いきなりですが、努力が報われると思いますか?
この記事では、脳科学者・中野信子先生のベストセラー「努力不要論」を紹介します。この本を読めば、
- 努力は報われるのか
- 努力の成果が全然出ないのはなぜか
- 努力は才能に勝てないのか
の答えが分かります。
生まれつきの能力が足りないのは仕方がないけれど、努力すればなんとか成功できるかもしれない。
うだつが上がらない日々が続いているのは、自分の努力が足りないせいだと考えているとしたら危険です。きっと人生に影響を与える気づきがあると思うので、最後まで読んでみてください!
1. 努力の洗脳マジック
中野先生は、脳科学者として脳の研究する過程で、能力は生まれつきどれぐらい決まるのか、努力でどれぐらい変えることができるのかについて、一定の知識を得てきました。そして、それらの知識で世の中を眺めると、無意味な努力を重ねさせられ、搾取されてしまう人が多いことに気づいたそうです。
努力が足りないという考え方は、ブラック企業がよくやる洗脳マジックです。
- がんばれば、報われる。
- 営業成績が悪いのは努力が足りないせいだ。
- だから、もっと努力して成果をあげなさい。
企業は努力を美化することによって、あなたを搾取しようとします。企業からしてみれば、コツコツと努力を重ね、サービス残業してくれる社員は非常に都合がいいからです。
言い訳の努力をやめる
対して著者は、見栄を張るためとか、周囲に自分を認めてもらうためなどといった、自分自身に言い訳をするための努力はもう止めよう言います。「できるだけ努力しないで生きていこう!」と、自己啓発とは真逆に聞こえる主張をします。
本書は、不本意な努力を無意味に重ねてしまっている人に、本来の自分を取り戻してもらうことを目的に書かれています。そうした視点でここから続く話で、努力というものを正しく理解し、搾取されずに正しく生きていく方法を理解していきましょう。
2. 努力すれば報われるは本当か
まず一番気になるのは、努力は報われるのか?ということです。脳科学的な見知から言えば答えは、“半分は本当で、半分は嘘” です。
努力は報われるが本当な面
半分本当という理由は、人体の機能という側面から説明できます。人は日ごろ、持っている力のすべてを出し切って生きていません。最大の半分ぐらいしか、力を出していないです。
なぜなら、全力を出し切ってしまうと体へのダメージが大きくなりすぎるため。脳は本当の限界よりも、だいぶ手前でブレーキをかけます。少し余裕を残しておかないと、回復に時間がかかり過ぎるのです。そうしなければ、休んでいる間は外敵から身を守ることも逃げる事も出来ず、自分を危険な状態にさらすことになります。ブレーキをかけるのは、自分を守るための生物としてのセキュリティ機能なのです。
脳はそのサイズに対して、酸素を必要とする量も、栄養を必要とする量も、他の機関に比べで飛び抜けて多いことが分かっています。そのため、なるべく無駄なことはせず節約しないと、すぐにエネルギー切れになってしまいます。しかし、エネルギー節約のために、覚えない、考えないままでいると、脳に負荷がかからず、発揮できるパフォーマンスはどんどん落ちていきます。この脳への負荷が、努力に当たります。
逆に言えば、努力をすれば自分の能力を最大まで引き出せる体に近づけられるということ。同じポテンシャルを持っていても、努力する人はパフォーマンスを発揮できる、努力しない人は6割のパフォーマンスしか発揮できないといった差は生まれるのです。これが、努力は報われるという言葉の嘘でない部分です。
努力は報われるが嘘な面
一方で、才能は遺伝的によってある程度決まる側面では、努力が報われるというのは嘘です。スポーツに才能があることは明らかですが、学習においても受験向きの脳に生まれるかどうかで、成績はほぼ決まってしまうそうです。
受験というのは、エピソード記憶の良い人が成績を収めるという研究結果があります。みなさんの学生時代にも、授業を聞いているだけなのにテストでいい成績をとれてしまう人と、徹夜で勉強してようやく満点が採れるガリ勉の人の2種類がいたはずです。授業を聞いているだけで点数が取れてしまう人は、エピソード記憶が優れているんですね。
しかし、エピソード記憶がさほど良くない人は、勉強でかなり努力する必要があります。ということで、努力をすれば報われるのは半分が嘘で、運動や勉強などほぼ全てのことに遺伝・才能が関係している。半分本当な部分は、努力をすれば自分のポテンシャルを最大限近くまで引き出すことができるから、ということが理解できたのではないでしょうか。
3. 自分の才能を把握する
では、私たちはどう努力していくべきなのでしょうか?
