【何をした人?】禅を海外に伝えた人物、鈴木大拙とその思想を学ぶ(無分別智)

時代を生き抜く考え方・哲学

 

鈴木大拙(すずき だいせつ)という名を聞いたことありますか?

彼の業績は、生涯にわたって、言葉や文字によらぬことをモットーとして、体験を何よりも重視する禅の精神、東洋・日本の思想を英語で世界に向けて伝えたことにあります。

サリンジャーの小説に「鈴木博士」として登場するなど、日本以上に、海外の文化人に与えた影響は計り知れません。

この記事では、そんな鈴木大拙について、ざっくりその思想を紹介します。

“禅”について知りたい方にも、導入としてぜひ読んでいただけたらと思います!

 

1. 鈴木大拙とその思想

 

鈴木大拙(本名:鈴木貞太郎)は日本の著名な仏教学者であり、僧侶でもあります。

彼は石川県金沢市の江戸時代から続く医者の家庭に生まれ、地元の名門である石川県立専門学校で学びました。そして、そこでの西田幾多郎や藤岡作太郎との出会いは、彼の人生に大きな影響を与えました。

この3人は「加賀の三太郎」と呼ばれ、著名な功績を残すことに。

鈴木は、第四高等中学校を中退後、英語教師として働きながら、帝国大学(現在の東京大学)に進み、仏教研究に専念しました。

明治30年には渡米、足掛け12年間を過ごし、帰国後は大学教授を歴任。95歳で亡くなるまで、禅を中心に仏教の研究に従事し、海外での講義も行いました。

特にアメリカでは、コロンビア大学の客員教授として、禅の普及に貢献。1963年には、ノーベル平和賞候補にもなりました。

 

無分別の世界

鈴木大拙の思想の中で特に注目されるのは、「霊性」と「無分別の世界」に関する考察です。

彼は、人間が目の前に見ている「分別された世界」が、人間特有のフィルターによって形成されていると考えました。

彼の見解では、人間によって分別される前の「無分別の世界」が存在し、ここでは万物が一体となっている状態があります。

 

これはカントが言う「物自体」や、西田幾多郎の「絶対無」に似ており、仏教的な「空」の概念とも関連します。

この無分別の世界を、人間は言語、理性、思考というフィルターを通じて認識し、それにより「分別された世界」が生まれるのです。

鈴木大拙の思想、人間の認識の仕方と宇宙の本質について深い洞察は、仏教の教えと現代哲学を繋ぐ重要な橋渡し役を果たし、東西の思想家に影響を与えました。

 

2. 禅の目的と日本的霊性

a circular design made of sand on a beach

 

ここで、無分別智について、もう少し解説します。

これは、「自分と他人」、「右と左」、「善と悪」、「山と川」といった分別された認識を可能にする概念で、分別されていない世界を直観する能力を指し、彼はこれを「霊性」と名付けました。

鈴木によれば、霊性はある程度文化的に成熟した民族においてのみ覚醒すると考えられ、日本では特に鎌倉時代の浄土宗系の思想でその覚醒が見られたとしています。

禅の本質は、分別された世界ではなく、自分と自分以外のものが一体であることを体験すること、即ち「自他不二」の体験にあります。鈴木は、この日本的な思想における霊性の特性を「日本的霊性」と表現しました。

禅は、無分別智に至るための行為と捉えられ、この状態は言語による区別がないため、言語化すること自体が困難です。

 

『禅と日本文化』と禅の伝達

鈴木大拙の著作『禅と日本文化』では、禅の真髄について独特のアプローチが見られます。鈴木は、禅は知的作用や体系的な学説に訴えるのではなく、身をもって体験することが本質であると述べています。

また、禅は「不立文字(ふりゅうもんじ)」のモットー、つまり文字にして説明するものではなく、体験を通じて伝えられるものであると述べています。

禅と日本文化』は、このような禅を言語で表現しようとする試みであり、その意味で特異な作品と言えます。

このように、鈴木大拙の思想は、日本の禅とその文化的意味について深い洞察を提供し、私たちの世界観や認識の仕方に新たな視点をもたらします。

 

3. ZENのHOW TO 本『禅と日本文化』

思索空間と水鏡の庭(鈴木大拙館)

 

禅と日本文化』は、もともと日本向けに作られた本ではありませんでした。

この本の主な目的は、海外に日本の文化と禅を紹介することにあります。実際、海外での発売後、日本国内での流通はかなり遅れていました。

これは新渡戸稲造の『武士道』に似たパターンで、本著に記されている内容は「禅」というよりも、「ZEN」としての性質を持ち、海外向けのZENのHOW TO本としての側面を持っています。

現代の私たちは西洋文化の影響を大きく受けており、禅や当時の日本文化に詳しい人は少数です。このため、私たちは鈴木が想定した読者層に近いかもしれません。

日本という国、その文化、禅に不慣れな人々としてこの本を読むと、新たな発見や興味深い体験ができるでしょう。

 

本の内容とその価値

『禅と日本文化』は、禅の基本から始まり、美術、剣道、俳句といった日本文化との関連について学ぶことができます。

この本を通じて、日本の文化を再発見し、禅の本質を外面的に理解することができます。ここで紹介される禅を起点とする日本文化は、私たちのルーツの一部。

文化を再発見する意味でも、非常に価値のある一冊です。興味のある方はぜひ読んでみてください。

今回の紹介はここまでです。

鈴木大拙について、より詳しく知りたい方には石川県・金沢市にある「鈴木大拙館」もおすすめですので、旅行の際はぜひ訪れてみてください!

施設概要

住所:〒920-0964 石川県金沢市本多町3-4-20
料金:一般310円、団体(20人以上)260円、65才以上または障害者手帳をお持ちの方、およびその介護人210円、高校生以下無料
営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
定休日:毎週月曜日・年末年始・展示替期間 11月下旬~3月上旬(建物修繕工事を予定)
アクセス:公共交通機関で城下まち金沢周遊バス・北陸鉄道路線バス「本多町」バス停から徒歩約5分、まちバス「本多町・歌劇座・鈴木大拙館」バス停から徒歩約5分

 

woman in black tank top sitting on brown wooden dock during daytime

『今を生きる練習』要約(限りある人生を、充実して過ごすための禅の教え)マインドフルネス

woman sitting on bench over viewing mountain

マイナス思考から脱却!『無 最高の状態』要約(人生をポジティブに変える秘訣!)【鈴木祐】

man in white dress shirt

超集中の極意!『ヤバい集中力』要約(仕事もプライベートも充実させる方法)【鈴木祐】

man sitting on gray dock

簡単に始められる!マインドフルネス瞑想のやり方まとめ(呼吸瞑想のメリット・注意点)

アクセスランキング