、ひじきの煮物、納豆、焼き海苔、少量の玄米ご飯といった献立です。それぞれ、どの食品にどの栄養素が含まれているのかを示しておきます。
- トリプトファンを多く含むタンパク質:マグロの赤身、鮭、豚ロース、鶏胸肉、納豆
- 葉酸:焼き海苔
- ナイアシン:キノコ類
- 鉄:あさり、ひじき
- ビタミンB6:鮭、さんま、鶏胸肉、ささみ
- マグネシウム:ひじき、昆布、わかめ
- 糖質:玄米
これらを全て摂取できる昔ながらの日本の朝食は、睡眠の観点からも優れています。
朝日を浴びて合成を促す
また、日が沈んで暗くなるとメラトニンは作られますが、その前にやっておく大事なこととして、メラトニンの元となるセロトニンの合成があります。
セロトニンを合成するためには、日光を浴びる必要があります。
いくら朝食で栄養をとっても、朝日を浴びないとセロトニンの合成量が減ります。セロトニンが減れば、結果としてメラトニンの量も減るので、朝日を浴びることは良質な睡眠に欠かせません。
体内時計が最も敏感に太陽光に反応するのは午前6時~8時半なので、通勤時間を利用して、この間に少なくとも30分程度は屋外で直接日光を浴び、体内時計をリセットしましょう。
それがきっかけとなり、摂取した栄養素が14~16時間かけてメラトニンに変化します。
朝の通勤時間に30分の時間が取れない人は、せめて休憩時間くらいは外に出て直接日光を浴びることをおすすめします。
3. 寝起きが辛い原因と対策
最後に、寝起きが辛い原因と対策について、3つのポイントを解説します。
現代人に多い副腎疲労症候群
寝起きが辛い原因は主に2つです。
- 負債がたまり続ける睡眠不足の現代人に多い
- 副腎疲労症候群
ここでは、特に2番目の現代人に多い、副腎疲労症候群について紹介します。副腎が疲労すると、朝に上昇するはずの副腎皮質ホルモン「コルチゾール」が上昇せず、寝起きが辛くなります。
コルチゾールは、ストレスと戦う高ストレスホルモンとしての働きます。
それだけでなく、朝起き上がりに動くためのエネルギーをもたらしたり、眠りから覚醒し機敏に動けるようにしたり、精神力・集中力・やる気をもたらしてくれたりもします。
要するに、コルチゾールは体に気合を入れてくれるホルモンだということです。
では、そんな大切な副腎が疲労するのはなぜでしょうか?
副腎は怪我や病気、仕事や対人関係の問題に至るまで、ありとあらゆるストレス源に体が対処し、生き延びることができるように助けてくれる臓器。
私たちの太古の祖先のストレスは、肉食動物に襲われた際の怪我や感染症、飢餓、肉親の死など、自然界で突発的に起きることが中心でしたが、現代では仕事やお金などの何年にも渡って続くものに変化しているため、副腎の仕事量が飛躍的に増大しています。
現代に生きる私たちは、24時間副腎を酷使しながら暮らしていると言えるのです。
副腎を疲労させるストレスは、次のように様々です。気になる人はこのチェックリストを確認してみてください。
この中に心当たりの症状が何個かある場合、副腎が疲労している可能性が高いと言えます。
不適切な食品を避ける
では、副腎の疲労への対策を説明していきます。
一つ目は、不適切な食品を避けること。以下の食品は副腎が披露した状態の体に大きな負担になります。
- 糖質を多く含むもの:砂糖、白米、清涼飲料水、果糖が含まれた野菜ジュース
- グルテンを含むもの:パンケーキ、クッキー、ドーナツ、うどん、ラーメン
- カゼインを含むもの:牛乳、乳製品
- カフェインを含むもの:チョコレート、コーヒー、エナジードリンク
- 人工的な油を含むもの:ショートニング、マーガリン、トランス脂肪酸を含む食品、市販の揚げ物、スナック菓子
- カリウムを含むもの:バナナ、オレンジ、グレープフルーツ、メロン、キウイ
- その他:アルコール
特に注意したいのは、小麦や牛乳です人によっては小麦に含まれるグルテンや、牛乳に含まれるカゼインによって、腸の粘膜に炎症が起き、腸内環境が悪化して粘膜の細胞の隙間が空いてしまう、「リーキー型症候群」の状態になることがあります。
そうなると、炎症によるストレスで副腎が弱るだけでなく、様々な食品が未消化の状態で血液中に吸収され、それらがアレルギーの原因となる可能性もあります。
また、牛乳や乳製品に関してはカゼインの問題だけでなく、白人の50%黒人の90%、アジア人のほぼ全員が牛乳に含まれるラクトースを消化できない、乳糖不耐性と言われています。
摂りすぎると、腸に負担をかけてしまう人もいるので注意してください。
回復に必要な食品を摂る
もう一つの対策が、回復に必要な食品を摂ることです。
副腎の回復を促す食品は体に良いものなので、最後の塩分補給は除いて、以下の食品は普段の生活から意識して摂ってみるのをおすすめします。
- タンパク質:牛肉、豚肉、鶏肉、魚、大豆などの良質のタンパク質は副腎の回復に必須です。
- 脂肪:エゴマ油、亜麻仁油は熱を加えずに、そのまま摂取。
- EPA&DHAといった良質な油:小型の青魚、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、クルミなどの素揚げのナッツ類も有効。
- 炭水化物:オーガニックの玄米、全粒小麦、特にスペルト小麦はグルテンが少ないのでおすすめ。蕎麦やキヌアも有効。
- 野菜:全般的にたくさん摂る。色の濃い野菜(黄・赤・紫・緑)をしっかり摂ることが大切。可能であればオーガニックの素材。
- 塩分:副腎疲労の状態だと体液内のナトリウムが枯渇するので、塩分補給は重要。
これらの食品をぜひ普段の食生活に取り入れてみてください。
- 年収500万円の従業員が1年間休職した場合の企業の損失額は約1,500万円
- 6時間睡眠を10日間続けると、ウイスキーのショットを4杯飲んだ時と同じ程度に集中力が低下する
- 睡眠ホルモンのメラトニンを泌するためには、朝食でしっかりタンパク質を摂ることが大切
- メラトニンの素となるセロトニンの合成ためには朝日を浴びる
- 現代に生きる私たちは、24時間副腎を酷使しながら暮らしている
- 小麦に含まれるグルテンや、牛乳に含まれるカゼインは摂りすぎに注意
今回紹介した、前野博之さんの書籍「成功する人ほどよく寝ている 最強の睡眠に変える食習慣」についてまだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本なので、ぜひ読んでみてください!