私たちが本を執筆したのは、行動科学という最先端の方法を用いてユーモアに関する誤解を解き、ユーモアが私たちのキャリアやビジネスや人生にもたらす効果を明らかにするためだ。
仕事や私生活での対人関係、悩んでいませんか?
この記事では、ジェニファー・アーカーさん、ナオミ・バグドナスさんの書籍「ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義」を紹介します。本書は、
- ユーモアのある人になりたい
- ユーモアを仕事で活かしたい
という方におすすめです。本書では、ビジネスや人生のあらゆる場面で発揮されるユーモアの力について書かれています。ユーモアは人間の心理と行動に重大な影響を及ぼしており、ユーモアの科学とメカニズムを理解することで、世の中に対する見方を変えることができるので、とてもおすすめの本です。
1. ユーモアは人々を動かす
まずは、ユーモアがもたらすパワーについて解説します。ユーモアには、人を動かす思いもよらない力があります。それは、
- 地位が高く見える
- 知的に見える
- 交渉を有利に導く
- 目立つことで記憶に残りやすくなる
- 信頼しやすくなる
- アイディアがひらめく
- 粘り強く頑張れる
などがあります。ユーモアのセンスは筋肉に似ていて、定期的に使わなければ衰えてしまうもの。残念なことに現状ほとんどの人は、ユーモア筋が衰えていると著者は言います。
笑う回数は23歳がピーク
というのも、166カ国140万人に調査を行ったところ、人々が1日のうちに笑ったり微笑む回数は、23歳頃から急激に減り始めることが分かっているそうです。子供の頃はしょっちゅう笑っていた人も、大人になって真面目に仕事をしていると陽気さを失ってしまいます。
確かに、職場の人付き合いには、あちこちに地雷が潜んでいるため、会話においてリスクを取らないことに越したことはありません。しかし、私たちの職場に必要なのは、もっと自分らしく振る舞うことや、人間らしいつながりです。
では、一体何が職場での陽気さの妨げになっているのでしょうか?
業界や地位も様々な700名以上の人々を対象に、なぜ職場ではユーモアを発揮しにくいのかを調査した結果、4つの理由が見えました。それは、
- ビジネスは真面目であるべきという思い込み
- ウケないという思い込み
- 面白くなくちゃいけないという思い込み
- 生まれつきの才能という思い込み
の4つです。すべては私たちの思い込みによって、職場から勇猛が消え去ってしまっているのです。
2. ユーモアの4つのタイプ
人の面白さは千差万別。どんなことについてジョークを言うか、ユーモアを発揮するには、どんな方法が一番しっくりくるかは個人差があります。
著者が一連の実験を6年間行った結果、ユーモアには4つのタイプが浮かび上がってきました。
- スタンドアップ
- スイートハート
- マグネット
- スナイパー
の4つです。自分にとってしっくりくるユーモアのタイプを理解することで、ユーモアをより絶妙に堂々と使えるようになるので、ぜひチェックしてみてください。
スタンドアップ
まず、スタンドアップのタイプは、攻撃的で表現力豊か、天性のエンターテイナーと言えます。笑いを取るためなら少し事を荒立てるのも厭わない、人前に出ると生き生きするタイプです。また、大勢の人たちと一緒の時は大抵ジョークを飛ばしています。自分をジョークのネタにされても気にしません。
スイートハート
2つ目のタイプ、スイートハートは、親しみやすく、さりげないタイプです。ひたむきで誠実、よく練ったユーモアを好み、クスッと笑わせるようなセリフを混ぜたりします。感性が豊かでおおらかなので、相手の感情を傷つける危険を犯してまで人をからかったりはしません。また、自分がその対象になるのも好みません。周りの人たちを元気にするような、明るいユーモアが好きなタイプです。
マグネット
3つ目のマグネットは、親しみやすく表現力豊か、いつも上機嫌で、みんなのムードを盛り上げる能力に長けています。モノマネや人真似もしょっちゅう飛び出し、おバカなジョークに自分でも大笑いしてしまうこともあるくらい。即興コメディーや人前での挨拶が上手いと評判の人は、マグネットに当てはまる可能性が高いです。
スナイパー
最後に4つ目のスナイパーは、攻撃的でさりげないタイプ。鋭くて皮肉っぽいさりげないユーモアを好みます。笑いを取るためなら一線を超えるのも恐れません。語り口は小声で、そっけなく大勢の人たちと一緒の時はじっくり様子を伺ってから行動に出ます。一発ジョークでピシャリと決めるのが好きです。
あなたはどのタイプでしょうか?
