【総集編】山口周のビジネス戦略とアート思考、未来への提言まとめ(リベラルアーツ、教養、時代を生き抜く力)

時代を生き抜く考え方・哲学

 

山口 周(やまぐち しゅう)さんをご存知ですか?

電通や外資コンサルを経て、いまはパブリックスピーカーという世の中のご意見番としてもご活躍されている方です。山口さんの芯を食った提言や、ハッとさせられるアイデア、哲学的な深い思考は数々の書籍やコンテンツから読み解くことができます。

当ブログでは、多くの著書を要約して取り上げてきましたが、今回はそれらを一挙に振り返っていきます!

 

1. ニュータイプの時代

 

1冊目は、「ニュータイプの時代」です。

aerial view of city buildings during daytime

ニューノーマル時代に必要なビジネス戦略とは?山口周の『ニュータイプの時代』要約

 

これまでの社会では、従順、論理的、勤勉で、責任感が強い人が「優秀な人材(オールドタイプ)」として高く評価されてきました。しかし、それらは急速に価値を失っていると、山口さんは言います。

一方で、自由、直感的、わがままで、好奇心が強い人材が「ニュータイプ」として、今後は大きな価値を生み出し、本質的な意味での“豊かな人生”を送ることができるというのが、本書の核です。

現代のようにモノが過剰にあふれ、 「問題」が少ない時代になると「問題が解ける人」の価値は大きく下がります。その一方で、「誰も気づいていない問題を見出す人」は、相対的に大きな価値を生むことになります。

 

“グローバルニッチ”という戦略

それが可能となった背景として、“グローバルニッチ”があります。

例えば、日本というローカル市場で、5%しかいないニッチセグメントに絞ってビジネスを行えば、潜在顧客は600万人しかいません。それを、そのままグローバル市場に展開できれば、先進国だけでも12億人の人がいるので、市場規模は一気に10倍の6,000万人になります。

狭いニッチな層を狙う「フォーカス」と、大衆に広く届ける「スケール」を両立させることを狙う、“グローバルニッチ”という戦略が可能になったのです。

 

“意味がある”商品とは

例えば、製品には「役に立つ / 役に立たない」と、「意味がない / 意味がある」の2軸があります。このうち、勝者の総取りが発生して寡占化が進むのは、「役に立ち / 意味がない」領域。ICチップの市場における評価は単純で、コストと計算能力で決まります。「色合いが絶妙だ」とか「イタリアの職人が精魂込めて作っている」といった意味的なことは、ICチップの評価にはまったく関係ありません。

一方で、意味がある市場では、モノは高く売れます。自動車業界における、ドイツのBMWやベンツの車は、ほとんどが「役に立つし、意味がある」に含まれます。

また、コンビニの中には1品目で200種類以上も置かれている商品があります。それは、タバコです。タバコは吸う人によってそれぞれ異なる意味やこだわりがあり、マルボロを好む人は代わりにセブンスターを吸おうとはしないのです。

役に立つ市場を狙うか、意味がある市場を狙うかは、企業の戦略によって異なります。間違いなく言えることは、役に立つ市場は世界中の企業のごく一部しか生き残れない厳しいレッドオーシャンだということです。

 

本書は、今後は「役に立つ」ものを生み出せる組織よりも、「意味」を生み出すことができる“ニュータイプ”に高い報酬が支払われる時代になることを、様々なデータや例を通して示してくれる良書です。これからのビジネスにおいて、押さえておくべき内容なのでぜひ手に取ってみてください!

 

2. 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

 

2冊目は、「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」です。

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』要約(意思決定の新たな方法)山口 周

 

  • 様々な要素が複雑に絡み合う不確実な世界では論理的な思考では答えを導き出せない。
  • 変化の遅い世の中では明文化されたルールがあって、それを基準として判断することでもやっていけたが、変化の激しい昨今では倫理的に判断し後から法が着いてくるような状況が生まれている。
  • 新しい機能が世に出てきた時にはその機能の利便性で勝負できるが、それがコモディティ化(一般化)し、成熟してくると機能ではなく何がその人にとって美しいか、気持ちいいかという美的感覚が売れゆきに影響してくる。

 

といった理由から、直感や倫理観、審美眼といった「美意識」を持つことが重要だと山口さんは言います。それは他者や外部にではなく、内部に持つ自分の評価軸のこと。ただし、ただ直感を大事にするあまりにアート(感性や直感)が偉いんだと、非論理的になるのはNG。サイエンス(理性や論理)もどちらも大事です。

