マイナス思考から脱却!『無 最高の状態』要約(人生をポジティブに変える秘訣!)【鈴木祐】

woman sitting on bench over viewing mountain 日々を豊かに、丁寧に暮らすコツ

この本の目的はあなたの不安や心配事をクリアにし、あなたが生まれ持つポテンシャルを取り戻すお手伝いをすることです。

ーー鈴木祐

この記事では、サイエンスライターの鈴木祐さんの書籍「無 最高の状態を紹介します。本書は、

  • 不安に感じることが多い
  • 普段から生きづらさを感じる
  • 苦しみから解放されたい

という方にオススメです。私たちは、生活の中でさまざまな苦しみを感じています。怒りや不安など、多様な苦しみの問題を打破して、精神を最高の状態に導けたらどれほど気が楽になるでしょうか。

本書では、不安・怒り・孤独・虚無・自責から自らを解放する科学的メソッドが紹介されています。

著者も、実際にその恩恵を受けた一人です。全ての苦しみは自己の問題に行き着きますが、その精神の鍛錬の技法はさまざま。個人に適した方法を選ぶことが重要です。それでは、さっそく中身をみてきましょう!

<鈴木祐さんの書籍はこちらでまとめて紹介しています>

 

1. 苦しみを生むメカニズム

man in gray crew neck shirt with brown hair

 

大事なプレゼンの重圧や健康診断の再検査への恐怖、新生活への不安など、私たちは不安や生きづらさを日々感じています。しかし、心配事の97%は起こらないことは、データでも確認されている事実です。実際に心配事が大したことがなかった経験は、誰にでもあることです。

一方で、厚労省の統計では、今の暮らしに強いストレスを感じていると答えた労働者の数は、58%を超えています。その中でも、自分の将来に不安を抱く10代~30代の若年層は78.1%もいます。この傾向は日本だけではなく、世界的なものです。

  • 気疲れしやすく、いつも疲れてしまう。
  • 不安ではないが、生きる意味を感じられない。
  • 他人の何気ない言葉に傷ついて、頭から離れない。

実際には、心配事の97%は起こっていないにも関わらず、安らかに日々を過ごせない人が増えているのです。「人生は苦である」は、仏教の開祖であるゴータマ・ブッダの言葉です。

ここで言う“苦”とは、人生の絶望や苦悩だけではなく、虚しさ、不快さ、思い通りにいかないことへのいら立ちなどを含む、広い概念のこと。簡単に言えば、“生きづらさ”は人間に初めから設定されたものだということです。

 

良いことはすぐに忘れてしまう

私たちの脳には、感情に関して二つのシステムが備わっています。一つは、嫌なことは後まで残ること。もう一つは、逆に良いことはすぐに忘れてしまうことです。

ポジティブな情報よりもネガティブなことほど記憶に残ることは、誰もが思い当たると思います。ある研究では、新しいアパートに引っ越した嬉しさは平均3カ月で色あせる。給料が上がった喜びも半年で消失。

好きな相手と恋仲になった幸せも6か月で薄らぎ、およそ3年でベースラインに戻ってしまうということがわかっています。つまり、私たちの幸せはすぐに消え去ってしまうということです。

 

そもそも人体に苦が標準で備わったのは、人類の生存に有利だったためです。私たちの祖先であるホモ・サピエンスが暮らした環境では、捕食・飢餓・伝染病・暴力が日常茶飯時でした。脅威に満ちた環境を生き抜くには、できるだけ臆病になるのが最適解。

つまり原始の環境においては、ネガティブな情報を敏感に察し、その記憶を長く保てたものほど生存に有利だったのです。そして、この感覚が現代人にも受け継がれており、現代人の心は機能不全を起こしています。

危険に満ちた原始の世界では役立っていた警戒システムが、ものすごく豊かになり安全が増した現代では、うまく機能しなくなったということです。

このあたりは、高橋祥子さんの「生命科学的思考」の要約でも解説しているので、合わせてご覧ください。

woman in white robe sitting on black office rolling chair

『生命科学的思考』要約(ジーンクエスト 高橋祥子が語る、遺伝子の原則とその攻略法)

