『肉ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める肉の教養』要約

person slicing a meat on brown wooden board 日々を豊かに、丁寧に暮らすコツ

 

高級焼肉は好きですか?

この記事では、小池克臣さんの書籍「肉ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める肉の教養」を取り上げます。

著者の小池さんは、肉の求道者。年間で250回以上焼肉店を訪れ、1年のうち300日以上は和牛を食べる生活を続けているそう。

肉に対する好奇心から、飲食店の店主にこだわりを聞いたり、生肉店や食肉市場で食肉に対する知見を深めたりもしています。

なぜ、そんなにも肉に心が惹かれたのでしょうか?

 

実は著者は魚屋の長男として生まれ、子供の頃の食卓にはいつもその日お店で売れ残った魚が並んでいたそうです。そのため外食に行く時は必ず焼肉を食べに行きたいと騒いでいました。

そんな中大きな転機となったのが、大学生の時に初めて行った徐々苑。今まで行った焼肉店とは違う行き届いたサービスに感動した著者は、人生を焼肉や肉に捧げていくことになります。

本書はそんな著者の視点から肉ビジネスについて解説されている、情熱的な1冊になります。

それではさっそく、中身をみていきましょう!

 

1. 和牛から学ぶ、肉ビジネスの世界

a black cow standing on top of a dry grass covered field

 

まずは、日本の誇る和牛から肉ビジネスの世界を、3つのポイントで押さえていきます。

 

和牛と国産牛の違い

和牛と国産牛の違いは、肉のビジネスにおいて重要な要素です。

まず、スーパーの精肉コーナーでは、牛肉の産地表記が大きく3つに分かれます。

輸入牛

輸入牛は、国内消費の約65%を占めます。最も多い輸入先はオーストラリアで、次にアメリカ。実際、オーストラリア産とアメリカ産の輸入牛だけで日本の輸入量の約90%を占めています。

これらの牛は、主に穀物を飼料として育てられており、日本人の嗜好に合わせて柔らかい肉質になるよう調整されています。そのため、輸入牛は国産牛に比べて安価で、日常の食卓に欠かせない存在となっています。

 

国産牛

国産牛とは、生まれた地域や品種に関係なく、飼育期間の半分以上を日本国内で過ごした牛を指します。例えば、海外からアンガス牛を輸入し、日本で長期間育てた場合、その牛は国産牛として表記されます。

 

和牛

和牛は飼育地ではなく、牛の品種によって区分されます。代表的な品種には、黒毛和牛、赤毛和牛、日本短角種、無角和種があり、これらの品種を日本国内で飼育したもののみが和牛として認められます。

 

ブランド牛の潮流

日本国内で生産される牛肉は国産牛に分類されますが、その中でも格付けや飼育方法、産地によって特別な定義がなされるものはブランド牛、または銘柄牛と呼ばれます。

代表的なブランド牛には、神戸ビーフ、松坂牛、近江牛です。

神戸ビーフは、神戸港に立ち寄る外国人に人気を博し、世界的に有名になりました。一方、松坂牛は昭和10年に開催された全国牛肉コンテストで名誉賞を受賞し、知名度を上げました。近江牛は江戸時代、将軍家に献上された歴史を持ち、日本三大和牛の一つとして知られています。

現在、日本には300種類以上のブランド牛が存在し、それぞれの地域や生産者が独自のブランド力を育んでいます。

 

田島牛という存在

肉ビジネスにおいて特に和牛を扱うのであれば、絶対に知っておくべきブランド牛が「田島牛」です。

田島牛は兵庫県北部の田島地方で古くから飼育されており、体は小さいながらも力強いことで知られ、農耕や牛車用に重宝されてきました。その後、役目を終えた田島牛が、神戸ビーフ、松坂牛、近江牛として高く評価されるようになり、日本三大和牛を生み出す基礎とな牛です。

 

現在でも、神戸ビーフは田島牛を用いることがブランドの定義となっていますが、松坂牛や近江牛は田島牛以外の子牛を導入して飼育しても名乗ることが可能。

田島牛が全国に広がらない理由は、そのブランド力の高さにあります。また、ブランド力の低い他の牛と交配させると、生産効率が悪くなるという側面もあります。

ブランド牛は長い年月をかけて育まれたブランド力によって高い価格で取引されており、その力が弱いと、利益が出にくくなります。このため、田島牛は特にこだわりのある生産者が多い地域でのみ飼育され、残されているのです。

 

2. カルビとロースに学ぶ、焼肉の世界

a skillet with meat and noodles cooking on it

 

焼肉の定番メニューといえば、カルビとロース。何となく頼んでいるこれら焼肉のメニューについて学ぶことで、焼肉の世界の奥深さが見えてきます。

 

