『日本人というリスク』要約(これからの人生設計・お金の稼ぎ方・働き方)【橘玲の本・書籍】

Mt. Fuji ハッとさせられる考え方・哲学

 

未来は不確実で、世界は限りなく残酷である。

明日は今日の延長ではなく、終わりなく続くはずの日常は、不意に失われてしまう。それでも私たちは、そこに何らかの希望を見つけて生きていかなければならない。

ーー橘玲

みなさんは、今の日本は充実した国だと思いますか?

この記事では、橘玲さんの「日本人というリスク」を紹介します。本書は、日本人がどんなリスクを抱えているのか、日本社会はますますリスクに対して脆弱になっているのではないか、ということが書かれています。

筆者は1997年の金融危機、東日本大震災、福島第一原発の事故などによってかつての戦後以降に支配してきた、日本人の人生設計における4つの神話が崩壊したと指摘しています。

  • 不動産神話
  • 会社神話
  • 円神話
  • 国家神話

の4つです。ポスト3.11を生きるのは、これらの神話を奪われた世界で生きていくということです。まずは、それぞれの神話を理解するところから始めましょう。

 

1. 不動産神話について

white and brown concrete house near green trees during daytime

 

これは簡単に言えば、賃貸より持ち家の方が得だという考えです。マイホームを購入することは、実は不動産投資と変わりません。筆者はこれまで経済合理性を考えれば、賃貸よりもマイホームが得とは言えないと繰り返し主張してきました。しかし、賃貸ならば家賃を払わないといけないけれど、持ち家だったら家賃はいらないから得だという意見により、なかなか理解を得られないそうです。

持ち家と賃貸の違いは、不動産投資のリスクを引き受けるかどうかです。その際には、家を所有するリスクを理解しなければなりません。持ち家の不動産価格が上がれば利益になりますが、地価が下がったり、想定外の出来事で不動産が価値を失ったりすると、損失は全て個人で背負うことになってしまいます。こうしたリスクは万が一の自然災害のみならず、マンションの中にヤクザの事務所ができたり、近所にカルト教団の施設が作られたりといった、私たちにどうしようもない身近なトラブルも考えられます。

 

一方で賃貸は、不動産投資のリスクを貸主にすべて転嫁できるので、地震による液状化で居住が不可能になっても、契約を解除して引っ越せばいいだけです。このように、賃貸より持ち家が得とされる理由は、持ち家の方がハイリスクだからです。地価が上がれば高いリターンが期待できますが、大きなリスクを取らなければいけません。そして、地価は永久に上がり続けるという不動産神話が健在な時期には、このリスクは水面下に沈んでいて誰も気づきません。

1990年ごろのバブル崩壊までは、年率15%というハイパフォーマンスを示していたため、未だに神話を信じる人がいますが、マイホームは不動産会社と金融機関が組んで、個人にリスクを押し付けて大きな収益を上げるスキーム。一般的に、個人はリスクの耐性が低く、機関投資家はリスクの許容度が大きいので、ハイリスクな投資は機関投資家に任せて手を出さず、個人では保守的な資産運用を心がけたほうが賢明です。

REITを運営する機関投資家なら、不動産価値を大きく毀損しても、損失はそれを保有する多くの株主に分散されます。個人が何十年も住宅ローンを払い続けることに比べれば、その影響度合ははるかに軽微です。銀行からお金を借りて購入するマイホームは、レバレッジをかけたハイリスクな不動産投資に他ならないことを意識しましょう。

 

2. 会社神話について

people doing office works

 

会社神話とは、大きな会社に就職して定年まで勤め上げることです。

日本企業は大学の偏差値によって新卒を採用するので、偏差値教育、激しい受験戦争が起こっています。将来の大金がかかっているのだから、少しでも良い大学を目指そうとするのは合理的な行動ですよね。年功序列制度を保つには、新卒一括採用で人事のピラミッド構造を維持する必要があり、大学生にとっては就活こそが人生を決める最大のイベント。大学で何を学んだかなど誰も興味を持たず、大学のラベルのみでみられることが日本の大学教育が機能を喪失した理由です。

