この記事では、ビジネスマンの必読書として有名な「エッセンシャル思考」を紹介します。私自身、この本と約4年前に出会ってから日々の仕事について意識的に優先順位を付けたり、これ本当に必要?とよく考えるようになったりと、多大な影響を受けました。
著者のグレッグ・マキューンさんは、このエッセンシャル思考を実践するためのコンサルティング会社THIS Inc.のCEOで 、Apple、Google、Facebook(Meta)、Twitter、LinkedIn、Salesforce、Symantecといった、シリコンバレーの有名企業にアドバイスを行なった実績があります。最近も書籍「エフォートレス思考」が、大変人気を博しています。
それでは“より少なく、しかしより良く”をモットーとした、本書の中身をみていきましょう!
1. 本当に大事なことは少ない
まずはエッセンシャル思考の人と、そうでない人の違いを見てみましょう。
この図から分かるように、エッセンシャル思考でない人は、むやみやたらに何にでも手を出してしまう人のことを言います。一見、何でも要領よく多くこなすことができるのは、優秀だと思いがちですが、エッセンシャル思考では重要だと思える仕事に集中して取り組むことが大切だとされています。
何でもやろうとすることは裏を返せば、無力感・諦め・から元気といったことへ繋がり本質的なことへ取り組むことができないためです。また、これを補足する説明として以下があります。
パレートの法則
成果の80%は、20%の努力(仕事)に起因するという法則。
すべての事柄がこの法則の%になるかといったらそうではないですが、だいたい似た割合に収束すると言われてます。努力の量が成果に比例しているということではないこと、ある種の努力が他を圧倒することもあるということが分かっています。
大多数の物事には価値がなく、ごく少数の物事に莫大な価値があるということを認識しておくだけでも大切かと思います。
成功のパラドックス
これは優秀な人ほど頼れる人のレッテルを貼られて、多くの雑多な仕事が降りかかってきて、本当にやりたい仕事ができなくなるという矛盾です。優秀な人は物事の多くのことが見えてしまうがゆえに、ついつい手を出してしまうということもあると思います。
働きすぎることは簡単ですが、働かないようにどう制御するかは難しいものです。やらないよりはやったほうがいいというのは嘘で、そのやらなくてもよい仕事をやらないことで、本来やるべき仕事に時間が割けるということを意識して“その仕事が本当に必要か”ということを常に問うことを続けることが重要になります。
トレード・オフを意識する
全てを同時に手に入れることができないことを認識し、戦略的にポジションをとることは大切です。
例えば、ある航空会社は2都市間を単純につなぐ「ポイント・トゥ・ポイント」路線にこだわり、機内食を出さないといった徹底したローコスト化を進めたことで大きく利益を上げましたが、他の航空会社はここまで戦略的にサービスを捨てきれず、中途半端な結果になったという事例があります。トレード・オフが当たり前だと意識し、価値が相容れない状況ではビジョンや方針・姿勢といったもので判断していくことが成果を生み出します。
2. 重要な仕事を見極める方法
重要なことにフォーカスして取り組むことに価値があることが分かったところで、ここからは何が重要かを見極める方法について解説します。
考える時間をつくる
これは、最も意識すべきことです。日々の仕事に忙殺されていると、脊髄反射で仕事を引き受け、何が本質的かなんて考えている暇がないとか、考えている時間は他人からは何もしていないと見られてしまうもではという現状があるかと思います。
しかし、エッセンシャル思考の人は集中できる時間をつくり、ペンとノートで書き出すようなじっくり考える時間を最も大切にします。集中するには集中できる環境に自分を意識的に置くことが重要で、カフェに行く等で可能となります。やるべきことを正しく選ぶことが結果として、大きな見返りがあるということを意識して考える時間を積極的に作りましょう。
情報をフィルタリングする
会議や打合せで、語られた内容から必要な事柄を取捨選択し、部分的にピックアップすることは大切です。議事録を作成する際はもちろん意識することだと思いますが、作成しなくても脳内で反芻するだけでも大分違うと思います。
また、口からは語られていないが、本質的にはこんなことを言いたいのでは?という部分に耳を傾けることも大切と書かれていますが、これは難易度が高いです。
90点ルール
自分の中で、仕事の優先順位を常につけ、90点以上だと思えることに取り組むことです。実際には採点が厳しすぎて何もやる必要なし!となってしまうかもしれないですが、その中でも高得点のものから優先的に取り組んでいくことが大切です。
また、先のパレートの法則にも繋がりますが、仕事で60点くらいの出来高はすぐに達成でき、そこから80点以上にすることに膨大な時間を要することを意識して、本質的ではないけれどやらないといけないことは、60点で早々に手を離し、重要なことにできる限り時間を割くことにしましょう。
別の視点で見る
点数のつけ方には、自分目線と会社視点で複合的に点数をつけてみることも重要です。客観的な視点を持ち込むことで、事態の新たな側面が見えてきて、優先順位が上がることもあります。
3. 捨てる技術
重要な仕事を見極める方法の次は、煩雑な仕事を捨てる方法を解説していきます。
完全に明確にすること
設定した目標が、何を達成したら成功と言えるかを明確にし、目標から部署の目標、個人の目標、年間・月間の目標、日々の目標まで落とし込むことで、今どこにいて次にすべきことが何かを常に俯瞰しながら取り組むことができます。
例えば、自社製品を売ることを目標とした時、どの期間に、どのターゲットに向けて、どの程度売る?ということを細かく設定し、仕事に落とし込んでいくというものです。
上手く断る
優先したい仕事がある時に、突発的な注文は飛び込んでくるものです。そんな時には、今自分が取り組んでいる仕事が、完全に明確に優先であることを伝えることで、譲歩してくれる可能性が生まれます。あいまいにイエスと安請け合いするのではなく、その仕事の重要性を遠回しに聞くなどしてみるのもいいかもしれません。
避けなければいけないのは、上司に嫌われることではなく、何でも引き受ける何でも屋にならないことです。短期的な気まずさよりも、長期的なメリットに目を向けるということです。年功序列のタテ社会では出世はできないかもしれませんが、成果や達成感はついてくることでしょう…
4. エッセンシャル思考の仕組化
最後は、個人でエッセンシャル思考を習慣化したり、実践しても孤軍奮闘で難しいので仕組み化してしまおう!ということを解説します。
布教活動
エッセンシャル思考のチームをつくれたら、同じ考え方で動くことができて、目標への到達もより早くなると思います。上述までの考え方をいきなり押し付けても、なんだこいつ!となり兼ねないので、日々の行動・言動での他者への問いを続けることや、自分が無駄な仕事を振っていないかなどを顧みることで、“より少なく、しかしよりよく”を徐々に布教することはできると思います。
まずは、エッセンシャル思考を実践し続けて、業務時間は短くても成果を出すやつになることで背中で語るじゃないですが、あとに続く人はきっと現れるでしょう。
この本については、本質的な仕事のためにドライに追い詰めていくような内容に思えてしまった人もいるかと思いますが、決してそんなことはなく、以下のような金言も多々あるので、じっくり読んでみる“本質的な価値”があると思います。
遊びを重視する
どこにもたどり着かない行動(遊び)は、一見無駄なことのように思えますが、遊びほど脳を奮い立たせるものはない。くだらないと思う、小さな遊び心こそが何より大切です。