ニューノーマル時代に必要なビジネス戦略とは?山口周の『ニュータイプの時代』要約

aerial view of city buildings during daytime 時代を生き抜く考え方・哲学

 

この記事では山口周さんの書籍、「ニュータイプの時代」を紹介します。山口さんといえば、 「世界のエリートはなぜ“美意識”を鍛えるのか?」や「ビジネスの未来」といった人気書籍が多数ある、著作家・パブリックスピーカーです。その中でも本書は、私たちに多くの新しい視点を与えてくれます。

機動戦士ガンダムの中で“ニュータイプ”とは、主人公アムロが徐々に才能を開花していった、

  • 時空を超えた非言語的コミュニケーション能力(テレパシー)
  • 超人的な直感力と洞察力

といった特殊能力を獲得した新しい人類のことですが、もちろんこんな人は現実にいません。

では、山口さんの言う“ニュータイプ”とはいったい何なのか。そして、どうしたらニュータイプになれるのか。要点を一緒に押さえていきましょう!

<山口周さんの書籍はこちらでまとめて紹介しています>

 

1. 問題を解ける人が優秀でなくなる時代

man using smartphone on chair

 

これまで長い間高く評価されてきた従順、論理的、勤勉で、責任感が強い「優秀な人材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになる。

その一方で、自由、直感的、わがままで、好奇心が強い人材が、「ニュータイプ」として、今後は大きな価値を生み出し、本質的な意味での“豊かな人生”を送ることができると山口さんは言います。

また、“優秀さ”の定義は時代によって異なってきます。世の中にニーズがたくさんある問題に対して、解決できる人が少ない希少な能力は“優秀さ”として高く評価されます。

 

逆に、ニーズがあまりないのに、解決出来る人がたくさんいる過剰な能力は“凡庸さ”として切り捨てられる、ということです。世の中のビジネスは、「問題」と「問題の解決」が組み合わされることによって、初めて成立します。

20世紀後半までずっと過剰だったのは、このうちの「問題」であり、「解決策」は希少でした。このような時代では、「問題を解ける人」 が労働市場で高く評価され、高い報酬を得ることができました。

しかし、今のようにモノが過剰にあふれ、 「問題」が少ない時代になると、「問題が解ける人」の価値は大きく下がります。その一方で、「誰も気づいていない問題を見出す人」は、相対的に大きな価値を生むことになるのです。

 

2.「望ましい状態」を定義する

people standing near brown building during daytime

 

それでは、これからの時代に必要とされる問題を見出すことは、どうしたらできるのでしょうか。

問題を発見するためには、まず「望ましい状態」を定義する必要があります。そのため、問題を発見するためにはまず、

  • 世界はこうあるべきではないか
  • 人間はこうあるべきではないか

というビジョンを持つことが、求められます。これが、これからのニュータイプが果たす役割です。

18世紀の産業革命以来、「強いビジネス」とは、「大きなビジネス」のことでした。巨大な資金で大きな工場を建て、大量生産したものを巨額の広告費をかけて売りさばく。そんな暴力的なビジネスこそが勝者であり、その陰で資金を集められない者は消えていかざるを得ませんでした。

この時代を長く過ごした私たちは、スケールの追求こそがビジネスにおける成功の鍵だということを刷り込まれてしまっています。しかし、今日ではスケールはメリットにならないどころか、むしろ競争力を低下させる原因にさえなりつつあります。

 

3.“グローバルニッチ”という戦略

desk globe on table

 

これまでマーケティングの世界では、狭いニッチな層を狙う「フォーカス」と、大衆に広く届ける「スケール」はトレード・オフ(両立しない価値)の関係にあり、両立させることはできないと考えられてきました。その状況は、グローバル化とテクノロジーによっては変わっています。

例えば、日本というローカル市場で、5%しかいないニッチセグメントに絞ってビジネスを行えば、潜在顧客は600万人しかいません。それを、そのままグローバル市場に展開できれば、先進国だけでも12億人の人がいるので、市場規模は一気に10倍の6,000万人になります。

「フォーカス」と「スケール」を両立させることを狙う、“グローバルニッチ”という戦略が可能になったのです。

 