 

人は二の矢で苦しむ

孤独感、うつ、不安、完璧主義など、これらは現代人の心の機能不全です。原始仏教の経典には、ゴータマ・ブッダの言葉として「一般の人と仏弟子の違いは、二の矢が刺さるか否かだ」というものがあります。

悟りを開いた人間でも、実際には喜怒哀楽の感情を持つ点では、常人と変わらない。すべての生物は生存に伴う根本の苦難からは逃れらない。この絶対的な真実を、1本目の矢が刺さった状態と例えています。

多くの人は自らそこに二の矢を放って、苦しみを高めてしまっているのです。これを、専門用語では“反芻思考”と言います。

例えば、上司が理不尽な文句をつけてきたという事実が一の矢、続けて、「自分が悪かったのか」、「あの男がリーダー失格なのか」、といった二の矢で苦しみが深まっていきます。

さらに現代の環境では「この間もいわれのないことで怒られたな」と三の矢、四の矢と続けざまに自分を刺す人は少なくありません。

 

一の矢だけで苦しみを終えれば、“苦”に縛られることはありません。また、近年の研究では、一の矢の脅威が思ったより長く続かないことがわかってきました。

私たちの怒りは、せいぜい6秒しか持続しないそうです。つまり、反射的な6秒をやり過ごしさえすれば、一の矢の痛みは過ぎ去ります。それにもかかわらず、私たちが悩みを引きずるのは、二の矢を自で放つからです。

恐怖や不安の感情は、未来に起きるかもしれない驚異の可能性によって生まれます。そして、怒りや悲しみは、過去に起きた負の記憶によって起動します。過去と未来を思い描ける能力があり、人類は他を圧倒する力を持ったことは間違いありません。

怒りの感情が生まれたら、まず何もせずに6秒待ってみることは、二の矢を刺さないためにすぐにできる有効な手段です。

 

2. 自己を構成するもの

woman wearing silver-colored ring

 

私たちの苦しみが長引く場面には、必ず“自己”が関わっています。前提として、ここでの自己とは、“自分が他者とは異なる存在であり、常に同じ人間であるという実感”と定義します。

どんな場所、どんな時間軸にあっても、私は一貫した存在であるという感覚をもたらすものが自己です。例えば、上司に言われのない理由で怒られたとき、私たちの自己が加わり、話をややこしくします。

私が怒られるのは理不尽だ。私が何かミスをしたのか。私は悪くない…

ネガティブな思考はどれも、自己をベースに広がり始めます。放っておけば静まるはずだった嫌な感情を、増大させます。そして、自己を中心に思考が過去と未来に向けて広がると、さらに事態は悪化します。

 

私は1ヶ月前も似たようなことで怒られた。私の未来は一体どうなるのか。このように、すべての苦しみは自己の問題に行き着きます。目の前に存在しない過去と未来の脳内イメージが、私たちを二の矢で貫いているのです。

実際、多くの先行研究で自己にこだわる人ほど、メンタルを壊しやすいという傾向が何度も報告されているそうです。つまり、自己を消すことさえできれば、苦しみをこじらせずに済むということ。

過去にも多くの哲学者や宗教家が、自己をどう考えるかという疑問と格闘してきました。その答えは、論者によって異なります。しかし、ここ数年の認知科学や脳科学の発達により、自己について分かりやすい考え方が生まれてきました。

それは、自己とは特定の機能の集合体に過ぎないというアイデアです。

 

自己は機能の集合体

アーミーナイフについて、考えてみてください。アーミーナイフは、単にナイフとして使えるだけではありません。他にも栓抜き、ハサミ、ドライバー、ヤスリなど多様な機能が一つにまとまっています。

