この記事では、ニック・マジューリさんの書籍「JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続けるお金と時間の法則」を紹介します。
本書は、
- お金を増やすシンプルな方法を知りたい
- データに基づいたお金の知見を得たい
という方におすすめです。
本書の内容は、端的に言えばデータサイエンティストである著者が、お金を貯め、褒美を築くための証明済みの方法を紹介するともの。
中には世間一般で言われていることと異なるような驚くべきのアドバイスもあります。
それでは早速中身をみていきましょう!
1. どのくらい貯金をすればいいのか?
どのくらい貯金すればいいのか、気になりますよね?
この問いをGoogleで検索してみると、例えば次のようなアドバイスが出てきます。
収入の2割を貯金しよう、最低でも収入の1割は貯金に回すべき、といったようなものです。しかし、著者はこれらの主張には共通する誤りがあると言います。今回は貯金に関して、2つの項目を解説します。
世の中の貯金についてのアドバイスは大間違い
著者は、世の中の貯金についてのアドバイスには、2つの誤った前提があると言います。一つは、長期的に安定収入が見込めることを前提にしていること。
もう一つは、どの収入レベルの人も同じ割合で貯金できることを前提にしていることです。
所得動態に関するパネル調査のデータでは、近年多くの人たちの所得は不安定になっていることが示されています。個人の貯蓄率を一番大きく左右するのは、所得水準です。これは、様々な研究で実証されています。
例えば、連邦準備制度理事会と全米経済研究所の研究によれば、下位20%の所得者は、毎年収入の1%を貯金し、上位20%の所得者は24%を貯金しています。さらに、上位5%の所得者は37%を、上位1%の所得者は51%を貯金しています。
富が増えれば増えるほど貯蓄も増えるので、収入の2割を貯金しようといったような貯金に関するアドバイスが検討違いであると著者は言います。
貯金が楽しくなる最良のアドバイス
著者は貯金に対して、次のようなアドバイスをしています。
貯金をたくさんできる時はする、そうでない場合は少なく貯金する。生涯を通じて、収入は一定ではないのだから、収入が一定であることを前提とした貯金のルールを絶対的なものとすべきではない。
つまり、できる範囲で貯金するということです。このアドバイスに従えば、ストレスが大幅に減り、幸福度も格段に向上するでしょう。
ストレス・イン・アメリカが2007年に調査を開始して以来、景気の状況にかかわらずアメリカ人の一番のストレス要因は、一貫してお金であると、米国心理学会を発表しました。多くの人たちは、自分がどれだけ貯金できているか不安になっています。
もちろん、貯蓄率が低ければ、経済的には苦しくなりますが、研究によって分かったことは、その経済的な苦しさそのものよりも、貯蓄率の低さからくるストレスの方が悪影響を与えるということ。
著者自身も個人的にこれを体験しており、収入の2割を貯めるなどの誰かが決めた恣意的なルールに従って貯金するのをやめるたそうです。
すると、過度にお金に執着しなくなり、できる範囲で貯金をすることで、お金に関するあらゆる判断に疑問を持つことなく、お金との付き合い方を楽しめるようになったそうです。
2. 家を借りるべきか買うべきか
持ち家か、賃貸かという問題に関心のある人も多いでしょう。この問題に対し、著者の3つのポイントを解説します。
持ち家に押しかかる2つのコスト
住宅を保有すると、住宅ローン以外にも一時的コストと継続的コストがかかります。一時的コストとは、頭金や購入手数料など。経済的コストとは、税金・維持費・保険料などです。
住宅の一時的コストは、合計すると住宅価格の約5.5%~31%程度になります。そのため、住宅を買うのは長期的にその家を所有する場合のみ、意味があると言えます。売買の頻度が多くなれば、予想される価格上昇分を取引コストだけで食いつぶすことになります。
また、家本体の支払いを終えた後も、継続的コストとして固定資産税・維持費・保険料を支払う必要があります。アメリカの場合、年間の維持費は物件価格の1%~2%程度と言われています。また、家のメンテナンスには手間暇がかかります。
業者に修理を依頼しても、DIYでやるにしても思った以上に労力がかかるものです。こうした一時的・継続的コストを考慮すると、住宅は時に資産より負債になる場合があります。
もちろん、だからといって賃貸にすればこうした金銭的コストがなくなるわけではありません。
賃貸にすれば、月々の家賃を払います。しかし、リスクの観点からは、賃貸派と持ち家派の住宅費に関するコストの意味合いは大きく異なります。
なぜなら、賃貸派は将来どのくらいの支払いが発生するかを正確に把握できますが、持ち家派はそうではないからです。
例えば、住宅物件の維持費がある年には住宅価格の4%かかり、ある年は全くかからなかったとします。これは、持ち家派の出費には大きく影響しますが、賃貸派には影響しません。
つまり、短期的には賃貸派より持ち家派の方が住宅に関するリスクが高くなります。次の1年間で考えると、住宅に関して生じるコストは持ち家派の方が賃貸派よりもはるかに変動しやすいからです。しかし、長期的に見ればこの立場は逆転します。
賃貸派が抱える潜在的なリスク
賃貸生活をするとき、毎月の家賃以外の主なコストは長期的なリスクです。
このリスクには、将来の住宅費が不透明であることや、生活状況の不安定さ、頻繁な引っ越し費用などが含まれます。
