『シン・ニホン』要約(AI×データの時代、コロナ禍で都市は開疎化へ)安宅和人

時代を生き抜く考え方・哲学

 

日本の未来は、明るいと思いますか?

経済成長の滞った平成の時代を思い返すと、自信を持って“明るい”と言える人は少ないはずです。2010年代からGAFAを始めとした巨大ITテック企業が世界を席巻している中、日本からはITで世界を取る企業はありません。とはいえ、トヨタのような一流企業もあるし、今の水準の生活が続けばいいかなと思っている人も多いでしょう。

今回紹介する、安宅和人さんの「シン・二ホン」では、今は安定していると思える世界はあっという間に変わると警笛を鳴らしています。一方で、そんな中でも日本が取り残されずに巻き返す方法についても書かれていて、私たちにこれからの時代を乗りこなしていくヒントを与えてくれます。まずはこの記事を読んで、日本の未来について一緒に考えるきっかけにしましょう!

 

1. 世はまさにAI×データの時代

 

まず押さえておきたいのは、私たちの生きる時代についてです。今や誰もが30年前のスパコンの数十倍の処理能力を持つスマホを持ち歩く現代は、ここから5Gの世界となれば、さらに数千倍もの情報、ビッグデータを処理できるようになります。情報の識別や予測、活動の実行プロセスはことごとく自動化されつつあり、その変化は絶対に不可能と思われていたことが、5年、10年で指数関数的、文字通りケタ違いの速さで変化し実現していく極めて面白い時代に私たちは生きているのです。

また、そうした劇的な変化は、AI×データをフル活用することで可能となります。様々なデータを自社で持ち、それらを1社でネットワーク化して繋げられるGAFAなどのメガプラットフォーマーが現在圧倒的なチカラを持っていることは自明かと思います。一方で日本は、自動運転のデータを取るにも道が狭く、法規制も多いといった障害がたくさんある、電気料金はアメリカの約5倍、AIをいじれるようなコンピュータエンジニアの数も少ないといった大敗を期しているという状況です。

 

2. フェーズ2~3に強い日本

出典:https://v-storage.bnarts.jp/

 

島国日本は過去幾度となく、外界からの脅威に晒されながらも、そこから得られる新しい技術を上手く取り入れ醸成させてきた歴史があります。それを以下の時代の3つのフェーズに当てはめると、過去の日本の栄光はフェーズ2〜3にあったと言えます。

フェーズ1:新しい技術を発見する。
(例:電気、蒸気機関の発見)⇨日本はほとんどしたことない。
フェーズ2:新しい技術を実際に活用する。
(例:白物家電)⇨日本はまあまあ強い。
フェーズ3:新しい複雑に絡み合うシステムを構築する。
(例:公共交通網、駅ナカ)⇨日本の真骨頂!

 

イギリスで蒸気機関が生まれたときに人口の9割が農業をしていた日本が、黒船来航からの明治維新、第二次世界大戦後の高度経済成長といった逆転現象を起こしてきたのがフェーズ2〜3の段階なのです。データ× AIはいまフェーズ1の終わり頃で、今からフェーズ1の0→1を作ることはもはや不可能な状態です。

しかし、日本は常に出遅れながらもそこから逆転できる“妄想力”があると安宅さんは言います。それはドラえもんや攻殻機動隊といった、日本人なら幼い頃から触れてきたSFで勝手に“こんなものあったらいいな”の妄想力が教育されているからで、それこそがフェーズ2~3に必要だということです。

 

3. もう一度立ち上がれる!日本の未来

 

IT以前の時代は、ハードを駆使して空間や資源に制限を受けながら、大規模工場が大量生産してスケールをとり、利益を生むことで企業価値につながっていました。しかし今は、技術によって“未来を変えている感”が企業価値として投資対象とされ、ハードから解放されて成長していき、結果としてハードも駆使しながら付加価値と利益につながるという真逆の流れになっています。

iPhoneを生み出したスティーブ・ジョブズや、再生エネルギーで持続可能な世界を創ろうとしているイーロン・マスクのように、まさに“妄想し、カタチにする”ことが富に直結する時代になったのです。フェーズ1で乗り遅れたのならば、そのチカラに抗おうとはせずプラットフォームを使い倒して、日本ならではの“妄想力”を活かしたコンテンツやシステムに醸成させていくことで、また立ち上がれると安宅さんは力強く言います。