戦後の高度経済成長期以降、日本では個人のもつ人的資本(人の働いてお金を稼ぐ力)を1つの会社に投資することが、人生における経済利益を最大化させる最適な方法でした。このサラリーマンとしての人生設計は、会社は絶対に倒産しないという神話が前提で、日本の多くの企業は今でも終身雇用と年功序列を謳っています。これは日本の会社が従業員を長期で働かせた方がいいと思っているのと同時に、日本の労働者が同じ会社で定年まで働いた方が得だと双方が考えているからです。

高度成長期における日本企業は、実務の決定権を現場に持たせることで、現場のやる気を促し、高品質のプロダクトを安定生産できる優れたシステムを構築してきました。そんな中で、メーカーは子会社や取引先を系列化し、独自仕様の製品開発を競っていました。そして、テレビや冷蔵庫などの家電製品もメーカーごとに細かな仕様が異なり、部品を互いに共有することなどできませんでした。

この排他的な独自のシステムでは、製造現場独自のノウハウや会社内の人間関係や権力構造などのマニュアル化できない知識が大切になります。従業員はその会社でしか通用しない知識や技能を苦労して習得してしまうため、景気が悪くなったからといってすぐにクビになったり、給料をカットされたりすることに納得できません。会社としても、悪評が広まると優秀な人材が集まらなくなるので、年功序列の昇進と終身雇用で社員を安心させようとします。それが仕組みとして、若い時の低賃金労働と多額の退職金に現れているのです。日本企業では、従業員は定年前まで勤め上げないと正当な報酬を十分に受け取れない仕組みになっています。

 

サラリーマンが真面目なのは、日本人の気質以上に仕事をさぼって解雇された時に失うものがあまりにも大きいからです。しかし、日本の労働環境は各社が相次いで大規模なリストラ、サービス残業などの無給労働の常態化、賃上げの凍結、ボーナス削減、社員寮などの福利厚生の廃止などにより、実質賃金が大きく低下してしまいました。さらに、外資系企業がグローバル・スタンダードの雇用慣習を持ち込んだことで、専門性のある一部のサラリーマンにこれまでなかった転職のチャンスが生まれています。

また、日本企業は中途採用を前提としないため、中途入社しても年功序列からは外れたところでゼロから再出発しなければいけません。そうなると何らかの理由で会社を離れることになった有能な人材は、自分の知識やスキルを正当に評価してくれる外資系企業やベンチャーを選ぶほかありません。こうした背景により、90年代以降のキャリアプランとして外資系企業やベンチャー企業に就職した後、ファンドマネージャーやコンサルタントとして独立したり、企業を目指したりすることが、目指すべき理想像となったのです。

 

平均的なサラリーマンの生涯年収は、3億円だそうです。福利厚生や企業年金を含めると、企業が支払う人件費は1人あたり5億円とも言われています。これを聞いても、俺はそんなにもらってない!と不思議に思う人がほとんどですよね。その理由は、これが総収入だからです。日本の所得税率は他国に比べて低いと言われていますが、その代わり年金や健康保険などの社会保険料が毎年のように引き上げられ、手取り収入を圧迫しています。

日本の社会保険制度が破綻状態で、国民年金や国民健康保険、特に後期高齢者医療保険の多額の赤字を補うために、給料から自動で源泉徴収できるサラリーマンに負担を添加するしているということです。平均的なサラリーマンの総収入の25%が社会保険料に消えています。

生涯年収3億円のうち7,000万円以上が日本国に徴収されるため、退職金を除けば2億円弱、平均で500万円/年になります。サラリーマン人生は40代までひたすら会社に貯金して、50代から回収を始め、満額の退職金をもらって初めて帳尻が合うようにできているのです。