ただし、紹介したタイプは、その時の気分やその場の状況によっても変わります。というより、タイプは変えるべきだそうです。
多くのコメディアンは、ユーモアを効果的に使うことの一つは空気を読んで、その場にふさわしい態度や話し方に切り替えることだと知っています。
例えば、スタンドアップとスナイパーは親しみを込めて相手をからかったりしますが、やりすぎてしまった場合、マグネットやスイートハートをドン引きさせてしまうでしょう。
一方で、マグネットとスイートハートは、相手を持ち上げるために自分を低く見せますが、あまりに卑下しすぎると、スタンドアップやスナイパーの目には情けなく映ってしまいます。
ユーモアのタイプは、断定的なものではありません。何を面白いと思うかどのようにユーモアを発揮するかという好みや傾向は、自分のタイプを認識するだけでなく、どんな時にタイプを切り替えた方がいいかに気づくことで、大きな効果が生まれます。
3. ユーモアを活かすテクニック
ここからは、ユーモアを活かすテクニックについて解説します。
健康心理学者のケリー・マクゴニガルは、体を動かすことと運動を明確に区別しています。体を動かすことはどんなことであれ、日常生活の中で体を使うこと。一方で、運動は意図的な目的を持って動くことです。
では、陽気さとユーモアの区別、更には、コメディとの区別はどのようなものでしょうか?
陽気さとは心構えであり、もともと喜びを感じやすい状態のことです。私たちがやるべきこと全てに影響を及ぼすため、ちょっとした変化を起こすだけで自分の感情だけでなく、相手の態度も大きく変わってきます。
対してユーモアは、もっと意図的なものです。運動が特定の目的のために体を動かすように、ユーモアも特定の目的のために陽気さを使います。ヨガが好きな人もいれば、サッカーやサイクリングが好きな人もいるように、人それぞれ好みがありユーモアについても、ジョークを好む人もいればモノマネや体を張ったギャグが好きな人もいます。
ユーモアは鍛えられる
ユーモアは鍛えることができますが、運動と同じようにスキルと努力が必要なので、時に頑張る必要があります。コメディはユーモアを組み立ててから実践するものです。スポーツと同じように、コメディもテクニックを自在に駆使する必要があるので、膨大な練習が必要になります。
もちろん、多くの人にとって目的はコメディでプロになることではないので、重要なのはもっと陽気さを持って世の中に向き合う方法を学ぶことです。さらに、自分ならではのユーモアを磨きうまく使えれば最高です。
では早速その方法を学んでいきましょう。
まず、世間でよく見られるのは、ユーモアは何もないところから生み出すものという誤解です。実際は、身の回りの不可解なことや不条理に気づいて、予想外のやり方でその正体を暴くところにユーモアが生まれることが多いです。
ユーモアの基本的なパターン
ユーモアの基本的なパターンや構造は次の通り。
- 原則1:ユーモアの核心は事実にある。
- 原則2:あらゆるユーモアには驚きとミスディレクションが潜んでいる。
まずは、原則1:「ユーモアの核心は事実にある」について。試しに、シンプルなジョークを分解してみましょう。
あなたは夕食会に参加しています。最初の料理が出されてから30分も経った頃、参加者が一人会場に入ってきて、申し訳なさそうにこう言います。
「遅れてすみません、来たくなかったもので」
これを聞いて笑えると思った人、思わずニンマリした人もいると思います。このセリフがおかしいのは、率直な本音をぶちまけているからです。このようにユーモアの核心には、事実が存在します。
事実の共通認識はユーモアの基盤になるので、まずは面白いことはないかではなく、どんな事実が潜んでいるかということを自分に向かって問いかけてみましょう。それからユーモアを見つけにいきます。
続いて、原則2:「あらゆるユーモアには驚きとミスディレクションが潜んでいる」。ユーモアは予測と、実際に起こった出来事との不調和から生じます。簡単に言えば、人は驚かされるのが好きということ。
ジョークがウケない時、それは冴えたアイデアに欠けているからではありません。ミスディレクション(不調和)が欠けているのです。つまり、予想がうまくいかないせいで、予想を裏切るオチになっていないということです。
4. プロのコメディアンに学ぶテクニック
では、どのように予想を裏切るための“事実”を見つけてウケを狙うのか、そのポイントは、
- 面白いものに目をつける
- 面白さを作り出す
- 面白いことをパッと言える
- 決め手は語り口
の4つです。
面白いものに目をつける
これは、自分自身や周りの人たちの生活に潜んでいる事実を見つけるということ。
ユーモアの源は、他人の自分に対する思い込み。ユーモアを見つけるには、自分らしい性質や意見、好みや感じ方を分析する必要があります。
あまりピンとこない人は、「率直に言って、あなたは〇〇な人に見える」というように、周りの人に自分に当てはまる言葉を考えてもらいましょう。それが、ユーモアの種になります。
それを踏まえて、例えば、公園で見かけた犬の防寒着が親友が買ったばかりのコートにそっくりだった、子供が突拍子もないことを言ったなど、ユーモアのネタはすかさずメモして後でおくのがよいでしょう。
身の回りを見渡せば、人生はコメディに溢れているはずです。
面白さを作り出す
多くのジョークは「設定+オチ」の基本構造になっています。設定は状況や事実の説明、オチは予想を裏切って聞いている人を驚かせるものです。
