私は本気で考えています。日本の労働生産性はもっと上げられる。そのために、自分のキャリア全てを捧げようと柄にもなく、日々真剣にこんなことを考えて暮らしているのです。
この記事では、河野英太郎さんの「99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ 決定版」を紹介します。本書は、もっと仕事の生産性を上げたい、今日からでもすぐに試せるコツを知りたいという方におすすめの本です。
- 報告は枕詞が鍵である
- 会議は頻度・時間・人数を全て半分にできないか考える
- 名前出身地趣味を覚え、オフラインコミュニケーションをとることがチャンスにつながる
など、社会人1年目から今すぐに始められ、仕事をよりうまく回すためのコツを学ぶことができます。それでは早速中身をみていきましょう。
1. 報告のコツ
まずは仕事の基本、報告について本書から2つのコツを紹介します。
自信があるように振る舞う
組織で仕事をする際に欠かせないのが報告・連絡・相談の報連相。これには仕事がうまくいく、ちょっとしたコツがたくさんあります。その一つが、枕詞です。上司に報連相する前に、「すみません。まだ準備不足なのですが・・・」とか、「うまく言えないのですが・・・」などと、言い訳をしてしまうことはありませんか?
実はこれ、逆効果だと著者は言います。無意識にこうした枕詞を習慣として使っているならば、今すぐやめるべきです。著者は以前こんな実験をしたことがあるそうです。全く内容が同じメールの枕詞だけを、「まだ不十分ですが」と、「結構うまくまとまっていると思います」の2つにして、別々のグループに送るというものです。
結果はものの見事に反応が分かれ、「まだ不十分ですが」のメールには、寄ってたかって、もっと考えてから持ってこい!とか、こことここがダメだ!といったネガティブなコメントが返ってきたそうです。
一方で、「結構うまくまとまっていると思います」という冒頭でのメールには、「いいね!」「お見事!」「こうするともっといいかも!」といったポジティブなコメントが返ってきたそうです。
枕詞以降の内容は同じにも関わらず、反応は全く変わったのです。これは人間が持っている先入観によるもので、プライミング効果や予備ミス効果と呼ばれています。
効くと聞かされて薬を飲んだ場合と、薬と知らずに飲んだ場合の効果の違いに関するプラセボ実験が有名ですが、ビジネスでも自信があるという暗示を最初にかければ、相手からはポジティブな反応が返ってきやすくなるということです。
あえて自信満々に振る舞うことで、相手の反応をポジティブなものにし、自分自身の追い風にすることができる。裏を返せば、自信がなすそうに振る舞うと、わざわざ自分から逆風を作り出しているのです。余計な枕詞をつけることで、無駄な労力や時間をかける必要はないです。
聞かれたことに答える
上司に何か報告をすると、質問が返ってくることもあります。例えば、報告した時に、「それで、●●さんにアポイントは取れたの?」という質問が返ってきたら、どう答えますか?
