5分で学ぶ、アンディ・ウォーホル【シルクスクリーンからファクトリーまで】

アート・デザインの豆知識

出典:https://www.fuze.dj/ Photo by Alexander Scheuber/Getty Images

将来、誰もが15分間は有名になれる

ーーアンディ・ウォーホル

現代ではYouTubeやTikTokの登場により、この言葉の先見性には感服させられます。この記事では、ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルを特集していきます。現代アートの中でもポップアートという新たなジャンルを牽引し、アメリカ社会に深く根付く問題を題材として扱いながら「スープ缶」「セレブリティの肖像画」など、大衆の心を動かす作品を数多く残し続けたウォーホル。彼は世界で最もポピュラーな、20世紀後半を代表する存在です。

そんな彼の何がすごかったのか、時系列に沿ってみていきましょう!

 

1. 商業デザイナーとしての華々しいスタートと挫折

アンディ・ウォーホル  出典:https://therakejapan.com/

 

アンディ・ウォーホル(本名:アンドリュー・ウォーホラ(Andrew Warhola))は、1928年アメリカのペンシルベニア州ピッツバーグ出身の画家、芸術家です。

大学卒業後「ヴォーグ」などの雑誌広告やイラストで商業デザイナー、イラストレーターとしてのキャリアをスタートさせます。デザイナーとしての彼は、1952年には新聞広告美術部門でアート・ディレクターズ・クラブ賞を受賞。芸術家になる前から、すでにその才覚を発揮していたことが伺えます。

 

しかし、コマーシャル・アーティストとして華やかな成功を収めたウォーホルは、24歳にしてこれに物足りなさを感じます。ここから、“純粋芸術の表現者”であることを望み、芸術家として活動を始めます。

当初は漫画を素材にした絵を描くも、同様のテーマでロイ・リキテンスタインがすでに有名になっており挫折。新たなテーマを探す中で、知人の画廊経営者から「スープ缶」というアイデアを50ドルでもらったことが転機に。この作品により、ウォーホルは一躍、ポップ·アートの旗手としてアート界の寵児となります。

 

「何かしなけりゃいけない・・漫画の絵・・それじゃ遅すぎる。人を面食らわせるようなやつ、リキテンスタインともまったく違ったやつ。(中略)ねえ、君はアイデア一杯じゃないか、一つ、僕に教えてくれないかい。」(Andy Warhol)

「お金か、ほとんど毎日見かけているようなものを見つけてくればいいのよ。毎日見ていて、だれでも知っているもの。そうね、キャンベル・スープの缶のようなものね。」(知人の画廊経営者)

ーー岩波 世界の巨匠 ウォーホル、エリック・シェーンズ、岩波書店、1996年

 

キャンベルスープ缶 出典:https://www.artpedia.asia/

出典:https://www.subculture.at/the-factory/


スープ缶は、ウォーホルがいち早く取り入れた「シルクスクリーン」技術を活用して制作され、大衆にとって身近な素材を描くことで、「大量消費される大衆文化をシニカルに描いた」という2つのウォーホルらしさが詰まった作品。ウォーホルの中でも最も知名度が高く、象徴的な作品として語られることが多い代表作となりました。

※孔版画の技法の一種で、メッシュ状の版に孔(あな)をあけ、そこにインクを流し込むと孔からインクが落ち、印刷されるという仕組み。

 

2. 大量生産技術でアートの常識を変えた銀髪の革命児

出典:https://www.mirainoshitenclassic.com/

 

1962年8月5日、ロサンゼルスでの個展の最終日、ウォーホルはマリリン・モンロー死去のニュースを耳にします。それを聞いて即座に彼女の宣伝写真を元とした、シルクスクリーンでの制作に着手。これもウォーホルの代表作ともいわれ、マリリンのポートレートの1つとしても有名なものとなりました。

スープ缶やマリリン・モンローの作品を展示した1962年11月のニューヨークでの展示会では、これらの作品をほぼ完売し、ウォーホルはアーティストとしての名声を確実なものとします。

 

1962年にキャンベルスープ缶のシリーズを発表以降、シルクスクリーンの技法を使って、コカ·コーラやブリロ洗剤などの消費材、マリリン·モンローやエルヴィス·プレスリー、ジャクリーヌ·ケネディーといった有名人のイメージを用いた作品を矢継ぎ早に発表。大衆社会を表現する素材をモチーフにして大量生産・大量消費という高度資本主義における構造をシニカルに描いていきます。

また、大量生産品に使われる版画の技法を駆使した、モチーフの反復と鮮やかなカラーリングも特徴です。ウォーホルの作品の着想の多くは、大衆的なイメージから得られており、芸術的な地位まで高めていくそれらの題材は批評家から、「大衆文明時代のイコン」と呼ばれるようにもなります。

