“孫氏の兵法”を知っていますか?
「孫氏」とは、今から2,500年ほど前、戦争などにおいて兵の用い方を説いた書物。
中国春秋時代の武将軍事思想家である“孫氏”によって書かれ、戦争に勝利するための戦術が理論的に記されています。
その中身は人間に対する深い洞察によって裏打ちされたもので、多くのビジネスマンやスポーツ選手がバイブルとするほど、現代においても応用できる活きた内容です。
この記事では、そんな“孫氏の兵法”について書かれた「眠れなくなるほど面白い孫氏の兵法」を取り上げます(AmazonPrime会員はKindleで無料で読めます!)。
- 孫氏の概要を理解したい
- 敵に負けない方法を知りたい
- リーダー論としてビジネスに生かしたい
という方は必見の内容になっています。
どうすれば敵に負けることなく、利益を獲得することができるか。
さっそく、中身を見ていきましょう!
1. 戦いを軽々しくを行ってはいけない
まずは、孫氏に学ぶ、戦う上での心構えについてです。
物事のほぼすべてのことには、利益と害悪の2つの側面があります。
利益はもちろんたくさん手に入れたいものですよね。しかしそれだけに注目していると、いつか必ず大きな失敗に陥ってしまいます。
一方で、害悪ばかりをに目を向けても、それはそれで何一つとして前に進みません。
そんな中で、大きな困難に出会うことなく、利益を求めて計画通りに進められる人もいます。
彼らは決して利益だけを見ていて、害悪を全く恐れていないわけではありません。利益と害悪の両面を知った上で、それらを巧みに利用しているのです。
例えば、相手が自分たちにとって不利な事業に着手しようとしているとき、相手のその事業に伴う損害を並べ、相手に考え直すように促します。
また逆に、相手を大したことない事業で浪費させたいときには、その事業の利益ばかりを強調し、害悪に目が向かないように注意を向けさせます。
そんな悪いことできない!と思うかもしれませんが、ビジネスという名の戦場においては、当たり前のように考えるべきことです。
もし敵対している相手があなたに心地の良い言葉を並べてきた時は、警戒心を持たなければ危険が伴います。
相手の戦略にまんまとはまらないように、用心することが大切です。利益と害悪の両面を巧みに利用すれば、勝負に勝つ可能性は高まります。
むやみに争いを起こさない
しかし、もしビジネス場においてあなたが相手に勝負を挑むとき、たとえ自分の方が力を持っている時でも、むやみに争いを起こしてはいけません。
孫氏には、「戦争とは国家の大事なり、軍が最大限の力を発揮するためには、上下の心をひとつにする必要がある」と書かれています。
兵から疑念を抱かれてしまえば、戦い恐れる心が強くなり、士気が弱まる可能性が高くなります。
兵に疑念を抱かせずに従わせるために大事になるのが、日頃の行い。
終始公正な態度をとり、信頼関係を構築していなければ、兵はあっという間にやる気を無くし、言うことを聞かなくなってしまうのです。
これでは、戦いどころではないですよね。
リーダーが考えるべき5つのこと
兵を収めるリーダーが考えるべきこととしては、道・天・地・将・法の5つがあります。
それぞれ、
- 道:国内における政治の正しいあり方
- 天:気象条件の良し悪し
- 地:地理的条件
- 将:指揮官の能力
- 法:軍法
を表しています。
信頼関係を築くには、まさに道で大切です。将もこれに関連しており、兵を預かる指揮官には以下のような資質が必要となります。
- 物事を明察する知力
- 部下からの信頼
- 部下への思いやりの心
- 困難にも挫けない勇気
- 規律を保つ厳格さ
などです。
これらを持ち合わせた指揮官が、初めて軍隊に適用される特別な法体系の軍法を明確に用いることが出来るのです。
この5つの基本事項に一つでも不安があるなら、戦いを仕掛けてはいけません。戦いは一大事であり、軽々しく行ってはいけないということです。
2. 余計な指示が現場を混乱させる
国の最高権力者である君主には、その補佐役となる指揮官が存在します。
会社でいうと君主は社長やCEO、指揮官は部長や次長などです。この君主と指揮官の関係によっては、国の明暗は大きく分かれます。
君主と指揮官が信頼関係で結ばれ、親密であれば国は安泰。
しかし関係が疎遠であれば、国は必ず弱まっていきます。
例えば、指揮官が戦地に出払っていて不在の時には、君主に取り入ろうとする者や、敵国に内通して亀裂を広げようとする者が出てくるでしょう。
こうした状況下でも、君主と指揮官の関係が強ければ危険を回避することができますが、疎遠であれば、小さな亀裂から組織は簡単に弱まってしまうということです。
