『未来の年表2』要約(河合雅司)少子高齢化社会で日本が生き存える方法を考える【未来予測】

man talking through taxi car mirror during daytime 時代を生き抜く考え方・哲学

過去の成功体験にしがみつき、人口減少や少子高齢化対策に逆行するような愚行は許されないのである。本書が、あなたを救う一度にならんことを願う。

この記事では、河合雅司さんの「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」を紹介します。

本書は、

  • これからの未来の日本に起こることを知りたい
  • 今から自分たちにできることを知りたい

という方におすすめです。

日本の人口は、これからどんどん減っていきます。長寿化した影響で、80代以上の一人暮らしという方もどんどん増えていきます。2043年には、7人に1人が80歳以上になるとも推測されています。

そんな時代になると、私たちに何が起きるのか。私たちはどう備えていったらいいのか。本書は、それらについて教えてくれます。それではさっそく、中身をみていきましょう!

 

1. 自宅が凶器と化す

white and black building during daytime

 

少子高齢化に伴い、私たちの身の回りで起きることに“不慮の事故”があります。高齢者の事故死で真っ先に思い浮かぶのが、交通事故。踏切を渡りきれなかったり車の接近に気がつかなかったりして、悲劇に巻き込まれるケースが後を絶ちません。高速道路の逆走など、高齢ドライバーが加害者となる死亡事故も目立ちます。

ところが、高齢者の事故発生場所としては、一般道路は6.9%に過ぎません。

では、高齢者はどこで事故に遭っているのでしょうか?

 

それは、家の中です。

交通事故死よりも家庭内における不慮の事故の方が、はるかに多いです。日本の高齢化の特徴の一つに、一人暮らしの増加があります。国立社会保障人口問題研究所が行った2018年の日本の世帯数の将来推計によると、2015年時点での65歳以上の一人暮らしは、男性14%女性21.8%ですが、2040年にはそれぞれ20.8%、24.5%に上昇するとみられています。

現在は、生涯未婚という人が増えました。こうした人たちが高齢化することに加え、長寿化が進み、連れ合いをなくした高齢者が増えていくためです。かつては夫婦と子供2人という世帯が多く、地方では3世代が同居できる広い住居に暮らしている人も少なくありませんでした。

そんな大家族はもはや昔の話で、子供たちが成人し、独立し連れ合いもなくなった広い自宅にポツンと残って暮らしている高齢女性の姿が、各地で見られるようになっています。

気ままな一人暮らしを謳歌している高齢者も少なくありませんが、こうした暮らし方には思わぬ危険が忍び寄ってきます。高齢者が一人暮らしになると、安全なはずだった自宅が凶器と化すのです。

 

7割以上が住宅内での事故

内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の事故発生場所は住宅が77.1%と突出しています。交通事故死と家庭内における不慮の事故とをデータが揃っている2016年で比較したところ、この年の65歳以上の交通事故死は前年より109人減り、2138人でした。

それに対し、家庭内における不慮の事故はなんと12146件。単純に比較すれば6倍もの差がついています。要因別ではトップ3は、不慮の泥酔および泥酔、その他の不慮の窒息・転倒・転落と、いずれも交通事故を大きく上回っています。

 

2. 繁華街に幽霊屋敷が出現する

aerial photography of people walking at city during daytime

 

少子高齢社会では、やがて繁華街でも幽霊屋敷を目撃するようになります。

空き家率が30%を超えた地域は、急速に治安が悪化しスラム化し始めるという説があります。野村総合研究所の試算では、2033年の空家率は30.4%に達するそうです。空家率30%を超えると、スラム化するという説に従うなら、2030年代の日本は東京も含めて荒んだ風景が広がることになります。

 

空き家は大都市の問題

空き家といえば、朽ち果てて幽霊屋敷のようになった過疎地の一軒家のイメージがありますが、それは大きな誤解です。むしろ、大都会の問題と捉えるべきだと著者は言います。

財務省の住宅土地統計調査によれば、空家率は13.5%です。これを都道府県別に見ると、山梨県の22%を筆頭に、長野県・和歌山県・高知県などが上位に顔を並べます。

東京都・神奈川県・愛知県などの大都市圏は全国平均を下回っていますが、割合ではなく空き家の絶対数で比較し直すと、東京と81万戸、大阪府67万戸、神奈川県48万戸、愛知県42万戸と、大都市圏の都府県で空き家を量産していることが分かります。

これは、住宅戸数そのものが多いためですが、この4都府県の合計で全国の空家総数約820万戸の約3割を占めます。なぜ大都市圏でこれほどまでに空き家が増えたのでしょうか。

 

夢のマイホームが廃墟化する

それは、都市部で高齢化が進み始めたことと大きな関係があります。以前であれば単身世帯は、結婚前の若者が大半でしたが、現在は高齢者の一人暮らしが増えています。とりわけ高齢者の絶対数が増えるのが、東京圏です。

高度経済成長期以降進学や就職で上京したかつての若者たちは、東京圏で結婚しました。子供を育てるために広い住居スペースを求めて、通勤に1時間半以上もかかるような郊外に住宅を求めました(スプロール化)。その代表格が団塊世代です。その多くは定年退職後も郊外のマイホームに住み続けています。

