スマホでの動画視聴なら何時間でも集中できるのに、勉強や仕事になると全く集中力が続かない。そんな悩みを抱えていませんか?
誰だって勉強や体づくり、人間関係の構築に長期的なメリットがあることは分かっています。しかし、それでもスマホに没頭してしまう。理由は明確で、スマホの視聴やスクロールは簡単で、勉強や仕事は面倒くさくて難しいから。
仮にスマホをいじる時間と同じくらい、勉強や仕事も簡単に取り組めるようになったらどうですか?
とある重要な神経物質を理解すれば、上手くいくかもしれません。
その物質の名は、ドーパミン。
快楽物質とも呼ばれ、簡単に言うと気持ちいいと感じた時に分泌されています。お酒やたばこ、人によっては薬物に手を出してしまうのも、ドーパミンが出て気持ちいいから。
手を出した先に報酬があると予測される活動には、すべてドーパミンが関係しています。人間は基本的に、この気持ちよさを感じるために行動するので、結果としてドーパミンが人のやる気をコントロールしているとも言えます。
この記事では、快楽物質ドーパミンについて、押さえておくべき知識とコントロール方法を紹介します。少しでも気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
1. マウスはレバーを引き続けるか?
まず、ドーパミンのもたらす快楽が、いかに刺激的かを示すある実験を紹介します。その実験では、マウスの脳に電極を埋め込み、左側のレバーを引くとエサがもらえるように、右側のレバーを引くと脳の報酬システムに刺激がいくようにします。さて、このマウスはどちらのレバーを選択するでしょう?
みなさんの予想どおり、マウスは餌がもらえる左のレバーは引かずに、餓死寸前まで刺激がもらえる右のレバーを引き続けます。
ドーパミンとやる気の関係
では次に、このマウスの脳からドーパミンの放出をブロックさせた上で、再実験するとどうなるでしょうか? 左側のレバーで、餌を取りに行くでしょうか? なんとマウスは不機嫌になり、左側のレバーで餌を食べないどころか水も飲まず、さらには後尾への意欲まで失ってしまう結果になりました。
このように、簡単にドーパミンが分泌され続ける環境に慣れると、脳の機能が破壊され、より瞬間的に気持ちよさを求めて行動するようにため、正常な活動へのやる気さえも失われてしまいます。
人間の場合に当てはめるても、刺激的なコンテンツを前にすると、それに気を取られるだけでなく、難しい行動への意欲が湧かなくなる理由がこれです。
2. 脳の短期報酬と長期報酬
人にとって簡単な行動で手に入る報酬を、短期報酬。難しい行動によって得られる報酬を、長期報酬と言います。
短期報酬は、酒やタバコ、スマホでの動画視聴、食べ過ぎなどの消費行動によって得られる一時的な満足感のこと。そして、この報酬の一番の問題は、依存状態になりやすいことです。
SNSやジャンクフードなどの目先の報酬に飛びつくと、脳は一時的に大量のドーパミンを分泌し、快感を得ることができます。しかし、その感覚はすぐに消えてしまうため、さらに目先の報酬に飛びつく。そのうちドーパミンに対する耐性が生まれ、もっと強い刺激を欲しがるようになるという依存のサイクルが出来上がっていくのです。
短期報酬の何が悪いのか
中でも最も注意すべきなのが、スマホ依存。SNSの通知やYoutubeからの新しい情報は、瞬時にドーパミンを分泌し、その反動で快楽がすぐに消えるというサイクルを繰り返し、人を依存状態にしてしまいます。スマホのような、短期報酬にハマってしまうと何が悪いのでしょうか?
それは、先ほど紹介した難しい行動への意欲などの長期報酬の減少です。長期報酬は語学の習得、ビジネスの成功、体づくりや人間関係の構築など努力をして何かを達成した先に待っている満足感のこと。多くの人にとって、人生が好転する瞬間とは、何かを達成して長期報酬を得た時だと思います。
脳の報酬システムをリセットする
当然ながら、この満足感を感じるためには時間と労力が必要です。しかも厄介なことに、脳は何かを達成するまで報酬が得られないことを知っているので、達成するまではドーパミンをほとんど分泌されません。
そのため、長期的な行動を起こす意欲が損なわれていき、結果として多くの人は短期報酬という目先の満足感に走ってしまうのです。
このサイクルを断ち切るために重要なことは、酒やスマホなど気持ちいいと感じる活動を排除し、脳の報酬システムをリセットすること。ドーパミン・デドックスです。
3. ドーパミン・デドックスのやり方
ドーパミン・デドックスのやり方はシンプルで、休日を1日設け、徹底的にハイ・ドーパミン活動を遮断することです。スマホやテレビ、パソコンゲームなどのデジタル機器はもちろん、音楽、ファストフード、筋トレやランニングなどの激しい運動など、ドーパミンを大量に放出するすべての活動から距離を置いてください。
すると、これらの満足感に頼れなくなるので、退屈になると思います。その代わりに取り組めるようになるのが、ロー・ドーパミン活動。散歩や瞑想、自己分析、人生の振り返り、あるいはブレイン・ストーミングといった、自分と向き合う時間を作ることがこれに当たります。
塩おむすびの美味しさに気づく
ドーパミン・デトックスのメカニズムは、以下のとおり。
例えば、毎日3食豪華な食事を食べ続けている人がいたとします。そんなある日、夕食が突然“塩おむすび”だけになったら、当然満足できませんよね。豪華な食事に慣れきっているからです。しかし、砂漠にさまよい、空腹の限界を迎えた時に塩おむすびを渡されたらどうですか?
同じおにぎりでも、涙が出るほど美味しいはずです。ドーパミン・デトックスの目的は、豪華な食事を止め、塩おむすびの美味しさに気づくこと。短期報酬から距離をおくと、読書やビジネスなど長期報酬の楽しさに気づきます。
目の前の”なぜ?”に集中する
まずはデジタル機器の電源を切り、近所を散歩しながら、自分の人生について考えてみましょう。帰宅したらゆっくりと湯船に使ってみたり、気になる本を読んでみたりしてください。
すると、脳の報酬システムがリセットされるだけではなく、人生において努力をして何かを達成する長期報酬が重要だと気づけるようになるはずです。また、デトックス中は自分の思考や目の前の光景すべてに“なぜ?”と疑問視するのもよいでしょう。
- なぜ、すべての人は生に始まりしに終わるのか。
- なぜ、自分は今こんなことを考えているのだろうか。
- なぜ、ここに標識があるのか。
といったように、自分や世界について深く考えてみると、思考力も上がり、長期報酬を掴みとる行動力も湧いてくるはずです。