また、君主と指揮官に信頼関係があるなら、君主は指揮官に細かな指図をすべきではないです。
なぜなら、君主は戦場の前線のことをよく知らないからです。
目の前の状況に合わせて対処する
もし、前線で戦う兵士たちが、君主と指揮官それぞれから指示された場合、どちらに従えばいいか惑いますよね。
これでは指揮系統が乱れ、軍としての軍形が守れず敗北は避けられません。
もちろん現代のビジネルの場においても同じことが言えます。
管理側と現場の意見が一致せず、社員が疲弊していくことはよくあります。
組織のトップは指揮官を一度任命したら、すべての権利をその指揮官に委譲すること。
そして、現場の指揮に一切干渉しないことが大切です。
また、指揮官側もトップからの命令に対しても、すべて絶対服従ではいけません。目の前の状況に合わせて対処することを、最優先するべきです。
開戦前は指示系統が保たれていた軍隊でも、乱戦になれば陣形は乱れ、混乱が生じる場面は必ずあります。
それにより、どんな軍隊でも劣勢に陥れば戦力が低下してしまうのです。
指揮官は軍の編成を整え、場面に合わせて統制を取る。軍全体の士気を高め、戦闘に突入する際の勢いを与える。
こうして準備の整った強力な陣形を取ることが必要になるのです。
3. 戦わずに相手を屈服させるのが最善の策
ここからは、勝つための策を練ることについての解説です。
戦うだけが、戦争ではありません。
一戦も交えることなく、敵国を屈服させることができれば、味方に損害もなく、かつ相手の戦力をまるまる味方にすることができるため、戦う上での最善の策と言えます。
これも戦争に限ったことではなく、社会においても争いごとは戦わずして早期決着させるのが賢明です。
相手を無傷で取り込む
その時に大事になるのが、相手を最初から叩かないこと。
相手を無傷で自分の陣営取り込めるように動きましょう。
それが難しい場合は、次の策として相手の弱体化を狙います。
こちらが有利な立場にあることがお互い認識できたタイミングで、話し合いを相手に持ちかければ、譲歩を狙うことができるでしょう。
しかし、相手が譲歩した時には、寛容な態度でそれ受け入れることが必要です。
そうでなければ、円満な戦いの解決へ導くことができません。相手を力でねじ伏せることは一番よくないです。
たとえ勝っても、お互いに満身創痍でトータルの力はかえって衰えてしまいます。
最初から完全勝利は諦める
戦略を見極めるポイントは、危険と消耗をなるべく避けることです。
この時にもう一つ心がけたいのは、最初から完全勝利は諦めること。
戦いが長引けばな長引くほど、不測の事態も起こりかねません。
会社で考えると、費用がかかりすぎたり、イメージダウンが起きたり、内部情報が明るみに出てしまったりすることなどです。
これらは大損害につながりかねません。
そうならないためにも、多少理想の結果とは違うところがあったとしても、そこは目を瞑りましょう。
迅速に切り上げることが得策です。
だらだらと未練がましく続けても、いいことはありません。
そもそも負けては意味がないので、戦うの場合は即戦即決に限ります。大事なことは、“勝ち方は二の次”という考え方です。
4. 劣勢な時こそ頭を働かせる
戦うということは、時には劣勢に苦しむこともあります。
しかし、そんな状況で無理して攻撃を推し進めてしまうと、返って敗北に近づきます。まったく勝算のない戦いであれば、損害を最小限に留めて早めに撤退することも重要です。
例えば、エベレストに登山するとして、頂上まであと少しのところまで来たところで、悪天候になった場合は、無理に登山を続行する人はいないです。
無理に続けて死んでしまい、次の機会を潰してしまうような挑戦は避けるべきなのです。
“風林火山”を心得る
どんな状況でも最終的な“勝利”を獲得するために心得ておくべきことは、“風林火山”です。
これは敵を欺きながら、自軍を自由自在に変化させ、臨機応変に対処する戦術です。それぞれの文字の意味は以下のとおり。
- 風:迅速な対応、だし抜きや短期決戦
- 林:静観に徹したり、力を蓄えること
- 火:情報収集、普及活動やエリア拡大
- 山:守りを固めたり、動揺を隠す、長期での対応
指揮官は移り変わる戦況にその都度対処しつつ、自軍の意図を相手に悟られないように心掛けることが大切になります。
敵に攻撃目標を誤認させ、別のことに気を取られているすきに、敵軍本体や相手の弱くなったところを攻撃します。
この考え方は、特に敵の人数が自軍よりも多い時に有効な戦術です。
5段階の道理
他にも、戦場では5段階の道理を考察することも大切です。
5段階の道理とは、
- 距離
- 物資
- 必要人数
- 敵との戦力の差
- 勝った時に獲得できるもの把握
の5つです。
