【マルジェラに学ぶ】ハイブランドは高いのに、なぜ人気?(インサイドアウト)

photo of woman holding white and black paper bags わくわくするデザインの豆知識


なんでハイブランドって、こんなに高いの?」

と思ったことはありませんか。

1着数十万円の洋服を見ると、「どこにこんなお金かかってんだよ!」とツッコミたくなるときありますよね。

この記事では、どうしてこのデザインにしているのか、なぜデザインにお金がかかっているのかを、少しでも理解しやすいように、メゾン・マルジェラのライダースを例に説明していきます。

 

なぜ人気?バンクシーの魅力を解説【前編】(スプレー、映画、シュレッダー)

無印などのシンプルデザインの巨匠!ジャスパー・モリソンが選ばれる理由

1. マルジェラとエルメス


マルタン・マルジェラは自身の名を冠したブランドはもちろん有名ですが、エルメスのデザイナーも務めた素晴らしキャリアの持ち主です。

出典:https://mag.sixty-percent.com/


エルメスと聞くと、ルイ・ヴィトンやセリーヌ、フェンディ、ディオールと横並びの、ハイブランドの1つだと思っているかもしれないですが、実は頭一つ飛び抜けています。

エルメスの価格帯は、バッグで数百万円のもの多くあり、他のブランドと比べて桁が違ったりします。

そして、最も特徴的として、エルメスは職人気質のブランドということです。

また、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)という巨大グループに、色々なブランドが買収されても、技術を守り抜くため、飲み込まれずにずっと抵抗し続けてきました。

大手の資本に飲み込まれないで、自分たちで自由に、職人としていいものを追求していくという考え方を持っているのがエルメス。

man in black jacket sitting on bench


マルジェラが、そのデザイナーをやっていたっていうのは、実はものすごいこと。

他には過去に、ジャンポール・ゴルチェや、マルタン・マルジェラ、クリストフ・ルメールといった、服飾の教科書に載るような人たちも務めています。

エルメスのデザイナーを経験したマルジェラは、世界中のデザイナーから見てもトップクラスで間違いありません。

 

2. 脱構築、創造的破壊を得意とするマルジェラ


年代別に、代表的なデザイナーの名前を挙げろと言われたら、1970年代がピエール・カルダン、1980年代は川久保玲のギャルソン、そして1990年代はこのマルタン・マルジェラの時代であると言えるのではないでしょうか。

そのマルジェラの得意とするのは、「デコンストラクション」です。

難しそうですが、日本語で「脱構築」という意味です。

pair of white-and-black low-top sneakers near black skirt on brown clothes hanger top view photography


脱構築というのは、元々ある価値を破壊して新しい価値を創造するというもの。

噛み砕いて言うと、創造的破壊のことですが、イメージとしてはスクラップ&ビルドで成り立っている私たちの社会と似たようなものです。

社会や人類が発展する過程で、既存の価値を破壊して、次の新しい価値を見いだしていく営み。

マルジェラは、その脱構築というものを、デザインに組み込むのが得意としています。

ではどうやって脱構築しているか。

それを説明するには、写真のライダースが象徴的なアイテムと言えます。

出典:https://www.mercari.com/jp

一見、丈が短くて、ちょっと袖が長めで、誰もが思いつくような極めて定番的なライダースの形。

ですが、実は全部裏返しになっています。

例えば、ジッパーは裏地から貼り付けたように縫い付けられています。

肩のパットや、生地それ自体、縫い合わせも全部裏返し。

伝統的で基本的なライダースの形をそのまま踏襲して、誰もが思いつく定番の形。

それを、あえて全部裏返しているのが、インサイドアウトという手法です。

 

3. 完璧から少し崩す、その不完全さが完璧?


インサイドアウトの手法を一番初めに使ったのは、フランスの代表的なデザイナーであるジャンポール・ゴルチエだと言われています。

実はマルジェラは、師匠のゴルチエのインサイドアウトを受け継いでいるのです。

では、この手法を使うことは何を意味しているのでしょうか。

それは「崩し」。

綺麗なライダースを、そのまま歴史と伝統あるライダースに仕立てるのではなく、そこにわずかなエッセンスを入れて、ちょっと崩してあげるのがインサイドアウトの主たる目的です。

本来の形を、少し崩して、破壊してあげて、新しいデザインを獲得する。

古い価値を破壊して、新しい価値を創造させようとするところに、マルジェラのデザイン思考があります。

assorted-color neckties


「こんなわざわざ崩さなくとも、普通に完璧なライダースを作ればいいんじゃないの?」

と思う方もいるかもしれませんが、実はそこに落とし穴が。

ファッションというのは完璧じゃダメなんです。

これは、グッチのデザイナーをやっていたトムフォードも言っていて有名ですが、スーツを着て、ネクタイ締めて、バシッとした格好に、色気が出る瞬間は、“ネクタイを緩めたとき”です。

それなぜかというと、完璧なスタイルの中に、わずかな“気の抜けた瞬間”がみえるとそこに色気が出るからです。

ギャップ萌えのように、完璧なかっこいいスタイルを際立たせるためには、一ヶ所どこか抜くところがあって、はじめてかっこよく見えるということですね。

洋服というのは、完璧に決めたスタイルっていうのはダサい。

決めすぎるとダサいから、ひとさじ抜いてあげるのです。

完成度というのは、実は不完全なところに存在する。

こうした洋服の歴史やデザインを少し知ると、服の見え方も変わってきますよね。

 

マルジェラのドキュメンタリー映画

マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)のドキュメンタリー映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」が、2021年9月17日から渋谷ホワイトシネクイントなどで順次上映されます。

出典:https://www.uplink.co.jp/


同作では、2019年公開の映画「We Margiela マルジェラと私たち」に関与することのなかった同氏が「このドキュメンタリーのためだけ」「顔は写さない」という条件のもと、初めて映画の制作に協力した話題作です。

ドローイングや膨大なメモ、7歳で作ったというバービー人形の服が公開されるほか、ドレスメーカーだった祖母からの影響、ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のアシスタント時代、ヒット作となったタビブーツの誕生、「エルメス(HERMÈS)」のデザイナー就任、51歳での突然の引退などベールに包まれていたマルジェラの全貌が自身の言葉で初めて明かされます。