非論理的ではなく、超論理的なのがアート的な思考です。

しかし、アートとサイエンスどちらの主張もぶつかると、合理的なサイエンスが勝ってしまうのが今の世の中です。経営者層がアートを学び、アート的な思考・アイデアをトップダウンで進めるか、デザイナーに一定の権限を移譲してしまうといったやり方が考えられます。

 

3. ビジネスの未来

 

3冊目は「ビジネスの未来」です。

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5分で学ぶ『ビジネスの未来』要約(GDPの本当の意味、資本主義とは何か?)【山口 周】

 

ビジネスは歴史的にその使命を終えている”というのが、本書の立ち位置です。経済停滞していると言われている現在の日本の状況は、物質的生活基盤がやっと達成された、言うなれば「祝祭の高原」とでも表現されるべき状況だと山口さんは言います。

経済覇権を奪い合うフェーズはすでに終えていて、これからはいかに人類全体が共生して幸せになっていくかを考える段階になっているのではないか。

というのが本書の提言です。

 

これにより起きているのが、消費の非物質化物質的欲求が満たされた私たちは、生活必需品でないものや承認欲求にお金を使うようになってきた、というのが最近の傾向です。

一方で、需要がなかったところへ無理に需要を生み出し、消費者が気づいていない不満をあぶり出し、解消させることで、人々は人工的に欲求不満にさせられ続けています。私たちは何のために仕事をするのか、何のために生きるのか、新たな価値観を考える段階にきています。

また、飽和状態である世の中で、まだ取り残されている経済合理性では解決できない社会問題を解決するために、衝動に突き動かされた人たちを守るためのベーシック・インカムのような、経済的セキュリティネットの実装の必要性も本書では語られています。

 

4. 世界観をつくる

 

4冊目は、水野学さんと山口周さんによる対談の形式の書籍 「世界観をつくる」です。

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ブランディングの鉄則!水野 学 × 山口 周『世界観をつくる』要約(センスいいデザイン)

 

 “世界観” とは、どういう意味なのか?

それは、私たちの社会や組織が新しい世界を構想する力です。今日の世界においては、正解が供給過剰になっていて、その価値を下げています。一方で、解決すべき社会問題はどんどん希少化し、価値が上がっています。要するに、正解を出せる人よりも、問題提起できる人の方がずっと希少で、価値がある状況です。

 

ここで言う、“問題”とはありたい姿と、現在の姿のギャップ」。ありたい姿が明確に描けていれば、そこに必然的に問題は生まれてきます。いま多くの業界・領域で、この問題が希少化しているのは、私たちの社会や組織が新しい世界を構想する力 = 世界観を失ってきているためです。では、どうすれば世界観はつくれるのでしょうか?

意味をつくる、物語をつくる、未来をつくるの3つの視点から世界観のつくり方を解説しています。

 

5. 文化・アートをRethinkせよ!

 

最後は書籍ではありませんが、Newspicksという経済メディアのオリジナルコンテンツ、Rethink Japanを紹介します。この動画は、経営コンサルタントの波頭亮さんが、山口周さんをゲストに迎え、文化・アートの側面から日本の未来を見つめ直す内容となっています。

ここまで紹介してきた山口さんの提言、先進国の経済は飽和状態であるということを起点に、GDPは戦争などの破壊によって成長していくことを前提とした考えであることや、いまの教育が経済成長のためにいかに人々を社会システムに取り込むかを目的としていることなど、ハッとさせられる考察が数多く登場しますよ。

資本主義はオワコンか?【山口周×波頭亮】文化・アートをRethink!GDPの成長って必要?

 

(余談)長濱ねるさんとのラジオ番組

山口さんは毎週土曜日15時から、元けやき坂の長濱ねるさんと「BIBLIOTHECA」というラジオ番組を放送しています。毎回1つキーワードを決めて、それについて深掘っている面白い番組ですので、合わせて聴いてみてください!

■放送局:J-WAVE 81.3 FM
■番組名:『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』
■放送日時:毎週土曜15:00-15:54
■ナビゲーター:山口周、長濱ねる
■番組公式サイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bibliotheca/
■番組概要
週末にオープンする図書館へようこそ!本を通して未来へのヒントを探します。
この番組は週末にオープンする図書館。館長は著作家・パブリックスピーカーの山口周さん、そして司書は長濱ねるが務めます。ここには、よりよい社会や生き方のためのヒントが詰まったあらゆる本が所蔵されていて、その中から毎回テーマに沿った「より良い社会」への参考となる本や、日常の中で考えたり、前向きになるきっかけになる本を紹介します。図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできないレア音源を特別に試聴するコーナーも!

 

著者紹介

出典:brain.co.jp

山口 周(やまぐち しゅう)
電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活躍。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』などの著書がある。

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