現代のビジネスで考えると、例えば、自社の商品をアメリカに輸出したい場合、まずは輸送する距離はどのくらいか、かかる時間はどのくらいかを把握します。
さらに、どれくらい自社の商品を輸出することができるか、需要はどのくらいかを計算。それを実行可能な人数の算定し、現地メーカーとの差を比較します。
これを行うことで、獲得できる顧客はどのくらいかの道筋が、おのずと決まってきます。
リーダーはこの5つの段階を通して、あらかじめ勝敗を見極め、どう勝負に出るか策を練る力が求められるのです。
5. 心を整える
“相手を誘導する”方法についても、解説します。
まず、現場の最前線に立つ指揮官は、矛盾する2つの性格を兼ね備えていなければいけません。
なぜなら、指揮官が前線に出るときには、以下の5つの危機が常につきまとうからです。
- むやみやたらな勇気だけでは、殺される
- 生き延びることだけを考えて、臆病になれば捕虜にされる
- 短気であれば、目論見にはめられる
- 名誉を重んじすぎても辱めに耐えられず、まんまと乗せられる
- 情が深すぎると、神経を病む
指揮官が持つべき性格
軍隊の壊滅や敗北の原因には、この中のどれかに必ず当てはまるのだといいます。
勝利するためには、どれか1つを意識するのではなく、バランスが大切になってきます。
そのために指揮官が持つべき性格は、次の5つ。
- 決死の覚悟と遠い先のことまで深く考えること
- 忍耐と引き際の見極め
- 闘争心と沈着冷静な判断力
- 私的な感情にとらわれない心とずる賢さ
- 慈しむ心と非情さ
です。
これら5つの相反する性格を調和させ、臨機応変に対応することが、真の指揮官に必要な素質になります。
簡単なことではないですが、これがなければ闘いに勝利することもできないということです。
また、君主や指揮官は、頭の中で常に天秤を描き、どちらに重きを置くべきかを見極め判断する能力が求められます。
巧みにせめて、巧みに守れば、相手はどう攻めていいのかわからなくなります。
戦況を見極め主導権を握り、相手の守備が手薄になったところを攻撃すれば、占領するのも比較的簡単になります。
6. 相手の弱みや欲望を把握しておく
相手の領内に侵入するときは、初めから敵陣深くに侵入することが重要です。
そんなことしたら、敵に一網打尽にされてしまいそうですよね。
しかし、入り方が中途半端に浅いと、危機に直面した際に味方の兵が勝手に逃げ帰ってしまう恐れがあります。
また、時間をかけて攻めると、相手に守りを固める余裕を与えてしまう可能性が高くなります。
それでは覚悟を決めて攻め入る意味がありません。
サッカーで例えると、相手ゴールまで勢いよく攻め込めば、相手に守備の時間を与えず、味方の士気も一気に上がります。
それと同じように、何事も一気に相手の領内に深く入ってしまえば、勝負に持ち込むことができます。
また、見方も覚悟を決めるしかなくなるというわけです。
スパイを使う
ただし、一気に攻め込む前に、現場を深く分析することも必要です。
そんな時、能力のある君主や指揮官は、スパイを有効活用します。
スパイを使うなんて卑怯だと!思うかもしれませんね。しかし、勝負に勝つためには惜しんではいけない存在です。
スパイを用いて敵を攻撃するときに把握しておきたいのが、相手の内情や防衛体制、警護の様子です。
これらを把握する上ではまず、敵の指揮官の側近や衛兵などの弱みや欲望を調べる必要があります。
そこに漬け入ることで、こちらの協力者や内通者に仕立て上げるのです。
甘い言葉やうまい話には気をつける
協力者・内通者になりやすいのは、境遇や対人関係に不満がある人や、出世が遅れた人、強く怒られたり裏切りを受けた人などです。
ターゲットの個人的な恨みをいかに増やし、裏切らせることができるか。
これが、スパイの腕の見せ所です。
上手くいけば、相手のスパイを二重スパイとして利用し、相手の情報を得ながら、こちらが有利になる情報を敵に与えることもできます。
これを現代社会の中で考えると、甘い言葉やうまい話で近づいてくる人には、必ず裏があるということです。
おかしいなと思うことが少しでもあれば、信頼できる人に相談するのが賢明でしょう。
そして現代でより深刻なのは、IT社会で絶対的な情報量が増え、その真偽を判断できないことが増えているということ。
フェイクに惑わされないためにも、私たちは何事にも慎重に判断すべきです。
以上、「眠れなくなるほど面白い孫氏の兵法」を簡単に解説してきました。
今から二千年以上も前からこんなにも具体的な戦術が確立されていたことには驚かされますよね。
現代社会にそのまま適用できる部分とできない部分、あるかと思いますが、より詳しく知りたい方は、ぜひ本書を手にとってみてください!