みなさんは、未来への期待や不安がありますか?
この記事は、ピーター・ディアマンディスさんの書籍『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』を紹介します。
本書は、“今から約10年後に、私たちの住む社会や産業は、あっという間に変わるぞ!”という内容です。
なぜそんなことが言えるのかというと、今ある最先端のテクノロジーは、お互いに融合し、更に加速していくからです。
幅広い話題が詰まった本書の中から、全ての分野に関わる重要な部分を解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください!
1. コンバージェンスの時代がやってくる

Uber Air 出典:https://gigazine.net/
2019年、Uberは空飛ぶ車「Uber Air」を発表しました。
“空飛ぶ車”というアイデアは、昔からあり、SF映画にも頻繁に登場しますが、なぜこのタイミングで改めて空飛ぶ車を発表したのでしょうか。
そのカギこそが、“コンバージェンス”にあります。
コンバージェンスとは、複数技術の融合のことです。
今の世の中は、一つの分野で技術の進歩があったというだけではなく、あらゆる分野で同時多発的に技術革新が起こっているため、結果として今まで不可能だったアイデアが、一気に実現できるようになる現象が起こりやすくなっています。
空飛ぶ車を例にすると、必要な要素は大きく3つです。
安全性、騒音、価格。
現状、最も空飛ぶ車に近いものは、ヘリコプターですが、この3要素を満たしていないため、一般に普及はしませんでした。
しかし、ここ10年のドローンの進歩に伴い、極めて軽量かつ静かで、コストも安い、3要素を備えた新しい電気モーターが考案されました。
それを可能にしたのが、以下の3つのテクノロジーです。
- 複雑なフライトシミュレーションを行うための機械学習の進歩
- 軽量で耐久性がある部品を作るための材料コストの低下
- あらゆるサイズのモーター、ローターを作るための3Dプリンティング
そして、空飛ぶ車を実現するには、数十個の電気モーターを、マイクロ秒単位で制御することになりますが、それにも幾つもの技術のコンバージェンスが不可欠になります。
- 膨大なデータを取り込んで、モーターを制御するコンピューター処理能力
- 周囲の情報を認識するためのGPS、レーダー、加速度計といったセンサー
- 走行中に電池切れを起こさないだけの持続時間と、乗客4人を持ち上げるだけの電力密度を持つ電池
これらはいずれも少し前までは妄想の話でしたが、今まさにリアルに実現されてきています。
靴下が作られるようになったのは、それまで使われていた植物の繊維に代わって、柔らかい織物ができ、縫い針が登場したためです。それは一つ一つ積み上げる、直線的な進歩でした。
それに対して、AIをはじめとしたコンピューターのコードに置き換えられるものは、エクスポネンシャル、つまり指数関数的に急激な加速をした進化をしていきます。
人間の脳は、直線的な変化は認識できますが、指数関数的なスピードを認識することはできません。
レイ・カーツワイルが、「収穫加速の法則」に従って計算したところ、我々はこれからの100年で、それ以前の2万年分の技術変化を経験することになると言っています。
農業の誕生から、インターネットの誕生までの歴史を2回繰り返すくらいの変化が起こるのです。
すべてを変えてしまうような出来事が、日常的に起こるようになるということ。空飛ぶ車は、ほんの始まりに過ぎないのです。
2. 量子コンピューティングの衝撃
先に挙げた、エクスポネンシャル・テクノロジー(急激に発達する技術)は、“コンピュータの性能は、18カ月で2倍になる”という「ムーアの法則」に従っています。
1956年、当時のコンピューターの処理能力は、1万フロップスでしたが、2015年には1,000兆フロップスになり、この飛躍的な性能向上が、テクノロジーの進歩の最大の推進力となってきました。
そして2002年、現在のコンピュータの次の未来、量子コンピュータの会社創業者、ジョルディ・ローズは、“量子コンピュータの量子ビット数は、毎年倍増する”という「ローズの法則」を提唱しました。
量子ビットの性能は、通常のコンピューターのビットとは比べ物にならないほど強力です。
例えば、50量子ビットのコンピューターは、16ペタバイトのメモリを用い、iPod なら5,000万曲を保存できます。今聞いても、桁違いの情報量ですね。
これだけでもとんでもない量ですが、例えばこれを30量子ピット増やすことは、単純に1.6倍というわけではなく、全く違う次元の話になります。
宇宙の全ての原子が、1ビットの情報を保持すると仮定した場合、80量子ビットのコンピュータは、宇宙の全ての原子の容量を上回る情報を持つことに。
量子コンピューティング技術が成熟したら、どんなイノベーションが起こるか想像もつきません。
また、化学と物理学は量子力学と親和性の高い分野なので、量子ビットのコンピューティングが実現すれば、新たな材料化学物質、医薬品の発見が相次ぐことになります。
例えば、新たながん治療薬を開発する場合、大規模なラボをつくって、試験管の中で何十万種類もの化合物の性質を調べる代わりに、そのほとんどをコンピューターで済ませられるといったように。
新しいアイディアから、新しい薬の開発までの距離が、一気に短くなるのです。
今回はここまで、続きは後編で。
この本では、私たちの生活に密接に関わる分野である、買い物、広告、エンターテイメント、教育、医療、食料といった多岐にわたるジャンルについて、詳しく書かれています。
よかったらぜひ本書を手に取ってみてください。