ネットフリックス、観てますか?
この記事では、「NO RULES世界一自由な会社、Netflix」という書籍を紹介します。ネットフリックスと言えば、今や世界190カ国で2億人の会員を誇る巨大企業になっています。
しかし実は、創業2年目の2000年には、5,700万ドル(日本円で60億円以上)もの損失を抱えて倒産寸前の会社でした。
これを読めば、ネットフリックスがなぜ動画最大手まで登り詰めたのか、その過程で獲得した強烈な経営方針を知ることができます。それでは見ていきましょう!
1. ネットフリックスには、変化を起こす文化がある
創業当初、ネットフリックスはインターネット経由でDVDを郵送レンタルするサービスを行っていました。
しかし、すぐに倒産の危機に陥り、当時のホームエンターテインメント業界最大手であるブロックバスター(BLOCKBUSTER)に会社を5,000万ドルで買い取ってくれと相談を持ちかけることとなります。
「いやいや、創業間もないのにこんな悲惨な状態の会社いらないよ…。」ブロックバスターは、そのオファーをきっぱりと断ります。
ところがそこから、世界は少しずつ変化していき、ネットフリックスは倒産の危機に陥っていた2000年からわずか2年後に上場を果たすのです。
一方でブロックバスターは、2010年に破産に追い込まれ、2019年の時点では残っているレンタルビデオ店はたった1店舗だけに。
両者を分けた違いは、DVDレンタルからストリーミングへという時代の変化に適応できたかどうかです。
今や当たり前にスマホで動画を見ていますが、2000年頃にこの変化を予測し、舵を切るのは相当なリスクだったと思います。
しかし業界が変化し、経営が危うくなる会社が多い中で、ネットフリックスはそれに適応するだけでなく、自ら4回も大きな変化を起こしてきたのです。
ネットフリックスが起こした4つの変化
- DVDレンタル事業から古いテレビ番組や映画のインターネットストリーミングへの変化
- 古いコンテンツのストリーミングから外部スタジオが新たに制作した独自コンテンツの配信への変化
- 外部スタジオ制作のコンテンツをライセンス配信する状態から社内スタジオを立ち上げて独自の番組や映画を制作する体制への変化
- アメリカだけの企業から世界190カ国のユーザーを楽しませるグローバル企業への変化
これらの変化は単なる成功というレベルではなく、驚異的なアイデアと推進力があってからこそです。
2010年に破綻したブロックバスターとは違う何か特別なことが、ネットフリックスで起きていたことは間違いありません。
ここからは、驚異的な変化を起こし続けられた理由を紹介していきます。
2. 社員の自由度を高める3つの要素
ネットフリックスのCEO(最高経営責任者)のリード・ヘイスティング(Reed Hastings)氏が作ろうとしたのは、制約のない自由なカルチャーを持つ組織でした。
それを試行錯誤することで分かったのは、社員の自由度を高める次の3つの要素が非常に重要だということです。
- 能力密度を高めること
- 率直さを高めること
- コントロールを減らすこと
1つずつ詳しく見ていきましょう。
能力密度を高めること
2001年、最初のインターネットバブルがはじけた影響で、ネットフリックスは資金調達が難しくなり大量の社員を解雇する必要がありました。
CEOのリードは、誰を残し、誰に辞めてもらうか選別しなければなりません。まず、明らかに能力や態度に問題がある社員には、すぐに辞めてもらいます。
逆に、仕事ができて、協調性もある抜群に優秀な社員は迷うことなく会社に残します。
問題は彼らほど優秀ではないが、それなりに能力があるという社員や、仕事はできるが協調性に欠けるといった中間社員です。
リードは心苦しく思いながらも、彼らにも会社から去ってもらうという決断をしなければならなかったのです。
しかしその結果、予想もしなかった効果が起きることに。
会社の雰囲気が、劇的に良くなったのです。抜群に優秀な人たち以外がいなくなったことで数は少なくなりましたが、その分能力密度は抜群に高まっていました。
抜群に優秀な人は、最高の同僚に囲まれていることで最大のパフォーマンスを発揮します。同僚の中にたとえ仕事は有能であっても、怠け癖があったり性格が悪かったり、物事を悲観的に考える陰気な人が少しでも入ると、その周りにいる人は大幅にパフォーマンスが落ちてしまうということが分かったのです。