例えば、賃貸派は今後12年間の住宅費は固定できるでしょう。しかし10年後の住宅費がどうなっているかわかりません。常に変動しやすい家賃相場に応じて支払いをしていく必要があるからです。
この点、持ち家派は将来の住宅費をより正確に把握しやすいです。
何より賃貸生活は長期的に見ると不安定です。気に入った物件に住んでいたとしても、家賃が大幅に上がったために引っ越さざるを得なくなることもありえます。
このような不安定さは、特に小さな子どものいる家庭にとっては、経済的にも精神的にも負担になるでしょう。
家の買い時を決める3つの条件
著者は住宅購入に踏み切る条件は、次の3つだと言います。
- 10年以上はその土地に暮らす予定である
- 公私ともに安定した生活を送っている
- 経済余裕がある
です。
このうち、どれか一つでも満たせていなければ、賃貸にすべきだというのが著者の考えです。
理由は、住宅購入の取引コストを6%と仮定します。資産によるアメリカの実質住宅収益は、年間0.6%なので、一般的なアメリカの住宅が6%の取引コストを取り戻すのに、10年かかります。
同じように、その土地に10年住む予定でも、私生活や仕事が不安定な場合は、家を買うべきでありません。
例えば、独身の時に家を購入した場合、結婚して子供が生まれたら、それまでの手狭な家を売り広い家に住み替えるでしょう。
また、転職を繰り返していたり、収入の変動が激しかったりする場合も、住宅ローンを組むと家計がリスクにさらされます。
このように、経済的私生活的に不安定だと、家を買い替えなければならなかったり、ローンが破綻したりするため最終的に取引コストがかさみやすくなります。
つまり、住宅ローンは将来はある程度予測できるようになったタイミングで組むべきというわけです。
3. いつリタイアできるか
どれくらいの投資からリターンが得られるか、自分がどのくらい長生きするかは分かりません。そのため、いつリタイアできるかは難しい問題です。
しかし、リタイアできる時期を判断するために使えるシンプルなルールがあります。ここからは、シンプルなルールである4%ルールと、リタイアに関連してFIREを著者がおすすめしない理由の2つのポイントを紹介します。
4%ルール
ファイナンシャルアドバイザーのウィリアム・デンゲンは、退職者が老後資産を使い果たさずに毎年どのくらいのお金を引き出すことができるかを試算し、ファイナンシャルプランニング界に革命を起こす研究結果を発表しました。
デンゲンは歴史的なデータに基づき、老後生活者は30年間以上老後資金を使い果たすことなく、株式5割、債券5割のポートフォから、毎年4%を取り崩せることを明らかにしました。
この分野を専門とするファイナンシャルプランナーのマイケル・キッズ氏が1870年までさかのぼって分析したところ4%ルールを実践すれば、30年後に元本が枯渇するケースは極めて少なく、30年後に資産が5倍に増えているというレアなケースより起こる可能性が低いということが分かったのです。
この4%ルールを用いれば、リタイアする際にいくら必要かという複雑な問題を簡単に解決できます。リタイアに必要な資産は、リタイア後1年目から予測される年間支出の25倍ということになります。
FIREをおすすめしない理由
いつリタイアできるのかは、先ほどの4%ルールで必要な資産額を調べればわかります。ただし、何のためにリタイアするのかをよく考えておかなければいけないと著者は言います。
リタイア後の時間をどう過ごしたいのか、どんな人付き合いを望んでいるのか、リタイア生活で一番大切なことは何か。これらの問いに対し、納得のいく答えを導ければ、幸せなリタイアができるでしょう。
しかし、曖昧な答えしか浮かんでこないなら、せっかくリタイアしても失望したり、失敗したりしてしまうかもしれません。いくら経済的にうまくいったとしても、心身の健康が満たされなければ意味がないです。
こうした理由から、著者はFIREムーブメントがあまり好きではないと言います。確かに、世の中には35歳でラットレースから抜け出し、働かない人生を楽しめる人もいますが、それを難しいと感じる人も大勢います。
たとえ経済的に何も問題がなかったとしてもです。
本書では、テレンスという男性の例が紹介されています。
テレンスは2年前にリタイアし、現在はバケーションレンタルサイトのAieBnBを利用して1ヶ月~3ヶ月単位で世界各地を点々としています。そのライフスタイルは、多くの人に華やかで羨ましいと思わせるものです。
しかし、テレンスはこう言います。孤独を感じている大抵の人は、この生活を楽しめないだろう。FIREやノマドド的なライフスタイルを受け入れるのは、自分はもはや世の中にとって重要な存在ではないと受け入れることである。
存在しているのかしていないのかわからない、手応えの感じられない世界で生きていかなければならないのだと。これは考えようによってはとても怖いことです。
FIREをすれば、誰もがテレンスのように感じるわけではないでしょう。しかし、早期リタイアにこういった負の側面があるという事実はあります。
テレンスのケースは重要な真実を示しています。お金は多くの問題を解決できますが、全ての問題は解決できません。お金は人生で欲しいものを手に入れる道具にすぎないです。
そして、残念ながら人生に何を求めているのかを本当に理解するのは簡単ではないんです。
今回紹介した、ニック・マジューリさんの書籍「JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続けるお金と時間の法則」についてまだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、ぜひ読んでみてください!