人は行ったことよりもやらなかったことを後悔することが、研究から明らかになっています。とにかく何も考えずにとにかく始めることも大切です。
この記事では、堀田秀吾さん、木島豪さんの「科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全」を紹介します。本書は、
- やることがあるのに、ついダラダラしてしまう
- SNSのチェックがやめられない
- 明日こそは絶対にやるが口癖
といった方におすすめで、根拠もないやる気に頼らず、自分を思い通りに動かすセルフコントロールの方法を、114件の世界中の最先端研究から導き出しています。載っている95のセルフコントロール法は、できるだけハードルが低いものがピックアップされており、誰でも簡単にできるアクションばかりです。現在の科学では、人間が行動を起こすとき、体の動きが先で、脳の指令が後というのが定説。つまり、やる気を出すためには、とにかくやるしかないです。この記事で、そのポイントを簡単に押さえていきましょう!
1. どうすれば自己管理ができるようになるのか
まずは、どうすれば自己管理できるのかについて、本書から2つのポイントをピックアップして解説していきます。
やる気を探すのは無意味な努力
勉強や仕事をしなければならないのに、なかなか机に向かえない。やろうと決めた時間になってもやる気が起こらない。自分はなんてダメな人間なんだと、ついダラダラしてしまう自分を責めてはいませんか? 多くの人がこのような思考に陥りがちですが、そのように自分を責めるのは大間違いです。ついダラダラしてしまうのは、ごく当たり前のこと。自己管理がうまくいかないのは、意志が特別に弱いわけでも我慢が足りないわけでもないと著者は言います。驚くことに、人間という生き物は、自分自身の意思で行動を決定していません。環境と状況に合わせて、最小限の力で楽をして生きようとする生き物です。目標に向かってやる気や意志の力だけで動けるのは、本当にごく一部の人たちだけです。自分のやる気はどこかにあるなどと、あてもなく考えるのは無意味なのです。
では、人が行動を起こすときは、いったいどういうときでしょうか。それは、人の体が動いた時です。当たり前だと思うかもしれませんが、よくよく考えてみましょう。人間が行動を起こすとき、一般的に脳から先に指令が出ているというイメージがあるかもしれませんが、実は体の動きが先で、脳の指令が後というのが近年の定説。つまり、人間は体の動きに合わせて、後から脳が考えるというわけです。簡単に言えば、じゃんけんでパーを出そうという意識より先に、体がパーを出す動きを始めているということ。脳は司令塔ですが、脳自身で何かを感じ取ることはできません。体から送られてくる動きや感覚などのさまざまな情報を受けて判断している点からも、動きが先ということを理解できると思います。
やる気を出すためにとにかくやる
人間は体が先に動いた後に脳が反応することは、カリフォルニア大学の研究でも証明されています。〇〇しようと思う脳の意識の信号よりも、その動作をするために脳が出す信号の方が、平均で0.35秒速いという結果があります。ここからも、やる気を出すためにはとにかくやるしかないということが言えます。そして、自分で自分を思い通りに動くセルフコントロールにおいても、具体的なアクションが非常に重要になってきます。やる気を探して考え込んでいては、いつまでも今までの自分とは変わりません。まずは行動を起こしてみましょう。
2. 誰でも出来る簡単なセルフコントロール
まずは行動しろ!と言われても、それができないから困っているという声が聞こえてきます。ここからは、セルフコントロールの具体的な方法について、本書から2つ掘り下げていきます。
強制的に行う環境をつくる
セルフコントロールでまず大事なのは、環境です。環境が人の意思決定を司るので、そうせざるを得ないような環境を作ってしまえば、私たちはやるしかなくなります。勉強や仕事をしたいのにどうしても机に向かう気が起きないならば、例えば、有料の自習室を定期的に借りる、お気に入りのカフェに仕事道具とお財布だけを持っていくなど、勉強や仕事をしないと時間やお金がもったいない状況に追い込むことで、自然と目の前のやるべきことに向き合えるようになります。
