『資本主義の中心で資本主義を変える』要約(資本主義をハックする方法)

aerial view of city buildings during daytime 時代を生き抜く考え方・哲学

 

資本主義は限界か?

この記事では、清水大吾さんの書籍「資本主義の中心で資本主義を変える」を紹介します。

いま、日本経済が良くない状況にあり、何か変化が必要だということは、誰しもが実感していると思います。

本書はゴールドマン・サックス証券で16年間、最前線で資本主義と戦ってきた著者が、日本の資本主義、お金の流れを根本から変えるための考え方を示しています。

読んでみると、あなたが日頃職場で感じているモヤモヤに1つの答えを示してくれるかもしれません。

それでは、さっそく中身をみていきましょう!

 

1. 資本主義の基本原理

city buildings near body of water during daytime

 

私たちの日常は、意識せずとも「資本主義」という経済システムの中で成り立っています。

資本主義とは、その基本を「所有の自由」「自由経済」という二つの柱で支えられているシステムです。

このシステムを理解することは、車の原理を理解せずに運転するのに似ています。日常では問題なく機能しますが、何か問題が生じた際にはその原理を知る必要があります。

 

資本主義と社会主義の違い

資本主義を理解するためには、まずはそれが「何ではないか」を考えてみましょう。

社会主義との対比で見ると、資本主義の特徴は「競争原理」の存在にあります。社会主義では、成果に関わらず平等な報酬を目指しますが、資本主義では成果に応じた報酬が特徴です。

この報酬制度は、人々の努力を促し、より良いサービスの提供へとつながります。

 

所有の自由と競争原理

資本主義の中核をなす「所有の自由」は、個人が努力して得たものを自身のものとすることを認める原理です。

これは人間の本来持っている欲望を刺激し、競争を促進させる要素となります。このインセンティブ構造は、歴史を通じて多くの社会で活用されてきました。

例えば、日本では墾田永年私財法により、農民の生産性向上のために田畑の永久所有が認められました。

 

自由経済の役割

さらに、経済活動における制約を最小限にし、市場の原理に任せる「自由経済」の実施も、競争を促進する重要な要素です。

「所有の自由」と「自由経済」の組み合わせが、私たちが当たり前と考える資本主義の根本を形成しています。

 

2. 資本主義と競争原理

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資本主義社会では、競争原理が中心的な役割を果たしており、著者は、この原理がもたらす大きな恩恵を強調しています。

たとえば、冬の寒さを忘れる温かい部屋、世界中の美味しい料理の享受、遠く離れた知人との容易なコミュニケーション、病気の際の迅速な治療などは、競争を通じてサービスの質が向上した結果です。

これらは、より良いサービスを提供することで、個人の利益につながるというインセンティブ構造があるからこそ実現しています。

 

新型コロナワクチンの例

競争原理の最近の例としては、新型コロナウイルスワクチンの開発が挙げられます。

当初、ワクチン開発には数年かかると予想されていましたが、実際には短期間で完成しましたよね。

これは、効果的なワクチンを速やかに作り出した企業が、莫大な利益を得ることが可能だったためです。そして、ワクチンを開発したモデルナ社の株価は、コロナ禍で10倍以上に跳ね上がりました。

 

競争の必要性とその影響

競争が存在しない世界を想像してみると、その重要性がより明確になります。

例えば、プロ野球やオリンピックのような競技では、勝敗や順位がなければ興味を持たれなくなるでしょう。

努力して何かを成し遂げたとしても、それが評価されなければ、生きる意義を感じにくくなるかもしれません。

最近では、競争の弊害も目立つようになっていますが、適度な競争と適切な評価は、私たちが人間らしく生きる上で必要な要素です。

人間らしい生活を送るための「スパイス」としての競争の重要性を、私たちは再認識する必要があります。

 

3. 日本の資本市場のボトルネックは忖度文化

two men facing each other while shake hands and smiling

 

日本の資本市場における主要な問題点の一つとして、著者は「忖度文化」を挙げています。

この文化の象徴とも言えるのが、バーター取引です。

バーター取引とは、利益を目的とした物々交換のこと。

特に、企業間の株式の持ち合い、いわゆる「政策保有株式」がその典型で、お付き合いとしてこの株式を持たない企業は、取引相手として認められない場合もあります。

取引をするために政策保有株式を持つ必要があるという、日本の資本市場における典型的な忖度の例です。

 