 

3. 華麗なる世界の入り口、ザ・シルバー・ファクトリー

出典:https://www.elle.com/jp/

 

ウォーホルは1963年、ニューヨークの帽子工場だった広大な敷地を制作の拠点にします。そこは、インテリアは隅々まで銀のペンキで塗られ、銀の箔で装飾されていたため、「ザ・シルバーファクトリー」と呼ばれました(当時ファクトリーに出入りする人は「スーパースター」と呼ばれていました)。ここでは、制作の拠点のみならず、美術関係者・ミュージシャン・俳優などが集まる交流の場としての役割も果たし、様々なパーティーが開かれるなど、華やかな生活を送ったそうです。

《キス》(1963)や《エンパイア》(1964)などの実験映画の制作、《牛の壁紙》(1966)や《銀の雲》(1965-66)など装飾ともインスタレーションとも判然としない作品の発表など、ウォーホルは時代の先端を行く様々な活動を通してハイ·アートとユース·カルチャーを融合させ、アート界を挑発し続けました。

 

その後も、シルクスクリーンの手法を用いた版画作品のほか、映画『チェルシー・ガールズ』の制作や、雑誌『インタビュー』の出版、ロック・グループ「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のデビュー作『The Velvet Underground & Nico』(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ)のプロデュースとバナナのジャケットデザインを手がけるなど、幅広い分野で活躍します。

『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のジャケット(1967年) 出典:https://www.amazon.com/Velvet-Underground-Nico/dp/B00000E5J1

 

ウォーホルは、キース・ヘリングやジャン=ミシェル・バスキアとも親交があったことも有名です。銀髪のカツラと黒縁メガネがトレードマークで、メディアを最大限に利用し、私生活での派手さも話題を呼びました。

 

4. ウォーホルにとっての「有名」と「死」

 

多くのスキャンダルを起こし、新しいタイプのスターとして自身のイメージを売り込んでいったウォーホル。1968年には、移転した新スタジオでフェミニスト団体のメンバーであるヴァレリー・ソラナスに狙撃され重傷を負いました(銃弾3発のうち1発が命中)が、生存したことで、ますますウォーホルの存在は神話化されることとなります。

その後の作品制作では、大衆文化や既製品のイメージをハイ・アートの分野に流用し、それだけにとどまらず、有名人の言葉を集めた雑誌『インタビュー』を1969年に創刊。70年代には、注文によってセレブリティーの肖像画を制作する「ビジネス」も開始。一般大衆に知られた芸術家としてアートビジネスを展開し、従来のアーティスト像を一新している言わずと知れたアメリカン・ポップ・アートの巨匠として確固たる地位を築き上げていきます。音楽や映画まで幅広く才覚を発揮しアーティストとして大成功を収めるも、1987年心臓発作で亡くなります。

 

ウォーホルの作品、活動、生き方にテーマがあるとすれば、その中心となるのはふたつ、「有名」と「死」です。名声に憧れ、ハリウッド·スターやセレプリティーを作品化したウォーホルは、その「有名」が、人物の内実と関係なくメディアがつくりあげた表面的な像でしかないことも意識していました。彼にとって「有名」とは、TVモニタや紙面の上での瞬きのようなものでしかなかったのかもしれません。それゆえに、彼にとって「有名」は早くから「死」と裏腹でした。

マリリンのシリーズが発表されたのは彼女の死の3か月後、エリザベス·テイラーの作品に着手したのは彼女が重い病に倒れていたときでしたし、1962年には事故や自殺を報じる記事を用いた「惨事」シリーズを開始し、以降も電気椅子や死刑囚、頭蓋骨など「死」を主題とした作品は後年まで続きました。

しかし、ウォーホルは1960年代以降のアメリカの「現実/虚構」をただポップに描き出しただけではありません。彼の作品を美術史的に見れば、フラットな画面、同一イメージ/形態の反復、グリッド構造、オールオーヴァー、物質と記号など、アートを巡る諸問題への鋭い回答となっています。

 

ウォーホルはヨーロッパの階級的伝統に支えられてきたアートを大衆に解き放ちましたが、ポップで通俗的なイメージは、根底にある通俗性(アメリカ的平等性)に支えられています。「僕も大統領も同じコークを飲んでいる」アメリカのアートを鋭く体現しました。1970年には「ライフ」誌によってビートルズとともに「1960年代にもっとも影響力のあった人物」として選ばれるなど、時代を象徴するアーティストとして、今なお多くの人々の記憶に残っています。その派手で激動の人生は、まさにポップであったと言えるでしょう。

 

 

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