やろうと決めた時間に行動に移すためには、場所を変えることが大事です。これがシンプルながら、一番簡単なセルフコントロール法になります。マイアミ大学はある研究で、被験者の様子をGPSで34カ月にわたって記録し、その感情の変化を調査しました。すると場所の変化が多いほど、ポジティブな感情が高かったという結果が得られたそうです。また、MRIを使って、場所の変化とポジティブな感情との関連を探ったところ、環境の新しさと脳の報酬系に関わる部位の活性化は密接に関わり合っていることが分かりました。脳の報酬系とは、人間の脳にある報酬型と呼ばれる神経のグループ。この部分が刺激されて活性化すると、やる気が出たり幸福感を覚えたりします。つまり、新しい環境にいるだけで、やる気が出るということです。カフェなどに行って仕事をするというのは、理に適ったセルフコントロールのアクションであることは科学的に証明されているのです。また、たとえ自宅であっても、仕事にしか使わない部屋やデスクを用意する、庭やテラスベランダなどで行うなど、脳に新しい環境だと思わせられる仕事場所を用意するのも良いです。
ポイントモチベーションを高める
何か新しいことにチャレンジしてみたいと思いながらも、そう思っているうちに数年の歳月が経ってしまったということは、よくあることです。日々のルーティンで手いっぱい、失敗したらと思うと怖くて一歩を踏み出せないという方も多いかもしれません。確かに新しいことにチャレンジした結果、大失敗をする可能性があるのは紛れもない事実でしょう。しかし、チャレンジしなければ、見られるはずの景色も見られません。そもそも人間の意識は、不安にフォーカスしやすいようにできています。ここで大事なのは、不安を意識するあまり問題の本題を見逃さないようにすること。自分が感じている不安の原因をしっかりと可視化していきましょう。
ペンシルベニア大学のある研究では、心配事の79%は実際には起こらない。さらに、心配事が起きたとしてもその16%は事前の準備で対処が可能であると結論づけています。要するに、心配事で現実化するのはたったの5%だけだということです。これを自覚するだけでも気が楽になると思います。では、実際に挑戦してみようとする時に必要なものは何か。それは、モチベーションを高めて継続することです。学習を例にとると一般的に、勉強に対するご褒美を与えると、勉強自体に対するモチベーションを損うことは、これまでのさまざまな研究で言われてきたこと。しかし、ウイーン経済経営大学の研究によると、小刻みにした学習のポイントごとに、小さなご褒美が与えることで、オンライン学習の自律的モチベーションが向上する結果が出ています。大きなご褒美だと報酬のためにやっていると考えてしまい、モチベーションは上がりづらいです。一方で、小さなご褒美であれば、なぜそんなもののためにやっているのか?と自然と考え、気持ちと現実の間にギャップが生じます。このような気持ちと現実の間にギャップがあり、不快感を覚えることを認知的不協和と言います。これを解消するために、私は報酬のためにやっているのではなく、自分のためになるからやっているのだと考え、結果としてモチベーションが上がると考えられています。
この認知的不協和の解消という原理を応用すれば、効果的にモチベーションを向上させられます。例えば、何かに挑戦する時必要なことを逐一リスト化し、それが達成されるたびに自分で決めたポイントを加算してみましょう。実際のところ、そのポイントは何の役にも立ちません。しかし、自分の人生のためにコツコツ努力していることを可視化することができます。行動の理由を自分の中で見つけ出すことができると、モチベーションが継続し途中で挫折しにくくなります。
3. オススメのアクション3選
ここからは、セルフコントロールのおすすめのアクションを、本書から3つ紹介します。
スマホからSNSアプリを削除する
せっかくやりたいことを強制的に行う環境をつくったところで、SNSなどに意識を持っていかれてしまっては意味がありません。北京航空航天大学が行った74,487人のTwitterユーザーへの調査では、ツイートする際にポジティブなときはその感情が高まり、ネガティブな感情が減ったということがわかっています。使い方を間違わなければ、SNSにも良いところはありますが、その反面、やめ得られないという人が少なくないのも事実です。SNSはやりすぎないほうがいいというのは、多くの研究の結論です。
