名作として広く世間に認められると同時に、多くの批判を受けている映画「LEON」。一度は観たことある方も多い作品だと思います。ところで、この作品はどのような背景で作られたのでしょうか?
実は「LEON」は「フィフス・エレメント」の制作資金を集めるための“つなぎ”だったとしたら?
この記事ではそんな「LEON」にまつわる制作秘話を紹介します。ぜひ楽しんで最後まで読んでみてください!
1. 「LEON」は制作資金を集めるために作られた?
映画「LEON」監督であるリュック・ベッソンは、LEONの他、ニキータ、フィフス・エレメント、ルーシーなどで全世界的に有名ですが、駆け出しの頃はアメリカには進出しておらず、フランスでのみ活動していました。
そんな彼は、1990年の映画「ニキータ」で、初めてハリウッドで大きな注目を集めます。それをきっかけに、アメリカに進出。幼いころから夢で描いた物語、「フィフス・エレメント」を企画することになります。
この映画は大作であるだけに、制作費もかなり必要となりました。その金額は、当時のフランス映画史上最大だったそうです。
しかし、こんな大量の資金を投資してくれる会社は、どこにもありませんでした。さらに、それを聞いて不安になった主演俳優のブルース・ウィリスも出演をためらうようになり、制作は一時的に中断されてしまいます。
背水の陣からの制作
その時すでに、リュック・ベッソン監督は「フィフス・エレメント」の制作チームを全員招集してしまっていたため、このまま制作が始まらないと制作チームも解散となってしまうような状況。そこで、彼は「フィフス・エレメント」が制作できるまでこの制作チームをキープしておくために、とりあえず別の映画を作ることにします。
すぐに新しい映画の構想を考え出したリュック・ベッソン監督は、1ヶ月で脚本を書き終え、音楽・撮影・編集・デザインまで、既存の制作チームをそのまま使ってたった3ヶ月で全ての撮影を終えたました。そのつなぎの期間にできた映画こそ、まさに「LEON」だったのです。
そして、「LEON」は思いもよらない大成功を納め、リッグベッソン監督が夢見た映画「フィフス・エレメント」の制作がスタートしたのです。
2. ナタリー・ポートマンは、オーディションに落ちていた?
「LEON」のヒロイン役である“マチルダ”を演じたナタリー・ポートマンは、この作品を通じて映画界にデビューしました。当時たいした経歴もなかった彼女が、どうやってこの大役を引き当てたのでしょうか?
「LEON」のキャスティング・ディレクターであるトッド・M・ターラーは、ヒロイン役としてニューヨークで15~17歳の女優を中心にオーディションを開きました。このオーディションは2,000人も参加するほど大規模に行われ、その中にはロックバンド “エアロ・スミス” のヴォーカル、スティーヴン・タイラーの娘としても有名なリヴ・タイラーもいました。
年齢制限を超えた魅力
もちろん、ナタリー・ポートマンもこのオーディションに参加したのですが、当時彼女は13歳。始め、キャスティング候補から外れていました。しかし、オーディション現場は録画されていて、はるばるフランスにいるリュック・ベッソン監督に送られていたのですが、監督が求めていたイメージにぴったりの女優は、なかなか見つかりませんでした。
マチルダのキャラクターは、“まだ男女の肉体関係についてよく知らない”というイメージがあったのですが、この年代の女優たちはみんなそれを知っているような演技を見せたのが問題だったのです。結局キャスティング候補とは程遠かった、ナタリー・ポートマンがキャスティングされることになったのです。
3. ゲイリー・オールドマンは、ほとんどアドリブ?
