誰もがこの11社から逃れることはできない…。
この記事では、山本康正さんの「2025年を制覇する破壊的企業」を紹介します。
テクノロジーの知識があると、未来の予測がしやすくなります。なぜなら、世界を根本的に変えてしまうようなイノベーションは、テクノロジー界隈で起きやすいからです。
かつてGAFAなど巨大ITテック企業は、世界を根底から変革してきました。しかし、アメリカのシリコンバレーでは、今やGAFAに続くベンチャーがこの瞬間も、次々と生まれ続けています。
特にGAFAですら持っていない、新たなテクノロジーを生み出している企業の動向を追うことで、これからのトレンドや未来の世界の動きを知ることができます。今回紹介する企業は、ここ数年の未来を見ていく上で、最低限押さえるべき11社です。ぜひ最後までご覧ください。それでは早速みていきましょう!
1. アマゾンは保険業、アップルは金融業、変わり続けるGAFAの現在
今や世界を牛耳るGAFAの名を知らない人はいないでしょう。GAFAとは、Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazonの大企業4社の頭文字を取った総称です。しかし、GAFAが現在どんな事業を展開しているかを正しく理解している人は多くいません。Googleは検索、Amazonは小売業というイメージを持っていると思いますが、実は私たちのイメージの遥か先をいっています。
グーグル(Google)
Googleは、多くの方は検索サイトのイメージを持っていると思いますが、もはや検索を便利にすることではなく、検索自体を不要にしてしまうことを目指しています。私たちは自分が欲しい物や情報を検索しますが、もし検索などする前に欲しいものが自動で提示されたら、どんなに楽になるでしょうか。
Googleは、検索をなくす世界を目指しています。例えば、毎週金曜日の夕方になると決まってレストランというキーワードを検索するユーザーがいたとします。その傾向をGoogleはデータとして蓄積し、その結果金曜日の夕方にブラウザを立ち上げると自動でお薦めのレストランをGoogleが紹介してくれるといった具合です。
Googleの近年の動向で目立つのは、クラウドや人工知能周りの技術開発、そしてさらなる積極的な買収です。2013年に買収した、イギリスの人工知能開発会社ディープマインドは、その代表例と言えるでしょう。
様々なビッグデータを集められる態勢を築いたGoogleが、次にそれを人工知能に読み込ませ、順次個人の嗜好に合ったサービスを提供してそんな未来を垣間見ることができます。
アマゾン(Amazon)
Amazonといえば、通信販売のイメージですよね。しかし今や、小売のみならずあらゆる業界の取り込みに動いています。その一つがAIです。皆さんはAmazonのAIである“アレクサ”を聞いたことがあるでしょうか。
2020年1月世界最大のテクノロジー展示会で、Amazonはアレクサとガソリンスタンドを更新するサービスのデモを発表しました。ガソリンスタンドにアレクサが搭載されていて、「アレクサ、ガソリン代払って」と言うと、自動的に Amazonに登録されているクレジットカードで支払いが行われるのです。
これまで家のものとしか通信していなかったアレクサを屋外と更新させたこの発表は、家を飛び出して通信することによって、より多くのデータを取り、ビジネスを広げていこうという意思を示しています。今後はパーキングの料金所などにおいても、同じように自動的に支払いが行われるようになるでしょう。
購買検索履歴に限らず、ユーザーがアレクサに話しかけた言葉はすべてデータとして保存され、それをもとにアマゾンは様々なサービスを提供していきます。こうしてAmazonは小売りからそれ以外の業界へとシフトしているのです。最近ではローン保険といった金融事業への進出がトレンドです。現在は出店者向けに限られていますが、いずれは一般向けにも展開されていくことでしょう。
また、今後購入履歴から与信判断を行うサービスを展開するだろうと、著者は見込んでいます。例えば競馬に関する雑誌ばかり買っている人は、ローン返済に不安を抱えている可能性が高い。逆に節約術や無難な投資的の書籍を購入したり、買い物が規則正しいユーザーには与信を与えたりといったものです。
また保険事業ではJPモルガン、ウォーレン・バフェット氏が代表を務めるバークシャー・ハサウェイ含む3社の従業員に対し、すでにサービスを提供しており、今後はこちらも一般に提供していくと考えられています。
フェイスブック(Facebook(Meta))
Facebookは、2021年に社名をメタ(Meta)に変更したことで話題となりましたが、Facebook のビジョンは人同士のコネクションにフォーカスするということです。その証拠に、Facebook は2019年にホライズンというサービスを発表しました。これはネット上の仮想空間でアバターと呼ばれる自らの分身を通じて、他者と交流できます。
