あなたは1日のうちに、幸せを感じる瞬間はありますか?
この記事では、滝靖之さんの「脳が目覚めるたった1つの習慣」を紹介します。本書は、
- 脳の力を最大限発揮させたい
- 科学的根拠に基づいたメソッド知りたい
という方におすすめです。
脳科学者である著者は、仕事や勉強がはかどらない、モチベーションが上がらない、自分のやる事に限界を感じるといった悩みを抱える人にはある共通点があると言います。それは、脳の特性を知らずに、やみくもに頑張ろうとしていること。本書では、脳に関するデータが日本一を保存されている東北大学加齢医学研究所に属する著者が、科学的根拠に基づいて“脳を目覚めさせる方法”を教えてくれます。具体的にどういうことか、さっそく見ていきましょう!
1. 脳を目覚めさせるたった一つの習慣
まずは脳を目覚めさせる習慣について、本書から2つのポイントをピックアップして解説します。
主観的幸福度を上げる選択をし、積極的に行動する
突然ですが、質問です。あなたが日々の生活で幸せを感じる瞬間はいつですか?1日のうち一度も幸せを感じる瞬間がないという方は、とても危険な状態です。それどころか、ここ最近ちっとも幸せを感じていないという方は、すごく危機的な状況に陥っていると著者は言います。なぜなら、脳がほとんど眠ったような状態になっている可能性が高いからです。やる気が出ない、集中力が続かない、モチベーションが上がらない、物事が覚えられない、思い出せない、思ったような成果が上げられない。これらの原因は、脳が半分眠っているからです。
なぜ、「幸せを感じていない=脳が眠った状態」かというと、脳の欲求を無視しているからです。私たちの司令塔である脳には、本能的に幸せになりたいという欲求が備わっています。それは、自分が心地よいものや好きなものに囲まれて、安全に安心して暮らしたいという、非常にシンプルな欲求です。しかし忙しい現代人は、生物として当たり前のこの欲求を無視してしまいがちです。そのため、欲求が満たされない脳は、活動が停滞した中な状態になってしまうのです。
幸せを感じていない人の脳は、ぼーっとしてしています。脳の本能的な欲求が満たされずに眠っているなら、逆に脳に幸せの欲求を満たすぞ!と、感じさせれば目覚めさせることができます。それだけで脳は俄然やる気になり、潜在能力を存分に発揮しようと活性化します。自分を幸せにしてくれるものを取りに行かなくてはという意志を持つことが、脳の力のスイッチをオンにし、やる気や集中力をもたらしてくれます。本書のタイトルである、脳が目覚めるたった一つの習慣とは、あなた自身が主観的幸福度を上げる選択をし、積極的に行動することです。
2. 脳が目覚める仕組み
次に、脳が目覚めるための、脳の特性を解説します。これを理解するうえで重要なキーワードは、扁桃体、報酬回路、ドーパミンの3つです。
私たちの脳は情報の入力機関である五感(目・耳・鼻・口・皮膚)から、毎分毎秒、大量の情報を得ています。ただ、入ってくる情報量があまりにも膨大であるため、すべてを同じようには取り込めません。脳は自分にとって重要な情報だけを選びます。その選択の際につけるタグが、“感情”です。感情によるタグ付けには、生物学的に自分の命を脅かす危険がある情報、自分の命を永らえさせてくれる情報が選ばれます。
命を脅かす危険があるものは主に、“不快・嫌い”、命を永らえさせてくれるものは主に“好き”とタグ付けされます。このタグ付けをするのが、大脳辺縁系にある扁桃体と呼ばれる場所です。脳のさまざまな領域とつながっている扁桃体は、タグ付けをした情報を各所に発信します。ここで注目すべきことは、扁桃体が“不快・嫌い”と判断したときは、心身には攻撃もしくは逃避行動が現れるということです。
扁桃体は“不快・嫌い”と判断すると、そのことについて考えることを拒否します。すなわち、脳のスイッチはONにならないということです。逆に、扁桃体が“好き”とタグ付けしたものに関しては、人は接近行動を示します。能力のスイッチはONになり、脳はそのことについて積極的に考え始めます。なぜ積極的なるかというと、偏桃体が“好き”というタグを付けた時に神経伝達物質である、ドーパミンが放出されるからです。
ドーパミンは快感や幸福感をもたらすことから、これを分泌する神経回路は“報酬回路”と呼ばれています。そして報酬回路は、脳内の前頭前野、扁桃体、視床下部、側坐核、海馬などとつながっています。前頭前野は私たちの司令塔、視床下部は欲望や自律神経を司る部分、側坐核はやる気や快感を司る部分、海馬は記憶を司る部分です。これらと扁桃体が報酬回路でつながっているため、“好き”のタグ付けをした情報に関してはドーパミンを介して快感を覚えて、熱心にその情報に取り組んでくれるようになるのです。