それ以降、ネットフリックスでは仕事ができて協調性もある最高の人材だけを集めることに集中しました。そして最高の人材には、必ず業界で最高水準の報酬を支払います。
もしその資金が足りない場合には、それほど優秀ではない人材を何人か解雇してでも最高の人材への報酬を確保するのです。
ソフトウェア業界のようなクリエイティブな業種では、一人の優秀な才能が一般的な人の何百倍ものパフォーマンスを発揮するということが起こります。
そのため最高の人材に、どの会社よりも多くの報酬を支払うことで、その能力に報いるのです。
ネットフリックスでは、キーパーテストと呼ばれる哲学がマネージャーに浸透しています。
“もし会社を辞めて同業他社に転職すると言われた時に、必死に引き留めようと思う人材だけを残す”という考え方です。
必死に引き留めようとは思わない人材であれば、十分な退職金を支払ってでも、喜んで会社から去ってもらうことを選ぶ。
こうした仕組みを通じて高い能力密度を維持することで、ネットフリックスは自社を大きく変化させる革新的なイノベーションを何度も起こすことが可能となったのです。
3. 率直さを高めること
ネットフリックスでは、率直なフィードバックをお互いに与え合うことによって、優秀な人材はさらにパフォーマンスを高い次元に引き上げていくと考えています。
しかし、人は自分の誤りを指摘されることを嫌がるものです。
たとえフィードバックの内容が正しいものであったとしても、それが心の底から相手のためを思ってのものでなければ、言われた側は受け入れようとはせず、組織の雰囲気も悪くなってしまいます。
そこで、ネットフリックスでは次のような“4つのA”というガイドラインを整備しました。
4つの“A”
- フィードバックを与える側は、「相手を助ける」気持ちで行うこと(Aim to assist)
- 行動を促すような内容であること(Actionable)
- フィードバックを受ける側は「感謝する」ことを忘れない(Appreciate)
- その上で「受け入れるかは自分で判断する」こと(Accept or discard)
の4つです。このような気持ちでフィードバックを行う限り、ネットフリックスでは自分の意見を率直に伝えることが美徳として尊重される文化が保たれます。
たとえ相手が上司であっても、フィードバックを行わないことや気付いた誤りを指摘しないことは、会社に対する裏切りに等しいという空気があるのです。
日本社会でよくある忖度や静観も、相手を気持ちよくさせるだけで会社のためでない行動である場合は裏切りになるというルールは、自分で考え正しいと思う意見を言う環境づくりには効果的ではないでしょうか。
4. コントロールを減らすこと
優秀なメンバーが集まっているからこそ、社員を縛るような規則や手続きがない方がスピードは圧倒的に速くなります。そのためにネットフリックスが行っているのは以下の2つです。
- 休暇の申請をなくして自由に休暇を取れるようにした
- 経費の承認プロセスを無くした
そして、細かい規則で社員の行動を縛る代わりに、たった一つだけ重要な原則を示しました。
それは、“ネットフリックスの利益を最優先すること”です。
例えば、ビジネスクラスの飛行機に乗って出張に行くことも、到着してすぐに重要な会議があり、身体を休めて最高のプレゼンを行うために必要なことであれば問題ありません。
高級なレストランで食事をすることも、それが得意先との契約をまとめるための大切な場であれば経費として自由に使うことができます。
これらすべては新入社員であっても、誰の許可も得ずに全て自分の判断で自由に行えることです。
ただし、もし自分の家族とのプライベートな食事に経費を使うような悪用が見つかった時には、一発でクビになります。
たとえ重要でリスクが大きい意思決定であっても、職位に関係なくすべての社員が自分の判断で行えるようにしたことで、“自由と責任を大切にする”ネットフリックスの企業カルチャーが出来上がっていったのです。
今回は、「NO RULES世界一自由な会社、Netflix」を紹介しました。ネットフリックスのコアとなる3つの要素が上手くいく限り、他社には負けないのでは?と思えるような独自の企業カルチャーを築き上げていますね。
圧倒的な“自由”がある一方で、最高の社員でい続ける“責任”もありますが、社員になりたいと思う人は門を叩いてみるのもいいかもしれません。
ただのサブスク動画企業ではないことが分かり、より詳しく知りたい方は本書を手にとってみてください!