抽象的に物事を捉えるのは、得意ですか?
この記事では、細谷功さんの書籍「具体⇄抽象トレーニング」を紹介します。
もっと判断力や決断力を身につけたいと切望する、ビジネスパーソンに思考力アップの極意が分かりやすく書かれています。著者は、ビジネスコンサルタント&著述家。本書は以下ような構成になっています。
今回はこの中から、重要なポイントに絞って解説していきます!
1. 具体抽象を往復すると思考力がアップする
本書のタイトルが、具体抽象トレーニングと、タイトルからしてちょっと難しそうなイメージがありますが、ざっくり言うと具体と抽象の往復をする思考回路を持つと、思考力が劇的にアップするということです。具体抽象ってどんな意味かご存知でしょうか?
まず前提として、具体と抽象は総体的な概念です。対比することによって、どちらが具体でどちらが抽象化か決定します。例えば、大きい小さいは、何に対してという定義がなければ決定できません。
山は大きいですが、地球と比べれば小さい。蚊は小さいですが、原子レベルで見ればかなり大きい動物になります。山は大きい、蚊は小さいというのは、私たち人間から見てという定義があるため、決定できたもの。
まずは、単純に対比することで、定義が決まると覚えておいてください。著者は、性質もまとめています。
具体と抽象の性質
- 具体:個別、特殊、五感で感じられる実態、個々の属性
- 抽象:集合、一般、五感で感じられない概念、二者以上の関係性、構造
といった感じです。ここで果物を例に挙げると、果物の抽象度を上げていくと、
果物 < 食べ物 < 生物
となります。反対に具体度を上げていくと、
果物 > ブドウ > ピオーネ,デラウェア,マスカット…
と枝分かれしていきます。つまり、抽象度が上がれば上がるほど、一般的になり、具体性が上がれば上がるほど、個別の事象になります。以上を踏まえながら、頭の中でこの抽象と具体の行き来をすることで、把握を劇的にアップさせることができます。
2. 抽象化は一つにまとめていくこと
具体と抽象がなんとなくイメージできました。次に気になるのが、どうすれば具体化抽象化できるかです。ここからは、具体と抽象のプロセスをご紹介していきます。まずは、抽象からいきましょう。抽象化のプロセスとは、具体的な個別事象から抽象的な概念への交換のことを指します。マスカット、果物といった感じです。
ではどうやって、マスカットを果物にするのか、本書では抽象化のプロセスを複数紹介していますが、この記事では、とりわけ実践できそうな2つを紹介します。
まとめて一つにすること
これは抽象化の最もスタンダードな方法で、分類することです。同じ属性を持ったもの同士をまとめて一つに扱うことで、抽象化していきます。例えば、白い丸、三角、四角、黒い丸、三角、四角という絵がたくさんあったとします。これを、形別・色別に分けて分類することが、まとめて一つに扱うという抽象化のプロセスです。
この分類は、さらに上位へと発展させることができ、上位へ進めば進むほど抽象度は上がるということです。もう一つのプロセスが、一言で表現することです。これは文字通り、膨大な情報量を短く集約してしまうことです。
例えば、300ページあるビジネス書を○○すれば成功すると一言で表現することです。気をつけなければならないのは、目的に応じてということです。そのビジネス書で、心構えが目的の人と成功の手法が目的の人では、表現の仕方が変わるでしょう。以上をまとめて一言で表現することで、抽象化することができるのです。
3. 具体化はまとめたものを細分化していくこと
抽象化は個別から集合へと変換させることでした。次は、具体化するためのプロセスです。具体化は単純に抽象化の逆だと思われた方が多いかもしれません。半分正解で、半分不正解。著者はこう述べます。
「具体化のプロセスは抽象化で得られた法則やルールを、再び具体化して関心のある分野に適用して、実行までつなげること。」
半分正解半分不正解というのは、単純にある事柄を具体化していくことではなく、一度抽象化したものを再び具体化し、それを実践に活かすことだからです。
自由度を下げる
では、その具体的プロセスを1つ紹介します。それは、自由度を下げることです。抽象化とは、いわば自由度を上げること。自由度を上げるとは、選択肢を増やすことです。
例えば、“カツ丼を食べたい”の抽象度を上げると、“和食が食べたい”になります。これをされに象度を上げると、“食事したい”になります。食事したいとなると、メニューの選択肢が広がり、自由度が高くなります。
抽象化が自由度を上げることであれば、具体化は必然的に自由度を下げることになります。自由度を下げるとは、選択肢や変数を絞り込んでいくことです。変数とは問題のことです。選択肢が絞り込まれると、何を実行すればいいかわかるようになります。
抽象化によって、何が本当の問題かを考え、それを具体化して問題を絞り込み、その問題の解を絞り込んでいくことで、質の高い問題解決ができるようになる。以上を踏まえ、具体化するには自由度を下げることが必須だったのです。
4. コミュニケーションのギャップは視点の欠如から始まる
本書は具体と抽象を往復することで、思考力をアップさせるというものですが、思考力をアップさせると何が起きるのでしょうか。具体的には、コミュニケーションギャップを解消しストレスを減らすことができるということがあります。
ここからは、コミュニケーションギャップの解消について解説します。そもそも、コミュニケーションギャップが生まれてしまう原因はなんでしょうか?
著者は、私たち一人ひとりの経験や知識、あるいは思考回路が異なることによって違うものを見ていることに気づいていないことであると言います。違うものを見ていることに気づいていないとは、知識の抽象化の差に気づいていないということです。
想像すればすぐにわかることですが、知識がたくさんある人とそうでない人では、話がうまく噛み合いません。
抽象化の差
また、抽象化の差も原因の一つです。自分の見ている世界の抽象度が違うと、コミュニケーションにズレが生じます。
例えば、会社では企業理念や経営者の方針が抽象度の底辺にいなければならないのに、従業員が抽象度の底辺だったら、すでにそこでキャップが生まれるでしょう。このギャップを防ぐには、やはり具体と抽象の違いを理解することです。
よくある例が、本社と現場のコミュニケーションギャップです。本社が抽象度の上位とすると、現場は具体度の下位に位置します。ここで見ることは、抽象度が上がると、すべて同じになるということです。全体会議で現場代表の人が何か発言したら、現場を知らない人にとっては、それが現場のすべてに聞こえてしまいます。
しかし、これは現場の人の一人の意見であり全てではないです。現場は一つではなく、さらにそこで働いている人も1人ではないので、一意見として受け止めなければなりません。重要なことは、現場に足を運んで何人かから話を聞くことで、抽象度を下げること。
コミュニケーションギャップは、視点の欠如が大きな原因だったのです。
今回は、細谷功さんの書籍「具体⇄抽象トレーニング」の超重要なポイントのみに絞って紹介してきました。興味のある方は、この機会にぜひ読んでみてください!