『TIME OFF 働き方に“生産性”と“想像性”を取り戻す戦略的休息術』要約(仕事と余暇)

person sitting on bench facing suspension bridge 時代を生き抜く考え方・哲学

 

あなたにとって、価値ある余暇とは何ですか?

この記事では、ジョン・フィッチさん、マックス・フレンゼルさんの書籍「TIME OFF 働き方に“生産性”と“想像性”を取り戻す戦略的休息術」を紹介します。本書は、

  • 働きすぎていると感じている
  • より豊かでクリエイティブな人生を送りたい

という方におすすめです。

日本では、企業も個人も長時間熱心に働いていますが、残念なことに生産性は非常に低いです。その理由は、本当に必要な仕事かを考える時間も取らず、働き続けてしまっているためです。

これを解決するためには、タイムオフが必要だと著者たちは言います。本書は、多くの偉人有名人の例を挙げながら、タイムオフの有効性を教えてくれます。それではさっそく中身をみていきましょう!

 

1. 歴史上の偉人たちの共通点

selective focus photography of Aristotle's Metaphysics book

 

歴史上の偉人たちには、大きな共通点があります。

それは、「タイムオフ(休息)」の真価を理解していたことです。時代も職業も場所も違うのに、名を残した思想家や策略家やアーティストたちは、タイムオフを罪として嫌うのではなく、良いものとして楽しんできました。

1932年、イギリスの哲学者・論理学者・数学者であるバートランド・ラッセルは、体内の参加という施策に富んだエッセイで、私たちにこんなヒントをくれています。

余暇によりたくさんのことがなされ、その中には文明を代表するような功績もある。

ただし、労働階級人口は有閑階級(多くの資産があって余裕があり、生活のための職業につく必要もなく、閑暇を趣味、娯楽などで費やしている階級)よりも多く、有閑階級層は人口の一握りだ。

 

有閑階級は、社会問題に悩む必要がないため、その優位さを享受したとラッセルは認めています。一方で、有閑階級は我々が文明と呼ぶものに大きく貢献もした、芸術・科学・本・哲学を生み出し、社会関係を成熟させた。

また、この階級なくして、人類は野蛮から抜け出すことはできなかっただろうとも述べています。しかし、現代の労働文化はその逆になっています。

みんな常に忙しくストレスに耐え続け、働きすぎることが勲章であり、そうでしか自分の価値や有能さを証明できないと感じています。定時に帰ったり、休暇を取ったりしたら、毎日残業しいる人よりも劣っているという考え方が常識になっていると著者たちは言います。

では、歴史上の人物たちは、よっぽどの変人だったのでしょうか?

 

働きすぎは誇り?

もちろん、過度に働いていません。では、私たちはどこかで休息の大切さを忘れてしまっているのでしょうか?

働きすぎることが恥ずべきことではなく、誇りに思うこととなったのは、ごく最近のことです。この見せかけの誇りを得ようと、頑張りすぎて精神の病や燃え尽き症候群に陥り、不幸せになった人たちがこの社会に溢れています。

必死に高めようとしている生産性さえ、結局のところ低いまま。仕事に集中するためには、忙しい時間と質の高い休息時間のバランスを取ることが必要です。

 

しかし、ほとんどの人はアンバランスに生きています。仕事に没頭しているわけではなく、だからといって完全に仕事を忘れて休んでいるわけでもない。オンでもオフでもない状態を、ふわふわしています。

かけた時間と労働力は、掛け算ではありません。50%の状態で2時間働いても、100%の状態の1時間には敵わないことを認める必要があります。そして、クリエイティブな仕事ほど、その傾向は強くなります。

いまでは、工場などの単調な仕事はなくなっていき、これからはクリエイティブな仕事がどんどん増えています。

そんな現代において、幸運にも多忙な人の中でも、少数の人たちはタイムオフの大切さを知っています。また最近では、より多くの人が、タイムオフの価値に気づき始めています。

 

2. 時間の概念がなかった時代

round black and brown analog clock

 

昔は時間の概念は、今とは違っていました。

狩猟採集をしていた先祖は、自然のサイクルに従い、必要なものを必要な時に得ようとしていました。

  • お腹が減れば、狩りに出る。
  • 辺りが暗くなって疲れたら、寝る。

そこに、現代のような“労働”という考えはありませんでした。日々の行動は、雨風から身を守るための家や、餓死しないための食べ物を確保するためのもの。先祖たちが、食べ物を探す時間は1日数時間しかかからなく、一度探せば3日間は不自由なく食べられたと想像してみてください。

古代は、労働時間は少なく、あとは気の向くままに過ごすことができ、睡眠時間も余暇も十分に取れて、慢性的な病に苦しむ人もほとんどいなかったのです。

言うまでもなく、燃え尽き症候群や過労による病気だけでなく、多忙という概念さえも存在しませんでした。

 

