“投資”と聞くと、どんなイメージがありますか?
この記事では、「投資家みたいに生きろ」という本を紹介します。著者の藤野英人さんは、投資家・ファンドマネージャー、投資信託「ひふみシリーズ」を運用する、レオス・キャピタルワークスの代表。いわば、投資とお金のプロです。
本書は、投資家という職業になるための本ではありません。投資家みたいに生きるための本です。
つまり、投資家にとって当たり前の思考を手に入れ、日々の習慣を変えること。ここでの“投資”とは、お金でお金を増やす狭い意味ではなく、広い意味での投資です。それを、藤野さんは次のように定義します。
「いまこの瞬間にエネルギーを投入して、未来からお返しをいただく行為」
それではさっそく、投資家が持つ思考について、学んでいきましょう!
<お金に関する書籍はこちらでまとめて紹介しています>
1. 日本人は2つのグループに分けられる
日本人は、以下の2つのグループに分けられます。
- 失望を最小化する人たち
- 希望を最大化する人たち
このうち圧倒的に多数派なのが、失望を最小化する人たちです。彼らは、将来にはどうせし失望が待っているという考え方をし、なるべく失望を少なく止めよう行動し、リスクを最小化する傾向があります。
- 今いる会社は好きじゃないけど、転職したらもっとブラックな所に行くかもしれないから我慢する
- 友達との付き合いを増やすと傷つくことがあるから、なるべく余計なことはしない、SNSもやらない
こういったマインドを持った人たちです。お金についても、貯めておけば何とかなるかもしれないと、不安にとりつかれて節約ばかりします。
その一方、少数派の希望を最大化する人たちは、将来は明るいし、挑戦した方が喜びは大きくなると前向きに考えられるグループ。このグループの人は、何もしないこともリスクだということを分かっているので変化を望み、自ら進んで動き希望を最大化するべく行動します。
あなたは、どちちのタイプでしょうか?
2. ゲームにチャレンジする人
ここで、次の質問について考えてみてください。
コインを投げて、表が出れば1万円もらえます。しかし、裏が出れば5,000円を支払ってもらいます。勝負は1回きり。いかがでしょうか?
合理的に考えれば期待値は+2,500円になるので、チャレンジをした方が得ですよね。しかし、実際にはこの条件でゲームにチャレンジする人の方が少ないのです。人間は本能的に損失を回避したいという気持ちが、何かを得られるという気持ちよりも大きくなる偏りがあるからです。これは、「ファスト&スロー」で有名な、行動経済学者のダニエル・カーネマン博士の“プロスペクト理論”としても実証されていること。
↓ファスト&スローは、過去に当ブログでも取り上げました。
どんどん経済衰退が進むこれからの日本では、希望を最大化する人たちと失望を最小化する人たち、つまり動く人と動かない人の格差はさらに広がっていくと言います。ところが、今日の日本では希望を最大化する人に対して、イタイ人だとか意識高い系と揶揄する人も多いのが現状です。これにより、チャレンジするのが怖い、恥ずかしいなどと社会全体の不活性化につながっていってしまいます。
3. 何もしないリスクが見えるか
著者の藤野さんは、希望を最大化する人になろうと言っていますが、安易に企業や株式投資を勧めているわけではありません。例えば、今勤めている会社に不満があったとして、会社を辞めて起業するか、このままサラリーマンをするかという二択を考えてみましょう。
起業を選択するほうが正しいかというと、そうとは限りません。成功するかどうかわからないまま動くのは、明らかにリスクが高すぎます。リスクを取るということは、目を閉じてやみくもに飛び込むことではありません。目を見開いで直視し、ちゃんと考えて決断してチャレンジをすることです。
またこれからの時代、一生サラリーマンのままで過ごすこともハイリスクな決断になります。同じ会社で働き続け、その会社でだけ通用するスキルしか身につけていないからです。そのスキルだけのままで年をとると、他の会社に再雇用される可能性は限りなく低くなる。動くリスクがある一方、何もしないリスクが見えるかどうか。リスクがゼロになるのを待つのではなく、リスクを下げる努力をしつつ、良いタイミングで挑戦をする。
4. 投資の5大要素
投資家マインドにおいて大切なエネルギーは、次の5つの掛け算になります。
- 主体性
- 時間
- お金
- 決断
- 運
これらすべてが総動員されることで、エネルギーが大きくなり、未来からのリターンが最大化されます。それぞれ詳しく、順番に見ていきましょう。
主体性
安定ばかり求める時代が少し変わり、Youtuberを始め、好きなことをやろうというメッセージが当たり前のように飛び交う時代になりました。とはいえ画一的な日本の学校教育を終えた若者たちが、いきなり個性を求められたり、好きなことを問われたりしてもなかなかすぐには答えられないのが現状。そこで、好きなことを考えるうえで有効な、簡単な思考実験があります。
次の質問について考えてみてください。
もし突然10億円をもらえるとしたら、何をしますか?(ただし貯金を除く)
できるだけ具体的に、どれだけのお金がかかるか計算しながら考えてみましょう。10億円という金額は絶妙で、サラリーマンの生涯賃金は約3億円なので、現実からかけ離れた数字ではなく、かつ自分ひとりで贅沢するには持て余す金額です。
つまり、10億円が手に入るということは、生活のために働くことから解放されたとき、改めて自分はどうしたいか?という問いかけになります。この問でじっくりと自分自身と対話してみて、まずは自分の主体性を確認しましょう。
5. 時間について
時間は、誰にとっても平等という特徴があります。だからこそ、日頃の使い方の意識が大切になります。
しかし一方で、世の中はあまりにも効率や時短を重要視しすぎていると著者は言います。投資家のように考えると、必ずしも効率性が重要ではないのです。藤野さんが企業に投資をするとき必ず心がけていること。それは、時間が経つほどに価値が上がるものに投資をするということです。
短期的に見れば、個別の企業は相場の上下に影響を受けますが、長期的に見れば株価収益に修練していく。そのため、着々と利益を積み上げていく企業に投資をすれば、大きなリターンが期待できます。藤野さんは投資する際に、最低でも5年間は株を保有するつもりで判断するそうです。そのような、目先の効率ではなく、長い時間を味方につけるという考え方もあるのです。このように時間をかけることで価値が増していく行為は、人間の営み全てにも言えることです。
「1万時間の法則」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか? 1万時間をかければ、どんな人でもどんなことでもかなりのレベルに達するという法則です。天才的な音楽家やスポーツ選手も、生まれてすぐに音楽やスポーツができたわけではありません。誰でもまずは1万時間を投入して、スキルを身につけるところから始めるのです。
その計算でいくと、1日5〜6時間を5年間かけなくては、そのスキルはものにならないです。投資家マインドで考えるということは、短期間で一発逆転を狙うのではなく長期的に時間を味方につけていくことでもあるのです。
6. お金について
あなたとお金の関係を振り返るために、次の質問を考えてみてください。
昨日1日で使ったお金の金額と内容を答えられますか?