ローカルの市場でしか物を売れなかった時代には、なるべく多くの人をターゲットにして、万人受けするモノを作るしかありませんでした。これによって「同質化の罠」という泥沼にはまったのが、日本企業です。

わかりやすい例が、携帯電話。

2007年時点で日本の各メーカーから発売された携帯電話を見比べると、ほとんど見分けがつかない似通ったガラケーでした。マーケティングの定石にしたがって 万人に受け入れられる製品を市場調査した結果、どの企業も似たような「正解」を出したからです。

 

4.アップルは市場調査をほとんどやらない

person using black smartphone

 

日本の多くの企業がガラケーを発売していた2007年に、アップルからは初代iPhoneが発表されました。その結果どうなったかは、皆さんご存知ですよね?

ほとんどの日本企業は、iPhoneによって世界の携帯電話産業から撤退することになりました。

アップルは、市場調査をほとんどやらないことで知られています。スケールのみを重視したマーケティングによる“正解”のほとんどに価値がない、厳しくも面白い時代がやってきたということです。

 

「フォーカス」と「スケール」が両立したグローバルニッチを狙えるようになったことで、市場の多様化が生まれます。とは言うものの、現実に起こっていることは、GoogleやAmazonなどのGAFAと呼ばれる巨大企業による市場の寡占化ではないか、という反論があるかもしれません。

しかし、市場の多様化と寡占化は同時に進行していきます。では、どういう市場が多様化しやすく、どういう市場が寡占化しやすいのでしょうか?

 

5.コンビニの中の“意味がある”商品は?

black and white computer motherboard

 

製品には、「役に立つ / 役に立たない」と、「意味がない / 意味がある」の2軸があります。このうち、勝者の総取りが発生して寡占化が進むのは、「役に立ち / 意味がない」領域です。

例えば、ICチップの市場における評価は単純で、コストと計算能力で決まります。「色合いが絶妙だ」とか「イタリアの職人が精魂込めて作っている」といった意味的なことは、ICチップの評価にはまったく関係ありません。

Googleの検索システムも、この領域に含まれます。また、コンビニエンスストアでは商品を置くスペースが限られているので、ハサミやホチキスなどの文房具は機能的な1種類しか置かれていません。

 

しかし、コンビニの中には1品目で200種類以上も置かれている商品があります。それは、タバコです。タバコは吸う人によってそれぞれ異なる意味やこだわりがあり、マルボロを好む人は代わりにセブンスターを吸おうとはしないのです。

役に立つ市場を狙うか、意味がある市場を狙うかは、企業の戦略によって異なります。間違いなく言えることは、役に立つ市場は世界中の企業のごく一部しか生き残れない厳しいレッドオーシャンだということです。

 

6.「意味」を生み出すニュータイプ

blue BMW coupe parked on the road during daytime

 

一方で、意味がある市場では、モノは高く売れます。これを、車で考えてみましょう。

自動車業界における、ドイツのBMWやベンツの車は、ほとんどが「役に立つし、意味がある」に含まれます。これらは、快適に移動するということの他に「BMWに乗る意味」という価値を提供しており、購入者はその意味に数百万円の対価を支払っているのです。さらに、イタリアのフェラーリやランボルギーニは、「役にたたないけれど、意味がある」車です。

数百馬力のエンジンを積んでいるのに二人しか乗れず、荷物も積めず、車高が低いので悪路も苦手。「快適で効率的な移動手段」としては全く評価できないからこそ、この車に何億円ものお金を払ってでも欲しいという人がいるのです。

 

ここから分かるのは、今後は「役に立つ」ものを生み出せる組織よりも、「意味」を生み出すことができるニュータイプに高い報酬が支払われる時代になるということです。

以上、これからの時代に起こる変化や、ニュータイプの可能性について、要点をまとめて紹介をしました。本書「ニュータイプの時代」の中では、より具体的な例とともに、詳しい解説が書かれています。

興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください!

 

people standing inside city building

5分で学ぶ『ビジネスの未来』要約(GDPの本当の意味、資本主義とは何か?)【山口 周】

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』要約(意思決定の新たな方法)山口 周

著者紹介

出典:brain.co.jp

山口 周(やまぐち しゅう)
電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活躍。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』などの著書がある。