『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』要約(寿司、サバ缶から培養魚肉まで)

raw meat on black tray 日々を豊かに、丁寧に暮らすコツ

 

お寿司は好きですか?

この記事では、ながさき一生さんの書籍「魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養」を取り上げます。

オバマ元大統領も、レディー・ガガも、デビッド・ベッカムも…

近年、世界のセレブたちが続々と日本に来て魚を食べており、豊洲市場や築地市場には多くの外国人が訪れ賑わっています。

彼らはなぜ、日本に魚を食べに来るのでしょうか?

本書によると、その理由は“世界が魚の良さに気づいたから”

本書は魚ビジネスの世界にこれから足を踏み入れる方、教養として知識を身につけたいという方に向けて書かれています。

おさかなコーディネータである著者が、網羅的かつ中立の立場から、楽しく魚ビジネスの世界を覗くことができます!

それでは、中身をみていきましょう!

 

1. 寿司から学ぶ、魚ビジネスの世界

person sitting in front of sushi dish on table

 

寿司は日本の伝統的料理で、今や世界中で親しまれていますよね。

まずはこの寿司を通じて、魚ビジネスの世界を深く理解してきます。

具体的には、「なぜ日本の寿司が世界に広まったのか」、「刺身と寿司の違い」、そして「高級寿司と回転寿司の違い」の3点についてです。

 

なぜ日本の寿司は世界に広まったのか

 

寿司が日本国内で人気を博し、広まった理由には、味の良さと豊富な魚種を楽しめる点にあります。

ただし、海外で見られる寿司は、日本の伝統的な形とは異なる場合が多いですよね。

たとえば、アメリカで生まれた「カリフォルニアロール」はその代表例。また、タイの屋台では甘く味付けされたカラフルな寿司が販売されています。

では、なぜ寿司はここまで世界中で受け入れられたのでしょうか?

 

2011年に開催された地球五大陸をおいしさと健康でむすぶスシロードの資料によれば、寿司が世界に広まった理由は、

  • 寿司は健康によいことがわかった
  • 寿司の食材が日本以外から調達が可能になった
  • 安価で美味しい寿司用の米が世界に普及した
  • 回転寿司と寿司ロボットが発明された

の4つにまとめられます。

これらに加えて、寿司の柔軟性も大きな役割を果たしています。

例えば、サーモン寿司は日本には元々存在しませんでしたが、ノルウェーが自国のサーモンを日本に売り込むために寿司という形を利用した結果、世界中で親しまれるようになりました。

このように、寿司は他文化を取り入れやすい柔軟な料理であるため、世界中で受け入れられているのです。

 

刺身と寿司の違い

刺身と寿司は、どちらも生魚を使う料理ですが、その違いはシンプルです。

刺身は魚そのものを食べる料理で、魚の鮮度が非常に重要。鮮度が低下すると味も劣化するため、刺身は産地で食べるのが一番美味しいとされています。

一方、寿司は酢飯と合わせて魚を食べるため、鮮度による味の差は刺身ほど顕著ではありません。酢飯が魚の生臭さを中和し、時間が経って熟成した魚でも旨味を引き出すことができます。

つまり、寿司は刺身と比べて、流通先でも美味しく魚を楽しめる料理であり、世界中で愛される理由の一つといえます。

 

高級寿司と回転寿司の違い

また、寿司には、高級寿司と回転寿司という2つのスタイルがありますよね。

高級寿司は、その日の最高のネタを使用し、職人が手間をかけて最良の状態で提供するため、価格も高額に。

シリやわさびなどの食材にもこだわり、その全てが一流であるため、日常では考えられないような価格になることもあります。

 

一方、回転寿司は、できるだけ入荷状況に左右されないような仕入れを行い、機械やマニュアルを使って調理が行われます。

これにより、同じ品質の寿司を広く提供し、多くの人々が手軽に楽しめる価格で提供するビジネスモデルとなっています。

このように、寿司を通じて魚ビジネスの多様性と奥深さを理解することができます。それぞれの寿司スタイルが持つ魅力と役割を知ることで、寿司文化の広がりと進化をより深く感じることができるでしょう。

 

2. サバ缶から学ぶ、水産加工の世界

shallow focus photo of fish on stainless steel surface

 

ここからは、話のネタを寿司からサバ缶に変えていきます。

サバ缶は、近年の食卓において人気を集める一方で、水産加工の興味深い側面を知る手がかりともなります。

サバ缶を通じて「サバ缶ブームの背景」「サバ缶の製造意義」、そして「サバ缶の品質に影響を与える要因」の3つのポイントみてきましょう。

 

サバ缶ブームの背景

サバ缶が注目を集めたのは、実はこれまでに3度のブームがあったから。

最初のブームは2013年に起こりました。この時期、テレビ番組でサバ缶がダイエット食品として紹介され、一気に需要が高まりました。その影響で、スーパーの棚からサバ缶が消えるほどの人気を博しました。

この第一次ブームは、主に女性を中心とした新たな消費者層の獲得が成功の要因とされています。以前は、主に中高年の男性が酒のつまみとして楽しむ食品でしたが、健康志向の高まりにより、幅広い層に受け入れられるようになりました。

 