日常生活の何気ない事実や不一致を指摘しただけで笑いを取ろうとするのは、なかなか難しいこと。しかし、少し工夫するだけで、ネタのアイデアが一気に面白みを増します。
例えば、
- 誇張する
- コントラストを生じさせる
- できるだけ具体的な表現を使う
- 比喩を用いる
- 3のルールを守る
などの工夫があります。
「誇張する」については、日常生活で気づいた点を大袈裟な言葉で表現するとm聞き手の予想を裏切って、ミスディレクションが生じます。
「コントラストを生じさせる」については、何らかの不一致を見出した時、そこにはある程度のコントラストが生じているはずです。あるいは、コントラストを意図的に生じさせてみましょう。
「できるだけ具体的な表現を使う」は、コメディのオチを“まあまあ”から“絶妙”へ飛躍させる力があります。
「比喩を用いる」については、コントラストがユーモアを生み出すように、比喩もユーモアを生み出します。比喩の達人になれば、全く別の突拍子もないものと比較することによって、行動や状況の滑稽さを際立たせます。
「3のルールを守る」は、ミスディレクションを成功させる簡単な方法です。一般的で予想しやすい要素を2つ挙げてから、意外な3つ目の要素を挙げると、脳の予想を裏切ることができます。
面白いことをパッと言える
優れたジョークを生み出す原則をマスターしても、私たちは日常生活でユーモアを使う時は、たいていその場で思いつかなければなりません。そこで、ユーモアをパッと生み出すための役立つコツについても解説されています。
一つは、持ちネタを用意すること。これはいざという時に披露するネタで自分でも話すのが楽しくて、いつでも笑いがとれるネタがいいでしょう。ただし、いつも同じネタを披露すればいいというわけではなく、お気に入りの持ちネタはその場の状況に合わせてアレンジすべきです。
また、今ここに注目するという方法もあります。素早く笑いを取るためには今この場にいる人たちについて、何らかの特徴を見つけることが必要です。そのためには、会場で目についたものや風変わりなものに注目するといいでしょう。
そして、普段の生活でも舞台の上でも、笑いを取る最も簡単な方法の一つは、以前受けたジョークや面白かった出来事を引き合いに出すこと。このテクニックはコールバックと呼ばれています。
何かで笑いが起こったらネタとして覚えておけば、後でチャンスを見つけて使うことができます。しかもコールバックはグループの絆を強める効果もあります。なぜなら、みんなで笑えるうちはネタの楽しいジョークと同じように、コールバックは仲間意識を刺激するためです。
つまりそのジョークの笑いどころがわかる人は、自分も仲間の一員だと実感するからこそ特別に感じるわけです。
語り口
実はジョークの99%は語り口がものを言うそうです。声と語り口がぴったりで、オチをばっちり聞かせれば何を言っても笑いを取れるでしょう。
4. 職場に陽気とユーモアをもたらす
最後に、職場に陽気さという場をもたらす、実践的な方法を学びましょう。
しかし、上司や同僚たちの前でジョークを飛ばすなんて、考えただけでも心臓がドキドキしてしまう。もしそう思うなら、少しハードルを下げてみましょう。
必ずジョークや面白いことを言わなくても構いません。目標は日常の何気ないひと時に、もっと人間らしいつながりを持つこと。そして、仕事の生産性や効率を高めることです。
優れたコミュニケーションは、仕事上の成功に必要不可欠です。一方で、リモートワークが増えて、休憩時間に話すといったコミュニケーションが、デジタルなやり取りにほぼ取って代わりました。
そのような環境では、同僚たちと仲良くなる方法を見つけるのは、簡単ではないと思います。メールと文面は話し言葉とは違って、機械的で冷たい言葉になってしまいがち。しかし、なぜ仕事上のコミュニケーションでは、その人らしさや性格や癖などを排除すべきだと思い込んでいるのでしょうか?
著者は、メッセージにも陽気さを加えるべきと言います。今回は、そのための手軽で実践的なテクニックを簡単に紹介します。
メッセージに陽気さを加える3つのテクニック
メッセージに陽気さを加えるテクニック、それは、
- コールバックを使う
- 締めくくりに工夫を凝らす
- PS:追伸を付け加える
の3つです。
先ほど紹介したように、コールバックはあなたと相手との共通の経験を思い出させ、その出来事を内輪ネタのジョークにしてしまいます。コールバックがとりわけ効果的なのは、相手も楽しい返信をしやすくなるから。
また、メールの締めくくりには、その人の個性が現れます。PSを付け加えたダイレクト命令の反応に関する一連の有名な研究において、ドイツのマーケティング広告研究者ジーク・フリートフェーゲルは、90%の人々は手紙の本文よりも、追伸を先に読むことを突き止めました。
つまり、手紙を受け取った相手は水深の分を読んで第一印象を抱くということです。これはメールでも同様です。追伸は真面目になりがちなメールの文章に少しの大きさを加えるのに効果的です。まずはメールから職場にユーモアをもたらしてみてください。
今回紹介した、ジェニファー・アーカーさん、ナオミ・バグドナスさんの書籍「ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義」について、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですのでぜひ読んでみてください!