一方で、どことない敗北感があったり、大人の都合で若者たちの未来を搾取したりしながら生き長らえているのが今の日本です。考え方が硬直的になり、変化の兆しに気づけない、もしくはその変化の芽を摘み取ってしまうところに問題があります。(私個人としては、“自ら知らず知らずゆっくりナイフを刺しているような状態”だと感じています。)

日本は理系大学生が2割なのに対して、テクノロジー立国している韓国やドイツは6割であったり、教育にお金を回さなかったりと、未来にお金を使わなすぎて投資のバランスが悪いです。人が国を創り、未来を築いていくならば、どのように人材を育てるかが鍵。社会が「若者を信じ、託し、応援する」ことができるか否かにかかっているのです。

 

4. 新型コロナウイルスで見えた「開疎化」の重要性

 

新型コロナウィルスの流行は、これまで数千年にわたって人類が進めてきた叡智の結晶、高度にシステム化された都市(このまま行けばブレードランナー的な超過密となる都市)のような「密閉(closed)×密(dense)」な空間の価値創造を全く否定するものとなりました。通勤ラッシュ、シネマコンプレックス、高層住宅やオフィス、テーマパーク…このようなものを急に全て捨てることは不可能ですが、ウイルスのような局所的でなく広がる可能性のある自然災害と共存していく(Withコロナ)には真逆の「開放(open)×疎(sparse)」に向かう強いトレンドが生まれるだろうと安宅さんは言います。

実際、向こう数十年で北極やグリーンランドの氷はほぼすべて、南極の氷の多くが一度は解ける可能性が高く、その中に閉じ込められていた病原体(細菌やウイルス)が氷の中から出てくる可能性もあります。同じような自然災害がいつ起こるか分からない状態が続くことを“心づもる都市づくり”が、今後大切になっていきそうですね。

 

5. 消費・娯楽へ与える変化

オーストリア・チロルの山中にあるスワロフスキー・ワールド

 

開疎化を前提とした場所づくり、人々の行動が求められる世界では、ショッピングモールやホテルも人数制限をかけ、いかに密でないか、クリーンであるかを顧客に伝えることが、ブランディングの1つになり得ます。

例えば、世界的な企業であるスワロフスキーがチロルの山中に持つ、クリスタル・ワールドという世界最大のフラッグシップ店舗。ここでは、店員が20ヶ国語以上の言語に対応しており、少数向けに特化した販売をしているそうです。今後はこうした空間で、安心してゆっくり楽しめる店舗が増え、10〜100㎢の土地にそういう場所が1つあるだけで、まったく新しい、開疎で豊かな郊外の空間が生まれる可能性があります。

 

6. 風の谷をつくる。これからの都市の価値

風の谷のイメージ

 

映画「風の谷のナウシカ」で描かれる世界は、“腐海”という有毒ガスと胞子に覆われた空間と、腐海に覆われていない風通しの良い谷に住む人々に分かれていました。今はそこまでではないが、エアタイトな高層ビルや満員電車のある都心にいるということは、密なリスクの高い生活をすることになります。今すぐ全員が散りじりに開疎に住むということではないですが、都市でエラーが起こったときに開疎な「風の谷」的な空間を周りに十分持てない都市は、今後価値を失う可能性が高いのでは? と、安宅さんは言います。

また、個々の場所の変化としてはオフィス空間は同じ場所に密に集まる島構成のデスクやエレベーターといったものから、低密・低層で気持ちのいいオフィスの需要は増えてくるかもしれません。こうした「開疎化」を前提とした暮らしを考えていくと、都市の恩恵を受けてきた私たちの日常のあらゆる場面が、再評価されるタイミングにあると言えます。詳しくはこちらの安宅さんのブログ記事もご覧ください。

今回紹介した安宅和人さんの「シン・二ホン」には、日本が目指すべき姿が、多くのデータをもとに分かりやすく解説されています。より詳しく知りたい方は、ぜひ本書を手にとってみてください!

 

 

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