また、最近は人同士のコネクションに注力しながらも、生活のすべての起点がFacebook で行われるようになる、いわゆるスーパーアプリになることも目標としています。
Facebook はSNSとしては後発でしたが、積極的な買収で大きく成長していきました。2014年に創業以来最も高額の約2兆円という額でヨーロッパ最大手のメッセージアプリ、WhatsAppを買収しました。LINEのないアメリカやヨーロッパではスタンダードであり、英語圏の利用者は10億人以上です。
このような買収により新たなユーザー層の獲得を繰り返した結果、Facebookの利用者は世界で16億人に増えています。今後もビジョンを実現するために買収を含めサービスをより一層展開していくことでしょう。
アップル(Apple)
Appleは、2019年にクレジットカードであるAppleCardを発表し、金融事業に参入しました。Mastercardと連携しているので、クレジットカードとして利用できるのはもちろん、AppleCardならではのサービスや便利機能が多く盛り込まれています。なぜハードウェアカンパニーの印象が強いAppleが金融サービスに参入したのでしょうか? その理由は、iPhoneへの囲い込みです。
iPhoneの登場によって会社はスマホ中心にガラリと変わりました。実際現在のAppleの利益の半分以上はiPhone 関連です。iPhoneの登場で、アップルの時価総額は一時期に100兆円を超えました。
しかし、ここにきてOPPOやHUAWEIといった中国企業の台頭により、アップルの成長が鈍化しています。これら中国企業がiPhoneの半額程度の価格で構成のスマートフォンを販売することによって、中国人ユーザーをはじめiPhone から乗り換える動きが見られています。
そのようなユーザーをつなぎとめるために役立つのが、AppleCardです。しかもAppleらしいクールで洗練されたカードに仕上げました。このデザイン力というブランディングこそアップルの強みでもあります。このような強みを生かしながら、今後もアップルはよりその発展を遂げ続けることでしょう。
2. 見る人によってエンディングが異なる映画、新時代のテクノロジー
ここからは、GAFAとは異なる新時代のテクノロジーによって、今まさに世界を制覇しつつある3つの起業について解説していきます。
ネットフリックス(Netflix)
まずはNetflixです。今やテレビに代わる映像メディアとして、世界中を席巻していますが、著者は今後のネットフリックスの動向として、特に注目している仕組みがあると言います。それは一人一人の視聴者の属性や嗜好にマッチした、オーダーメイドの動画配信です。Netflixが他の動画サービスより支持されているのは、豊富な映像コンテンツだけではなく、オリジナル番組が充実しているからです。
Netflixは、どのコンテンツを誰にどのように届けるかということに非常にこだわりがあります。利用されている方であればお分かると思いますが、最初に出てくるトップ画面からすでに利用者によって異なります。年齢・好み・これまでの視聴履歴などをもとに、今見たい番組をソムリエのように一人一人にパーソナライズされています。
映画の説明文の内容に関しても、利用者一人ひとりに最適なものが選定されています。競合のAmazonPrimeVideoにもレコメンデーション機能はありますが、Netflixのものは比較にならないほどを作り込まれています。
2025年の未来では、そのような最適化が更に高まり、視聴中の巻き戻しや一時停止の行動もデータ化され、どのシーンが特に反応がよかったかなどの情報をAIが画像解析を通じて収集するようになるでしょう。
さらに、視聴者一人ひとり異なるエンディングはもちろん、シナリオ自体も異なる動画が配信されるようになるかも知れません。その動画を見ている視聴者の表情を、カメラや音声などのセンサーで集め解析し、その人が最も感動するであろうシナリオをつなげていくのです。100万人の視聴者がいたら、100万通りのストーリーがある。そんな未来が可能な時代になってきているのです。
マイクロソフト(Microsoft)
マイクロソフトは、GAFA+Mと言われることもあるので、GAFA以外とみるかはさておき、Microsoft365に代表されるようにB2B、つまり法人向けビジネスの王者としてこれまで長きにわたり君臨してきました。
著者が今注目しているのは、Microsoftが都市OSの獲得を狙っていること。今やOS のクラウド化は民間では当たり前になっていますが、国や自治体のシステムにおいても同様で、以前は自前の設備で構築していたシステムを、クラウド化しようという動きがあります。
