5分で学ぶ、佐藤可士和【前編】SMAPからユニクロまで、デザインで表現

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こんなシンプルなロゴ、私にもできそう。何がすごいの?

一見そう思えてしまうのが、佐藤可士和さんのデザインです。

佐藤可士和氏 出典:https://kashiwasato2020.com/

シンプルで記憶に残るそのデザインは、日常を送るうえで触れたことがない人はいないでしょう。

佐藤可士和さんのデザインの特徴は、反復と連続による無限の増殖です。

この記事では、その特徴について、2021年05月10日まで国立新美術館で開催されている「佐藤可士和展」のレビューと合わせて、前編・後編に分けて解説していきます。

 

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1. 落書きで広告の概念を変えた「ステップワゴン」


「こどもといっしょにどこいこう。」

「オブラディ・オブラダ」をBGMに用いたTVCMのアニメーションと、このキャッチコピーに聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか。

ステップワゴン 出典:https://cragycloud.com/


可士和さんが手がけた、このステップワゴンのキャンペーンは、当時スペック争いをしていた自動車業界において、今までの概念を覆すブランド戦略を展開していきました。

他では、説明的な広告が大半を占める中で、家族で一緒に出かけるという何事にも代えがたい経験を、絵本を思わせるカラフルなイラストレーションで表現

商品の世界観や、それを通じた物語をPRしたブランディングをすることで、ステップワゴンは見事ミニバン市場No.1の座を獲得するのでした。

また、恐竜や象、クジラ、ロボット、宇宙などのモチーフを、季節感を意識したカラーとともに表現したイラストはすべて可士和さんが担当

ラフな手描きによる商品名やキャッチコピー、通常では考えられないほど小さなサイズでレイアウトされた車の写真など、常識を覆すアプローチは大きな反響を呼びました。

POINT
  •  商品そのものの機能や性能ではなく、世界観や物語で商品をPR
  •  ステップワゴンのPRで、広告業界に衝撃を与えた

2. 独立するきっかけになった「チビレモン」


落書き系の仕事としてはもう1つ、「チビレモン」があります。

チビレモン 出典:http://dictionary.blog81.fc2.com/


可士和さんは、“マスコミュニケーションではなく、もっとデザインのチカラで解決できることがある”と博報堂入社当時から思っていたそうです。

ロゴのデザインやパッケージで何とかできないか、CM打つよりお店作った方がいいのではというアイデアは常にあったそうですが、“そんなこと頼まれてないから”と若手社員になかなかチャンスはやってきませんでした。

転機となったのは1998年。

1996年頃から、携帯電話やネットの普及に伴って、次第にマス広告が効かなくなり、大量消費社会の終わりが見えてきたと感じていた可士和さんが、当時のキリンの商品企画部長・佐藤章さんに指名されて始まったのが「キリンレモン」リニューアルプロジェクトです。

商品のコンセプトや味の方向性、パッケージから広告までトータルディレクションする商品開発を初めて手掛けることとなり、「チビレモン」が誕生。

イタズラ描きのような、どこまででも描いていける可士和ラインが、パッケージ、陳列棚のみならず自販機まで覆い尽くし、当時とても話題になりました。

ちなみに、可士和さん本人が手で描いたラインを実寸大で入稿したそうです。

商品からトータルでデザインしていく仕事を通して、「ああ、やっぱり僕はデザインが大好きで、僕の中では広告の中にデザインがあるのではなくて、デザインが最上位概念としてあってそのひとつの手段が広告なのだ」と気づいたそうです。

このプロジェクトで、自分の進む道や手応えを感じたことをきっかけに、2000年に独立してクリエイティブスタジオ「SAMURAI」を設立することになります

POINT
  •  ネットの台頭で、マス広告の衰退を予期していた
  •  頼まれていないことまで考える提案力
  •  チビレモンでの手応えをきっかけに独立

3. SMAPは5人なのに、なぜ3色?


「チビレモン」の頃から続く可士和さんのデザインの特徴は、
反復と連続による無限の増殖です。

2001年のSMAPデビュー10周年キャンペーンでは、CDやコンサートグッズのデザインに端を発し、グループをひとつのブランドに見立て、記号性の高いヴィジュアル・アイデンティティを設計することとなります。

赤・青・黄色の3原色が新聞広告やポスターのみならず、ラッピングバスや街灯フラッグ、パーキングの車カバー、はたまたティッシュ箱にまで展開し、グラフィカルなアイコンを街中に増殖させました。

出典:kashiwasato.com


ここで、“SMAPは5人なのに、なぜ3色なの?”

という疑問が湧いてきますが、これはメンバーの個性や人数とは関係なく、当初の依頼だったCDが、表蓋、裏蓋、ディスクトレイという3つのパーツで構成されていたことに着想を得ています。

面白いのはそのPR戦略で、まずアルバム発売前までにシンボルマークを街中に増殖させ、消費者の頭にイメージを刷り込ませます。

発売当日には、赤・青・黄の三色が新聞広告全面に印刷され、右下に小さくアルバムの発売日のみを掲載。

街中のあらゆる媒体に展開していく“現象”とも呼べるその戦略は、当時、力を失いつつあったテレビをはじめとしたマスメディアに頼らないという、チビレモンから続く、可士和さんの世の中に対する違和感が反映されています。

SMAPは5人なのに、なぜ3色?

佐藤可士和展会場_様子:筆者撮影


原色を面でベタ塗りした表現は、当時の広告業界に衝撃を与えたようで、こんなことやっていいんだと似たような案があちこちで増えたそうです。

しかし、誰でもデザインできそうというのは、多くの試行錯誤とデザインの耐久テストを繰り返した結果として生まれたもので、本来自分の個性やゴマすりをしたくなるデザイナーには、このシンプルなデザインに自信をもってクライアントに語り尽くせるかといったら、難しいと思います。

表現としては無駄を切り落とされていますが、伝えたいことをクライアントから炙り出し、整理したうえで言語化し、直球ど真ん中でブレずに表すという点では、著書「佐藤可士和の超整理術」でも再三語られています。

また、当初の依頼はパッケージや広告のデザインだったものが、クライアントそのもののブランディングにまで昇華させるのは、対話を繰り返すコミュニケーション能力あってのことです。

博報堂時代に、自分の作った広告がこんなにも人に見られないのかと感じて、見て覚えてもらうには10言ってやっと1伝わると思ったそうで、世の中を疑い、破壊していくパンクな仕事スタイルはずっと変わっていません。

POINT
  •  可士和デザインは、反復と連続により無限に増殖する
  •  CDのパーツから、SMAPのPRは3色に決定
  •  シンプルなデザインは、耐久テストを繰り返した成果

4. 佐藤可士和展、2021年5月10日まで開催!


可士和さんシンボルマークをデザインした東京・六本木の国立新美術館で、過去最大の個展を2021年5月10日まで開催されました。(※ 緊急事態宣言により4/24に終了しました。)

佐藤可士和展

展示に際しては、巨大な倉庫を借り、展示会場と同寸法の壁を立てて空間構成を約2年練ったそうで、約30年の活動の軌跡を多角的に紹介しています。

佐藤可士和展会場_様子

佐藤可士和展会場_様子:筆者撮影

整理、ロゴ、アート、空間の4つのキーワードでつくられた展示会場は、全7章で構成されており、冒頭は「デザインもクリエイティビティ(創造性)溢れる整理」と変わらない哲学を濃縮した著書「佐藤可士和の超整理術」の紹介から始まり、上記で挙げた「ステップワゴン」「チビレモン」「SMAP」などの2000年前後の仕事から時系列に沿って展開されていきます。

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