 定年までに住宅ローンを完済し、ほぼ無税で退職金を受け取り、老後は悠々自適の年金暮らしをする。確かにこの計画通りなら素晴らしい人生ですが、これには重大な問題があります。サラリーマンはすべての人的資本を1つの会社に投資することになるため、リスク分散できないということです。ここ10年で会社が倒産することは珍しくなく、大手企業でも頻繁にリストラが行われるようになりました。こうして会社神話が崩れはじめ、サラリーマンでいることのリスクが突然顕在化されててきたというわけです。

 

3. 円神話、国家神話について

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円神話とは、日本人なら円資産を保有していれば安全だよね!という考えです。この神話については、結論だけを言います。

日本に住んでいる以上、私たちの資産は強制的に円に縛り付けられており、不動産だけでなく、年金や生命保険などについても、円よりドルなどの外貨を多く持っている人はほぼいないでしょう。

しかしそれでは円資産が価値を失うリスクに備えていることになりません。卵を一つの籠に盛るなという分散投資の鉄則に従うなら、円資産だけでなく、外貨にも試算を分散させておくべきです。実際、日銀でさえ外国に投資しています。

 

国家神話とは、国家が破産することはありえないという考えです。未来は誰も予測できませんが、極めてまれな例外として確実に予想できることがあります。それは人口動態です。日本のような先進国では年齢ごとの死亡率は統計的にほぼ正確にわかっており、長期にわたって安定しています。今の0歳児が平均寿命を迎え80数年後まで、人口がどのように変化していくのかはあらかじめ決まった未来です。

私たちに訪れる確実な未来は、人口の減少、高齢者の増加、少子化の進展の3つです。そして、人口動態の変化による公的年金や医療介護保険などの社会保障の破綻は確実に予測できる未来です。年金制度は政府が65歳以上の高齢者に毎年お金を支払うことを約束しているので、高齢者の人口がわかれば年金支給額は簡単に計算できます。日本の年金は現役世代の負担で高齢者を支える方式なので、現役世代の人数が減少すれば必然的に保険料収入も減っていくことは明らかです。

経済成長率や年金資産の運用利回りなどいくつかの変数があるにせよ、このままでは日本の年金制度は破綻します。それに加えて、年齢が上がるにつれて、医療費や介護保険の利用は増加します。年齢ごとの平均的な支出額は統計により分かっているので、将来的な医療・介護保険の負担額も計算可能です。2020年には約800万人の団塊の世代が70歳を超え、医療や介護サービスを本格的に利用し始めるので、この高齢者爆発によって要介護保険制度の崩壊は避けられません。

 

戦後の日本人の人生設計は4つの神話の上に築かれていました。不動産価格は上昇し続ける、会社は倒産しない、円は最も安全な通貨、国が破綻することないといった神話を前提とした資産ポートフォリオは、戦後の経済成長に最適化した人生設計でした。しかし、これらのリスクが顕在化すれば、個人の人生にとてつもない厄災をもたらすことになります。ゼロ年代以降の日本で急速に閉塞感が増していった理由の一つは、多くの人がこうした経済的なリスクに気づき始めたからです。

それでも神話なき時代の新しい人生設計を見つけ出すことができずに、対応年数の切れた古臭い設計図にしがみつくしかありませんでした。不都合な真実に顔をそむけ続けた結果、3.11以降初めて自らのリスクを目の前に突きつけられたのです。

 

4. 神話を奪われた世界での人生設計

clear hour glass beside pink flowers

 

これからの世界での人生設計で大切なことは、

  • 伽藍からバザールへ人的資本のリスクを分散する
  • 世界市場投資のススメ金融資本を分散する

の2つです。それぞれ簡単にみていきましょう。

 

伽藍からバザールへ人的資本のリスクを分散する

日本とアメリカの労働者の正確な比較調査が明らかにした重要な事実があります。それは、愛社精神も仕事への貢献度もアメリカ労働者の方がずっと高く、日本のサラリーマンは昔から会社が大嫌いで会社を憎んでいるということです。日本人の方が愛社精神がありそうな感じもしますが、なぜ日本のサラリーマンは会社が嫌いなのでしょうか。その理由を知るためには、伽藍の世界を覗いてみなければなりません。

