世界には、どれくらい貧困があると思いますか?
この記事では、世界300万部の大ベストセラー名著、「ファクトフルネス」を紹介します。本書は内容が良すぎて、あのマイクロソフトのビル・ゲイツ氏が、アメリカの大学を卒業する希望者全員に無料配布するほどの出来栄えです。
著者のハンス・ロスリングさんは末期のすい臓がんが見つかり、余命宣告される中でこの本を書き上げ、死後に出版されるという“圧倒的熱量”で書かれた名著です。
いかに私たちが日々思い込みで世界を見ているか、データに基づいて客観的に見ることが大切かを一緒に理解していきましょう。
1. 思い込みで世界を見ていることに気づく
まずは、以下の問いに答えてみてください。
問題: 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?
A 20%
B 40%
C 60%
この問いに対する正答率は低く、日本人は7%ほどだそうです。そして、驚くべきことに、正解する割合と学力には差がないことが分かっています。たとえノーベル賞をとるような優秀な頭脳を持つ学者たちでも、とんでもなく低い正答率になってしまうのです。
問いの答えは「C」の60%です。正解できましたか?
南スーダンやアフガニスタンなどの子どもたちは35%を切り、ほとんどが小学校を卒業することができないそうですが、そのような国は世界の2%以下しかありません。本書には、三択式なので仮にチンパンジーへ同じ問題を出題しても、正解率は33%になるだろうと皮肉も書かれています。
この問いでも分かるように、私たちは世界の正しい姿が見えていないことが多いです。ではこの錯誤がどこから来ているのか。著者によると、人間はよりドラマチックな答えを選ぶ傾向にあると指摘し、私たちは無意識のうちに10の「ドラマチックすぎる世界の見方」を持っているそうです。
それが、以下の10個の思い込みです。
- 分断本能:世界は分断されている
- ネガティブ本能:世界がどんどん悪くなっている
- 直線本能:世界の人口はひたすら増える
- 恐怖本能:実は危険でないことを恐ろしいと感じる
- 過大視本能:目の前の数字がいちばん重要
- パターン化本能:ひとつの例にすべてがあてはまる
- 宿命本能:すべてはあらかじめ決まっている
- 単純化本能:世界はひとつの切り口で理解できる
- 犯人捜し本能:だれかを責めれば物事は解決する
- 焦り本能:いますぐ手を打たないと大変なことになる
これを見ると、すでにドキッとするものもいくつかありますよね?具体例を見てみると、さらに意外と思い込みに陥っているものが多いと気づかされます。ここからはさらに、「これは誤解したままではまずいな。」と思える例を、2つ取り上げていきます。
2.具体例1:分断本能(世界は4分割で考えよう)
分断本能は、「世界は分断されている」という思い込みです。
- 金持ち vs 貧乏
- 先進国 vs 途上国
- 勝ち組 vs 負け組
といったものがそれに当たります。私たちはこのように、世界の様々な物事や人々は2つの勢力に分かれていて、その間には決して埋まらない溝があると考えてしまいがちです。しかし様々なデータを見れば、実際にこの世界は単純に2つに分断できない、大半が2つの中間にあることが分かります。
世界を4分割で考えると、75%が中間層に入り、貧困層は9%だそうです。私たちの世界はどんどん貧困から逃れ、全体的に豊かになり続けています。
それでは、なぜ分断して考えてしまうのか。1つは構造が分かりやすいとスッキリするため、私たちの脳が分断したがるということがあります。さらに、日々流れているメディアが切り取った世界を誇張して報道し、二項対立に拍車をかけます。
これらにより、「分断本能」自体が世の中に蔓延し、歪んだ認識につながってしまっているのです。これに対処するには、メディアの発信する悲劇を鵜呑みにせずに、グラデーションを知るが大切です。
世の中は分断できるものがほとんどなく、曖昧な部分が大半であると認識するのです。本書では、この大半の中間層を認識するために、「途上国」や「先進国」という分断された見方の代わりに、世界中の人々を所得レベルに応じて4つのグループに分けるという考え方を提案しています。
3.具体例2:宿命本能(世界は変化している)
宿命本能は、「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込みです。特に、失われた30年、平成を過ごしてきた日本人が注意しなければならものです。
無宗教が大半の日本は、他国の宗教観を知る機会や話す機会が少ないので、例えば紛争の絶えないイスラム教の人は生まれ持った宿命によって動いていて、考え方に変化がないと思いがちです。現地人と話し合ったことがないにも関わらず。
実際には、あたりまえに環境が変化するように、彼らの考え方も日々変化しています。一方で、変化の乏しい平成の時代を生きてきた私たち日本人は、隣国で紛争が起こっていようが、大半の人がスマホを持つようになっていようが、ベースとなる生活は変わらず続くと思いがちです。
スマホの普及がじわじわと世の中に与えている影響は絶大ですが、その変化は1日レベルでは感じにくく、どこがで変化を望んでいないのかもしれません。この宿命本能に対処するには、社会や文化は劇的でなくても、ゆっくりと変わっていることを認識し、確かめることが大切です。
例えば、10年前の電化製品と今を比べても全然違ったり、親との価値観が合わなかったりしますよね。そうした長い時間で見れば、変化は日々の小さな積み重ねでできていることが理解できます。
4. データを使って正しく世界を見よう
私たちは日々生活する中で、データでなくメディアに触れることが多く、それによって描かれる“頭の中のドラマ”に影響されてしまっています。メディアは、地味に変化を起こす良いニュースに誰も興味ないことを知っていますし、なるべく悪いニュースを悲劇のように伝えたがります。
この偏見をなくすには、そうした与えられた情報のみでなく、自ら情報を取りに行き、データで世界を見ることが重要です。ファクトフルネスとは、“データを基に世界を正しく見る習慣”のことです。
序盤に挙げた「10のドラマチックすぎる本能」を意識して、ファクトフルネスに基づき行動することで、世界を正しく見るように心がけましょう!