例えば、University college london が、平均14.3歳の若者1万人以上に調査を行ったところ、SNSを利用するほど鬱になる傾向が見られたり、体型コンプレックスは悪化する傾向が見られるという結果が出ています。やはりSNSには、ネガティブな要素も多いので、その影響を回避するにはSNSをやめてしまうということが一番シンプルです。やめたくてもやめられないから困っているという方は、いっそのことスマホからアプリを削除してみてはいかがでしょうか。そうすれば、強制的にSNSができない環境を作ることができます。また、アプリを削除しても再インストールすれば元に戻ります。少なくとも再度インストールしてまでSNSを見たくない気分の時には、SNS から離れることができるのでおすすめです。
ただし、ここで少し注意したいのは、人間は他人とのコミュニケーションがないと健康を害してしまう可能性があるので、SNS経由で仲間たちや社会の動向を全く見られなくなると、それが不安につながってしまうという方は、時間制限を設けるのがいいかもしれません。ペンシルバニア大学のSNS利用時間の研究では、1日30分程度の使用にとどめると幸福感や安心感が得られやすいという結果も出ています。普段他人とコミュニケーションをとる機会が少ないという人は、完全にSNS断ちするよりは、1日30分程度に使用制限するのがベストでしょう。
そういうものだと理解する
さきほど言った通り、人間は基本的に不安を感じやすい生き物です。その中でも、特に物事を悪いほうへ考えるクセが強い人もいます。しかし、不安が特に強くなる傾向というのは、元来の性格によるものです。その性格のおよそ5割程度が遺伝によるものだと考えられています。生まれ持ったものをいろいろと考えてもしかがありません。そういうものだと理解し、そんな自分でも今できることを考えてみましょう。
良くないことが起きたときに自分を責めてしまう自分が悪いと思ってしまうのは、理想が高いことが原因の可能性もあります。理想とはかけ離れた結果になってしまったときに、自責の念に駆られてしまう。そんな時におすすめしたいのが、セルフコンパッションという方法です。簡単に言えば自分のことを責めている自分に対して、自分自身で“そんなに責めなくてもいいじゃない?”と言って、受け入れてあげることです。カリフォルニア大学バークレー校の研究によると、セルフコンパッションを習慣化できるとポジティブになり、人間的成長を促す効果があることが分かっています。失敗をしても頑張ったのだから仕方がないと、何度でも受け入れてあげましょう。自分で自分を認めることが大事です。
やるべきことの選択肢を減らす
何をするにも決断できない優柔不断な人もいます。私たちが優柔不断になってしまうのは、判断しがたい選択肢がたくさんあるからです。そもそも選択肢を増やすのは、人間の本能でもあります。商品を買うときも、常に買って失敗したらどうしようという不安がありますよね。だからこそ他のお店にも足を運んだり、インターネットで様々な商品を比較したりします。しかし、その熟考は本当に意味あるでしょうか。実は選択肢が多い状態だと熟考してもあまり功を奏しません。選択肢を4つまでにするというのが、より適切な選択肢を選ぶために効果的なアクションです。そのほうがいい意味で諦めがつき、特に重要な要素にだけ注目することができます。また、適当でもいいのでこんなときはこうするというような、決断のルールをあらかじめ決めておくのもおすすめです。
例えば、飲食店のメニューで迷ったら、メニュー表の一番左上を注文するといった感じです。もし何をやるのもめんどくさいという方がいたら、その人がやるべきことはやるべきことの選択肢を減らすことです。やらなければならないと思っていることが多すぎて、何から手をつけていいか分からなくなっている可能性もあるので、まずは行うべきタスクをすべて書き出すことをしてみてください。あとはその中から、特に重要なものを選ぶだけです他のタスクは後回しにしましょう。このときタスクはなるべく少ない方が良いです。例えば、片付けを助けにした場合どこから手をつければいいのか分からず、何もできなくなってしまう人がいます。まずは、片付けというものを細分化し、今日は机の上だけをやろうなど、1箇所に範囲を絞るようにすると片付けられる場合があります。選択肢は絞って、これだけでいいのならやってみようと思えるようにしましょう。
今回紹介した堀田秀吾さん、木島豪さんの「科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全」については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、ぜひ読んでみてください!