日本とアメリカの企業文化の違い

また、アメリカの企業文化と比較すると、この日本の忖度文化の特徴が浮き彫りになります。

アメリカでは、企業はステークホルダーに対して厳しい説明責任を負い、個人的な感情よりも事実に基づいた判断が求められます。

これにより、より質の高い商品やサービスの提供に対するインセンティブが働くのです。

しかし、日本では、商品の品質以上に、忖度や肩書き、接待の回数などが重要視される傾向にあります。

 

日本のビジネス環境の課題

著者は、このような忖度文化が日本のビジネス環境における大きな課題であると指摘します。

上場企業が他人の資本を預かり、ビジネスを行う際、表面的な義理人情よりも、資本の適切な運用とその説明責任が重要であるべきです。

いまの日本では、新興企業だからという理由で相手にされないことが多いですが、アメリカではその場で提案が受け入れられるケースもあり、このような状況は、日本の資本市場にとって大きな損失であり、改善が求められます。

忖度文化が根強い日本では、良質な提案が実現されることなく、忖度なしに判断してくれる海外に流出してしまうリスクがあるのです。

このように、日本の資本市場における忖度文化は、競争力の低下やビジネス機会の損失につながる重要な問題です。これに対処し、より公正で効率的な市場を作ることが、日本経済の健全な成長には不可欠になります。

 

4. 忖度文化の克服には緊張関係

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著者は、日本の意思決定の遅さと曖昧さも指摘しています。

アメリカでは忖度なしで意思決定が行われ、物事がダイナミックに進むのに対し、日本ではゴルフ接待や義理人情など、忖度に基づいた意思決定が一般的。

これは、日本が「いい国」ではなく「キレイな国」と揶揄をこめて評される一因かもしれません。

 

日本社会の「規律」不足

著者は、「規律」の不足を日本経済の課題として挙げています。

ここでの「規律」とは、ルールや倫理感ではなく「是是非非」、つまり物事を忖度なしで「良い / 悪い」 を判断することを指します。

規律があれば社会全体に活力が生まれ、経済も筋肉質で健全な状態になります。

現在の日本経済の拡大は、規律のない「膨張」であり、本物の経済力とは言えない状況にあると著者は指摘します。

政策保有株式は忖度文化の象徴であり、資本市場における経営者と投資家との対話機会を奪い、経営に対する牽制機能を弱めています。

これに伴うバーター取引は、日本社会から「規律」を奪う一因となっており、日本社会全体の課題を凝縮した存在とも言えます。

 

緊張感の回復と真の経済力の実現

日本の資本市場に適切な緊張感を取り戻し、「是是非非」の精神で物事が決まる社会を目指すことが、日本が本物の経済力を取り戻す鍵です。

そうなれば、日本は真に良い国となり、世界に対する発言力を増し、誇りを持って次世代に国を引き継ぐことができるでしょう。

このように、日本の経済力の再構築には、忖度文化を克服し、真の「規律」を取り戻すことが必要です。これにより、ダイナミックで健全な経済の発展が期待できます。

 

5. 変革者は空気の読めない人

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どの企業にも、自社を変革したいと強く願う情熱的な人が存在します。

著者は、これらの人々から頻繁に相談を受けており、彼らは社内の力学に頼らず、第三者の力を利用して会社を変えようとしています。

著者自身も、経営層向けの講演会を開催することで、これらの革新者たちへの支援を行ってきました。

これらの革新者たちの共通点は、客観性を持っていることです。

例えば、投資家と対話をするIR部門の担当者や、転職経験者などがこれに当たります。

彼らは企業の内部に染まらず、客観的な視点で自社の真の姿を理解し、危機感を持って改革を推進しています。

 

ダイバーシティの真の意味

企業価値向上に必要なのは、形式的なダイバーシティではなく、このような客観的で異なる考え方を持つ人々のダイバーシティです。

現在はこのような革新的な人材が少数派であり、同調圧力に屈することも多いですが、彼らの存在を大切にし、育てていくことが重要です。

 

組織内の風通しを良くし、変化を加速させるためには、人材の流動性を高め、多様な考え方を持つ人材を取り入れることが効果的です。

また、若手の意見を積極的に取り上げ、非常識な意見も面白がるような柔軟さも必要です。

新しい時代を切り開くのは、よそ者、若者、バカ者です。

彼らの存在と彼らの考え方の多様性を尊重し、育てることが、企業の持続的な成長と革新に不可欠です。

今回紹介した、清水大吾さんの書籍「資本主義の中心で資本主義を変える」についてまだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、是非読んでみてください!

 

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