【5分で学ぶ】ミケル・バルセロ(過酷な自然から作品を生み出す、現代のピカソ)

わくわくするデザインの豆知識

 

“現代のピカソ”を知っていますか?

その人の名は、ミケル・バルセロ1980年代から欧州を中心に精力的な活動を行い、現代芸術をけん引する美術家の一人として評価され、“現代のピカソ”と呼ばれています。

さまざまな素材や物質との格闘を経て制作された彼の作品の原初的なイメージは、人間の創造することの喜びやアートの根源を見ている感覚を与えます。この記事では、そんなバルセロの生い立ちや作品の特徴をざっくり解説します。バルセロの魅力を知ることができるので、ぜひ楽しんでご覧ください!

 

1. スペインの島から生まれた偉大な画家

出典:https://www.artagenda.jp/

 

ミケル・バルセロは1957年、スペイン・バルセロナから南に200kmほどの地中海に位置するマジョルカ島生まれの画家です。マジョルカ島は欧州屈指の観光地としても有名で、風光明媚な島であるだけでなく、ショパンの出身地としても知られています。

彼は母親が風景画を描いていたことから、幼い頃から芸術に興味を持っていましたが、1974年に初めて島を離れ、パリでアウトサイダー・アートやアンフォルメルといった芸術運動の作品に触れ、強い衝撃を受けたことにより、芸術の道を志します。

 

パルマ・デ・マジョルカとバルセロナの2つの美術学校で学び、1976年に、故郷のマジョルカ島に戻ってから前衛芸術家のグループ「Taller Lunatic」に参加します。1982年の「ドクメンタ7」(ドイツ・カッセル)で国際的な場に初めて登場して以降、マジョルカ島、パリ、アフリカなど各地にアトリエを構えて精力的に制作。

特に彼に影響を与えた場所としては、1988年に過酷な風土と孤独を求めアフリカを旅して以後、繰り返しマリに滞在し制作しています。また、この頃からイヴォン・ランベールやレオ・カステリ、ボルドー現代美術館など各地の美術館からの支持を得て、国際的な活動の場を広げていくことになります。

 

2. あらゆるの素材や場所が作品の対象

海のスープ(1984) 筆者撮影

 

彼の作品は、動植物、海と大地、闘牛、肖像といったテーマが大半を占めており、いずれも彼自身の自然世界に対する深い愛情や尊敬、畏怖の念に根差しています。また、絵画、ドローイングのみならず、陶器、鋳鉄の構造物、パフォーマンス、舞台美術など、様々な素材と場所により多岐にわたります。

筆者撮影

 

その理由の1つに、強い実験性があります。陶器を“絵画の延長”と捉えるバルセロは、力を加えて歪ませた陶に、魚や馬、金魚や骸骨などをペイントし、陶器に新たなイメージを付加しています。とりわけ、1988年にサハラ砂漠で半年間過ごした経験は彼の作風に大きな影響を与えることに。

一瞬にして絵の具を乾かしてしまうアフリカの強風は、新たな制作手法に挑むきっかけとなりました。シロアリの虫食い跡や花粉、川の泥を利用した紙作品もその一つ。1995年のマリ滞在時に現地の職人に学んだ製陶技術は実用を離れ、後に高さ1メートル超の大型陶器や、ブロック状の粘土を組み合わせる「トーテム」へと展開しています。

トーテム 筆者撮影

ブリーチ・ペインティング「アニエス・ヴァルダ」 筆者撮影

 

そのほか、暗色のキャンバスに漂白剤で描き、筆致と描画にタイムラグがある肖像画の「ブリーチ・ペインティング」のシリーズや、水に濡れた部分は色が変わるが乾くと元に戻る布へのライブペインティングなど素材だけでなく、アフリカでの経験から時間との関係を試みた作品が数多くあります。

しかし同時に、彼は「Galerie Thaddaeus Ropac」での取材で答えている通り、ほとんどの場合試みは失敗であるそうです。またバルセロはスペイン近現代美術の伝統的な潮流にも関心を寄せつつ、鋭敏な感性をもって国際的な現代美術のコンテクストも視野にとらえて作品を制作しています。

 

3. 常に新たな表現を模索するのがバルセロの魅力

国連本部の天井画(2008) 出典:https://www.alejandradeargos.com/

 

バルセロは、2009年には第53回ヴェネチア・ビエンナーレにスペイン代表として参加。これまで、パルマ大聖堂(スペイン・マジョルカ島)のサン・ぺール礼拝堂の装飾(2007)や、スイスの国連本部の天井画(2008)などを手がけるほか、ジョゼフ・アヴィニョン演劇際(フランス)での公演「パソ・ドブレ」(2006)などの舞台芸術にも携わってきました。

国連本部の天井画(2008)は、巨大なドームの天井をに鮮やかな色彩に包まれた鍾乳石のフォルムで覆ったものである。20人のアシスタントチームで制作され、石膏で形を作り、世界中から集められた特殊な顔料で着彩さています。またパフォーマンスも精力的に上演。

ライブパフォーマンスの様子 筆者撮影

 

先史時代の洞窟壁画や動物描写に強い関心を持ち、2015年にショーヴェ洞窟(フランス・アルデシュ)のレプリカが一般公開される際にはプロジェクトの推進メンバーに名を連ねています。2013年、フランス文化省より芸術文化勲章「オフィシエ」を受章。2020年には、スペイン・ カタルーニャ自治州政府よりサン・ジョルディ十字勲章を授与されています。

 

日本で開催されたミケル・バルセロ展

2021年に大阪にある国立国際美術館、2022年1月〜3月で東京オペラシティアートギャラリーにて『ミケル・バルセロ展』が開催されました。同展のキービジュアルに採用されている《雉のいるテーブル》は、よく見ると画面の中央にはテーブルがあり、エビや魚、そしてキジと骸骨などが並べられていることがわかります。

《雉のいるテーブル》 筆者撮影

《雉のいるテーブル》細部 筆者撮影


ダイナミックでありながら、細部まで細やかに描かれているバルセロを代表する作品です。
常に実験的でありながら、人間が生きることや自然や根源など壮大なテーマを作品にしてきたバルセロ。激しい筆致と、どこかかわいらしい親しみのある色彩とフォルム。ぜひ一度は実物を体感してほしいアーティストの1人です。

 

 

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