最近のAI技術の発展はすさまじく、あっという間に世界を一変させそうな雰囲気がありますよね。
AIとは、Artificial Intelligence の略で人工知能という意味。人工知能とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピューターで行うことを指しますが、定義は未だ定まっておらず、何をもってAIとするかが正確ではない現状です。
そんなAIについて、当ブログでは度々書籍を取り上げてきました。今回はそれらを一気に振り返りながら紹介していきます。
すでに世界を変えつつある“AI”について、知らないでは済まさせれない基礎的な知見を学んでいきましょう!
1. AI vs 教科書が読めない子どもたち
1冊目は、新井紀子さんの書籍「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」です。
本書は来るAI時代に向けて、AIとはどんな存在なのか、人間にとって代わる存在なのかを教えてくれます。
Deep Learning (機械学習)やChatGPTなどの発達で、最近ではAIの活躍が世間をにぎわせていますよね。一方でAIが神になる、AIが人類を滅ぼす、AIが仕事を奪うなどの噂も多く出回っています。著者はそうしたAIのイメージに対して「AIはまだどこにも存在していない」と主張します。
いまコンピューターが行っているのはただの計算で、AIではありません。
AI ≠ AI技術
いま巷で言われているAIの開発目標は、人間の知的活動を四則演算で表現するか、表現できていると感じる程度に近づけることで、人間の脳そのものにはならないのです。では、なぜここまでAI論争が起こっているのでしょうか?
その理由は、私たちがイメージする「AI =人類の脅威」と、AI技術が混同して使われているからです。AI技術とは、AIを実現するために開発されているさまざまな技術のこと。音声認識技術や自然言語処理技術、画像処理技術などがそれに当たります。
近年この技術が格段に発達したことと、これらAI技術を総称して“AI”と呼ぶようになったことが重なり、「AIはついに誕生した!」という噂が広まってしまったのです。神になるAIは遠い未来ならともかく、近い未来において誕生することは原理的に無理な話だったのです。
3割の子どもに基礎的読解力がない
AIは存在しないし、シンギュラリティも来ないことが分かりました。ならば、ホッと一安心。とはいかないかもしれません。
著者は、日本の中高生の読解力は、危機的状況にあると言います。中学生の3人に1人、高校生の10人に3人は基礎的読解力の問題に正解できません。
係り受け(言葉と言葉の関係性)の文章問題は、AIでも正解率が80%を超え、照応(別々の部分の互いの対応)も急速に研究が進んでいると言われます。ChatGPT4は米国の司法試験を上位10%で合格でるというニュースは衝撃的です。
これを踏まえると、読解力を必要とする分野において、AI技術に取って代わられる時代がすぐそこまでやってきていると考えられます。神になるAIは存在しなくても、私たちの能力の一部を補完するAIは出てきているのです。
AI技術に基づく社会になると、すべてにおいて効率的な最適化が急速に進むので、ホテル・航空・運賃など、数多くの企業が淘汰されると著者は懸念します。みなさんが想像する神になるAIはすぐに現れなくても、AI技術によって奪われる仕事は着実に増えていくのです。
新井紀子さんの書籍「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の内容に興味を持たれたら、ぜひ一度手に取ってみてください!
2. 21Lessons
2冊目は、ユヴァル・ノア・ハラリさんの「21Lessons」です。
ハラリさんは歴史家でありながら、「サピエンス全史」「ホモ・デウス」で、全世界2,000万部超えの大ヒット作家。「サピエンス全史」では、人類が過去に歩んできた道のりを考察し、「ホモ・デウス」では人類がこれから進んでいく未来を予測しています。
本書では、いま人類が直面している課題について、21個のテーマを用いた考察をしています。
次の物語をつくるのは何か?
1938年の第二次世界大戦前、人類には“ファシズム”、“共産主義”、“自由主義”といった3つのイデオロギー(物語)が崩壊している現代において、次に来るのは“自由主義2.0”なのか、全く新しく作られる物語なのか。現時点では、まだ分かりません。
想定されることとして、例えば、自分が何を求めているのか、自分にとって何が望ましいのかを一番よく理解しているのは自分自身だと思いますよね?
