『イノベーションのジレンマ』要約(なぜアイデアが実現しない?その事例)【クリステンセン】

person holding light bulb 時代を生き抜く考え方・哲学

 

今のあなたの仕事に、新しいアイデアが実現する土壌はありますか?

この記事は、技術革新が優良企業を滅ぼす可能性があることを示した名著「イノベーションのジレンマ」の紹介です。著者のクレイトン・クリステンセンさんは、1952年のアメリカで生まれ。ボストンコンサルティンググループに所属した後、ホワイトハウスの運輸省長官を務めたインテリです。1997年に本書を出版し、この中で初めて提唱した言葉が“イノベーションのジレンマ”です。

それでは、詳しくみていきましょう!

 

1. 持続的イノベーションと破壊的イノベーションがある

person holding DSLR camera

 

イノベーションのジレンマ。この言葉は、本書で以下ように定義されています。

業界で確固たる地位を築き上げた企業が、目先の利益ばかりに意識がいき、既存製品の改良だけを続け、その結果本当の顧客を見失ってしまう状態のこと。

 

例えば、デジタルカメラ。日本を始めとするカメラメーカーは、良い画質を求めて企業同士で性能を競っています。しかしある時、性能は劣る代わりにカメラは携帯電話やスマホに内蔵され、いつでも簡単に撮れるカメラが登場しました。これにより、あっという間にユーザーのシェアは携帯のカメラに移っていきましたよね。

この例から、イノベーションには2つの種類があることが分かります。それは、持続的イノベーション破壊的イノベーションです。

 

持続的イノベーションは、消費者のニーズを満足させるために今の製品を改良していくことで、先ほどのデジタルカメラの例で言うと、画質が良くなっていくことにあたります。

破壊的イノベーションは、既存のカメラを携帯電話に内蔵するという変化のことです。出現当初は低機能・低画質ではありましたが、高い利便性を備えていたため、市場を一気に変えてしまう力を持っていました。カメラ付き携帯電話の出現によって、カメラ単体の価値は大幅に低くなることに。カメラ自体の改良にばかり意識がいくと、消費者の本当のニーズが見えなくなってしまい、企業をつぶすことにもなりかねないのです。

 

2. 消費者のニーズに最適化をしていくのは危険

black and silver turntable on black table

 

著者のクリステンセンは、経営者の正しい判断による企業を倒産させる危険性を本書で述べています。正しい判断が、危険なのです。

これも例を挙げると、昔はパソコン用の14インチのハードディスク(HD)が売られていました。それを販売していた企業は、今のサイズを維持したまま、どれだけ容量を増やすことができるかという改良を行いました。それが顧客の望みであり、企業の目標であったからです。

 

そんな市場に、8インチのHDを販売する企業が登場。この会社は、容量はともかく、サイズをさらに小さくしていくことを目標にしていました。それに対して14インチのHDを作っていた企業は、小さくしませんでした。なぜなら、市場調査をした時には確かに消費者のニーズは容量を増やしていくことにあり、経営者としては14インチのハードディスクの容量を増やす改良を続けることが正しい判断であったからです。

しかし、8インチのハードディスクという新たな評価軸の製品が出た時、消費者のニーズは転換してしまったのです。新しい市場ができると、既存の市場はどんどん小さくなり、しぼんでいきます。このことからクリステンセン氏は、消費者のニーズに最適化をしていくのは危険であと警告をしています。

 

3. 持続的イノベーションを継続させつつ、破壊的イノベーションに投資をする

person holding silver iphone 6

 

先の例は、日本の製造業にもよく当てはまる話です。日本の製造業は高い技術を持っていて、真面目に改良を続けるため、日本製品はどんどん高性能になっていますよね?

以前のガラパゴス携帯(ガラケー)がその代表例で、各メーカーは性能の向上を競い合って、着うたやおサイフケータイなど、高度な機能を詰め込みました。しかし、その間に世界ではiPhoneが広がり、市場はスマートフォンへとシフトしていったのです。そして、高機能を詰め込んでいたはずの日本の携帯電話は、日本にしか存在しない“ガラケー”と呼ばれるまでの存在になってしまいました。

 

では、イノベーションのジレンマに陥らないためには、どうすればいいのでしょうか。それは、高機能でありながら高い利便性で消費者を引きつける、破壊的イノベーションを生み出すことです。しかし、破壊的イノベーションへの投資は、既存の大企業にとっては難しい判断です。破壊的イノベーションの市場は、まだ生まれていない市場のことを指します。

そのため、そもそもどこにニーズがあるかわからないし、成功するとも限りません。持続的イノベーションよりも、はるかに投資リスクがあることも事実です。クリステンセンは本書の結論として、持続的イノベーションを継続させつつ、破壊的イノベーションを生み出す努力を怠らないことが必要不可欠であると述べています。

 

破壊的イノベーションの多くは、社内から芽が出てくるのですが、正しい経営判断によってそれが潰されるケースが多くあります。これからの経営者は、イノベーションの重要性を理解し、力を入れるべきことに投資することが必要になるでしょう。

イノベーションのジレンマ」の中では、他にもさまざまな事例をもとに、イノベーションのジレンマについて詳しく解説されています。興味を持った方は、ぜひ実際に本を読んでみてください!

 

著者紹介

出典:https://www.audible.co.jp/

クレイトン・クリステンセン
アメリカの実業家、経営学者。
初の著作である『イノベーションのジレンマ』によって、破壊的イノベーションの理論を確立させたことで有名になり、企業におけるイノベーションの研究における第一人者。
また、イノベーションに特化した経営コンサルティング会社であるイノサイトを共同で設立し、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) の教授も務めた。

 

 

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