伽藍とは、人の集団が物理的・心理的な空間に閉じ込められている状態で、学校のような閉じた世界のことです。それに対して、バザールは行き来が自由なオープンな空間で、店を出すのも畳むのも自由です。伽藍とバザールでは、周囲からの評判が全く異なるルールで成り立っているのです

バザールは参加するのも出て行くのも本人の勝手。相手に悪い噂や評判を広めようとしても、何の効果もありません。悪評ばかりの業者はさっさと廃業し、別の場所や別の名前で商売を再開すればいいだけです。一方で、悪評と同様に良い評判も失います。良い評判は立派な資産なので、たくさん集めている業者は同じ場所に留まり、良い評判をさらに増やそうとします。顧客は評判の良い業者から商品やサービスを購入しようとするので、一番合理的な戦略です。

このように、バザールでは良い評判を集めることで有利な立場が築ける“ポジティブゲーム”で成り立っています。

 

一方で閉鎖的な空間である伽藍は、一度広められた悪評はずっと付いてきます。この典型例が学校のいじめで、一旦悪評の標的にされると地獄のような日々が卒業まで続くことになります。そのため、できるだけ目立たず匿名性の鎧を身にまとって、悪評を避けることが生き延びる最適戦略です。

こちらは“ネガティブゲーム”と呼ばれ、日本人は終身雇用で一度会社に入ったら逃げ出すことが難しい伽藍であるため、会社が嫌いな人が多いです。伽藍で一度ついた悪評は二度と消えないため、誰もができるだけ目立たず、失敗しないように振る舞います。しかし会社神話は崩壊し、寿命が延び、会社の終身雇用制度も崩壊に向かいつつある中で、1つの会社で目立たずにやっていくネガティブゲームだけで生きていくのは難しいです。

 

私たちは今後、伽藍を出てバザールを目指さなければなりません。それは、人的資本のリスクを分散させるということです。務めている会社一つだけに人的資本を投資するのではなく、誰もが商売をはじめられ、一度ついた悪評はいつでもリセットできるバザールにも、人的資本を投資しましょう。

バザールでは、挑戦が失敗に終わってもリセットできるので、失敗は問題ではありません。一方で、伽藍の世界しか知らない人たちは、ポジティブゲームが全くできずにはじめは苦労するはずです。今のうちから競争相手の少ないバザールで勝負し始めた方が、高確率でのちのち楽になります。

 

会社神話が崩壊したいま、一つの会社でネガティブゲームをやっていても、その会社が潰れてしまえばどうしようもありません。世界の潮流はバザール、ポジティブゲームです。そして現代は、バザールで戦いやすい環境があります。なぜなら、一部の特権階級しか使えなかったプラットフォームが、すべての人に解放されているからです

むかしはCDを出せるのは限られたミュージシャンだけでしたが、動画配信サイトならアマチュアでも自分の歌を世界中のコアなファンに聞いてもらえます。アマゾンの倉庫に商品を預け、ブログやTwitterで商品の説明をしてGoogleで宣伝すれば、少数から販売可能です。ネットの世界はどんどんバザール化しているということです。これからもこの流れは、どんどん加速していきます。極端にYoutuberのようにならなくても、SNSでフォロワーを獲得する、仕事で評判を得てヘッドハンティングされる、フリーランスとして評判を獲得し仕事をもらうなど、とにかくこれからはポジティブゲームによって良い評判が獲得できないと、生き残れない時代です。

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リスク分散された金融資本のポートフォリオを新たにも持って欲しいということです。そこで注目すべきは、インデックス投資です。黙って海外のインデックス投資にも分散しておくだけでも十分です。

もちろん投資に自信がある人は、他の金融商品に手を出してもいいです。しかし投資にあまり詳しくない、株価の上下に日々振り回されたくないという人は、単純にインデックスファンドを買うというのが最強の解決策です。

 

今回紹介した「日本人というリスク」は、まさにいま日本人が直面している課題を赤裸々に浮き彫りにしてくれます。芯を食った良書ですので、気になる方はぜひ手にとってみてください。

 

 

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