「時間」という概念の出現

しかし、1万年ほど前に状況は一変します。新石器時代に入り、定住や農耕が進み、短期的なニーズを満たすためだけでなく、より長い期間で物事を考えるようになります。

農業を営むためには、狩猟採集者が予見したよりもはるか遠くの未来に、どれくらい収穫があるのかを見込んで、作物や家畜を育てる必要があります。

そこには大きな労働力が必要になり、「時間」という概念が出現しました。

 

同時に出現した「私的財産」という概念は、植民社会での競争。狩猟採集社会では、必要量以上のものを獲得しても腐って無駄になっていましたが、定住社会では個々の財産として、競って働くようになったのです。

時間と労力をつぎ込むほど、得られるものは大きいという考えが広まりました。

最初は安定した生活が手に入り、コミュニティが大きく育つという恩恵もあり、メソポタミアでは車輪や数学、中国では絹織物や紙、エジプトではピラミッドが生まれ、宗教的伝統が発展し、文化が花開きました。

 

貢献を残した人たちの共通点

また、古代ギリシャとローマでも同じように、後世に影響を与えるような哲学や天文学、数学といった多くのアイデアが、ものすごいスピードで生まれました。

その功績を知っていても、私たちが古代ギリシャ人やローマ人の典型的な一日を見たら、なんて怠けた暮らしをしているんだ!と呆れるかもしれません。

最大の貢献を残した人たちは、なるべく働かないように生活していました。成功者の多くは、労働などすべきではないと考えていたからです。

そして、余暇を中心とした暮らしがあったからこそ、哲学やスポーツ、文学、ゲームが生まれ、文化が繁栄したのです。

 

3. アリストテレスの話

white and black lounge chairs near palm trees under blue sky during daytime

 

紀元前330年、ギリシャのアテネでアリストテレスは、自らが創設したペリパトス学派の学校である「ルケーヨン」で熱心に働いていました。倫理学や形而上学、数学、生物学、植物学、倫理学、そして政治学などの議論や施策に没頭していました。

しかし、私たちが知識労働だと認識するもののほとんどが、アリストテレスにとっては余暇でした。それもただの余暇ではなく、高尚な余暇です。

アリストテレスが考える労働と、高尚な余暇を区別する基準は、「なぜそれを行うのか?」という問いにあります。

労働には明確な目的があり、実用的な目標がありますが、余暇は「ただ、したい」からするだけ。何か別の目的のためというよりも、意味の追求といったところでしょうか。

 

休み < 仕事 < 余暇

そのため、アリストテレスは休む行為に対して「何から逃れているのだ?」という問いを投げかけ、余暇とは呼びませんでした。その答えは、山積みの仕事から逃れていることなのかもしれません。

アリストテレスの中では、休むことは仕事のためで、仕事は余暇のためのものでした。しかし、労働なしで余暇だけ行うこともできますし、それが最も尊い行為だとアリストテレスは考えてたのです。

彼の思考の大半は、純粋な思索「ただそうするがためにしただけの活動」であって、知りたい欲求にただ身を任せ、何か有益なものを目指していたわけではなく、有益か無益かといったことを超越する営みと考えていました。

残念ながら、現代においては純粋な知識を司る職業、つまり学者などの働き手であったとしても、目的のない思索はなかなか行われないのではないでしょうか。

そのため、高尚な余暇という概念を、現代を生きる私たちが、真に理解することは難しいのかもしれません。

 

私たちは余暇のある社会に生きていない

しかし、この概念が私たちの生活に及ぼす影響は大きいです。アリストテレスは、仕事の忙しさにうつつを抜かし、仕事を行うための余暇になっているとすれば、実りのある人生を送るためのひらめきも、文化や社会に貢献するやる気も湧かないと言います。

そうした意味では、私たちは余暇のある社会に生きていないと言えそうです。そんな社会では、ビッグアイデアはなかなか生まれません。

高尚な余暇とは、ぼーっとすることでも、ただリラックスすることでもありません。足るを知る時間です。

あなたにとって、仕事以外で満ちたりた気持ちにしてくれるものは、何ですか?

それを無視したり、後回しにし続けてはいないでしょうか?

