みなさんは未来の変化を的確に捉えていますか?
この記事では、「2030年の世界地図帳」を紹介します。本書は、メディアアーティストである落合陽一さんが、2030年の世界はどうなっているかについて幅広い分野を解説した内容になっています。
サブタイトルは、「新しい経済とSDGs未来への展望」 。現在と将来の課題を考えるにあたって、SDGsで挙げられている17項目をベースに、予測が進められていることが特徴です。もうひとつの特徴は、世界地図やグラフが多用され、ビジュアルによって分かりやすい形でデータの解説がされていることです。
今回は、本書から主なトピックを取り上げて解説をしていきます!
1. 2020年代の4つのイデオロギー
本書では、間もなく訪れる2020年代のデジタル社会を支配するイデオロギー(社会的理念)を次の4つの類型に分けています。それぞれ簡単に解説します。
アメリカン・デジタル
オープンソースなどをうまく利用したイノベーティブな帝国主義のこと。Google、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、マイクロソフトが代表的な企業です。
チャイニーズ・デジタル
国家を後ろ盾にした資金循環と情報統制の下でのイノベーションが特徴で、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイがこれに当たります。
ヨーロピアン・デジタル
伝統と文化を背景にした ブランド力によって顧客にアピールをする、LVMH、ロレックス、メルセデス・ベンツ、カールツァイスなどの企業があります。
サードウェーブ・デジタル
新種のイノベーションが一足飛びに生まれている地域で、タタモーターズ、Mペサなどが該当します。
これら4種類のデジタル・イデオロギーに分類される市場経済の行方は、2030年の世界を占ううえで極めて重要なトピックと言えます。
2. テクノロジーで変わる2050年までの世界
4つのイデオロギーを理解した上で、2050年までの間に画期的なイノベーションと、それに伴う社会改革が期待されるテクノロジーを見ていきましょう。
- AIとブロックチーンによる食品流通の管理で、フードロスがなくなる
- 農業が自動化され、人件費が縮小されることで成長産業になる
- 人工的に培養された「培養肉」が商用化される
- ゲノム編集技術で、遺伝病の克服が可能になる
- 太陽光発電などの再生エネルギーが増加する
- 住宅がスマートグリッド化し、電力の最適化が実現する
- 高精度な同時通訳が可能なAIによって、言語の障壁が下がる
以上のような分野で、画期的なイノベーションが起こることが期待されています。遅かれ早かれ、それぞれ少しずつ生活に浸透していますよね。
3. 人口の変化とGDPへの影響
現時点で世界最大となる約14億人の人口を誇る中国ですが、その数は今後10年以内に ピークを迎えると予測されています。2030年以降中国に代わり世界一になると言われているのが、インドです。
インドは経済発展に極めて有利な人口構成となっているのが特徴で、13億人のうち約半数を25歳未満が占めています。この膨大な若年層がもたらす人口ボーナスにより、インドは2050年までに生産と消費で 世界を支える経済大国になると予測されています。
インドのすぐ後ろに控えているのは、アフリカ諸国。アフリカ最大のナイジェリアの人口は2030年には2億6000万人。2050年には約4億人にまで増加し、アメリカを抜いて世界3位になると予測されています。
人口の変化によるGDPへの影響
インドは2030年にはGDPが世界3位になると予測されています。日本はインドに追い抜かれ、4位へと後退。5位以降はドイツ、イギリス、フランスとヨーロッパの先進国が続きますが、すぐ後ろにブラジルとインドネシアが迫っています。
そして2050年には、中国、アメリカ、インドは飛び抜けた超大国として君臨しています。日本はインドネシアに追い抜かれて5位に転落し、その後にはブラジルが迫っています。2030年中国のGDPはアメリカを抜いて、世界1位になると予測されています。
しかし、高度経済成長はそこでピークを迎え、それ以降は少子高齢化による国力の衰えと向き合うことになると言われています。
4. 貧困と格差
国際貧困ラインの1日1.9ドル未満で暮らす人々の数は、全世界で約7億3600万人。そのうち半数以上が、アフリカ諸国に暮らす人々です。一部の国では状況がかなり改善されたとはいえ、それでも絶対的貧困の中で暮らす人が多い国々はアフリカ大陸のサハラ砂漠以南に集中しています。
そして、貧困は開発途上国だけの問題ではありません。先進国に暮らしていて1日1.9ドル未満での生活を強いられている人は、ほとんどいないかもしれません。
しかし、先進国では物価が高く、人間関係は希薄で生活のインフラ依存度は高くなります。ある程度の収入がないと、健康的で文化的な人間らしい生活を維持することは難しいのです。
こうした先進国の内側にある貧困を相対的貧困と言います。いわゆる格差問題です。日本において相対的貧困層が占める割合は15.7%、OECD加盟国の平均は11.8%で、日本は先進国の中でも相対的貧困の割合が高い国となっています。
5. 今のままの生活を続けるなら、地球は1.7個必要
水資源が豊富が日本に暮らしていると、水不足の問題について考える機会はあまりありませんが、実は日本人は目に見えない形で大量の水資源を消費していると捉えることもできます。
例えば、1キロのトウモロコシを生産するには灌漑用水として1,800リットルの水が必要とされ、さらにそれを食べて育つ牛の肉には1キロあたり約2万倍の水が必要と言われています。この不可視の水資源のことを「バーチャル・ウォーター」と呼びます。
- 食糧生産のために必要な耕作地や牧草地
- 加熱処理や暖房・冷房に使用する燃料
- 紙や道具の原材料となる森林
- 排出した二酸化炭素の吸収のための緑地
- 廃棄物の浄化に必要な土地
というように、人間のあらゆる活動から必要とされる土地面積を逆算すると、先進国の多くは自国の国土面積を上回る計算になります。
現在の世界全体の人々の生活を支えるには、地球が1.7個分必要と言われており、すでに地球が吸収・浄化できる能力を超えてしまっているのです。
6. 「SDGs」というヨーロッパ式ゲーム
SDGsの達成状況のランキングを見ると、上位の国を欧州が独占していて10位まで全て西欧諸国が占めています。この結果は、SDGsがヨーロッパにとって有利なルールであるということを物語っています。ヨーロッパはその長い歴史の中で、現代社会を基礎づける概念を数多く生み出してきました。
民主主義、基本的人権、社会契約
こうした今の社会を成立させる根本的な考え方を輸出することで、西欧は19世紀以降の世界の覇権を確立しました。そして21世紀ヨーロッパ再びその方法論を応用することで、アメリカ、中国に次ぐ第三勢力としての存在感を 年々増しています。
2020年代にSDGsがもたらす新たなパラダイムは、第三極としてのヨーロピアン・デジタルが存在感を高め、覇権を握る可能性を示しています。
以上、 「2030年の世界地図帳」主要なトピックをまとめて解説をしました。本の中ではこれらのテーマがたくさんの図表や地図とともに、詳しく書かれています。SDGsという世界の中での標準的な枠組みに沿って、基本的な内容からとても丁寧に、わかりやすく書かれた本ですので、ぜひ読んでみてください!