世の中で優良企業と言われている会社は、何が優良なのか?
この記事では、「ビジョナリーカンパニー」を取り上げます。
本書は1994年にアメリカで出版され、5年連続で全米ベストセラーになった本。
内容としては、卓越した企業に共通する点を見つけ出し、時代を超える最高の中の最高である優良企業“ビジョナリーカンパニー”であり続ける法則を導き出しています。
いったい、どんな法則があるのか?
さっそく内容を見ていきましょう!
1. 時計を作る経営者
著者であるマッキンゼー出身のジェームズ・C・コリンズさんは本書の中で、最高の中の最高である優良企業“ビジョナリーカンパニー”を見つけ出す試みをしています。
方法としては、雑誌フォーチューンの上位500社を調査対象とし、現役CEOにアンケートを取り、6年間にわたる綿密な調査の末に、“ビジョナリーカンパニー”と呼ぶにふさわしい会社を選び出しました。
選ばれたのは、次の18社です。
3M
アメリカンエキスプレス
ボーイング
シティ
コープ
フォード
GE
ヒューレッドパッカード
IBM
ジョンソン・エンド・ジョンソン
マリオット
メルク
motorola
Nordstrom
P&G
フィリップモリス
ソニー
ウォルマート
ウォールト・ディズニー
その上で、これらのビジョナリーカンパニーの優れた本質を理解するために、競合にあたる会社で優秀ではあるがビジョナリーカンパニーの水準には及ばなかった企業と比較をします。
まず大きな違いの1つとして、ビジョナリーカンパニーには“時を告げる経営者”ではなく、“時計を作る経営者”がいます。
時を告げる経営者とは、社員に対して一方的にミッションを与えるような経営者。
本書では、カリスマ的なビジネスセンスを持った指導者が一気に業績を上げたような、一見絵に描いたような成功をした会社は、ビジョナリーカンパニーではないと考えています。
そうして作られた商品やサービスには必ず終わりが来るため、ビジョナリーカンパニーを築く上ではむしろ障害になりかねないです。
ビジョナリーカンパニーの経営者は、時代の変化や逆境に耐えられるよう、社員全員がいつでも見ることができる“時計”を作っています。
その時計とは、基本理念のことです。
ビジョナリーカンパニーでは、基本理念を何よりも大切に扱い、維持することに全力を尽くしています。
基本理念を維持するために、多くのビジョナリーカンパニーが設定しているのがBHAG(Big Hairy Audacious Goals)と呼ばれる、社運を賭けた大胆な目標です。
2. ディズニーに向かない人がいる理由
ビジョナリーカンパニーでは、基本理念に沿うかたちで、目標(BHAG)を5~10年単位で設定し、その実現に社員を集中させます。BHAGには、
- 困難だが、実現不可能ではない
- 達成できたかどうかが、誰の目にも分かりやすい
- その達成をイメージすると、社員がたまらなく気持ちを鼓舞される
という特徴があります。
例えば、航空技術の最先端に位置するリスクを取ることを基本理念とするボーイング社では、財務的に厳しい勝負をしてでもボーイング707、747といった機種の開発に挑み、高い成果を出し続けています。
なお、すべてのビジョナリーカンパニーの基本理念に含まれる共通の要素というのはありません。むしろそれぞれの企業の基本理念は全く違っており、大きく偏った理念を持っています。
良い会社=新興宗教?
また、それぞれの理念に合う人にとってビジョナリーカンパニーは天国ですが、合わない人が入社すると、まるで病原菌のように追い払われるという特徴があります。
ウォールト・ディズニーでは、採用したすべての従業員に“トラディション”と呼ばれる研修を受けさせます。
これは、ディズニーの魔法のイメージを徹底的に守るという理念を維持させるものですが、この魔法の国に合わないイメージを持つ社員は、自動的かつ徹底的に排除される仕組みになっています。
まるで新興宗教のようなカルト思わせますが、ビジョナリーカンパニーはこうした排他的な空気を持っていることが特徴だったりします。
3. 大きな理念と小さく強い実験的思考
ビジョナリーカンパニーは、基本理念では大枠の目標を設定していますが、その実現方法については細かく規定をしていません。
とりあえず、思いついたものは徹底的に小さく試して、そこで成功したものを拡大すればよい、という極めて強い実験的思考を持っています。
例えば、3Mはポストイットを偶然に発明し、ジョンソン・エンド・ジョンソンはある社員が妻の小さな怪我を治すために使ったアイデアをバンドエイドとして製品化しました。
ビジョナリーカンパニーは、偶然を生かして大きく成長させる環境をつくることに力を注いでいるのです。
最後にもう1つ、ビジョナリーカンパニーの大きな特徴を紹介します。
それは、ビジョナリーカンパニーは強豪に対する勝ち負けを意識するのではなく、どうすれば明日、今日よりもうまくやれるかという点をどこまでも追求するということ。
そのために、不安定を自ら生み出すことが仕組み化されています。
その1つが“ANDの才能”と呼ばれるものです。
例えば、長期的な目標達成のために投資を行いつつ、短期的な収益をあげることも実現するというような対立する二つの要素について、どちらも諦めずに達成する方法を考えるよう社員に求め続けます。
ビジョナリーカンパニーは、決して現状に満足することなく、進歩せずにはいられない状態を作るのが上手いのです。
- ビジョナリーカンパニーには、“時計(=経営理念)を作る経営者”がいる
- ビジョナリーカンパニーは、その理念が合う人にとって天国
- ビジョナリーカンパニーは、偶然を生かして大きく成長させる環境をつくる
- ビジョナリーカンパニーは、対立する二つの要素で不安定を自ら生み出す
以上、「ビジョナリーカンパニー」の要点をまとめてきました。
とても緻密な検証に基づいていて普遍的な内容について書かれているということが、この本が名著として語り継がれている大きな理由です。
より詳しく知りたいと思った方は、ぜひ本書を手に取って読んでみてください!