幸福に必要なものは、逆境だった。
この記事では、橘 玲(たちばな あきら)さんの「人生は攻略できる」を参考に、幸福について考えていきます。
歯に衣着せぬ内容の書籍が多く、私たちに厳しい現実を突きつける橘さん。今回の書籍はその中でも、とても前向きなものです。これを読めば、幸福になるためには何が必要なのか分かり、幸福に生きるためのヒントを得ることができるはずです。
ぜひ、最後まで読んでみてください!
<橘玲さんの書籍はこちらでまとめて紹介しています>
1. 幸福と逆境の関係性
2010年に発表された興味深い論文があります。それは幸福と逆境の関係を示した論文で、タイトルは「どんな試練も乗り越えられる」。逆境と人々の病気のリスクの関係、そして逆境と幸福感との関係を調べたものです。そして、その論文は “逆境の経験が中程度の人が、一番幸福である” と結論づけています。どういうことか、もう少し詳しくみていきましょう。
この研究は、2,000人のアメリカ人を対象とした大規模なもので、
- 深刻な病気や怪我
- 友人や愛する人の死
- 経済的な大きな失敗
- 虐待や性的暴行の被害
など、さまざまな逆境を体験した人の、4年後の健康状態を調べました。
過去にトラウマになるような大きな不幸を経験していたり、いま現在も貧困に苦しんでいる人たちの幸福度が低いのは当然の結果。しかしそればかりか、この調査の結果、うつ病などの健康リスクが最も低く、人生に対する満足度が最も高いのは、“逆境を経験した数が中程度の人たち”だったのです。
逆境の経験が最も多い人たちはもちろんですが、逆境を全然経験してない人もまた、うつ状態になることが多いということです。多くの人は、「人生に逆境なんか、ない方がいいじゃん!」と、思うかもしれません。しかし、あまり逆境を体験したことのない人は、ある程度辛い経験のある人たちに比べて幸福感が低く、健康状態が劣っています。
そればかりか、過去に逆境を経験した数がゼロの人たちは、逆境を経験した数が平均的だった人に比べて、人生に対する満足感がはるかに低かったという事実が明らかになったのです。
2. 逆境のある人生がなぜ幸福になるのか
なぜ、逆境のある人生が幸福につながるのか?
その理由について考えてみましょう。
それを考える上では、人生をRPGゲームに例えてみると分かりやすいです。RPGの最終的な目標は大魔王を倒して、世界を救うことですよね。主人公は、スタートの時点は大抵レベル1で、さまざまなバトルを繰り返してレベルを上げ、最終的に大魔王を倒せるようになります。さまざまな逆境を乗り越えてレベルアップし、大魔王と対等に戦えるようになって世界を救う。
さて、ここで1つ質問です。あなたが以下のゲームのどれかを始めるとしたら、次の3つどれを選ぶかを考えてみましょう。
- どんなに敵と戦ってもレベルアップせず、ずっとレベル1のまま大魔王に秒で倒される
- ゲームを始めた段階でレベルが100で、ゲームスター3秒で大魔王を倒して世界を救える
- 最初はレベル1だけど、試行錯誤を重ね、時には逆境に立ち向かい、徐々にレベルが上がり、ついにレベル100に。そして、自分の全力を出し切って大魔王を倒し、世界を救う。
はい。
もちろん答えは、“3”ですよね。
1や2のようなゲームは、誰がやってもクソゲーです。発売しても1本も売れません。人生がRPGゲームだとしたら、ずっとレベル1の人生は、例えば中世のアフリカの奴隷。彼らは働けど働けど、自分の恵まれない環境が変わることなく、身分以上に自分の価値が上がることはありませんでした。当然、幸福感など感じられるはずもありません。
逆に、人生で最初からレベル100の大富豪の息子は、生まれながらにして自分の力で稼いだわけではない大金を持っています。その結果、生きていく意味や人生について考える時間、これらにつながる大切な経験をすることなく一生を終えてしまいます。もちろん逆境もゼロでしょう。
金銭的に豊かなので、欲しいモノは何でも手に入りますが、いずれは慣れてしまい飽きがきます。生まれてからずっとその裕福だったため、それが幸福だと感じることができません。実際に、大富豪の息子は、人生における幸福度が非常に低いということが研究で判明しています。
3. RPGゲームのような人生
最初はレベル1だけど、努力してレベル100になる人生はどんなものでしょう?
それは、生まれは貧乏または普通だけど、その逆境をバネにして、辛く苦しい努力を繰り返して自分の力で成功を勝ち取った人生。未熟もしくは恵まれなかった環境から、自分を変えて自己成長を繰り返した結果として、納得のいくゴールに行き着く人生です。これが、幸福でないはずはありませんよね。
また、3つの人生のパターンで、3番目の人生が幸福な理由は、脳科学的にも証明されています。ドーパミンという物質を聞いたことがありますか?
私たちが幸せを感じるときに、脳の中ではドーパミンという幸福物質が分泌されています。ドーパミンの効果については、こちらの記事でも紹介しました。
幸福とは何かという哲学的な議論は、いまだ決着がついていないですが、脳科学的には極めてシンプルでドーパミンの分泌です。ではどんな時に、ドーパミンが分泌されるのでしょうか?
それは、自己成長を感じたときです。昨日までできなかったことが、今日できるようになった。そんな時に、達成感と共にドーパミンが分泌されます。このように脳内ではドーパミンが私たちの幸福を支配しているので、私たちが幸せになるシンプルな方法は、一生自己成長をし続けることだと言えます。そして、その人生はレベル1に生まれ、レベル100を目指すような人生です。
4. 幸福とは?の結論
それでは、ここまでの話を踏まえ、幸福の結論を導き出しましょう。
幸福になるためには、“ほど良い逆境”が必要。これが結論です。逆境がほどよくあり、幸福へと自分の力で登っているときが一番幸せということです。みなさんは、いま辛いことがありますか?
“逆境のない人生は不幸である”と認識し、ある程度の逆境のある方が最終的に人生は幸福になる。この事実を知っていれば、今がたとえつらくても、面白く思えたり、いくらか気分が楽になったりするのではないでしょうか。
未来の幸福のために、今の逆境がある。そして、困難に立ち向かって頑張っているときこそが、最も輝き幸福なときです。逆境は、あなたの人生を実り豊かなものにしてくれる大切なスパイスです。
逆境にいるうちは、そんなことは考えられないかもしれません。しかし、実際に逆境を乗り越えた人生が幸福であるという事実を認識することで、逆境も過ぎ去れば人生を彩る大切なものだと捉えることができませんか?
より詳しく内容を知りたいと思った方は、ぜひ本書「人生は攻略できる」を手にとってみてください!