自己とは、これと同じく機能の集合体。自己は単一の存在ではなく、様々なツールのパッケージだと見なせます。

近年の神経心理学では、人間の自己が保つ働きを、細かく分類しています。人生の記憶や性格の要約、感情の把握など、どの機能も人間の存在に欠かせません。こうした分類の中から状況によって、脳が問題の解決に役立つと判断した自己を自動で選んでいるそうです。

自己は意識の頂点に君臨する、絶対的なものが一つ存在すると考えがちですが、そうではないのです。本書では、自己は生存のためのツールボックス、サバイバルに必要な道具の寄せ集めに過ぎないと例えています。

また、自己が消えるシーンはいくらでも存在します。ゲームに集中している時、温かいお風呂に入っている時、寝る前にゆったりと音楽を聴いている時、このような意識が完全にいまその時に向かった状態では、わざわざ自己を起動させずに済みます。これらのシーンでは、自己が消えても行動に問題がないからです。

 

脳は物語の製造機

では感情や思考と同じように、現れたり消えたりする“自己”もトレーニング次第でコントロールできるのでしょうか?

まずは、自己を作り出す脳の仕組みを理解しましょう。「ヒトの脳は、物語の製造機である」と、神経科学の分野ではよく言われています。脳は、以下のようなステップで物語を製造します。

  • 周囲の状況がどう展開するか事前に脳が物語を作る
  • 感覚器官が受け取った映像や音声の情報を脳の物語と比べる
  • 脳の物語が間違っていたところのみを修正して“現実”を作る

ここでいう物語とは、特定の物事の因果関係を説明するものです。この1~3を例に当てはめると、例えば家から外に出るときには、事前の情報で脳はこのように物語を作り始めます。

 

1. 扉の向こうには、いつもの庭があるだろう。

続いて、目や耳などの感覚器官から入った情報とこの脳の物語を比べます。

2. 扉を開けたら、庭に大きな犬がいた。

大きい犬は、事前に脳が作った物語には出て来ませんでした。ここで間違っていた部分を修正して、“現実”を作ります。

3. この犬は危険かもしれない。

と、過去の経験から次の物語を作り出す。

 

脳はある程度のことを、いつもと同じだろうと推測してエネルギーを温存しています。そして、予想通りではなかったことだけを新しい物語として書き換えます。私たちは、脳が作り出したシミュレーションの世界を生き続けているのです。

しかし、人によっては、ゆがんだ物語を取り出してしまう人がいます。友人の態度がそっけなくなったとき、忙しい人は態度が冷たくなりやすいという物語が選ばれれば、単に日を改めようと思えます。

これは、苦しみが一の矢だけで終わった状態。この時、「私は愛されない人間だからだ」などとゆがんだ物語を取り出せば、苦しみが広がります。

 

つまり、同じようなトラブルでも、苦しむ人と苦しまない人がいるのは、メンタルが強いか弱いかの問題ではなく、脳内で作られた独自のストーリーラインが、適用か否かの問題なのです。

そして、人類の脳は現実よりも物語を優先します。客観的にみればありえないゆがんだ物語でさえも、正しいと考えてしまう。物語は脳内で自動的に動き出し、私たちには制御できないのです。

私たちは物語を唯一の現実だと思い込み、それに気づいていないということ。これらの点を解決しない限り、自己の問題は解決されず、私たちの悩みも解決には向かわないということです。

 

3. 無我を導く方法

 

私たちを悩ませる物語の種類はさまざまで、それを無くす無我に至る方法も一つではありません。

本書で紹介されている精神を鍛錬する方法は、序章から終章まで順に読み進めることで、より深い理解が進むように書かれています。

今回は著者が無我のトレーニングを始めたばかりの頃に、高めて欲しいと思う2つスキルについて解説したいと思います。

そのスキルは、「停止」と「観察」。これらは、神経学および心理療法の研究が臨床テストで良い結果が認められた対策です。

 