 

現代では、アリストテレスの余暇の考えを、ほとんどの人が知らないまま生きているかもしれませんが、彼は時代を超えて多くの思想家に影響を与えてきました。そして、私たちは幸運にも、高尚な余暇の復興期、その初期段階に生きています。

人は必要なもの有益なものを見据えて行動しなければならない。そして、それ以上に高尚なものは何かということも、常に考えなければならないと、アリストテレスは私たちに呼びかけています。

自然は正しい仕事のあり方のみならず、高尚な余暇の可能性も教えてくれる、繁栄の基礎すべての視点なのだと、アリストテレスは述べています。

仕事のための休息ではなく、余暇のための余暇を見つけていきましょう。

 

4. 余暇至上主義

woman reading book sitting on gray sofa

 

アリストテレスの生きた時代は、余暇至上主義社会だったと言えます。

カトリック哲学者のヨゼフ・ビーパー教授が、著書「余暇文化の基盤」にてこう指摘しています。

古代ギリシアでレジャーを指す言葉は、スコーレであり、ラテン語のスコラの語源。これが現代、英語のスクールとなった。

つまり、元来の意味で学校という場所は、文化的なそして余暇としての人生を準備するところだったということだ。

 

古代ギリシャ語にも、ラテン語にも仕事をワークにあたる言葉は存在せず、仕事を余暇の不在として捉えられていました。

知識労働者という概念が生まれたのは、つい最近です。昔は、知的探求は有閑階級のみに許され、労働ではありませんでした。

古代の人々にとって、知識は受け取るものであり、世界を観察して受容するものでした。だからゆっくりと呼吸し、思索にふける時間が必要だと考えられていたのです。

このような視点の転換は、仕事をするために生きることが当たり前の現代では、なかなか受け入れられません。そんな時代に生きる私たちが、古代の人たちから学ぶべきことは何でしょうか?

 

5. 燃え尽き症候群から抜け出し、余暇を取り戻そう

three cigarette butts on ashtray

 

WHOが発表した、2019年版の国際失業分類に、燃え尽き症候群は職場環境の慢性的ストレスがきちんと対処されない時に起こるとあります。また、燃え尽き症候群には大きく6つの症状(意欲低下、疲労、仕事への心理的格別感、後ろ向きな感情、悲観的感情の増大、業務効率の低下)があるそうです。

知識労働者にとっての8時間労働は、産業労働者にとっての10時間労働と同等だと、起業家で作家のステファン・アーストルは述べています。

8時間労働は、もともと肉体労働のための基準であり、精神のための基準ではないです。1世紀ほど前、人々には肉体の限界を超えるほどの労働がられていましたが、それと同じことが精神的に起こっているのが現代です。

工場労働者がヘトヘトになるまで働かされ、ボロボロになっていたように、現代の知識工場で働くオフィスワーカーも同じ目に遭っているのです。

 

特に、ミレニアル世代での被害が深刻です。この世代は、仕事と自己価値を結びつけやすく、短期的な結果を求め続けています。

しかも、ソーシャルメディアのプロフィールを磨くために、常に他人の成功と自分の成功を比べます。趣味もレジャーでさえも、ビジネスチャンスや副業にできないかと考えそうでなければ無駄だと思ってしまいます。

バズフィードというメディアに掲載された、「ミレニアル世代は、どのようにして“燃え尽き世代”になったのか」という文章の中で、ジャーナリストのアンヘレン・ピーターソンは、自らの燃え尽き症候群の経験を回想しています。

 

燃え尽き症候群にはタイムオフ

彼女は、簡単な作業が難しくなり、予定を立てたりメールの返信をしたり、郵便局に行くことさえ満足に行えなかったそうです。この症状を、雑用麻痺と呼び、高機能仕事中毒だと考察しています。

大きな仕事はやり遂げられても、地味で単純な仕事が面倒くさくなり不安を感じるようになる。本来であれば、楽しいことが楽しくなくなる。働いていないことに罪の意識を感じてしまう。

そして、嫌だと思うはずのことが、逆に嬉しくなってしまう。

成功のために必要なことをしていると思い込んでいたと、ピーターソンは自分の経験を振り返っています。彼女は記事で、精神分析学者で燃え尽き症候群の研修者であるジョシュ・コーエン博士の言葉を紹介しています。

内なる全てのエネルギーを使い果たしてしまうと、燃え尽き症候群になる。何があっても進むのだと、自分に鞭を打つ衝動から自由になれないのです。

この神経をすり減らすような衝動こそが、内面化されたプロテスタント労働倫理であり、それを解毒できるのはタイムオフしかない。

著者たちが、なぜこの本を書こうと思ったのかというと、現代の文化は高尚な余暇を取り戻せると前向きに信じているから。

著者たちは、

  • 生産性と人生の喜びが、真に手を取り合う文化を作りたい
  • 生産性の意味を経済的指標よりもっと広く捉え直したい
  • クリエイティビティ・科学・精神・博愛主義を確認して発展するプロセスとして、高尚な余暇文化を提唱したい

そう考えているそうです。

今回紹介した、「TIME OFF 働き方に“生産性”と“想像性”を取り戻す戦略的休息術」について、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、ぜひ読んでみてください!

 

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