「LEON」という映画になくてはならない最高の悪役といえば、ゲイリー・オールドマン演じる“腐敗警察”スタン・フィールド。物語の中では、麻薬に酔っているのか、正気なのか分からないような演技で、見る人たちを恐怖に震わせます。
実は彼がこの映画に登場したのは、たった16分に過ぎません。しかし、この16分間で、彼はものすごい存在感を見せたのです。さらに驚くべきことに、かなりのシーンは彼のアドリブだったようです。
あの絶叫はアドリブだった
例えば、スタンが廊下でマチルダの父と対面するシーン。すぐ横に近づいてきて顔ぴったりつけるこのシーンは、実は台本にはなかったそうです。そして、マチルダの父親の驚いた表情や、彼の後ろで慌てているような俳優たちの演技もまた、ゲイリー・オールドマンのアドリブに戸惑って出てきた本物のリアクションだったそうです。
スタンで他に思い浮かぶのは「エェブリワン (Every one)!!」と大声で絶叫するシーン。このシーンも、やはり彼のアドリブでした。実はこのセリフは台本だと静か演技することになっていたのですが、何回も続けて再撮影に再撮影を繰り返した監督に苛立ったゲイリー・オールドマンが、監督をからかうつもりで大声を出してやったのが採用され、映画の名シーンになってしまいました。
4. ナタリー・ポートマンは、本当にタバコを吸っていた?
もちろん、違います。この設定について心配をしていた彼女の両親の意見を反映して、
- 喫煙シーンは5回まで
- 偽タバコを使うこと
- タバコの煙は吸わない
- 映画の中でマチルダがタバコをやめるストーリーを必ず入れること
など、いろいろな条件で撮影したそうです。
映画の中で、マチルダがポロポロと流す水晶のような涙。感動するこのシーンは、実は本当の涙ではなかったそうです。この映画がデビュー作だった彼女にとっては、タイミングにあわせて自由自在に涙を流す演技はまだ無理でした。
泣かなければいけないシーンなのに、どうしても涙が出なく、見かねた撮影スタッフの一人が、彼女の目の下にミントのオイルを塗って、やっと涙を流せたそうです。
5. レオンにはモチーフとなったキャラクターがいた?
丸いサングラスとニット帽、ロングコートがとても印象的なレオンのキャラクターは、実は前から存在していました。そのキャラクターは同じ監督の前作「ニキータ」の後半に登場する、掃除人“ヴィクトル”です。
レオンとヴィクトルの違いは、ヴィクトルが血も涙もない英国な殺し屋だとしたら、レオンは冷たそうに見えるけど実は暖かい殺し屋だということ。そして、ヴィクトルを演じた俳優は、まさにジャン・レノでした。レオンというキャラクターがこのヴィクトルから来ているため、俳優もまた同じ俳優を起用することにしたのです。
リュック・ベッソンからのプレゼント
ジャン・レノはレオンの前に、リュック・ベッソン監督の「グラン・ブルー」、「ニキータ」にも出演していたのですが、自分がレオン役を演じることになるとは夢にも思わなかったそうです。その理由は、レオン役の候補として取り上げられていた俳優たちが、とてつもない俳優たちだったから。ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、メル・ギブソンなどです。
しかしある日の夕食で、リュック・ベッソン監督がジャン・レノに、「私からのプレゼントです」と言いながら「LEON」のシナリオを渡したら、ジャン・レノのは感激したあまりその場で泣いてしまったそうです。こうして名作が作られたのです。
「LEON」はリュック・ベッソン監督が制作した映画の中で、初めて北米全域に配給された映画です。しかしLAでのゲスト上映で、レオンとマチルダの妙な関係に不快感を感じたという反応が多かったため、結局監督は相当な部分を編集して公開することになります。
それにもかかわらず、一部の評論家からこの映画は児童ポルノに等しいと厳しく批判されました。監督はこの映画は純粋な愛に対する映画であって、男女の肉体関係を描いたものではないと強く主張しました。当時リュック・ベッソン監督は17歳年下の妻あいうえんと結婚して暮らしていたのですが、レオンの脚本を書く上で「自分たちの関係からインスピレーションを得た」と話したことも話題になりました。
ちなみに、公開当時編集された22分程度の分量は、後で再び公開された完全版でちゃんと追加されています。