実際、日本政府の一部のシステムはAWSが担うことが決定し、デジタル超準備室の設置など今後クラウドシステム化に向けた動きが活発化するでしょう。公共システムの受注において、AmazonとMicrosoft はライバル関係にあります。
日本のシステムはAWSに決まりましたが、アメリカ政府のクラウドシステムはMicrosoftが勝ち取りました。そして、マイクロソフトが次に狙っているのは、ライバルがすでに参入している日本のマーケットです。
クラウドシステムの受注ではOSに限らず、システムの稼働に必要なさまざまなアプリケーションもまとめて受注するので、かなりのビッグビジネスになります。アプリケーションをも含めたスマートシティのOSの覇権を虎視眈々と狙っているのです。
テスラ(TESLA)
続いて、テスラです。電気自動車で有名なテスラですが、実はもともと電気自動車の製造会社ではありませんでした。
電気自動車はあくまで手段であり、代表のイーロン・マスク氏が掲げているミッションは、大気汚染や地球温暖化の防止などの環境問題の解決。そのため、電気自動車が世の中のトレンドだから売り出そうというビジネスの観点で電気自動車を販売している、ほかの自動車メーカーとは根本の考えが違っています。
実際、テスラは環境問題解決に向けて電気自動車以外の事業も進めています。最近注目されているのは、パワーモール事業。これはソーラーパネルの設置や充電などのサービスをサブスクリプションで行うもので、日本でもすでに開始しています。
また、渋滞中に発生する二酸化炭素やエネルギーロスに対する取り組みも始めています。これはかなりユニークなアイデアですが、渋滞を解消するために地下にトンネルを掘ってしまおうというものです。
そしてテスラの注目の一手が、ハイパーループ構想です。もともとカリフォルニアの在来線を新幹線に変えようというプロジェクトであったのですが、せっかく変えるのならば、より早いリニアモーターカーにしてしまおうということになったのです。
驚くべきはそのスピードで、現在のリニアモーターカーの最高時速500km/hのおよそ倍、航空機と変わらない1,000km/hものスピードの鉄道を実現しようとしています。スピードが出る秘密は、トンネルの構造です。従来のトンネルとは異なり真空チューブのような構造にすることで、空気抵抗を減らし、スピードを高めようとしています。ハイパーループ構想は夢物語ではなく、既に試験走行も開始されています。
その他にテスラが開発中のものにロボタクシーがあります。これも近い未来に交通産業に大きなインパクトを与えることが予想されています。浦安から六本木の距離であれば、電車なら約45分料金は350円ですが、ロボタクシーを使えば25分で210円ほどになると予想されています。駅に行く手間もなくなり、運賃も安くなるEND TO ENDで好きな所に連れて行ってくれる夢の交通手段です。
3. 既得権益をぶっ壊す、既存の価値観を吹き飛ばす新興企業4選
ここからは、日本ではあまり知られていないが、今後価値観を一変させる可能性のある新興企業4社を紹介します。
インポッシブルフーズ(ImpossibleFoods)
食品業界に大革命を起こすのではないかと注目されているのが、インポッシブルフーズです。最近のアメリカではお肉を食べないベジタリアンがかなり多く、レストランにもベジタリアン向けのメニューが当たり前のように用意されています。
一方で、ベジタリアンといえどもお肉の食感を楽しみたいという願望もあります。そこで、まるで本物のお肉のような食感や味わいが楽しめる代替肉が注目されています。インポッシブルフーズは、この代替肉を製造しているベンチャーです。
原材料は大豆で、実際に食べてみるとわかりますが、本物の牛肉のような食感を楽しむことができます。牛肉と比べ価格も安く、牛を育てている最中に発生するメタンガスも生じません。価格が安いのは、牛肉に比べ製造コストが圧倒的に低いからです。牛肉であれば、仔牛から育てて出荷までに最低でも3年はかかります。
一方、大豆であれば、工場で短時間で作れてしまうので、はるかに早いです。有害な化学調味料も入っておらず栄養価もあり、今アメリカでは代替肉が大変人気です。
インポッシブルフーズ以外にも、ビヨンドミートという同業者も存在し、こちらの会社はすでに上場し、時価総額は1兆円に迫る勢いです。インポッシブルフーズも、時価総額約5,000億円のユニコーン企業で、市場からも高い評価を受けています。
今後の動向としてインポッシブルフーズは、牛以外の代替肉を展開していき、すでにインポッシブルポークが製造されており、とんかつのような商品も発表されています。この流れが進みインポッシブルチキン、インポッシブルツナなども開発されていくと予想されています。インポシブルフーズの登場は、これからの食業界全体の大革命の起点となっているのです。