朝のコーヒー代、ネットで買った書籍、 昼食代といったように1円単位で思い出せますか?
昨日というごく近い過去の話でも、意外と詳しく思い出せない人が多いのではないでしょうか。これは、それなりにお給料をもらっていて、自由に使えるお金がある人ほど覚えていないといいます。
お金を使うという行為を未来に向けるためには、日ごろから意識的にお金を使う必要があります。ここで重要なのは、金額の多い少ないはあまり関係ないということ。あなたが何を考え、どんな気持ちでお金を使ったかが、投資家のように生きるうえでは重要なのです。
未来への期待や希望があって、はじめて投資は成り立ちます。まずは、マネーフォワードやZaim、MoneyTreeなどの自動家計簿サービスなどを活用し、買い物の際にできるだけクレジットカードや電子マネーで支払って、自動的に家計簿を付けてみましょう。集計してみると、きっと衝動買いの多さに気付くと思います。
また、買い物の内容が見える化できたら、それぞれお金を使ったときの気持ちを考えてみることも有効です。お金を使うという行為は経済行為であり、応援という側面もあります。果たしてどのくらいその自覚があったでしょうか? お金の使い方ひとつ一つに意識が及ぶようになれば、まさに投資家マインドが身についている状態です。
7. 決断について
投資において、決断する力は不可欠です。
例えば、日本株約3,600社の上場企業の中から10社を選んだとします。その瞬間、残りの3,590社は捨てることになります。無限の可能性の中から一つの選択肢に絞り、残りの可能性を捨てる。リスクが怖いから投資をしないという決断は、リターンを得る機会を捨てることと同じ。新しいものにチャレンジしないという決断は、成長を諦めることと同じです。
また、多くの人は4つの決断の軸を無意識に使いこなしているそうです。
- 損得
- 善悪
- 美醜
- 好き嫌い
の4軸です。
どの軸を優先するかは、その人の哲学や生き方の問題も絡んでくるので、どれが間違いということはありません。しかし、ぜひ再認識してほしい軸が好き嫌いの軸です。投資家は損得で投資先を選んでいるイメージがあるかもしれませんが、私たちの消費消費は好き嫌いで選んでいることがほとんどです。
いまでは、デザインや美意識という概念がビジネス界で再評価されてきています。これは論理的に言葉で説明できる領域を超えた判断軸、つまりもっと感覚的に好き嫌いで判断しても良いという時代の流れがあるのです。
8. 運について
最後の要素は、運です。
運が要素に入っているのには、ちゃんと理由があります。イギリスの心理学者、リチャード・ワイズマンによる研究で、自分は運がよいと感じている50人と自分はついていないと感じている50人を比べた実験があります。彼らに新聞を与えて、制限時間内に新聞の中の写真を数えてもらうテストをしました。するとついていないと思っているグループは全員が不正解だったにもかかわらず、運がよいと思っているグループのひとたちは5秒ほどで正解にたどり着いた人もいたのです。なぜこのような結果になったのでしょう?
実は新聞を開いた所の見出しに、「数えるのをやめてください、この新聞には43枚の写真があります」と答えが書かれていたのです。ついていないと思っている人たちは、夢中で写真を探していたためその答えが見えなかったのです。一方で運がよいと思っている人たちは、視野が広く、チャンスを見つけることができたのです。
ちょっとした意識の差があったかどうかだけで、チャンスは確率的に平等でやってくる。そしてきっとチャンスがあるとポジティブに思っている人は、無意識にそのチャンスをたぐり寄せることができるのです。
投資家のように考えるために導入をするべき、エネルギーの中身について考えてきました。これら5つのエネルギーを投入して未来からお返しいただく行為が投資であるというのが、藤野英人さんの考えです。より具体的な思考方法、実践するための習慣について知りたい方はぜひ本書「投資家みたいに生きろ」を手に取ってみてください。