この時「●●さんは出張らしいんですよ。」などと理由や背景から返事をしてしまう人が多いのではないでしょうか。
ひどい場合は「●●さん、さっき会ったら忙しそうで、話しかけようにもなかなかタイミングが合わなくて、部下が急に来なくなったらしいんですよ。」と、さらに周辺情報に迂回する人もいます。
そんな時、上司はこう考えています。「要するに、アポは取れたのが取れなかったのか。別の日に決まったのか、どうなんだ。早く教えてくれ!」と。
こうしたケースでは、質問者が一番聞きたいこと、つまりアポイントが取れたかどうかを最初に答えるのが最優先です。その後、必要に応じて周辺情報を話すようにしましょう。
つまり「はい、取れました。」もしくは「いいえ、取れませんでした。」から答えるべきです。場合によっては、「いいえ、取れませんでした。」という回答を受けて上司が「そうか、じゃあ○○さんや私から話そう。」と、別の判断を入れるかもしれません。その判断をしなければならない人にとっては、他の周辺情報は雑音でしかありません。
他にも、「何が言いたいんだ。」「どうして遅れたんだ。」といった質問に対して、素直に “何が” や “どうして” に回答せずに「すみません。」と、返してしまう人も多いのです。これも、火に油を注ぐことになりかねません。5W1Hの質問も、イエス / ノーで答える質問も、聞かれたことに最初に答えるのがルールです。
2. 会議のコツ
ここからは、会議のコツについて、本書から2つのポイントをピックアップして解説していきます。
会議8分の1の法則
日本の知識労働者の生産性が低いと言われる原因に、会議の長さがあります。特に、社内会議はその長さが気になると著者は言います。
会議を招集するときに常に心がける必要があるのが、1/8の法則です。会議の構成要素を所要時間、参加者数、開催頻度に分解します。それぞれを半分にできれば1/2×1/2×1/2で、組織が投入する総時間は1/8になるということです。
例えば、2時間の会議に20人が参加し、月に2度行われるとします。組織が会議に使う時間は2時間×20人×2回の80時間です。これらを全部1/2にすると1時間×10人×1回で、10時間となり、なんと70時間の削減となります。
この時間を、別の仕事に当てはめられれば、組織にとって大きな価値を生むでしょう。実際、著者がこれを提唱してから大企業を含む多くの組織で導入され、結果が出たそうです。
もし、自分が会議のリーダーになるときは、習慣化した会議のすべてで、これを試してみましょう。大抵の場合1/8になっても、組織運営には支障をきたしません。
目的とゴールを事前に共有する
一見活発に行われているように見える会議でも、話題があちらこちらに脱線したり、関係のない話題に時間が費やされたりすることは多いもの。
無駄な時間を過ごさないためにも、まずは会議の目的とゴールを事前に全員で共有することをおすすめします。目的がない会議なんてない、目的とゴールって違うのと思われた方もいるでしょう。
そこで、著者は目的とゴールを次のように定義しています。目的は最終的に実現すること、ゴールは目的が実現できている状態を図る基準です。例えば、毎週営業会議があったとしましょう。
目的は最新の売上状況を確認し、目標達成のために必要な対策を取ることとします。この会議におけるは、次の3つです。
- ゴール1:全週末の売上高と目標との差額の確認
- ゴール2:目標を満たす場合の問題と対応策の確認
- ゴール3:自習までの主な行動計画の確認
こうしたことが共有されないうちに会議が行われてしまうと、参加者がそれぞれ独自のイメージで参加することになるため、脱線が起こっても立ち返る場所が分からなくなります。
というより、そもそも目的とゴールを全員で共有していなければ、脱線さえも定義できません。脱線させている本人にとってはそれが脱線どころか、本線だったりします。
会議の目的とゴールが事前に参加者に共有されていないなら、会議は開くべきではありません。会議は事前準備がとても重要です。
3. コミュニケーションのコツ
最後に、コミュニケーションのコツついて、本書から3つのポイントをピックアップして解説していきます。
名前を覚える
英語圏の人たちは、挨拶の際に必ず相手の名前を呼びます。「Hey, John. Good morning!」といった感じです。場合によっては、相手の名前だけで挨拶替わりにします。実際に名前を呼ばれてみるとわかるのですが、単なる挨拶比べると、ぐっと親近感が湧くのを感じるでしょう。
日本では挨拶の時に名前を呼びかけると、何か特別な用事があるのかな?と思われてしまうので、日常的に挨拶の時に名前を呼ばないですが、初対面で名刺交換をした後に「●●さんはいかがですか?」とか、「今○○さんがおっしゃったように…」と、意図的に相手の名前を呼んでみてください。