ここで一つポイントがあります。ドーパミンは“好き”なものが手に入るその瞬間ではなく、手に入りそうだと感じた時に放出されるということです。つまり、自分を幸せにしてくれるものを取りに行かなくては!という意志が、脳を活性化させるのです。
好きなものを手に入れたいというモチベーションが、脳のスイッチをオンにして、やる気や集中力を発揮させます。つまり、自ら幸せを掴みに行くという“主体性”が必要だということです。受け身でいる限り、脳は活性化しません。こうした脳の仕組みから、脳を目覚めさせるためのたった一つの習慣として、“主観的幸福度を上げる選択をし、積極的に行動すること”が必要だと言えるのです。
3. 脳が目覚める3つの要素
ここからは、脳が目覚める3要素、好奇心・コミュニケーション・有酸素運動を紹介していきます。
好奇心
好奇心は、脳にとってのごちそうです。なぜなら、脳が好奇心を示す“未知の世界”には、今まで以上によりよく生きられるものがあるかもしれないからです。私たちは進化の過程で過酷な自然環境を生き延びるために、快適で安全な環境や食べても害のないものを常に探し求めてきました。この洞窟は雨に濡れなくて快適に住めそうだ、この草原は肉食獣がいないから安全そうだ、この果物は食べも大丈夫そうだ、といった探究心です。
好奇心を発揮することで見つけてきた快適・安全・安心のための情報に、脳の扁桃体は“好き”というタグ付けをします。すると、快楽物質であるドーパミンが放出され、脳は気持ちよさを感じるため、これをもっと味わいたくて自分を幸せにしてくれるものを探しに行きたいと、常々考えます。これこそが、好奇心の正体だと著者は言います。
見たい、聞きたい、知りたい、やりたいと感じるとき、脳は自分が今より良く生き延びられる可能性を感じて、ワクワクしています。積極的に自分にとっての楽しみを追い求めようとするとき、あっという間に時間が過ぎていくのを感じたことがあると思います。これこそが、脳が力を発揮している証拠です。
コミュニケーション
コミュニケーションも、脳は喜ばせ活性化させるごちそうです。社会的動物である人間の脳は、他人と共感し合いながら生きていくことに、本質的な喜びを感じます。「すべての悩みは、人間関係である。」これは、深層心理学の巨匠アルフレッド・アドラーの言葉です。彼の言葉通りコミュニケーション不全が、私たちにもたらす閉塞感は非常に深刻です。
コミュニケーションが不得意だからといって、避け続けるのも良くはありません。コミュニケーションをあまり行わない状況が続くと、まさに脳が半分眠った状態になってしまいます。コミュニケーションを行う際は、脳のあらゆる領域を使います。相手の話を聞いて理解する、考えて話す、相手の気持ちを配慮する、待ち合わせの場所や時間に注意を払うなど、総合的に処理しています。そのため、脳の前頭前野や言語や視覚や聴覚野などあらゆる領域が活性化しています。コミュニケーション放棄することは、脳を総合的に活性化するチャンスを失うことになるのです。
有酸素運動
3つの要素は有酸素運動です。そして、好奇心・コミュニケーション・有酸素運動の全てを一度に満たせる方法として本書では“旅”をおすすめしています。旅に出ると、見るもの、聞くもの、感じるものすべてが普段とは一変します。初めて見る風景、いつもは感じない海や緑の香り、都市の喧騒やその土地ならではの食べ物の味、さらには行き先が海外であれば、耳にする言葉も目にする文化さえも変わります。そうした環境にいると、人は自然と好奇心を抱くものです。
そして、旅行先ではいつもとは異なる人々とのコミュニケーションが待っています。あるいは一緒に出かけた相手と普段しない会話を楽しむこともできるでしょう。さらに、旅では普段はあまり歩かない人でも、積極的に歩くようになります。つまり有酸素運動も自然と行えるということです。このように、旅には脳が目覚める要素が完璧にそろっています。最近なんとなく頭がぼーっとする、モチベーションが上がらないと感じている方は、リフレッシュも兼ねて、意識的に旅をしてみましょう。
今回紹介した「脳が目覚めるたった1つの習慣」については、紹介できていない部分が多いです。もっと脳を目覚める方法を知りたいと方は、ぜひ本書を手にとってみてください。