『人類とイノベーション 世界は自由と失敗で進化する』要約(世界が求める新たな革新とは?)

time lapse car running on road 時代を生き抜く考え方・哲学

 

イノベーションという言葉について、どのようなイメージがありますか?

この記事では、マッド・リドレーさんの書籍「人類とイノベーション 世界は自由と失敗で進化する」を紹介します。本書は、イノベーションについて知りたい、独自性を発揮したいという方におすすめです。

著者は、イノベーションは緩やかに起こる、イノベーションは一人ではできないと主張します。いったいどういうことか、早速内容を見ていきましょう!

 

1. イノベーションとは

selective focus photography of light bulb

 

まずは、イノベーションそのものについて、本書から3つのポイントを解説します。

イノベーションとは何なのか

イノベーションと聞くと、何となく“発明”や“革命”といったことを、思い浮かべるかもしれません。しかし、発明よりもはるかに大きな意味を持ちます。

なぜなら、イノベーションという言葉には、「その技術なりが実用的で、手頃な価格で信頼でき、どこにでもあるおかげで、発明が世の中に定着するまで発展させる」という含みがあるからです。

ノーベル賞経済学者のエドマンド・フェルプスは、イノベーションを、「世界のどこかで、新たな観光になる新しい手法や製品」だと定義しています。

 

基本的にイノベーションは、緩やかなプロセスで起こります。

新しいテクノロジーが古いものを覆す時は、非常にゆっくり始まり、だんだんペースを早めるものであることが多いです。

その際、最初の数年は期待はずれであることが多く、一旦軌道に乗り、ようやく予想を上回るような結果になることが一般的。また、イノベーションの特質すべき点は、潜在的に無限であるということです。

なぜなら、たとえ新しい効用がなくても、既存のスピードを速くしたり、少ないエネルギーで行う方法を見つけたりすることができるからです。

 

逆にイノベーションの難しいところは、未だに謎が多いところだと著者は言います。いつ・どこで・なぜ起こるのかを説明できる経済学者も、社会学者もいないです。

最も有力な説は、成り行きの運だったという説。セレンディピティ、いわゆる偶然の幸運は、イノベーションで大きな役割を果たします。だからこそ、自由に探し求めて実験するチャンスのある自由主義経済と、相性が良いとも言えます。

一方で、人々の生活を良い方向に変えるという事実があるにも関わらず、ほとんどの人は新たなイノベーションに対して、不安や嫌悪があり、悪い結果をたくさん想像しがちです。その点が、イノベーションの実現の障害になっているのだと考えられます。

 

2. エネルギーのイノベーション

bulb photography

 

1700年より前、人類が使うエネルギーは主に熱と仕事の2種類であり、これらが相互に変換するということはほとんどありませんでした。

しかし、1700年代の初期に熱エネルギーを仕事エネルギーに変える、熱と仕事の不可逆性を可能にする、蒸気機関のイノベーションが起き、膨大な量のエネルギーを熱から仕事へ変換できるようになりました。燃料の燃焼によって動きを起こす、車などをイメージすると分かりやすいです。

この蒸気機関のイノベーションには、3人の功労者が関わっていました。3人はほぼ同時代を生きており、全員が熱から仕事への変換に決定的役割を果たしましたが、互いに会うことはありませんでした。

しかし、彼らは偶然にも全員が蒸気機関に関わる発明をしていたのです。

このように、テクノロジーの進歩には、期を熟す瞬間があるように、同じ発明が同時に別の場所で行われたことが何度もあります。

複数の蒸気機関に関する興味が、北西ヨーロッパに集結したため、初歩的な蒸気機関の誕生はほぼ必然だったのだと著者は言います。

 

また、本書では革命的なイノベーターとしてエジソンを紹介しています。エジソンが電球のイノベーションを起こしたことは有名ですが、彼は発明家ではなく、誰よりもイノベーターでした。

なぜなら、エジソンは実業家であり、イノベーションは試行錯誤を必要とするチームプレイであることを理解していたからです。

エジソンは、200人の熟練した職人と科学者のチームで実験を繰り返しました。その時にしつこく注力したのは、世界が必要としているものを調べてから、そのニーズを満たすものを発明するという方法です。

ニッケル鉄電池の発明には、5万回も実験を行っているそうです。

有名な、「発明は1%のひらめきと99%の努力」、特に努力の前のひらめきや社会ニーズを大事にして実践したということです。

そういった意味で、著者はエジソンが行っていたのは発明ではなく、アイディアを実用的で、庶民でも手の届くような手頃な価格にした、イノベーションだったと言えます。

 

3. 輸送のイノベーション

black train on railway bridge under heavy clouds

 