ロビンフット(Robinhood)
ロビンフッドは、2013年に設立されたネット証券会社です。会社名と同名のアプリを使って、投資することができますが、すごいところは当時としては異例だった売買手数料無料を打ち出したことです。それにより、従来は富裕層ばかりだった証券投資に資産や投資経験のない10代~20代を呼び込みました。
ゲームをやっているような感覚でトレードができることも特徴で、無料で楽しめるスマホゲームをやっているように取引できます。このような革新性は業界を180度変え、ロビンフッドの急激な成長に焦りを感じ、2019年10月にはアメリカのネット証券最大手のチャールズ・シュワブが手数料無料化を発表。その他のネット証券も追随する形で、手数料無料などに踏み込みました。
たった1社の一つのイノベーションが、業界全体の常識を変え、人々の生活まで変えてしまうのです。また、いまアメリカでは若い世代でロビンフッドを使って、ゲームのように資産を増やすことがブームとなっています。このブームは今後を5年で日本にもやってくると思われます。
クラウドストライク(CrowdStrike)
コロナで自粛が求められた際、果たしてどれだけの企業が在宅勤務を実現できたでしょうか。設備の整った大企業であればまだしも、多くの企業ではセキュリティ面が整っておらず、結局社員はオフィスに出社せざるを得なかったというのが現実でしょう。
このようなセキュリティ面でのネックを丸ごとを解消をしてしまうというのが、クラウドストライクです。クラウドストライクを導入すれば、どんな企業であっても安心して社員にパソコンの持ち出しをさせることができるようになります。そうなれば、1億総テレワーク社会も実現できます。
VPNやアンチウイルスソフトといった、いわゆるファイアウォールによりインターネット上に境界を設定し、セキュリティを担保するのがこれまでのセキュリティ業界の常識でした。
しかしリモートワークが一般化しつつあり、以前と比べるとパソコンに限らず、スマートフォンなど多くのデバイスがインターネット上につながるようになったため、ファイアウォール的なセキュリティ対策では通じなくなってきています。ファイヤーボールを最新のバージョンにアップしていく作業に限界があるからです。
クラウドストライクは、従来の各デバイスがインターネットに常につながっていることを前提に開発されたセキュリティツールではなく、クラウド上でセキュリティを担保してしまおうというものです。クラウドにつながっている間は常に端末や利用者のアカウントをクラウドストライクがチェックしています。
また、これまではソフトウェアの更新で行なっていたセキュリティのアップデートを、常時クラウドで行えるようにしました。さらには指紋認証などの物理的な仕組みも導入。これにより、ブライベートのパソコンやスマートフォンでもセキュリティを担保することが可能になります。
従業員にとっては、普段使いの慣れているデバイスで仕事ができますから効率がアップするでしょう。企業側にとってもデバイスの支給に係る経費が減りますし、支給しているパソコンを管理する手間も減り、一石二鳥です。
ショッピファイ(Shopify)
ショッピファイは、企業のECサイトの開発運営を手がけています。webサイトの制作、カード決済の仕組み、売上分析などの企業がインターネとで商売をするために必要なことをすべてまとめて代行してくれます。事業者が用意するのは、パソコンと商品画像くらいです。ライバルの多いビジネスモデルでもありますが、ショッピファイはモバイル対応などの使い勝手が突出しており、急激に成長を遂げてきました。
創業はカナダですが、現在はヨーロッパアメリカなどにも進出し、新型コロナウイルスによる外出自粛でさらに需要が伸びています。ショッピファイの台頭と呼応をするように世界中では多くの企業が、アマゾンや楽天といった大手ECプラットフォームから離脱する動きが出てきています。
ヴィトンやディズニー、ナイキ、ワークマンなど、これまでアマゾンや楽天への出店を中心としていた企業が、次々にアマゾンには出店しない党宣言し、代わりにショッピファイト組みながら自社のECサイトを充実させています。
ショッピファイの時価総額は現在約10兆円で日本のHONDAが約5兆円ですのでその倍です。三菱商事やソフトバンクグループの時価総額も抜き始めています。世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上高も同じく世界一のウォルマートとも提携しています。
本書「2025年を制覇する破壊的企業」は2020年11月5日発売の本であり、約2年たった現在で情報がすでに古くなっていることは、世界の変化が激化していることの表れです。今後もこれらの企業の動向のみならず、新たな企業・組織の動きには注目していきましょう!気になる方はぜひ本書を手にとってみてください。