これだけで、間違いなく心理的な距離が近づきます。実は著書は、名前を覚えるのが致命的なほど苦手なのだそうですが、名前を呼ぶことによる絶大的な効果を知っているため、日々人知れずある訓練を続けているそうです。
この訓練というのは、そこまで大それたものではなく、以前会ったことがある人とすれ違ったり、遠くで見かけたりしたら会話のあるなしに関わらず、必ず○○さんと具体的に名前を思い浮かべることを習慣にしているそうです。
たったこれだけのことを毎日続けるだけで、名前が記憶に定着し、同時にその人にまつわる周辺記憶も蘇ります。その人と会議をした時のテーマやプロジェクト、当時学んだことを思い出して記憶に定着させていると、すれ違った時にちょっとした会話のネタになったり、すぐに使える引き出しの一つになったりします。
オフィスですれ違うということは、近々一緒に仕事をするシグナルかもしれません。その時トップスピードでコミュニケーションが開始できるように、日々の訓練をしてみることをおすすめします。
相手のプロフィールに興味を持つ
相手の名前を覚えるだけでなく、プロフィールについても情報を持つようにするとコミュニケーションは、よりスムーズになります。これはできればそうした方がいいではなく、必ずそうするべきです。
例えば、出身地や趣味については常に覚えるようにしましょう。そうすると、その人への興味の幅が広がり、新聞やテレビでそれに関する情報が出たとき、普段気にしていない話題に関心が持て、またはその人に改めて声をかけるきっかけにもなります。
著者自身、大のジャイアンツファンの人に、今年のジャイアンツ強いですねと話したことをきっかけに、「実は最近こんなことで困っていて…」「こんな仕事を一緒にやりませんか?」という話が発展した経験があるそうです。
ちなみに、先ほど必ずそうするべきと述べたのは、その人の地雷となる話題、例えば天敵や宗教や国籍に関する情報などを避けられるといった理由もあります。
ただし、こうしたプロフィール情報は、必死に探し記憶せよというものでもありません。ちょっとした会話の中から相手のプロフィール情報を得たら、常に頭の引き出しにしまうことを意識するくらいで十分です。
著者は以前から、仲間やその家族の誕生日を覚えるのは得意だったそうです。その日が近づくと、相手のことを思い出してメールをするそうです。
たまに記憶違いで1日から数日外れることはありますが、それでもとても喜んでもらえますし、会話のきっかけになります。コミュニケーションのきっかけは些細なことでも十分です。
たまには飲みに行く
仕事を通じたコミュニケーションのみならず、日常的によりプライベートに近いところでコミュニケーションが図れると結果として仕事がうまくいくことがよくあります。
仕事以外での付き合いというとゴルフや車内サークル、最近ではSNSなどのオンラインツールを使ったカジュアルな交流などがありますが、これらを通じて日頃から仕事の部分でも交流を持っておくと、いざ仕事となった時に短時間で距離を縮めることが可能です。
食事会・飲み会も同様で、人間誰しも食事の時はリラックスするので、会社から離れたところでお互いに心を開き、信頼関係を築いておけると、仕事にも確実にプラスの作用が働きます。
普段は仕事の話しかしなかった相手と飲み会で一緒になった時、お互いに釣りが趣味であるとわかったら、その人との距離は一気に縮まるといったことがあると思います。またその後、何か新しい案件が発生したときに、それをあまり親しくない誰かよりも、あなたに頼みたいと思われる可能性が高まります。
惰性や付き合いであった飲み会も、コロナ禍で減ったことにより、数少ない有意義の飲み会の効果がより高まっています。
仕事関係の人とは仕事の上でのみ関わればいいと割り切る人も少なくないですが、こうしたオフラインコミュニケーションが新しい仕事、新しいチャンスを生むきっかけになることも覚えてにおいて損はないでしょう。
一度周りを見渡してみて、どれくらい半プライベートなコミュニケーションをしているかを振り返ってみるのもいいかもしれません。
今回紹介した、河野英太郎さんの「99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ 決定版」については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。もっと仕事のコツを知りたいと思った方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてください!