“脳の使い方一つで、自己肯定感は高くも低くもなる。”
この記事では、加藤俊徳さんの書籍「脳の名医が教えるすごい自己肯定感」を取り上げます。
本書では、脳の使い方を知ることで自己肯定感を高め、人生を豊かにする方法について解説されていて、
- 自分に自信がなく自己否定感が強い
- 他人の言葉に反応してすぐに落ち込んでしまう
- 自分を肯定し豊かな人生を送りたい
という方に、おすすめの1冊です。
- 日本社会は自己肯定感が非常に育ちにくい環境にあるので、意識的に行動しなければならない。
- いま自己否定感が強い人こそ、最強の肯定人間になれる可能性を秘めている。
と語る著者の考えに触れてみましょう!
1. 自己肯定感の低い人は自己認知が低い
本書では大学受験で2度失敗をした上で留年もしたが、国家試験に合格したという男性の話が紹介されています。
男性は、その失敗が原因で自己肯定感が低く、社会に出てからも何か失敗をすると自分の能力が低いせいだと考えてしまいます。
自分はダメだという脳の癖、つまり脳の回路が出来上がってしまっているせいで、せっかく努力する才能や諦めない才能があるのに、それが見えず欠点ばかりに目がいってしまうのはもったいないです。
こうした脳の回路は、自己認知が歪んでしまっていることが原因です。
自己認知とは、自分を客観的に知り、自分の価値観、性格、長所、短所を自分自身で認識し受け入れることです。
しかし、これには主観や願望などが入り混じり、本来の自己像とは違った像を作り上げてしまうので、歪みが生まれやすいです。
認知の歪みは誰でも多少は持っているものですが、それが強すぎると必要以上に自分を否定してしまうため、自己肯定感が育たなくなってしまいます。
脳を活性化させる8つの脳番地
自己否定感が強い人は脳の神経細胞の働きの低下に伴い、酸素消費量が低下してしまいます。すると、脳がフリーズ状態となり、さらに関心や注意力が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
一方で、自己肯定感が強い人は、脳細胞が活発に働き酸素消費量が多くなります。生物には、自分の能力を最大限に発揮し成長したいという本能があるため、脳が活発に働いているとそれだけで脳が下位の状態となります。
こうなると、脳をもっと使いたいもっと成長したいと勝手に思うようになり、さらに脳が活発になるという好循環が生まれます。
好循環を生むためには、脳の8つの脳番地なるものがあることを理解し、バランスよく働くようにすることが重要です。
著者がMRIで脳を研究した結果、脳は場所によって分担する働きが決まっており、思考系、感情系、伝達系、運動系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系の8つの脳番地に分類できることが分かったそうです。
2. 現実をありのままに受け入れる
自己認知は特に理解系、記憶系の脳番地が働いています。
これらは独立して働くわけではなく、緊密に情報をやり取りしながら働いています。
認知の歪みは脳番地の働き方のバランスが悪くなったり、偏った働きをしているため起こります。
例えば、先ほどの男性の流れでは、彼は受験失敗と留年という挫折した過去の記憶に過剰に縛られている状態で、職場での失敗体験も必要以上にマイナスに捉えてしまいます。
これを改善するためには、教育系の番地に刻まれた過去を挫折ではなく、貴重な経験だったと書き換える必要があります。
過去を書き換え、新しいストーリーとして理解することで、次に理解系の番地が刺激を受けて働きます。
すると、これらは同じような経験をしても、プラスに捉える思考が身につきます。
これにより、思考系ノー番地に新しい回路が生まれます。不合格自体は失敗ですが、同時に貴重な経験でもあります。
何でも最初からできる人間などいない。
誰でも失敗を通じて成長するという単純明快な事実を認識することで、認知の歪みを取り除きましょう。
正しい自己認知が、自己肯定感を取り戻すことにつながります。
正しい自己否定感
正しい自己否定感にも大切な効用があります。自己否定感というマイナスを克服することで、自己肯定感がより強固なものになるというものです。
抜群がプラスに転嫁し、それが積み上がっていくような感覚です。マイナスだった部分を紆余曲折を経て、自分なりに乗り越えた経験と実感は、大きな自信になります。実際に医者でも弁護士でも、元々秀才ですんなり試験で高得点を挙げて合格してきた人より、挫折を味わいながら今の職についている人の方が、名医や名弁護人となった方が多いと言います。
大事なことは、プラスもマイナスも含めて、現実をありのままに受け入れること。脳の神経細胞は刺激を受けることで、ネットワークを構築しそれによって脳番地はいくつになっても成長し、機能を高めることができます。どのような欠点やマイナスも脳を鍛えることで、克服できます。
3. 他律性自己肯定感と自律性自己肯定感
現代社会は、“他者認知社会”です。