1810年まで、馬より早い輸送手段はありませんでした。1804年に、初の蒸気機関車が、線路上の列車を引っ張ることに成功。そこから鉄道の需要が高まったのが、蒸気機関車のイノベーションの始まりでした。

そして、数人イノベーターたちが少しずつ研究し、試行錯誤した結果、基本設計が決まります。その後19世紀の代表であった蒸気機関にとって代わり、20世紀には自動車のイノベーションが起きます。自動車の発明家は誰かというと、単純な答えはないと著者は言います。

フォードは価格を安くし、マイバッハは汎用的な機能を与え、ルヴァソールは重要な改修をし、ダムラーが安定させ、ベンツは石油で走るようにさせ、オットーはエンジンのサイクルを考えました。その他にも、様々な人が改良を加えています。

 

このようにイノベーションは、個々の現象ではなく、集合的かつ斬進的で、複雑に絡まった網のような現象であり、数人が少しずつ研究し試行錯誤した結果。一人の天才によるものではないのだということです。

また近年の例で言うと、飛行機のイノベーションも代表的です。世界の飛行機事故による死者数は、1990年代には年間1000人を超えていましたが、2017年にはわずか17人まで減りました。乗る人数自体も増えているので、割合的にはもっと減っていると考えていいでしょう。

この飛行機事故による死亡率の激減は、様々な人が様々なことに努力した結果によるイノベーションです。最も重要なのは、事故の過ちから学ぶことで自己調査の結果を公表し、透明性高く全世界で共有することであるのだと著者は言います。

現代の航空業界は、試行錯誤によって驚異的な安全記録を達成しており、他の分野でも手本とされているそうです。

 

4. イノベーションの本質

man in black jacket holding spark

 

ここからはさらに、イノベーションの本質について、3つのポイントで深堀りしていきます。

イノベーションは積み重ね

イノベーションというと、アイデアが閃いた瞬間の後に一気に起きるイメージがありますが、ここまで見てきたとおり、そうではありません。

例えば、初めて空を飛んだと言われるライト兄弟の話を聞くと、いかにも突然飛んだような印象を受けます。しかし、始めは数秒しか浮きませんでした。

本質は、その前の数年にわたる長く辛い研究や実験であり、それらが積み重なって動力飛行が必要な要素になったことです。

突然のひらめきと言った方が魅力的に映るし、発明者やジャーナリストなどは、突然世界を変えるものがイノベーションだと主張してしまいがちであると著者は言います。

本当はイノベーションというのは、緩やかに起こっていくもの。エジソンは電球の完成まで、6000種類もの組み合わせを試しています。これに対してエジソンは、私は失敗したのではなく、うまくいかない方法を一万通り見つけたのだと言っています。

イノベーションには突然のひらめきよりも、とにかく試し続ける試行錯誤が不可欠です。

 

5. イノベーションの本当の価値

white toilet paper roll on white table

 

発明者はアイディアを出しても、名声や利益にほとんど預かれないと主張する人が多いですが、実用的で手頃な価格にするのに、どれだけの努力が必要かを見落としていると著書は厳しく言います。

経済ジャーナリストのティム・ハーフードによると、最も影響力の大きい新技術は大抵地味で安い、単に手頃な価格であることの方が、AIロボットの魅力的な複雑さより重要であることが多いと主張しています。

つまり、いくらすごい技術だとしても、手頃で実用性に富んでいないものである限りは、人々は価値を感じない。彼らはこれを単純だが必要不可欠なテクノロジーにちなんで、トイレットペーパー原理と呼んでいます。

 

また、人々は新しいテクノロジーを短期的には過大評価し、長期的には過小評価する傾向にあります。これは未来研究所の所長を務めたロイ・アマラの主張だそうで、アマラの法則とも呼ばれています。

例えば、GPSは、1978年に兵士が戦場で補給を受けるように、24基の衛星が打ち上げられましたが、1980年代には計画が進まず、失敗したかに思われました。

しかし、最終的には軍が有用だと判断したことで、すぐさま民間の世界に普及しました。いまや至るところにあり、誰にとっても欠かせないものとなっています。著者は人々がイノベーションを理解するには、15年かかると主張します。

最初の10年は過剰な期待をし、20年後には過小評価になるが、15年後を見るとだいたい正しく理解しているというのがよくあるパターンだそうです。

 

なぜなら、実用的で信頼できて、手頃な価格になるまでに、それくらいかかるからです。これによく当てはまるのが自動運転車です。運転手の仕事がなくなり、失業者が増えるのではないかと主張する人がいますが、これは時期尚早だと著者は言います。

確かに、様々な運転支援機能は実現していますが、現実の世界は厄介で、ルールや悪天候や田舎道への対応など、いろいろな条件が必要となります。

また、外部的な要因として、自動化された乗り物に合わせた道路周りのインフラ全体の設計の見直しや、保険市場の見直しなども必要となります。こうしたことにはもう少し時間がかかるでしょう。