ところが、その子供世代のライフスタイルは、大きく異なっています。通勤に不便な実家近くでの生活には見向きもせず、オフィスに近い地域や郊外であっても、駅周辺の利便性の良いところに立地する新築マンションを求めました。

 

この世代は、就職氷河期が長引いて、非正規雇用が広がり正規雇用になっても賃金が抑え込まれた結果、夫婦共働きが当たり前。1997年に男女雇用機会均等法が改正され、女性の深夜勤務や休日勤務が可能になったということもあり、子供を保育所に預けて夫婦ともに働くというスタイルが定着しました。

こうなると、住宅は職場に近い都市部になくてはなりません。最寄り駅までバスを使わなければならないような、郊外に広い家を求める選択肢がなくなりました。都市圏の周辺部では人口減少が進み、全国を上回る水準で空き家が広がり始めています。

郊外に取り残されたかつての若者たちはいま、高齢者だけの世代となりました。そして、彼らが亡くなり始め、主人を失ったかつての夢のマイホームが廃墟化しつつあります。

 

3. 働けるうちは働く

man in brown hat holding black and gray power tool

 

少子高齢社会の課題は多く、かつ複雑です。

この課題に対して、多くの人が民間企業や個人にできることには限界があると感じていると思います。しかし著者は、あまり意味がないような誰もが手軽に始められる取り組みにこそ、大きな意味があると言います。

どんな些細なことでも、日本全体で一斉に取り組めば、大きな流れとなります。そうした流れこそが、政治を動かし社会の作り替えを成し遂げる原動力となります。

個々人がすぐに始められることは、働けるうちは働くこと。

これは個々人の老後の収入の安定を考えても、現実的な選択です。

 

高齢者世帯は毎月マイナス5万円

人生100年時代と言われるようになり、長くなった老後の生活費を懸念する人は増えました。しかし、少子化の実情を考えれば、今後年金受給額を増やすという政策が打たれることは考えがたいです。

内閣府の高齢社会白書によると、高齢者の1ヶ月あたりの平均収入は、10~20万円未満が32%で最も多く、20~30万円未満が26%で続きます。一人暮らし世帯では月収10万円未満が男性で37%女性36%と4割近くを占めています。

生命保険文化センターが実施した、老後に必要な生活資金についての総務省の家計調査年報を元に分析によると、高齢夫婦世帯の1ヶ月の実収入から社会保険料などを差し引いた可処分所得は、18万2980円。

対して、消費支出は23万7691円と5万円ほど不足しています。同センターの生活保障に関する調査によれば、老後を夫婦2人でゆとりを持って暮らしていく上で必要と考える希望額は、平均34万9,000円。理想と現実との間には、月額16万円ほどの開きがあるということです。

 

60歳以降の人生の選択肢を考える

この差を少しでも埋めようとするならば、働くのが一番確実な方法です。収入面の課題も大事ですが、60歳や65歳で隠居するのはいくら何でも早すぎます。社会の支え手側に回り、リズムのある生活を続けた方が、健康管理の面でも良いです。

こうしたことを言うと、死ぬまで働けというのか!、60歳を越すと体力も落ちる、病気がちになってまで働かなければならないのか!、といった意見もあると思います。

しかし、労働を強制しようという話ではありません。60歳以降の人生の選択肢をできるだけ広げられるように、若いうちから自分の老後をしっかりと見据えたプランを描くことが大切だということです。

 

4. 1人で2つ以上の仕事をこなす

white mercedes benz c on street during daytime

 

今後は、勤労世代が急速に減っていきます。

最近では65歳まで定年延長する企業も増えたので、勤労世代の年齢を20〜64歳として、まずは今後の推移を確認してみましょう。

日本の将来推計人口によると、20〜64歳の人口は2015年には7,122万人でしたが、2030年には6,371万人、2045年には5,167万人と、わずか30年間で2000万人近くも減ることになります。1億総活躍社会の実現の流れで、女性や高齢者の労働参加の促進が進んだとしても、多くの職場で人手の確保が困難になるでしょう。

日本が豊かさを維持し、社会を機能させていくためには、働き手の確保必要です。そこで、1人で2つ以上の仕事をすることが求められます。空いた時間をうまく利用し、いろんな仕事をこなすことで、業種が機能しなくなる時代を防ぐ。

 

すでに、働き口の少ない地方では、いくつもの仕事をこなしている人がいます。朝は幼稚園のバスの運転手、その後は自治体から委託された仕事をこなし、夜は飲食店に勤めるといった感じです

一つ一つの収入は多くなくても、合算すれば年収500万円以上を稼いでいる人も。高齢者しかいない集落で自動車を運転できる高齢者が、住民の代わりに食料品などを市街地まで買い出しに行くサービスをしている人もいるそうです。

最近では、副業・兼業を認める企業も増えてきました。

もともとは厚生労働省が示しているモデル就業規則に、「労働者の遵守事項として許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」との規定があり、副業・兼業に歯止めをかけていたのですが、2018年1月にこの規定を削除し、副業兼業についての規定を新設しました。

結果として、現在は副業兼業を認める企業は増えたのです。しかし、副業や兼業は誰かに強要されるものではなく、あくまで個々人の意思で行うもの。体調不良になるまで働きすぎないように、自己管理が求められます。

 

今回紹介した、河合雅司さんの「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」について、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、ぜひ読んでみてください!

 

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