カルビとロースはどこの部位か

カルビとは韓国語で「アバラ骨」を意味し、その周辺の肉を指します。日本では「バラ」や「トバ」と呼ばれ、脂肪がしっかりとついたジューシーな部位として知られています。

一方、ロースは牛の背中の肉を指し、主にカタロース、リブロース、サーロインの3つの部位に分けられ、これらはすべて背中に位置する一塊の肉で、脂肪が少なく、赤身が多いことから、さっぱりとした味わいを楽しめる部位として人気があります。

 

化学調味料の存在

化学調味料とは、旨味を引き出すために人工的に生成された調味料のこと。

料理の味を引き立てるために、家庭だけでなく、多くの飲食店でも使用されています。しかし、「化学」という言葉が持つイメージから、現在では「旨味調味料」という呼び方が一般的です。

旨味調味料は、世界中の農作物を原料として作られており、適量を守れば健康への悪影響はありません。

 

そして、焼肉において、この旨味調味料は実に重要な役割を果たしています。

多くの焼肉店では、タレの味をまとめるために旨味調味料を使用していますが、その量は店によって異なります。少量を加えてバランスを整える店もあれば、大量に使用して素材の味がわからなくなるほどの店も。

旨味調味料を使用せず、素材本来の味を引き出す焼肉を提供するには、お客さんとのコミュニケーションを重視し、味を理解してもらう努力が必要となります。

 

タレこそが焼肉店の技術を表す

焼肉において、タレは非常に重要な要素。

タレの調味料や酸味が肉の旨味を一層引き立て、焼肉をより美味しく仕上げます。一般的な焼肉のタレには、醤油、みりん、ごま油、ニンニク、生姜などが使われ、これらの調味料が肉の風味を深めています。

さらに、焼肉のタレには甘味、塩味、酸味、辛味といったさまざまな味がバランスよく含まれており、食べる人の好みに合わせて調整が可能です。また、一部の焼肉のタレには、酵素や果物から抽出された成分が含まれており、これらは肉の繊維を柔らかくする効果があります。

焼肉のタレは、肉に揉み込んだり、焼いた後に絡めたりすることで、その美味しさを最大限に引き出します。

焼肉のタレには、その店の職人技が凝縮されており、まさにその焼肉店の顔とも言える存在。タレの作り方一つで、焼肉の味が大きく左右されるため、焼肉店の技術力が問われる重要な要素となっています。

 

3. これからの肉ビジネスの世界

bokeh photography of person carrying soil

 

和牛と焼肉から、肉の基礎を学んだところで、こらからの肉ビジネスについても考えていきたいと思います。

肉産業の環境と倫理問題

地球温暖化は、温室効果ガスの増加によって地球全体の平均気温が上昇する現象であり、その影響は農業や食料供給だけでなく、生態系や人間の生活にも大きな影響を与えています。

特に、二酸化炭素(CO2)の排出が温暖化の主要な原因とされていますが、メタンガスも重要な温室効果ガスの一つです。

メタンガスは牛のゲップなどから発生し、温室効果ガスの排出量に大きく寄与しています。

この問題を解決するためには、牛肉生産における持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが必要不可欠。

日本だけでなく、世界中の牛肉産業が地球環境に配慮した生産方法を模索しています。

 

現在、例えば飼料の改良やメタン排出量の少ない牛の育成、飼料自給率の向上による輸入に伴う環境負荷の軽減など、温室効果ガスの削減に向けた研究や対策が進められています。

これらの取り組みは、持続可能な牛肉生産を実現するための重要な一歩です。

 

減少し続ける生産農家

農林水産省が発表した統計によると、令和5年2月1日時点で肉用牛の生産農家数が1960年の統計開始以来、初めて4万戸を下回りました。

生産農家数はここ10年以上にわたって減少傾向にありましたが、同時に飼育頭数は2000年頃から増加傾向にあります。これは、農家の大規模化が進んだことが要因で、一戸あたりの飼育頭数が増加しているためです。

 

この傾向は、繁殖農家でも肥育農家でもほぼ同じように見られます。

では、なぜ生産農家の数が減少しているのでしょうか。

理由としては、高齢化、経済的負担の大きさ、後継者不足などが挙げられます。これらの要因が重なり、和牛生産農家の跡継ぎが確保できないという深刻な問題が生じています。

この問題を解決するためには、若者に農業の魅力を発信し、労働環境の改善や経済的な支援を行うことが求められます。

農業を継承するための取り組みを強化し、次世代の農家が安心して働ける環境を整えることが、肉ビジネスの未来を支える重要な要素となるのです。

 

解説はここまでです。今回紹介した書籍、小池克臣さんの書籍「肉ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める肉の教養」についてもっと深掘りしたいと思った方は、ぜひ手にとってみてください。