重要なのは、自分の才能を把握することです。才能には遺伝的な差があるため、自分にどんな才能があるかを知ることから始めましょう。
人は誰しも、何かしらの才能があります。何も才能がないと思っている人にもあります。では、自分の才能はどうすれば見つかるのでしょうか?
自分なりの評価軸を持つ
考えられる方法は、自分なりの評価軸を持つということです。バレエを例にとると、バレエにはキャラクター・ダンサーと呼ばれる人がいます。いわゆる脇役で、主役ではないけれど舞台を盛り上げるには必要不可欠の人たちです。主役になることだけを想定し、客観的な評価軸でのみ評価をすると大半の人は才能がないということに。
しかし、人生における自分の評価軸の設定は自由です。自分は一番手に向いておらず、キャラクター・ダンサーのほうが向いているなと思えば、それを選択していくのは賢い生き方になります。才能があるかないかは、自分が持っている適性を知り、自分の評価軸を確立できるかどうかに尽きるのです。
そうした意味で、才能のない人というのはこの世に存在しません。自分に何ができるか、分かっているかいないかの差だけです。受験の偏差値のような一つの評価軸しかない世界では、それでのみ才能の差が出てしまいます。勉強に向いてないと思ったら、評価軸を変えて別のルートを探るという戦略が大事です。
自分の嫌いなところに気づく
また才能を見つけるには、自分の嫌いなところに気づいているかどうかがポイントになります。例えば、失敗しても反省しないのは、怒られたり失敗を繰り返したりしてもめげないという資質を持っていると言えます。
エジソンは、こういうタイプの人でした。ものすごい数の失敗をして、上手くいかない方法を数多く発見したと誇ったそうです。記憶力が悪いということは、逆に言うと嫌なこともすぐ忘れられるということ。嫌なことを適切に忘れられる才能は、嫌なことから早く立ち直れる、心が強いと言い換えることができます。まず自分の嫌いなことを書き出してみて、それをポジティブに言い換えてみると、そこから自分の才能が見つかるかもしれません。
4. 努力しない努力をする方法
最後に、努力しない努力をする方法を解説します。
著者は、できるだけ努力しないで生きる考え方が、最も大事なことであると主張します。例えば、自分ができないことを把握すると同時に、自分の周りにいる人の適性を観察してできないことをお願いする。これは、人類が生き延び、繁栄することができた最も重要な戦略です。
他人を見る目を養う
そのためには、自分のできる / できないを正確に把握する必要がありますし、他人の才能に気づく目を養う努力は必要になります。そして、努力して養われた目は、決して無駄にはなりません。また、人に気持ちよくお願いをするトレーニングもした方がよいでしょう。才能のある人を動かすためには、他人を褒めまくれと著者は言います。
人は自分のことを理解してくれた、自分の話を聞いてくれた、自分でも気づかないところを見抜いて使ってもらえたということに、とても嬉しく感じる性質があります。そこから、相手に好意を持つようになり、相手のために動くようになるのです。努力をしない努力というのは、他人の才能や長所を見抜き、上手に褒めることで自分の出来ないことを他人に任せる能力であると言えるのです。
今回は、「努力不要論」を解説してきました。本書には、まだまだたくさん努力についての考察・事例が載っています。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。