画像引用:https://bijutsutecho.com/magazine/interview/13897
バッテンの目をしたキャラクターといえば、何を思い浮かべますか?
この記事では、
- グラフィティアーティスト
- トイデザイナー
- 彫刻家
などの様々な肩書きを持つ、KAWS(カウズ)を特集します。彼のトイ(フィギュア)をコレクションされている方も多いのではないでしょうか。最近では日本でも、国内初の大型展覧会が開催されるなど、その人気はどんどん高まってきてます。
しかし、「正直、何でそこまで人気なの?」と思う方も多いですよね。これを読めば、グラフィティ(壁などに描かれたペイントアート)をキャリアの出発点としたKAWSが、一流アーティストに登り詰めるまでの軌跡とその魅力を知ることができますよ!
1. ブランド広告をハッキング!軽やかに時代をキャッチするKAWS
KAWS(本名:BrianDonnelly)は1974年ニュージャージー生まれ。バンクシーと始めとした、違法性・匿名性も特徴とするストリートアーティストとしては異例で、本名・素顔が分かっています。
そんな彼が、グラフィティーアーティストとしての活動を始めたのは大学生の頃。1990年代初めにニューヨークへ移り、ビルボード広告や公衆電話ボックスにしたストリートアートで頭角を表していたKAWSですが、人気が出る前は1993年〜96年まで 「School of Visual Arts」でイラストレーションを学び、卒業後はフリーランスのアニメーターとしてディズニーでアニメーション制作にも携わっていました。
バス停の広告を乗っ取る大胆な行動力
ストリートでの活動当初、地下鉄でタギング(マークサイン)系グラフィティーを描いていたKAWS。その後、バス停の待合場所や公衆電話ボックスのハイブランドの広告の中に、勝手に自らのキャラクターであるコンパニオン(目が「××」のスカル、ミッキー・マウスがモチーフとされる)などをコラボさせる「Subvertising(サブバータイジング)」という手法の作品を数多く発表します。
彼によって勝手に変えられた広告は、ニューヨークでたちまち話題となり、書き換えられた広告はすぐに探されて盗まれるほどの人気に。ちなみに、広告を管理する会社に勤め、ガラスケースの南京錠をこっそり取り替えておくという大胆な手法で実行されていたそうです。
このように、ハイブランドとの見事なコラボを大胆に成し遂げたKAWSは、ハイエンドなセレブからも注目を集めていくことになります。
幅広い交友関係も魅力の1つ
グラフィティ活動は2003年頃まで続き、アメリカだけでなく、パリ、東京、ロンドン、ベルリンなど世界中で行われました。また、KAWSは東京好きで、裏原系のNIGOや藤原ヒロシと親交が熱いことでも知られています。
他にも多数のアーティストと交流があり、アメリカのグラフィティアーティストであるBarry McGeeとは過去に2年ほど生活をともにし、世界で活躍する日本人アーティストの五木田智央(ごきた ともお)の作品を自宅にコレクションしていることは有名です。こうした交友関係の深さも、KAWSが人気の理由の1つと言えますね!
2. 両目を「××」に変えるポップさがちょうどいい
KAWSのグラフィティーアートは、社会的な批判やメッセージを伝える内容ではなく、より多くの人に自身を知ってもらうこと、作品を見てもらうことを重要視しています。そしてこの考え方は、KAWSの現在の活動にも活かされています。
ビビットな色使いとポップなキャラクターの目に「××」マークを施した作風がKAWSの特徴で、既存のアニメキャラクターをモチーフにした作品は、キャラクターのアイデンティティを損なわず、一目見てKAWSだと分かる彼の代名詞です。
Dior、Supreme、ユニクロ…様々なブランドとのコラボ
KAWSは、様々なブランドとのコラボレーションも積極的行っています。「Dior」「Supreme」「Nike」「A BATHING APE®」などのアパレルブランドや、「Kanye West」などのミュージシャンのカバーアートといった、著名ブランドとのコラボレーションを通じて、セレブのみならず若い世代からの人気も高いです。
日本においても、2014年にコム・デ・ギャルソンの香水「Girl」のボトルデザインでコラボしたり、2016年にはユニクロとコラボしてUT(Tシャツ)やアクセサリーを販売しました。(ユニクロとのコラボは、2018年、2019年と続いています。)
全世界で馴染みの深いKAWSのトレードマーク「××」は、KAWSを世の中に拡散する広告塔。Artprice社の2017-2018年の現代アーティスト作品売上数ランキングでは、バンクシー、村上隆に次いで世界で5位にランクインしています。
↓ こちらの動画でコンパニオンの活躍ぶりを視聴することができます。
3. 富士山麓、そして宇宙まで活動範囲を広げるKAWS
現在は、ニューヨークのブルックリンに拠点を置いて活動しているKAWS。立体作品も制作しており、代表的なキャラクターである「コンパニオン」が世界を旅するというコンセプトで、世界各地で巨大な立体作品を制作する《KAWS :HOLIDAY》というプロジェクトを実施しました。
日本では、2019年に富士山の麓で全長40メートルのコンパニオンが寝そべる巨大彫刻作品を制作しています。
また、仮想空間上で作品を展示するという試みにも挑戦していて、2020年には渋谷のスクランブル交差点にてARでKAWSの彫刻作品が鑑賞できる「EXPANDED HOLIDAY」というサービスを開始して話題になりました。
KAWSコンパニオン、宇宙へ行く
2020年8月には、先述したKAWSのアートプロジェクト『KAWS:HOLIDAY』の第5弾作品として宇宙飛行士の姿をしたコンパニオンが、上空41.5キロメートルまで打ち上げられた様子を撮影した動画が公開されました。
コロナ禍で外に出られない人たちの代わりに、無重力空間をコンパニオンは2時間彷徨い、無事に地上に帰ってくるところまでをカメラに収めることに成功し、その様子はKAWSのInstagramでも見ることができます。
本作はコンパニオン生誕20周年の節目の記念、また新型コロナウイルスの影響によって様々なイベントのキャンセルが相次ぐ中で、人々が家から安心して楽しめる作品を届けたいという思いから制作されました。
日本にKAWSの大型展覧会がやってきた!
2021 年 7月 16日 (金) 〜 10月 11日 (月) まで森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52 階)にて「KAWS TOKYO FIRST」が開催されました。
KAWS国内初の大型展覧会となる本展では、絵画や彫像だけでなく、AR(拡張現実)作品やインタラクティブ体験ができる作品、さらに KAWS が保有するプライベートコレクションを合わせた約 150 点を展示。世界的に注目されているアーティストの初期作品から新作までを、一度に観ることができる貴重な機会となりました。