次に、第二次サバ缶ブームが2016年〜2018年にかけて。2016年には、サバ缶の生産量がツナ缶を超え、魚缶業界のトップに立ちました。2018年には「ぐんまの総選挙」でサバが「今年の一品」に選ばれ、その利便性と健康効果が広く認知されるようになりました。

そして、2020年に始まった第三次サバ缶ブームは、コロナ禍による自粛生活の中で誕生。外食が減り、家庭での食事が増える中で、安価で調理が簡単なサバ缶が強く支持され、安定した人気を誇るようになりました。

 

サバ缶を作る意義

サバは新鮮な状態でも食べられる魚ですが、缶詰に加工することには多くの意義があります。

まず、サバは鮮度が落ちやすく、生のままでは冷蔵保存しても3日ほどしか持ちません。しかし、缶詰にすることで少なくとも3年間の保存が可能となります。

また、缶詰は常温での流通が可能であるため、生魚に比べてはるかに流通しやすくなります。

 

さらに、缶詰は開封後すぐに食べられるという手軽さも魅力の一つ。

サバ缶の味は、生のサバをそのまま食べるよりも調理された味付けが施されており、多くの人にとって食べやすいものとなっています。

加えて、缶詰の製造過程でサバのたんぱく質が分解され、消化吸収が良くなるという利点もあります。特に、体に良いとされる不飽和脂肪酸(EPA)が、加工によって安定し、健康効果が高まることも注目されています。

 

サバ缶の品質に影響を与える要因

サバ缶の品質は、原料となるサバの鮮度や種類、加工方法によって大きく左右されます。

使用するサバの種類によって、味や食感が異なるのはもちろん、加工の際の処理方法や調味料の加え方も重要なポイントです。

また、缶詰にする際の加熱処理が適切であることが、缶詰の味や保存性に大きく影響します。

 

このように、サバ缶という一見シンプルな食品には、さまざまな工夫と技術が詰まっています。

水産加工の世界では、食材をいかにして長持ちさせるか、そしていかにして美味しく食べられるようにするかが常に追求されています。

サバ缶の普及と人気は、その努力の結晶と言えるでしょう。

 

サバ缶の良し悪しは原料で決まる

 

サバ缶には多様な種類があり、中には1個3,000円を超える高級品も存在します。

では、これらのサバ缶にはどのような違いがあるのでしょうか。

サバ缶の製造方法は非常にシンプルで、特に水煮缶の場合、サバと塩水を入れて加熱するだけです。このため、サバ缶の品質を決定づける大きな要因は、原料であるサバそのものにあります。

 

元々、サバ缶は、生産者にとって市場価値が低いサバに付加価値を与えるために作られてきました。100円台で販売されるサバ缶は、価格を抑えるために、比較的安価な原料が使われる傾向があります。

一方で、1缶3,000円を超える高級サバ缶は、脂の乗りが良く、鮮度の高いものだけで、高級寿司店でも使われるようなサバが原料になっています。

このように、従来の安価なサバ缶は、低価格のサバに少しでも価値を持たせることを目的として作られています。一方で、高級サバ缶は、最初から質の高いサバを使用することを目指して作られているため、価格や品質に大きな差が生まれるのです。

 

3. 培養魚肉から学ぶ、これからの魚ビジネスの世界

two silver fishes on round white ceramic plate

 

ここまでは、寿司とサバの具体的な事例をみてきたので、最後にこれからの魚ビジネスの未来を見据える上で注目すべき新技術「培養魚肉」について解説します。

ポイント「新しい生産技術である細胞培養」と「細胞水産業がもたらす新しいシーフード」の2つです。

 

新しい生産技術:細胞培養

未来の魚ビジネスを考える上で欠かせない技術が、細胞培養による魚肉生産です。

細胞培養とは、簡単に言えば、生きた魚の細胞を培養して増やすことで、可食部である魚肉を得る方法。これまでは、漁業で天然の魚を獲ってきたり、養殖で魚を育てたりすることで魚肉を得てきました。

しかし、細胞培養では、一匹の魚ではなく、魚の肉の部分だけを増やすことが可能です。

この技術は、2023年3月時点で、特定の魚種においては既に確立されつつあり、特にアメリカやシンガポールのスタートアップ企業が先駆けとなり、試食会も開かれています。

ただし、現在の課題はコストの高さです。量産化に向けて、コスト削減のための技術開発が競争的に進められています。

 

細胞水産業がもたらす新しいシーフード

細胞培養による魚肉生産技術、すなわち「細胞水産業」は、私たちの魚食文化にどのような変革をもたらすのでしょうか。

現段階で考えられる可能性としては、ブランド魚肉の大量生産や、希少魚種の魚肉生産、さらには全く新しい魚肉の創造が挙げられます。

これが実現すれば、必ずしも現実に存在する魚の味を再現する必要はありません。

 

例えば、筋肉部分はヒラメ、脂肪はマグロといったように、異なる魚の要素を組み合わせた新しい魚肉が生まれる可能性もあります。

こうした組み合わせは無限に考えられ、人間が自然界の魚肉よりも美味しいと感じるものが出てくるかもしれません。

今回取り上げた、ながさき一生さんの書籍「魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養」について、より詳しく知りたいと思えた方は、ぜひ本書を手に取ってみてください!

 

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