その考え方は、これまでは当たり前でした。しかし、ビッグデータやAIによって膨大な計算や分析が可能になり、自己へのアクセスは自分だけのものではなくなろうとしています。脳科学や生化学の進歩によって「自己の暗号」の解読、つまり人間の精神のハッキングが進められているのです。
GoogleやFacebookのビッグデータを使えば、自分がいま何を欲しているのか、他人のことをどう思っているのかなど、自ら自覚できる以上に詳しく知ることがほぼできるようになっています。
Facebookであなたが「いいね」している記事を数十個知るだけで、あなたの親友よりもあなたの思考を深く理解できるといったプロファイリングの結果はすでに出ています。
このように、自己がもはや膨大なデータネットワークの一部に還元されてしまうことを防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。著者は、AIに解読しつくせない自己認識を作ることが鍵だと言います。
瞑想が人間性を保ってくれる
自己認識をつくる鍵として、この本の最終章では「瞑想」をテーマにしています。
本人以上に自分をよく知るAIに、私たちがハッキングされないためには、身体感覚を通して自分の心や意識を知るべきだとハラリさんは述べています。
あらゆる知識の分野で人類が AIに勝つことができなくなったとしても、人類が無用の存在にならないために。今のところ機械には持つことができないと思われている「自意識」にこそ、今後の人類の可能性を広げてくれるのです。
本書の内容がより気になった方は、ユヴァル・ノア・ハラリさんの「21Lessons」ぜひ一度手にとってみてください!
3. オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
3冊目は、台湾の頭脳と呼ばれるオードリー・タンさんの「オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る」です。
タンさんは、IQ180の天才。台湾のデジタル担当大臣を務め、コロナ禍において近隣の店舗のマスク在庫を把握できるマスクマップの開発指導を行うなど、対応が絶賛されたました。
本書は、テクノロジーがこれから世界をどう変えるのか、人間はテクノロジーとどう向き合い、活用していけばいいかについて知ることができる、興味深い内容となっています。ここでは簡単に内容をつまんで紹介します。
AIを使って何をするか
自動化やAI化が発達しすぎると、自分たちの仕事が奪われるのではないかと心配する声もあります。しかし、AIはあくまでも人間の補助ツールであるという認識を持つことが大切。
これからは、人間とAIが協力して作業する仕事のモデルが標準となっていくことが予想されます。
人間と自転車を比較して自転車の方が速いから、もう人間は必要なくなるとは誰も言いませんよね。大切なのは、あなたがAIを使って何をするのかです。
また、2045年にシンギュラリティが到来し、AIの能力が人間の能力を上回るという説がありますが、ここで言うシンギュラリティとは、そもそも私たち人間がAIを開発しようとしたために生まれてきた考え方に他なりません。
シンギュラリティについて考えるべきことは、AIが存在する今の状況で、いかにしてAIを活用するかです。AIは私たちをどの方向へ向かわせるかコントロールするものではなく、私たち自身がどの方向へ向かいたいかを再確認するための存在と言えます。
人類はどの方向に進みたいか
シンギュラリティの存在が私たちに与えるヒントとしては、もし私たちが今の現代的な生活様式をし続けていきたいのであれば、現在発展してきている技術をこのまま開発し続けない方がいいかもしれないという事実です。
大切ことは、そうならないために、今から何をすべきかじっくりと考えること。
それをまずは謙虚に受け止め、人類はどの方向に進みたいか、方向のために何が必要なのかを議論する方が先です。その結果、AIの開発はある程度でやめたほうがいいという結論が出るかもしれません。大切なのは、人類が進むべき道の議論です。
プログラミング思考が大切
著者は、教育においてプログラミング思考を早い段階で学習することが大切だと言います。
プログラミング思考とは、一つの問題を複数の細かなステップに分解し、多くの人たちと共同で問題解決に挑むというプロセスを学ぶこと。
最初から最後まで1人の力で解決方法を考えるやり方とはまったく異なる方法を学ぶことで、どんな分野でも通用する問題解決能力を手に入れることができます。
プログラミング思考は、純粋なプログラミングを書くための能力や思考ではありません。
複数の人と共同で問題を解決するための基礎がプログラミング思考であり、デザイン思考やアート思考と呼ばれるものとの共通点です。
大きな問題を一人で解決しようとするのではなく、みんなで考えれば、対処しなければいけない問題が大きすぎるとか手に負えないということにはならないのです。
例えば、台湾では、音楽の授業で簡単なプログラミングソフトを授業の中で実際に使ってみるといった、プログラミングの用語を強制的に覚えさせることとは全く異なる、友達やコンピュータと一緒にメロディを組み立てるといったことが行われています。
そうすることで、自然とプログラミングの思考法を身につけられます。
AIを使って周りと協力しながら働く未来に待ったなしの今だからこそ、しっかり読んでおきたい1冊です。