会社や社会など自分ではない他社が作った評価で順位づけられるため、自己認知よりも他社認知が優先になってしまいがちです。
学歴、肩書き、収入、売上評価や出世争いなど、他人との比較がそのままの評価となってしまう。
もちろん、そうした社会的評価も大事にして、自信やモチベーションとすることもよいでしょう。
しかし、そうした他者認知から作られた自信や価値観は社会的な評価が揺らいだり、無くなったりしてしまうと、もろくあっという間に崩れ去ってしまい、自分にとって何が一番大切なのか分からなくなってしまいます。
他律性自己肯定感が優位な現代社会
以上から、自己肯定感とは次の2種類に区分することができます。
一つは他律性自己肯定感。社会評価に基づいた自己肯定感です。
もう一つは自律性自己肯定感。自分の内的な基準に基づいた自己肯定感です。
2つとも、健全に生きるためには必要です。
現代社会では、社会的な基準と評価が優先しがちなため、他律性の方が優勢になりやすいですが、他律性自己肯定感は第三者によって作られた基準のため、非常に不安定で、常に不安がつきまといます。
例えば、世の中には自己愛型パーソナリティ障害という障害があります。この人は、自己愛が強く、自信に満ち溢れた人間に見えますが、実態は他律性自己肯定感からくる障害です。
現代社会はこの障害が非常に増えているそう。対して、自律性自己肯定感は、根本のところで自分を認め受け入れているため強いです。
4. 最強の自律性自己肯定人間
ここからは、最強の自立性自己肯定人間について、本書から3つのポイントを解説していきます。
ストレスに強い
ストレスが高まるのは、ストレスを回避できないために起こります。
自己肯定感が低い人は脳が働かず、フリーズ状態に陥り、ストレスを回避できないためにストレスが高まってしまいます。
逆に、自己肯定感が高い人は、仮に障害や困難などのストレスがあっても、問題解決に頭を働かせることに解を感じるため、ストレスのまま溜まっていくことがありません。
それが成功体験となり、さらに脳が活発になるという好循環に入ることもできます。
怒りをコントロールできる
怒りという感情は、自分の存在や価値が否定された時や自分の思い通りにならなかった時に生じます。
自律性自己肯定感の高い人は、そうした時でも自分の尺度で物事を測っているので、怒りを覚えません。
また、脳科学的な解釈によると、怒りは脳が理解できない時のサインだそう。
言い換えると、対象に対して脳の働きが限定されているときに起こると言われています。
例えば、相手から何か冷たい言葉を投げかけられたとしましょう。
普段は様々な脳番地が働き、科学的に理解しようとするところをひどい言葉を言われたと脳の感情系だけが働き、他の脳番地がフリーズしてしまうのが、“怒り”です。
この時、自律性自己肯定感の高い人は、相手の言動はもしかすると別の意味で言ったのかもしれないなどと、理解系や思考系の脳番地を働かせることで、解釈が多様に生じ、感情的に爆発せずに済みます。
あるいは、日記に書くなど伝達系の脳番地を働かせる手法も有効です。
嫉妬することが少ない
嫉妬とは相手によって自分の価値が低いことを認識させられることが苦痛で、相手の価値を貶めようとしたり、自分の前から消し去りたいと思う気持ちのことです。
また他の言い方として、羨望という言葉があります。
これは、相手に憧れ自分を相手の位置まで上げていきたいと思う気持ちのことで、どちらの言葉も社会的比較から生まれるもの。自律性自己肯定人間はどちらかといえば、嫉妬よりは羨望が多いです。
自分に対する強い信頼感という裏付けがあるので、その羨望を元に自己成長のきっかけにしてしまいます。
さらに言うと、自立性自己肯定人間は嫉妬も羨望も抱かない場合が多いです。
人間は十人十色であり、個々の能力では他人に劣る部分があって当然と考えているためです。嫉妬も怒りと同様感情系だけが働き他の脳番地が働いていない状態です。
理解系や思考形の脳番地をまんべんなく働かせることで、より建設的に判断することができます。自律性自己肯定人間は周りから否定されても、心の奥底で自分自身を受け入れ肯定しています。
それは他人の意見や視線を全く気にしないというわけではなく、いわゆる聞く耳を持っているため他者の意見を取り入れる余裕もあります。
脳が常に変化し、成長し続けることを本能的に理解しているため欠点や能力の足りなさも、冷静に受け入れることができるのです。
5. 心の中から自己否定を追い出す
自己否定は客観的に知るだけでも、自然と回復しようとする規制が働きます。
先に登場した男性のように、気づかないうちに自己否定パターンにハマり、その状況を認識できていないことのが一番の問題。
脳に刺激を与えてフリーズした回路を動かせれば、負のスパイラルを脱却することができます。
では具体的に自己否定を追い出すための方法をみていきましょう。
右脳の自己否定を左脳で抑える