停止について

停止とは、脳を何か他のことに使い、物語の製造機能そのものを止めてしまう方法です。

答えが出ない問いについて考えると、頭の中に矛盾が生じ、脳がネガティブな感情を発動させます。しかし、ここからさらに無理やり悩み続けると、妙に爽快な気分を感じる人が必ず一定数存在するそうです。

これは、解けない謎に対して脳の回路が停止し結果、頭の中を巡る思考から解き放たれるからだと考えられています。何かの作業に意識を集中させることで、物語が停止することは、すでに複数の実験で確認されています。

 

代表的な手段として有名なのは、詠唱です。礼拝の祈祷文を一定のリズムと節に乗せて歌う宗教儀式の一つです。

詠唱には、デフォルトモードネットワーク(DMN)の活動量を下げ、自己にまつわる物語の量を優位に減らす傾向が認められています。DMNとは、私たちが何もしていないときに活動を始める神経回路。ぼんやりと空想をしているとき、お風呂でとりとめもないことを考えているときなど、色々な情報をまとめて新たな発想を生むのに役立つネットワークです。

シャワーをしているときなんかに良いアイディアが思いつきやすいのは、このDMNが関わっています。そしてこの大事な回路が、近年では私たちの苦しみを生む原因になることが分かってきました。

DMNは、自分に関する情報を処理する回路でもあるそうです。将来のことを考える、過去を振り返る、誰かとコミュニケーションをする。このような場面では、DMNの活動が激しくなり、自分にまつわるネガティブの物語を生み出しやすくなります。

つまり、DMNがメンタルの悪化の一因ということです。DMNが寝れば、本来は自動的に動き出し物語が機能を止めます。この状態こそが「停止」です。

 

観察について

観察は、私たちの脳内に浮かぶ物語を、じっくりと見つめる作業です。ネガティブな物語を観察し続ける。何でもいいので何かの単語を声に出さずに、読んでみてください。

心に何か変化が起きたでしょうか。その単語のイメージを想像したり、思い出が頭をよぎったり、もしくは何も変化が起きないかもしれません。

結果はどうあれ、自分の内面がどう反応したかに気付くことがポイントです。頭に何らかのイメージや思考が浮かぶかを、ただ見つめる。この感覚が、「観察」です。

 

観察のトレーニングは、メンタルの改善や集中力、記憶力の向上が見込めるそうです。

苦しみをこじらせる人の脳は世界の小さな変化を、すべて自分ごととしてとらえがちです。頭痛やめまい、ふと頭をよぎる不安、同僚たちとの口喧嘩。観察のトレーニングでは、体の不調や内面の不安を一旦放置して、そのまま見つめ続けるタイルが求められます。

外の変化を自分ごとにしない、ただ脳内の起きた現象の一つそうやって観察を続けると、やがて重要な変化が起きます。使わない筋肉が衰えていくのと同じように、心身の変化をいたずらに自己の問題として捉えなくなります。

つまり、二の矢を放つ回数が減るということです。観察のトレーニングにより脳が作り出す物語を、これは現実ではないと認識できるようになるということです。

 

「停止」の力で物語の強度を限界まで下げる、「観察」の力で物語を現実から切り離す。この2つが、無我を達成するスキルです。

ただ近年の研究ではいくら観察のトレーニングを積んでも効果が得られない人がいることが分かっています。モチベーションの低下やネガティブな感情の増加、自己本位な思考の強化などの副作用が起きる自衛も増えてきたそうです。

たちが認識しておくべきことは、停止と観察の効果には個人差が大きいということ。これは運動や勉強と何ら変わりはありません。一人一人に合わせたやり方が必要です。実際、停止と観察の技法にも様々な種類があります。

今回紹介した以外にも精神修養の技法が本書に紹介されています。効果を感じるためには、その中から個人に適した方法を選ぶことが重要です。

本書「無 最高の状態」の内容は少しややこしく、とっつきにくい内容でしたが、興味のある方はぜひ手にとって読んでみてください!

 

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