 

6. イノベーションはチームスポーツ

a close up of a football on a field

 

イノベーションというと、孤独な発明家一匹狼の天才といった通念を想像しがちですが、常に協力と共有を必要とするチームスポーツだと著者は主張します。一人が技術的な突破口を、一人が製造方法一人が安くなる方法を発明するといったように、全員がイノベーションのプロセスの一部になります。

こうした特徴から、イノベーションの同時発明は珍しくないのだそうです。電流の発明では2、1人もがそれぞれ無関係に行っていました。これはテクノロジーのためのアイデアが熟しており、必ず世に出る状態に到達していたためだと著者は言います。

先ほど述べたように、イノベーションはチームスポーツなので、個人は重要ではないということです。

 

例えば、もし仮にエジソンがいなかったとしても、時間の前後はあったとしてもいずれ研究を発明されていたでしょう。

しかしこのような何十億人の誰にでもできる可能性のある何かを発見するということだからこそ、奇跡的であり並外れた素晴らしい業績であると著者は賞賛しています。

 

7. 現代のイノベーション

 

最後に、現代とイノベーションの関係について、本書から2つのポイントを解説していきます。

イノベーションの予測

イノベーションは起こった後から見ると予測可能に思えますが、予測不可能であると著者はいます。例えば、検索エンジはインターネットの最も有益な成果となりましたが、そうなることがわかっていた人は当時誰もいませんでした。

ミニコンピュータのパイオニアであるケン・オルセン氏も、コンピュータを家庭に欲しがる人などいるわけがないと言っていましたし、マイクロソフトの最高責任者だったスティーブ・パルマー氏もiPhoneが大きなマーケットシェアを獲得する見込みはないと言っていました。

このように、イノベーションは予測できませんが、もし仮に予測すると今後ITの変化は減速するかもしれないと著者は言います。

 

スピードに着目すると、1958年に飛行機が時速900km自動車が時速100kmで走っており、それは60年経った今も変わっていません。

もちろん信頼性は上がり、交通事故なども減少していますが、昨今のITの進化のめまぐる姿に比べれば、緩やかになったと言えるでしょう。

ソーシャルメディアの発展や携帯電話で、映画が見られるようになるなど誰が予想できたでしょうか。少し前の世代では、輸送のイノベーションは大きく変わりましたが、通信はほとんど変化しませんでした。

こうして見ると、これらの半世紀はコンピュータの進歩が、現在ほど主役にはならないのではないかと著者は予想しています。

 

8. イノベーション欠如

man leaning his face on his left hand

 

大企業と政府との馴れ合いによる共謀が国を支配するにつれ、企業政府もイノベーションを渋る傾向にあると著者は言います。

これは、会社が積み上げた兆単位の巨額の現金を抱え込み、自社のイノベーションに投資するわけではなく、金融投資や特許権の行使、市場占有率の維持など守りのために使うことが多くなったからだそうです。

経済学者のルイジ・ジンガレスも、たくさん儲ける最善の方法は、素晴らしいアイデアを思いついて、その実現に取り組むことではなく、政府の支持を取り付けることだと言っています。

 

これは、近年のグローバル化が原因で定着させたのではと著者は考えます。アメリカでは、主要指数銘柄の会社の離職率がかなり下がっています。

つまり、現職者が長く留まって保守的になっているということ。ヨーロッパでは既存企業に有利なルールを制定しがちな欧州委員会に包囲され、時価総額の高い企業百社のうち、この40年に設立された会社は一つもありません。西側経済のイノベーション欠場は深刻だと言わざるを得ないでしょう。

逆に、他のどこよりもイノベーションを起こす可能性が高いのは、中国であると著者は予想します。欧米な5種類のアプリが必要なものが、中国ではたった一つのアプリででき、お金や保険などのサービスもたった一つのアプリで管理できるそう。西洋では数十年かかる鉄道と地下鉄網も、12年で出現しました。

このような猛威のスピードのイノベーションの原因は、一言で言えば努力。中国は午前9時~午後9時まで、週6日で働き、これは世界を変えた頃のアメリカ人や19世紀のイギリス人などに似ています。

とはいえ中国は民主主義が存在しないので、いずれ政治的独裁主義により、イノベーションが抑制されるのは確実でしょう。そうした意味では、いずれ世界に頼られるイノベーション国家となるのは、今勢いのあるインドやブラジルまたは他の国かもしれません。

 

今回紹介した、マッド・リドレーさんの書籍「人類とイノベーション 世界は自由と失敗で進化する」については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本なので、ぜひ読んでみてください!

 

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