現代のような競争社会では、一部のトップの人しか肯定感を得られず、多くの人は自己否定感を背負わされてしまいます。右脳は雰囲気などを察知するので閉塞した社会の空気を感じ取り、自己否定的な思考になりがちです。
対して左脳は言語的な処理をする領域なので、言語による働きかけにより、左脳を活性化することで右脳の自己否定感を抑制することができます。
大事なのは左右の脳をバランスよく使うことですが、今の社会では放っておくと空気感に流され右脳が優勢になりがちです。
そのため、左脳を働かせることに意識を向けると良いです。
手先が器用でものづくりが得意だ、プレゼン能力は人より高いものがあるなど自分の強みを言葉にして再認識することで、左脳に働きかけましょう。
おうち時間を減らす
文字や写真動画などといった二次元の情報によって得たものを、知識経験。一方で、体を動かして実際に何かを体験することを、体感経験と言います。
おうち時間が多いと体感経験が減ってしまい、視覚系脳番地、聴覚系脳番地利害系の番地はフル回転しているものの、運動系のノー番地全く働いていないというバランスが悪い状況になることで、脳の働きが悪くなり、結果的に自己肯定感も下がってしまいます。
さらに著者が実際に自己肯定感の低い人を診断すると、ほとんどの人は体感経験が乏しい結果が出ているそうです。
ぜひ積極的にアウトドアの経験も増やしていきましょう。
迷ったら選択肢を増やす方を選ぶ
選択肢を増やすことは脳の働き方の理にかなっていると著者は言います。
健康な脳は様々な能満値を使うことで、脳全体が課題や問題に向き合う仕組みになっています。
しかし、自己否定感の強い人は問題や課題に直面した時にパニックになり、視野交錯に陥りさらに脳の働きを限定されるという負のスパイラルに落ちてしまいがちです。
そのため、意識的に視野を広げて様々な情報を脳の8つの脳番地を働かせて取り込むことが有効になります。迷ったら選択肢が増える方を選ぶをぜひ実践してみてください。
6. 自己基準を作る
日本人は、世間一般の基準や社会の基準に合わせる傾向がとても強いです。
実際に著者が脳番地の考えを提唱した時も、教授でもないのにと権威がないため否定的な意見が多かったそうです。
日本社会は他者基準が強いため、他者との比較で自分の位置が決まってしまいます。他人の優位性を認めると自分が下がってしまうため、相手を認めづらいという構図です。
そのため、自分の価値観と基準をしっかり持っていないと、ただ流されるままになり、他者基準になってしまいがちです。
しかし、そんな日本だからこそ強固な自己基準と、それに基づく自立型自己肯定感を作り出すことができると著者は主張します。
もともと個人主義の強い欧米であれば、意識せずとも自然に自己基準が優勢になるでしょう。
しかし、それは意識して作り上げたものに比べ、自己認知が弱い分もろいとも言える。一見不利に見える環境ではありますが、考え方を変えれば、その分恵まれた環境だとも言えるのです。
では、具体的に自己基準を作る方法を紹介します。
やりたいことを紙に書き出してみる
自分を肯定できるかどうかは、自分が本当にやりたいことができているかどうかという点が大きなポイントとなります。
脳は使わないと、スイッチを切る省力化という性質があり、そうなってしまうと当然意欲も生まれなくなってしまいます。
脳のスイッチを切らないようにするには、普段から脳全体をバランスよく使う必要があります。
やりたいことを考えると、まず前頭葉にある思考系番地が刺激を受けさらに紙に書くことで、運動系番地そして文字を読み返すことで、視覚系と理解系の脳番地が刺激されます。
さらに声に出して読めば、伝達系聴覚系にも刺激を与えることができます。
自己肯定感の強い人はこのように、脳の自主性とやる気を最大限活用しているのです。
人生の成功とは何かを決めること
これが曖昧だと、目標を立てることもそれに向けて努力することもできません。しかし成功の定義と言われても、大変難しいことです。
そこで著者は、自分で自分を褒めてあげられるかどうかを基準にしているそうです。
お金や肩書き出世などの他人との比較を前提にしたものを基準にすると、自律性とは離れてしまい難しくなります。
そうではなく、好きな仕事ができている幸福を感じることができているなど、できるだけ自分基準の尺度で定義することが、本当の自律性自己肯定感につながります。
手本とする人を設定する
尊敬する人がどんな自己基準を持っているか参考にしてみましょう。
自己基準だからといって、他の人を真似てはいけないわけではありません。
自分一人で考えるよりも経験が豊富な人の基準を元に考えた方が、成果を導きやすいもの。
また、必ずしも同時代の人でなくても構いません。歴史上の偉人や賢人たちの教えを自己基準の参考にするのもありです。
先人の英知と経験が凝縮した言葉は大きな参考になるはずです。
今回紹介した、加藤俊徳さんの「脳の名医が教えるすごい自己肯定感」についてはまだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですのでぜひ読んでみてください!